東方迷子伝   作:GA王

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気付けば一話辺りの平均文字数が
4000字を超えてました。

作品を書き始めた頃は
「到底無理」と思っていました。
「少し成長できた」という事でしょうか?




(第1話を読み返してみる…)




あまり変わってませんね…。




Menu⑮:◯◯◯ケーキ(注文)

《前回までのあらすじ》

ようやく出会ったあゆみの因縁の相手。その名も『海斗』。妹紅、てゐ、輝夜への無礼を詫びさせると思いきや、あゆみは彼に一目惚れしてしまうのだった。一方、花見へ持って行く手土産を『巨大なケーキ』に決め、ケーキ屋一同一丸となって作る事になった。

 

 

 

 

迷いの竹林の中にある永遠亭。

 

今は朝食が終わった頃、

永遠亭の縁側には今日は5人の乙女が、

 

ズズー…。

 

  『はぁ~。お茶が美味し~』

永琳「手土産のショートケーキ、

   上手く作れるといいわね」

 

あゆみの初めての挑戦の成功を祈る天才薬師。

彼女が幻想郷に迷い込んだあゆみを保護したお陰で、今日まであゆみは異世界の地で生活出来た。

 

鈴仙「あゆみちゃんごめんね。

   本当は一緒に手伝いたかったんだけど…。

   薬の販売が終わったらすぐに行くから」

 

手伝いに加われない事を悔やむ鈴仙。てゐがあゆみの手伝いをする様になって、彼女はこれまでてゐと分担していた家事や仕事を1人でこなして来た。彼女が居たから、あゆみは店を続けられているのだ。

 

輝夜「大丈夫よイナバ、私達が居るんだから」

 

自信満々にあゆみの夢の成功を誓う輝夜。面倒くさがりで、引き篭もりで有名だったあの輝夜が、この様になるとは誰が予期出来ただろう。

 

てゐ「任せるウサ!絶対成功させるウサ!」

 

あゆみの勢いに乗せられたてゐ。今となってはあゆみの良き理解者であり、あゆみが一番頼りにしている人物だった。そんないつも応援してくれる永遠亭一同に、

 

あゆ「みんな、ありがと〜。ホントに、本当に…。

   みんなありがとう……」

 

あゆみは込み上げる熱いものを抑える事が出来ず、それは目から溢れ出した。

 

  『えっ!?』

 

突然ポロポロと涙を流し始めたあゆみに、困惑する一同。

 

輝夜「ちょ、ちょっといきなりどうしたのよ!?」

あゆ「だって…、だって〜」

 

加速するあゆみの涙。

 一時は驚いた一同ではあったが、自分達に向けられた彼女の心には皆が気付いていた。

 

輝夜「ありがとうって言いたいのは、

   こっちの方よ……」

鈴仙「そうだよ。

   私達あゆみちゃんの頑張ってる姿に、

   元気を貰っているんだから」

てゐ「あゆみが頑張るから、

   私も協力したくなったウサ」

 

 突然この世界に迷い込んだ1人の小さな少女。彼女はいつしか永遠亭にとって、かけがえのない存在になっていた様だ。

 その皆の気持ちを代表する様に、天才薬師は強くあゆみを抱きしめ、囁いた。

 

永琳「あゆみちゃん。

   私達はあなたに凄く感謝しているの。

   だからこの先何があっても、

   どんな事が起きても、

   私達はあなたの味方よ」

あゆ「永琳さん…。ありがとう」

永琳「…」

 

あゆみを守る様に抱きしめる天才薬師の顔は、迷いを振り切り、何かを決意した表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大なショートケーキを作るため、店へとやって来た店員達。今日は店長がやたらと張り切っている様で…。

 

あゆ「チビウサギちゃんは材料をお願い!

   カグちゃんはショーケース冷やして!

   その後生クリーム作り手伝って!

   私は窯の温度調節してるから!」

 

いつになくキビキビと指示を出していた。その勢いに完全に飲まれた店長補佐と看板娘は、

 

  『Yes, Sir!』

 

敬礼をし、それぞれに与えられた指令を熟すことになった。

 店長補佐が帰還した頃、ケーキ作りは更に激化していた。てゐは初めて経験する巨大な生地作りに苦戦し、輝夜は慣れない生クリーム作りに悪戦苦闘し、あゆみは、

 

あゆ「窯の中の光が纏まってくれないよ〜」

 

額から汗を流しながら、窯と一対一の攻防を繰り広げていた。

 

てゐ「一度交代するウサ。

   あゆみは生地のチェックをお願いウサ」

 

あゆみは能力で窯の状態が分かるものの、これまでてゐが準備した状態でしか使った事がなかった。ましてや、外の世界では電気・ガスの普及のお陰で、幻想郷に来るまで窯に触れた事さえなかったのだ。故に、彼女は窯の使い方に関しては、まだまだ初心者。

 

あゆ「うん、お願〜い」

 

