東方迷子伝   作:GA王

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ケーキの王道と言えばショートケーキ。
幼い時はケーキ+ジュースとか平気でいけてましたが、もうムリ...。




Menu⑨:ショートケーキ(スポンジ)

迷いの竹林の中にある永遠亭。

 

今は朝食が終わった頃、

永遠亭の縁側には今日は6人の乙女が、

 

ズズー…。

 

  『はぁ~。お茶が美味し~』

鈴仙「早めに工事が終わって良かったね」

あゆ「うん、萃香さん達のおかげだよ〜」

 

 工事を始めた翌日から、勇儀と萃香の他に多くの鬼があゆみの店の改装の為に駆け付け、当初の予定よりも早く工事が終わったのだ。

 

萃香「ふふふ、気に入ってくれたかな?」

 

そして今日は暇を持て余した萃香がお茶を啜りに来ていた。

 

あゆ「はい!とっても〜。

   素敵なお店になりました〜」

 

萃香の質問に満面の笑みで答えるスイーツ店の店長。

 

輝夜「今日から新装開店ね。私も頑張ろ!」

 

いつも以上に気合いを入れ、今日一日を楽しんであゆみの手伝いをしようとする輝夜。そんな姫の姿に、

 

永琳「あの姫様が…。私は嬉しいです」

鈴仙「お師匠様。私も涙が…」

てゐ「ウサ…」

 

保護者と従者達は感極まり、目頭を押さえた。

 

萃香「新聞にも載っちゃったしね〜」

 

 文が取材に来た次の日の「文々。新聞」の朝刊の一面に、大々的に輝夜が店で働いている事が載り、幻想郷中で朝から驚きの声か上がったという。そして、その日から店には男性客が一気に増え、輝夜は店の看板娘へと昇進したのだった。

 

輝夜「ちょっと大袈裟よ。でも…、その…。

   今までごめんね」

 

涙ぐむ3人に呆れつつも、これまで迷惑を掛け、心配させていた事を謝罪する看板娘。

 その光景に胸を打たれた萃香は、

 

萃香「いい話だなぁ〜」

 

笑顔を浮かべるもその瞳には薄っすらと光る物が。

 

永琳「ごめんなさいね。

   ところで工事費はお幾らかしら?」

 

 気を取直した天才薬師は指で涙を払いながら、店の改装費を尋ねてみた。すると萃香は、

 

萃香「ん?そんなの決まってるでしょ?

   要らないよ」

 

さも当たり前の様にしれっと爆弾を投下し、

 

  『えーーーっ!?』

 

被爆した者達は竹林を揺らす程の大声で驚いた。

 

鈴仙「以前にもお師匠様が言ってましたけど、

   いったいどうして?」

てゐ「慈善事業を始めたウサ?」

あゆ「なんで?なんで〜?」

輝夜「いったい何でそうなるのよ?」

 

真相を聞こうと萃香に詰め寄る4人。以前永琳にお茶を濁され、その頃からずっと気になっていた様だ。

 そんな4人に萃香は空を見上げ、思い出に浸りながらゆっくりと語り始めた。

 

萃香「永琳はね、私達の仲間を助けてくれたんだ。

   そいつはその時命が危ない状態だったんだけ

   ど、永琳の薬のおかげで救われたんだよ。

   しかも高級な材料の殆どを賄ってくれてさ。

   私達が出したのなんて、ほんの少しだけ…」

永琳「ふふ、そんな事もあったわね。

   もう随分前の事だから、

   気にしなくてもよかったのよ」

萃香「いいんだ。いつかは恩返ししたいって

   みんなで言ってたから。いい機会だったよ」

 

思い出話に花が咲く2人。

 当時の事を永琳は今でも鮮明に覚えていた。永琳が日常を過ごしているところに、突然血相を変えて飛び込んで来た2人の鬼。1人は萃香だったが、もう1人は年老いた鬼だった。萃香が連れて来た彼と永琳は顔を見知った仲で、友人とはいかないまでも知人ではあった。

 その彼が永琳に会うや否や、「何も聞かずに薬を作ってくれ」と頼んで来たのだ。流石にそれは無理があると断る永琳に、彼は余計な事を話さない様に、慎重に言葉を選びながら説明し、永琳は彼達のために薬を処方する事を決意したのだった。

