彼の話です。
カチャッ、ブン!
ヒュッ、ヒュッヒュッ!
庭先で日課の鍛錬に勤しむ一人の少女。今日もノルマを達成すべく、刀を振るっている。
ビュンッ!
最後の一振りを終え、瞳を閉じ、刀をゆっくりと腰の鞘の中へ。
……カチャ。
そして最後の集中をするため、大きく深呼吸をし…
??「みょーん!終わった?遊びに行こうぜ!」
そこへ少女に大声で手を振りながら話し掛ける青年。
妖夢「あーもう…。
せっかく精神統一してたのにぃ…。
邪魔しないで下さい!」
だがどうやら彼女を怒らせてしまった様だ。
??「そんな~。
オレずっといい子で待ってたんだぜ?
幽々子様ぁ、みょんが酷いんですよー」
青年は、縁側でにこやかにその様子を見守る屋敷の主、西行寺幽々子に妖夢の悪態を言いつける様に泣きついた。
幽々「ふふ、みょんちゃん?
ちゃんと仲良くしなきゃ『めっ!』よ?」
主が笑顔で 幼い子供を叱る様に注意すると、
妖夢「邪魔をしないでって
言っただけじゃないですか!
幽々子様もその呼び方やめてください!
だいたい私その呼び方認めていませんよ!」
少女は顔を真っ赤にして声をあらげた。
??「いいじゃん。ケチー」
幽々「みょんちゃんのケチー」
その様子を面白がって、からかう二人に、
妖夢「お願いですから、
人前ではその呼び方は
本当に止めてください」
少女は肩を落とし、落胆しながら懇願した。
だが…。
??「あれ?みょん泣くの?」
幽々「みょんちゃん泣いちゃうの?」
弄りは続く。
妖夢「泣きませんよ!何なんですか2人して!
一緒に行くの止めますよ!」
??「ごめん。どうか、どうかそれでだけは…」
幽々「あらあら。うふふ」
ここは西行寺幽々子とその世話係兼、庭師の魂魄妖夢が暮らす白玉楼。
そこへ一昨日、突如訪れた青年。名は海斗。彼は親友と共ににアニメと電気の街へ遊びに行った。その帰りの電車で一眠りをし、目を覚ます頃は最寄駅へ到着。
する筈だった…。
だが目を覚ますと、そこは長い長い階段の途中。一時はその状況に混乱した彼だったが、興味本意で階段を上って行ったところ、ここ白玉楼へ辿り着いたのだ。普通の人であれば、白玉楼へ辿り着いても、自分が置かれた状況に戸惑うばかりだろう。
しかし、この青年は違った。目に映る屋敷、庭で刀を振るう少女、縁側でのんびりと団子を食べる女性。どれも自分の知っている…いや、知り過ぎている大好きなゲームの世界と酷似していたため、瞬時に悟ったのだ。
幻想郷入りしたと。そして彼はこうも思った「オレ、勝ち組」と。
だが、誤算もあった。海斗は2次元(2D)しか愛せない男だった。折角、幻想郷に来れたというのに、目の前の彼女たちは立体(3D)である。つまり『D』が一つ増えたのだ。それが海斗を心底ガッカリさせたが、その反面これも縁だと開き直ってもいた。
こうしてお調子者、海斗の『嫁捕獲作戦』が幕を開けたのだった。
妖夢「それで、どちらに行かれたいんですか?」
海斗「そうだなぁ、霊夢にも会いたいし、
魔理沙師匠にも会いたいし、
でもなんと言っても、
フランには絶対会いたいよなぁ。
あと他には…」
一昨日来たばかりの外来人は自分が知っている幻想郷の住人の名前を次々に挙げていった。
妖夢「本当にこの世界の事お詳しいんですね…」
海斗「おう、大ファンだからな。
幻想郷の皆はオレの嫁候補だぜ!」
呆れ顔で言う妖夢に胸を張ってドヤ顔で答える外来人。
妖夢「それなんなんですか?