その事は本人も充分理解しており、ベテランのてゐと持ち場を交代する事にした。

 

てゐ「うん、こういう時は…。

   外側から温めた方が良いウサ」

 

てゐが窯を弄り始めて間もなく…。

 

あゆ「すご〜い!」

 

あゆみの目には、これまで散らばっていた光達が、徐々に中央へ集まって行く様子が映し出されていた。あゆみがベテランの神業に感心していると、

 

てゐ「長年の感ウサ!」

 

巨匠は胸を張って、いかにもそれっぽい言葉を残した。

 その後、あゆみの能力で窯が程良くなったタイミングを見計らい、巨大な生地は、その身を灼熱の窯の中へ投じる事になった。

 その間、ケーキ屋一同は…。

 

ズズー…。

 

  『はぁ~。お茶が美味し~』

 

ティータイム。

 

 

--生地焼身中--

 

 

輝夜「どう?」

あゆ「もう少しで緑色になりそ〜」

 

 焼き上がりの頃合いを狙って、様子を見に来たあゆみ達。この絶妙な焼き加減は、あゆみの能力の出番。彼女の独壇場である。

 

あゆ「も〜い〜かい?」

 

突然窯の中のスポンジに尋ねるあゆみ。

 

  『??』

 

意味が分からず、呆然とするてゐと輝夜。そこに、

 

あゆ「も〜い〜よ〜」

 

いきなりの引き上げのタイミングを知らせる合図。完全に不意を突かれ、一瞬出遅れ、慌てて中のスポンジを協力して取り出す店長補佐と看板娘。

 

輝夜「ちゃんと指示しなさいよ!」

てゐ「焦ったウサ…」

 

窯から救出されたスポンジ。その仕上がり具合は…。

 

あゆ「うん!ムラなく出来てる!」

  『やったー!!」

 

上手くいった様だ。

 スポンジを冷まし、次の工程へと移る3人。生クリームと苺を間に入れ、再び全体を生クリームでコーティングしたところで…。

 

カラン、カラン。

 

 店に響く優しい鐘の音。店先の張り紙にも書いてある様に、本日は休業日。不審に思った3人は顔を見合わせ、恐る恐る店頭へ出てみると、そこには1人の少女が。

 

あゆ「あの〜…、今日お店お休みなんですけど〜」

輝夜「あれ?あんた…」

てゐ「珍しいウサ。どうしたウサ?」

??「実は…」

 

現れた少女と輝夜達は知り合いの様。そしてその少女は、訪れた理由を3人に話した。事情を知ったあゆみは、

 

あゆ「そういう事なら、喜んで協力しま〜す」

輝夜「いやいや、時間が無いわよ」

てゐ「もうすぐでお師匠様達が来るウサ」

 

少女に協力をしようとするも「時間に余裕が無い」と輝夜達に止められるのだった。3人の話しを聞いて暗い表情を浮かべ、鬱ぎ込む少女。だが輝夜とてゐの心配も、少女の不安も、必要無かった。

 

あゆ「大丈夫ですよ〜。え〜っとね…」

 

 

--少女説明中--

 

 

??「ありがとう」

 

 あゆみ達に頭を下げ、礼をする少女。店を出る時に、少女はお代を出そうとしたが3人は「その必要はない」とそれを断った。その言葉に少女は再び礼をし、足早に店を去って行った。

 突然の来客があったものの、その後3人は巨大ケーキの最後の仕上げに取り掛かり、そして…。

 

あゆ「出来上がり〜」

てゐ「我ながら上出来だウサ」

輝夜「生クリームは私が作ったんだから!」

 

出来上がったケーキに自画自賛する3人のパティシエ。

 だが、ここで問題が浮上した。

 

  『どうやって運ぼう…』

 

先に考えておくべき問題だった。いや、全く考えなかった訳ではなかった。ただ、巨大ケーキ作りへの意欲が先走り、皆この問題を棚に上げていただけだった。そこで、緊急作戦会議が開催された。

 

《作戦案①》

輝夜「みんなで頑張って持って行く?」

てゐ「いや、それじゃあ目立ち過ぎるウサ」

あゆ「それに長い時間外に置けないよ〜」

 

作戦案①:みんなで持って行く…没

 

 

 

《作戦案②》

輝夜「じゃあショーケースごと移動させる?」

てゐ「重いウサ。現実離れし過ぎてるウサ」

あゆ「壊れたらお店出来ないよ〜」

 

作戦案②:ショーケースごと移動…没

 

 

 

《作戦案③》

輝夜「もういっその事、ここに置いとく?」

てゐ「それが一番無難な気がしてきたウサ」

あゆ「それがいいかも〜」

 

作戦案③:取り敢えず置いとく…採用

 

 

 

 