 だが、誤算があった。滅多に作らない薬故、材料が切れていたのだ。しかもその材料は高価な物で、中には特殊な液に入れ、ゆっくりと時間をかけて抽出する必要な物があった。

 彼達の様子から切羽詰まっていることを察していた永琳は事情を話し、その場は代わりに症状を緩和させる薬を手渡したのだった。

 

 あれから月日は流れ、永琳の薬で助けられた『そいつ』は今…。それはまた別の話で。

 

永琳「そう言えば彼…先生は元気?」

 

永琳があの日萃香と共に訪れた鬼の近況を尋ねた。

 

萃香「うん、相変わらず儲からない診療所で

   のーんびりとやってるよ」

永琳「あの人の能力便利よね。

   医者として羨ましいわ」

 

 年老いた鬼の能力『診る程度の能力』。検査をせずとも見た者を瞬時に診察してしまう能力に、医者であれば誰もが嫉妬する能力だと語る『あらゆる薬を作る程度の能力』を持つ天才薬師。

 

永琳「そういえば、あゆみちゃんも彼と似た能力を

   もってるのよ」

萃香「え?そうなの?どんな能力?」

あゆ「『見つける程度の能力』

   って言われました〜。

   安全、危険が色で見えるんで〜す」

萃香「どう言う事?」

 

あゆみの答えに眉を顰める萃香に天才薬師は、

 

永琳「体験してみるのが早いわよ」

 

あゆみ vs 萃香の試合を提案した。

 

 

--少女移動中--

 

 

 屋敷の外へと移動するあゆみ達。あゆみと萃香が少し距離を取って互いに向き合い、他のギャラリーは2人を残して、更に離れた位置から見守ることにした。

 

萃香「あゆみー、通常弾出せるのー?」

 

あゆみに聞こえる様に大きな声で尋ねる萃香に、

 

あゆ「出せませ〜ん」

 

両手で拡声器を作って返事をするあゆみ。

 

萃香「スペルカードもないよねー?」

あゆ「無いで〜す」

 

その様子を遠くから見ているギャラリー達は…

 

輝夜「あれ近くで話せばいいんじゃない?」

 

「ルールくらい先に決めておけ」と思う輝夜に

 

鈴仙「通常弾も出せなければ、

   スペカも無くて弾幕勝負しようなんて、

   何も知らない人は戸惑いますよね…」

 

萃香の心境を察する鈴仙。

 

永琳「あゆみちゃんはいつぶり?」

てゐ「もう暫くやってないウサ」

 

 あゆみが弾幕ごっこをするのは輝夜に狩られた時以来で、久しぶりの事だった。故にまだまだ初心者。そんなあゆみを察してか、

 

萃香「じゃあ、一発勝負にしよー!

   私がスペカを宣言するからー、

   全部避けたらあゆみの勝ちねー!」

あゆ「は〜い!」

 

萃香は短期勝負の優しいルールを提案した。

 

鈴仙「一発勝負にするみたいですね」

永琳「妥当ね。初心者で弾幕を出せない人相手に

   スペカを3枚も使おうとなんて、

   普通は思わないわよ」

 

呆れ顔でため息混じりに呟く永琳に、

 

輝夜「う、うるさいわね…」

 

顔を赤くして自分の大人気なさを悔いる輝夜だった。そしてギャラリー一同は弾幕ごっこの恒例なのか、

 

てゐ「萃香に一つウサ」

輝夜「じゃあ私も」

永琳「じゃあ私はあゆみちゃんに二つ」

鈴仙「また賭けるんだ…」

 

賭けが始まった。そんな事が起きているとは知らず、スペルカードを扇状に広げて眺める萃香。

 

萃香「んー・・・、どれにしようかなぁ?」

 

悩んだ末、

 

萃香「コレがいいかな?あゆみー!いくよー!」

 

勝負の一枚が決まった。

 

萃香「『地獄:煉獄吐息』!」

 

 彼女がスペルカードを宣言すると、大小2種類の光の弾が彼女を中心に打ち上げ花火の様に一斉に放たれた。

 