人の事を勝手に『嫁』とか。
失礼にも程があります」
海斗「みょんダメ?オレの嫁にならない?」
妖夢「お断りします!」
いきなりの告白ではあったが、『お断りします!』とはっきりと強調され、海斗の脳内で何度もリピートし続けた。今まで一度も言われたことがない言葉に、
海斗「フラれた…だと。
オレ結構モテるんだぞ!?」
少しムキになる。
妖夢「あなたの世界ではそうかも知れませんが、
私はあなたみたいに
チャラチャラしている方は、
好きではありません!寧ろ苦手です!」
海斗はその容姿から周囲の女子達から声を掛けられ、交際しようと思えば苦労ぜずに誰とでもできた。そんな彼が正式にフラれたのだ。
海斗「幽々子様ぁ~。
ハートブレイクしちゃいましたー」
ふざけながらも半ば本心で、縁側の幽々子の下へ泣き付きに行く。
幽々「あらあら大変。
それじゃあ『いい子いい子』してあげるから
いらっしゃ~い」
それを両腕を広げ、笑顔で待ち構える女神。海斗の目は女神の豊満で柔らかそうな2つの幸せ袋をロックオンしていた。そして彼は本能の赴くまま…。
もぎゅっ♡
幸せへダイブ。
海斗「はぁ、柔らか~い。気持ちい~」
幽々「ふふ、ちょっとくすぐった~い」
幽々子の深い谷間に顔を埋め、鼻の下を伸ばしながら幸せを満喫する海斗。それを優しく我が子の様に抱きしめる幽々子。海斗の下心さえ無ければ微笑ましい状況ではあるのだが…。
妖夢「カ・イ・トさん?
ふざけるのもいい加減にしてください。
幽々子様も甘やかさないでくださいね」
『はーい』
妖夢に真面目に怒られる2人だった。
妖夢「そ・れ・で、何処に行かれたいんですか?」
気を取り直して海斗に質問をする世話係。その質問にお調子者の彼は真剣な顔で、
海斗「紅魔館、博霊神社、守矢神社、人里、
魔法の森、山ほどあるけど…」
一昨日やって来た者とは思えない程、次々と幻想郷の地名を挙げていく。だがそんなお調子者にも一つの疑問が。
海斗「その前にどうやって行くんだ?」
ここは白玉楼は冥界と呼ばれる地上とは違った異質な場所にあり、海斗は「何か特別な方法が?」と考えていた。
妖夢「階段を下って行けば人里近辺に出られます」
だが、意外と簡単だった。
海斗「じゃあ手始めに人里に行こうぜ!」
妖夢「分かりました。
夕飯の材料も必要でしたので、
ちょうど良かったです。
では幽々子様、人里へ行って参ります」
幽々「はいは~い、気を付けてね~。
いってらっしゃ~い」
手を振る主に見送られ、肩を並べて歩いていく2人。暫く歩いたところでお調子者が、
海斗「なぁ、みょんところで…」ヒソヒソ
小声で
妖夢「何ですか?」
海斗「幽々子様って大食いだったりする?」ヒソヒソ
白玉楼の主の噂の真相を尋ねた。
妖夢「はい…、良くご存じですね」
どうやら本当だった様だ。
海斗「家計大丈夫か?」ヒソヒソ
妖夢「もう火の車です。
資金源もそろそろ底を尽き始めていて…。
でも幽々子様の食べてる御姿が
可愛らしくて。つい…」
頬を染めながら自分の落ち度を反省する世話係。だがこのままでは負のスパイラル。誰かが手を打たなければ、何れは破綻してしまう。
海斗「よし、じゃあついでにバイトも探そうぜ!」
妖夢「え?バイト?」
海斗「働くんだよ。
だってこのままじゃさすがにまずいだろ?」
その事に気付いたお調子者。彼なりに今の状況を打破し、白玉楼を救いたいと考えている様だ。しかし急な提案だったためか、
妖夢「でも私働ける様な特技なんて…」
心の準備ができていないといった様子の世話係。彼女は海斗の言葉から自分にできる事を精一杯考えていた。そんな最中、知り合って間もないお調子者は、
海斗「みょんは家事だってやってるんだから、
飲食店だって大丈夫だろ?