 一先ずショーケースの中に、巨大ケーキを眠らせておく事にしたあゆみ達。花見で楽しんでいる間はショーケースに入れておき、頃合いが来たら運ぼうという作戦だった。

 ショーケースの燃料は弾幕であり、スペルカード。彼女達はこれまでの実験から、どのスペルカードが一番長い間稼働出来るか知っていた。それを使えば、その時が来るまでショーケースは余裕で運転できた。とは言え、運ぶ方法についてはまだ決まっておらず、再び頭を抱えていた。

 3人が悩んでいるところに、

 

カランカラン。

 

再び店内に鐘の音が鳴り響いた。

永琳と鈴仙、そして妹紅が迎えに来たのだ。

 

永琳「おまたせ、ケーキは上手くいった様ね」

 

あゆみ達は成功すると信じていたのだろう。天才薬師は笑顔であゆみ達に声を掛けた。

 

鈴仙「あゆみちゃん、ごめーん。

   結局手伝えなかった…」

 

顔の前で掌を合わせ、詫びる鈴仙。思いの外、仕事量が多かった様だ。

 

あゆ「永琳さん、バッチリで〜す。

   冷麺ちゃん、お仕事大変だったでしょ〜?」

 

満面の笑みで「ケーキの仕上がりは最高だ」と語る店長。そして、鈴仙へは労いの言葉を掛けるが、

 

鈴仙「ううん、ありがとう。それとあゆみちゃん?

   私は『れ・い・せ!ん』だからね?」

 

未だに直らないあゆみの呼び方に、『せ』を強調して強要する鈴仙だった。

 

てゐ「ケーキは期待していいウサ!

   私も全力を尽くしたウサ!」

輝夜「生クリームは私が作ったんだから!」

 

自分達の活躍を自慢気に話す店長補佐と看板娘。彼女達の協力無しでは、出来上がらなかったのは事実ではあるが…。

 

妹紅「お前が?」

 

妹紅からすれば、特に輝夜が料理をしている姿が想像出来ない様だ。それ故、

 

妹紅「塩と砂糖を間違えてないだろうなぁ?」

 

余計な一言。そしてゴングが鳴った。

 

輝夜「はあーっ!?塩なんて置いて

   ないんですけどー!甘いケーキ屋に塩って、

   どういう頭してんのよ!?」

妹紅「あ゛〜っ!?お前ならそういう間違えを

   しそうだって意味だよ!

   そのまんま受け取るんじゃねぇよ。

   柔軟性ないのか!?」

輝夜「あんたに言われたくないわよ!堅物!」

妹紅「な・ん・だ・とぉ〜!?」

 

顔を近づけ、激しく火花を散らせる妹紅と輝夜。毎度毎度、些細な事で啀み合う2人に、

 

永琳「2人共よしなさい!」

 

「大人になれ」と注意する永遠亭きっての大人。彼女から言われてしまっては、「分が悪い」と悟ったのか2人共、

 

輝夜「ぐっ…」

妹紅「けっ…」

 

視線をそらせ、一時休戦となった。そして永琳は軽く「ふっ」と息を吐き捨てる様に、ため息を一つついた後、

 

永琳「それで?ケーキ、持って行くの?」

 

3人のパティシエが気にしていた問題について尋ねた。

 

あゆ「え〜っと、取り敢えずは、

   ココに置いておこうってなって…」

てゐ「花見のデザートとして出すウサ。

   その時に取りに来ようってなったウサ」

輝夜「でもここから神社って道が険しいし、

   割と距離あるし…。

   飛んで持って行くにしても、

   大きくて2人じゃないと…」

 

3人の言葉を額に人差し指を当て、瞳を閉じて聞き入る天才薬師。そして、あゆみ達が話しを聴き終え、少し考えた後、口を開いた。

 

永琳「なら…、八雲紫に協力してもらうのが

   最善でしょうね」

鈴仙「確かにあの方ならその問題は

   解決できますけど…」

輝夜「あいつ〜!?」

てゐ「この際わがままは言えないウサ」

あゆ「ん〜?」

 

天才薬師の口から出た幻想郷の創設者の1人の名前。それは八雲紫。掴みどころがなく、発する言葉には高確率で裏がある彼女に、永遠亭一同はあまり良い印象を持っていなかった。故に、事情を知らないあゆみを除き、皆不満そうな顔を浮かべていた。だが、答えを導き出した天才薬師の表情は、他の者達とは違い、バツの悪そうものだった。そんな中、

 

妹紅「いいのか?今そんな陰口を叩いて。

   もうその辺で聞いてるかも知れないぞ?」

 

笑いながら、笑えない冗談を言う妹紅。

しかし、人はそれを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン♡」

 

『フラグ』と言う。

 

 

 




店に訪れた少女。
わかった方すごいです。

あとケーキ屋に塩。
実際には置いてある店もあります。
でも、そこは…ね?
ご都合主義という事で目をつぶって下さい。

次回:【Menu⑯:花見へ ver.あゆみ】

次回Ep.4最終話









(?)

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