あゆ「わ〜…。すご〜い」

 

 輝夜の弾幕とは違い、力強く輝く光の弾達。その胸を打つ様な光景に思わず魅入ってしまうあゆみ。しかし我に返り安全な場所を求め、周囲を見回してみるが、

 

あゆ「また色がごちゃごちゃしてる〜!」

 

広がる景気はまたしても目に優しくない世界。頭を抱えて大声で叫ぶあゆみに、

 

  『えー…』

 

話しにならないとガックリと肩を落とすギャラリー達。そんなあゆみの目の前まで迫って来ている光の弾。彼女は身を屈め、右へ身を躱した。

 

バーーン!!

 

あゆ「危なかった〜」

 

辛うじて避けることが出来たが、輝夜の時とは違う大きな破裂音に驚き、振り向くと…

 

あゆ「地面…、穴…」

 

そこにはポッカリと口の開いた地面が。

 

鈴仙「え!?」

輝夜「ちょっと!威力そのままじゃない!」

てゐ「不味いウサ!あゆみ逃げるウサ!」

 

萃香の放った弾幕の威力が通常時の物である事に焦るギャラリー達。

 人間離れした彼女達でさえも怪我をしかねない弾幕の威力の上、あゆみは普通の人間、か弱い少女。当たれば怪我だけでは済まされない事が容易に想像できた。

 

萃香「えっ!?まだ不安定だったの!?」

 

 ギャラリー達の言葉が聞こえた萃香も焦りだすが、スペルカードを宣言してしまった後ではもう止める事が出来なかった。

 急に知った己のピンチに放心状態になるあゆみ。しかし、光の弾は容赦なくあゆみに次々と襲いかかる。次の弾はもうあゆみの目前。「もうダメ」と瞳を閉じて恐怖から逃れ様としたその時、一瞬だけ周囲の景色から赤色が消えた。

 そして、直ぐ側に緑色の場所を見つけ、

 

ババババーーン!!

 

間一髪の所で避難する事に成功した。次の避難所を求めて視線を移すが、目に映る景色はまた2色の世界。

 そんな状況が頭にきたのか、

 

あゆ「もー!なんなの〜!」

 

大声で愚痴を零すのだった。しかし愚痴を零したところでピンチの状況には変わりなく、一度深呼吸をして落ち着く事にした。

 先程一瞬だけ見えた景色。その時自分は何をしていたか急いで思い出すあゆみ。

 

   頭が真っ白になった…

   怖かった…

   目を瞑ろうとした…

 

そう、彼女が目を瞑ろうとした時に一瞬だけ、その光景は顔を出した。そして彼女は更に気付いた。

 

あゆ「そう言えば…。

   さっきは片目だけ瞑っていた様な…」

 

試しにあゆみが片目を閉じると…

 

あゆ「真っ赤なんですけど〜!」

 

今度は逆に最悪の世界が顔を出した。

 

てゐ「さっきから何やってるウサ?」

 

1人で騒いで落ち着いて、また騒ぎだすあゆみが心配になるてゐ。

 

鈴仙「もう次が来てるよ!」

輝夜「そこ危ないわよ!」

 

そんなあゆみを助けようと声を上げて誘導する鈴仙と輝夜。

 彼女達の声が聞こえたあゆみは急いでその場を離れるが、萃香のスペルカードはまだ終わらない。

 片目を閉じたら緑色の所だけ見えたと思えば、再び片目を閉じれば今度は真っ赤。両目では色が入り組み、見るに耐えない。もうどうしたらいいのか分からないあゆみは、恐怖と絶望から涙を流し始めた。

 

あゆ「ん〜?」

 

 流れた涙を手で拭った時、待望の世界があゆみの目の前に広がった。何が起きているのか理解出来てはいない彼女だったが、その姿勢のまま緑色の場所を求め、移動をし続けついに…。

 

萃香「あゆみー!スキルブレイクで私の負けだよー!」

あゆ「へ?」

 

試合終了、あゆみが勝利した。

 

 

 

 




次回:【Menu⑩:ショートケーキ(生クリーム)】
全弾回避に成功したあゆみ。その能力のカラクリは…。
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