それにいざとなれば、剣道場を開くとかさ」
妖夢の特技から活躍できそうな就職先をさらりと答えた。
妖夢「なるほど…。
海斗さん意外と発想力が豊かなんですね」
少し彼の事を見直した妖夢。
海斗「見直した?ならオレの嫁に…」
妖夢「なりません!」
ただし、コレさえなければ…。
そして、お調子者が立ち去った白玉楼の縁側では…。
??「行った?」
幽々「ええ、たった今」
??「こっちの世界に詳しい者だったとは…。
迂闊だったわ」
幽々「紫、本当にあの子なの?」
紫 「ええ、間違いなく。
コレを渡しておいてくれるかしら?」
八雲紫が幽々子に手渡したのは『博霊神社』と書かれた赤い…
幽々「お守り…、ではないわね」
紫 「一応お守り要素もあるわよ」
幽々「これで後何人なの?」
紫 「あと3人。でもかなり難航しているわ。
蘭と橙にも探させているけれど、
今の所手がかり無し」
幽々「ふーん…」
――ヲタク移動中――
人里に到着した海斗と妖夢。彼としては憧れていた世界を体験できるとあって、喜んでいるのかと思いきや…。
海斗「人里!って感じなんだな」
予想通りの世界に真新しさを感じず、テンションが上がることもなく、ただ静かに里の雰囲気を見学していた。
妖夢「何か見たいお店があったら言ってください」
妖夢からの気遣い。しかし、彼としては今のところ寄ってみたい店も無く、もう少しこの世界をゆっくりと観察していたかった。
海斗「じゃあ、一緒にお茶しない?」
外の世界では、男性が女性に突然声を掛ける時の決まり文句。彼の様な者が言えば、相手は照れくさそうに困りながらも、もう一押しでOKするだろう。だが隣の彼女は、
妖夢「はい、わかりました」
その誘いを涼しい顔で、業務的な返事で答えた。
海斗「…その反応、何か違うんだよなぁ」
OKの返事をもらったにも関わらず、彼女の対応に不服な我儘ヲタク。
妖夢「すみませんね、ご希望にそぐわなくて…!」
そんな彼の態度に拳を握りしめ、怒りに耐える庭師。彼女が怒っているは、誰から見てもあからさま。彼自信も少しからかい過ぎたと反省していた。そして今度は彼女を持ち上げる作戦に出た。
海斗「ツンツンしてるみょん、いいね。
俺は好きだなぁ」
持ち前の甘いマスクで、サラッと火薬を投下する色男。一気に持ち上げられた庭師は、
妖夢「みょっ!?急になななにを!?
それに、その呼び方止めてください!」
彼の不意打ちに頬を赤くし、動揺していた。
――ヲタク休憩中――
里の甘味処。ここは里の端の方にあるのだが、その味から皆から人気がある。その店の前に置かれた長椅子に、腰を掛けて団子に舌鼓を打つ
海斗「うん、この団子美味いな」
ヲタクと、
妖夢「私、ここのお団子が大好きなんです」
おかっぱ頭。団子を頬張りながら、幸せそうに語る彼女。そして、その様子を隣で笑顔で眺めるヲタク。
妖夢「私の顔に何か?」
その薄気味悪い視線に気が付いたおかっぱ頭。
彼の視線は明らかに自分の顔。食べ残しでもあるのかと、ポケットからハンカチを取り出し、口回りを拭っていると…。
海斗「いや、笑うとスゲー可愛いなぁ…って」
またシレッと先程よりも威力のある火薬を投下した。
異性から初めて言われた『可愛い』という言葉。これまで剣の道一筋だった彼女が、今一人の少女として見られていた。この慣れていない状況に彼女は、
妖夢「だだだだだだだから!
なななな何であなたは、
そそそそそういう事を
かかかか軽々しく…」
全身を赤くし、最上級にテンパっていた。
そして、そんな彼女を見て「今ならいける!」と思ったヲタクは…。
海斗「やっぱオレの嫁になる?」
その瞬間、彼女の顔から一気に赤色が引いていき冷めた瞳で、
妖夢「だからなりませんって…」
さらっと迎撃した。
――ヲタク買物中――
団子を食べ終え甘味処を出発して、夕飯の材料を買いに店を回る2人。
店主「まいどー!」
妖夢「野菜はこれでいいです。あとはお肉ですね」
1軒目でまず野菜を購入し、次の目的を果たすため、更なる店へと足を進めていた。
海斗「今日は肉?」
妖夢「ええ、この時期は魚が高いので」
海斗「そういえば幻想郷で魚って、
川魚しかないんじゃ…」
ここ幻想郷は山々に囲まれ、海が無い。その予備知識がある者としては当然の疑問。しかし実際は、
妖夢「そんなことないですよ。
海の魚も入って来てますよ。
八雲紫さん達が外界で買われた物を
魚屋で売っているんです」
スキマ妖怪が卸売業者として一役買っていた。
海斗「そうだったの?ユカリンそんな事業を…」
妖夢「でもそのシステムができたのはつい最近で、
それまでは海の生き物は高級品でした」
海斗「ふ~ん。
オレが知らない事も意外とあるんだなー」
己の知らない本当の幻想郷の実態に初めて感心するヲタクだった。
妖夢との会話を楽しみながら、足を進めていくヲタク。
気付けば里唯一の
??「はぁ!?」
肉屋
??「あぁ!?」
と魚屋。
『やんのか!?』
初めて見る平常運転のご両人にヲタクは、
海斗「みょん、コレは何?」
口元をひくつかせ、苦笑い。
妖夢「肉屋の店主さんと魚屋の店主さんです。
毎度の事ですので、お気になさらず。
どうも、こんにちは」
『へい、らっしゃい!!』
睨み合いながらも妖夢の挨拶に、仲良く同時に振り向いて答える肉屋と魚屋の店長。
海斗「面白っ!」
どうやらヲタクのツボに入った様だ。
そして、その彼に気付いた店長達。妖夢と彼を見比べ…
肉屋「おや、妖夢ちゃん。彼氏できたのか?
俺の若い頃には負けるが、色男じゃねぇか」
魚屋「妖夢ちゃん意外と面食いだったんだな」
冗談交じりに妖夢を揶揄う店長達。予期していなかったまさかの言葉に、
妖夢「みょっ!?」
体を跳ね上げて赤面する世話係と、
海斗「あ、分かりますぅ?
付き合ってるのばれちゃいましたか~」
ここぞとばかりに、作り笑顔で頭を掻きながら乗っかるお調子者。だがそのおかげで、
肉屋「あっはははは」
魚屋「兄ちゃん面白いな!」
瞬時に気に入られた。
妖夢「ちちちちち違いますからね!
ただの居候ですからね!」
必死に誤解を解こうとする真面目な庭師。しかしそれは格好のネタ。弄りは止まない。
肉屋「ふぅ~♪、と言うことは一つ屋根の下か」
魚屋「しかも幽々子嬢も一緒だろ?
ってことは兄ちゃん、コレはどうなんだ?」
鼻の下を伸ばしながら、胸元で大きく半円を描く魚屋店長。大好物の話題にお調子者は、耳打ちをする様に魚屋の店長に近づき、
海斗「はい、実は…」
いやらしい目つきで囁き始めた。もう何の話の事だか察した、その場唯一の少女。
妖夢「それ以上言ったら斬ります!」
腰の刀に手を掛け、抜刀の構え。そんな彼女の姿に「クスッ」と一笑し、
海斗「冗談だって、本気にすんなよ。
みょんは真面目だな~」
手で仰ぐ様に『みょん』を宥めた。
妖夢「その呼び方は止めて下さい!!」
「人前では止めてくれ」と念を押した筈の呼び方。己の主と海斗だけならまだしも、これ以上そのあだ名が広がるのは何としても阻止したかった。だが…。
『みょーんちゃん』
もう手遅れ。
妖夢「覚えられちゃったじゃないですか!」
にやける肉屋と魚屋の店長を指差し、涙目でお調子者を睨みつける苦労人。そしてその彼はと言うと、
海斗「~♪」
手を頭の後ろで組み、口笛を吹きながら、素知らぬ顔。そんな彼の態度に再び怒りが込み上げる苦労人だったが、
肉屋「ははは、夫婦漫才見てるみたいだ。
何を買いに来たのかは知らんが、
これをサービスで付けてやるよ」
魚屋「いいもん見せてもらったお礼だ。
うちからもサービスで付けてやる」
2人の店長は酷く気に入った様だ。
妖夢「あ、ありがとうございます…」
予期していなかったプレゼントに呆気に取られる世話係だった。
肉屋での買物を終え、再び歩き出した2人。
海斗「肉屋と魚屋の店主さん面白すぎ!」
腹を押さえてケタケタと笑いながら歩くヲタク。先程の事が余程気に入った様だ。
妖夢「もうあんな事は止めてください…」
海斗「でもサービスしてもらったからいいじゃん。
幽々子様も喜ぶぜ。あとはバイト先か」
妖夢「甘味処の方が言っていましたが、
この先の居酒屋の店長さんが、
働き手を募集しているかも
しれません。寄ってみますか?」
先程の甘味処で支払いしている時、妖夢は店員に働き口が無いか聞いていた。その店員の話では、とある居酒屋の店長が足を怪我し、困っているとの事だった。十分に可能性がある話に、
海斗「そうだな。行ってみるか!」
期待を膨らませる海斗だった。
――ヲタク移動中――
その『とある居酒屋』に到着した2人。
海斗「これ何て読むんだ?」
店に書かれた丸印の中に酒の字を眺めながら尋ねる海斗。
妖夢「サケマルです」
海斗「そのままかよ…。
しかもモロ居酒屋って感じだな…」
何の捻りもない居酒屋に苦笑いをする海斗。「もう少し面白くしてもいいのでは?」と彼が思っているところに、
妖夢「では、ちょっと失礼して」
隣の妖夢が店の引き戸に手を掛けた。
??「いらっしゃいませ!」
その瞬間、中から若い威勢の良い声が。
店長「そうだ!もう一度」
??「いらっしゃいませ!!」
店長「いいか、元気が大事だ。今の忘れるな」
??「はい!」
中から聞こえる話しから、状況を察した妖夢。ゆっくりと戸に掛けた手を戻した。
妖夢「もう誰か雇われたみたいですね…」
海斗「みたいだな。いかにも教育中って感じだ」
妖夢「他を当たりましょうか?」
海斗「ちぇー、折角見つかったと思ったのに。
まったく誰だよタイミング良く来るヤツ」
妖夢「ははは…、そういう時もありますよ」
――ヲタク帰宅中――
人里見学&買物を済ませ、白玉楼へ帰って来た妖夢と海斗。出迎えてくれた主へ、
『ただ今戻りました』
2人仲良く挨拶。
幽々「あら、お帰りなさい。人里はどうだった?
楽しめたかしら?」
海斗「パッと見は想定の範囲内でしたけど、
甘味処のお団子美味しかったですし、
肉屋と魚屋の店主は面白くて、
もっと幻想郷を好きになりました」
笑顔で海斗に初めて体験した人里の感想を聞く主。そしてそれに目を輝かせながら答える外来人。和やかな雰囲気に包まれていた2人だったが…。
幽々「そう、それは良かった。で?お土産は?」
突然冷めた目で海斗を見つめ始める主。
海斗「お土産?今日の夕飯は買ってきましたよ?」
『お土産』。買物リストになかった物。主のいきなりの注文に困惑していると、
幽々「あそこの甘味処行ったんでしょ!?
2人だけお団子食べて…
ズルいズルいズルいズルいズルいズルい!
私も欲しかったぁ!」
仰向けに寝転がり、子供の様に両手足をバタつかせる白玉楼の主。大事な事なのでもう一度、白玉楼の『主』。するとそこへ頭を抱えながらやってきた世話係。
妖夢「あー…、失敗した」
海斗「何これ?どういう事?」
妖夢「甘味処の件は、
内密にして頂きたかったんです。
外出先での食事を幽々子様に知られると、
この様に駄々をこねるんです…」
主の食い意地を赤面しながら説明する世話係。彼女の話を聞きながら、海斗が主へ再び視線を移すと、
幽々「私も食~べ~た~い~!
買って買って買ってぇ!」
依然としてジタバタと駄々をこね続けていた。その様子にこのヲタク、
海斗「(何この可愛い生き物)」
萌えていた。鼻から忠誠心が出るところを必死の思いで耐え、
海斗「あー、うん。今度から気を付ける」
冷静な顔を装った。
――ヲタク購入中――
幽々「おいひぃ~」
妖夢「海斗さんすみません。買ってきて頂いて」
一人で再び人里へ赴き、団子を購入してきた海斗。自分の失態を詫びる為かと思いきや…。
海斗「いや、今のは俺が悪かった。それに…。
さっきの幽々子様と2人きりにさせられて、
平常心を保っていられる自信がない
(性的な意味で)」
妖夢「そう言って頂けると助かります。
私は夕食の準備をしますので、
お風呂に入って来てください。
それともご飯まで待ちますか?」
海斗「…」
妖夢「何か?分からない事でも?」
海斗「…いい」
妖夢「へ?」
海斗「エプロン姿で先に『お風呂 or 飯』!
正に新婚宛ら!
みょん!やっぱりオレの嫁に…」
妖夢「なりません!!」
嫁捕獲作戦_一人目:魂魄妖夢【失敗】
主ではありますが、
海斗、ムカつく…。
そして次回からいよいよ新章開始します。
タイトルは予告通り【大和】です。
サブタイトルは、
《一年後》。