さと「今、お邪魔?」
少年に小さなボリュームで
大鬼「ちょっと待っててね」
少年も小さな声で返事をし、その返事に隙間から覗いている少女は「コクリ」と頷いた。そして少年は2人だけの世界に浸っている身内に、
大鬼「ねー。『古明地さとり』って人が見てるよ」
ありのままを伝えた。
『えーーーっ!?』
屋敷の中からも聞こえてくる絶叫。少年から伝えられた事実に、慌てて身なりを直す
そして、ゆっくりと音も無く扉が開いた。
中から出てきたのは紫色のショートヘアの少女。胸元にコードの付いた赤い目玉が浮いており、少年は彼女の姿を見た時、最初に見た物体の正体が少女の胸元にある目玉だと瞬間的に理解した。
さと「お、お二人共仲がよろしいですね」
苦笑いを浮かべ、赤くなった頬を人差し指でなぞりながら、気まずそうに来客者に声を掛ける少女。だが気まずいのは
親方「あははは…」
棟梁「〜〜〜…っ」
少年の身内の方。少女よりも赤くなり、
さと「立ち話もなんですから、どうぞ中へ」
笑顔で扉を開け、来客者達を上品に迎え入れる少女。
さと「ようこそ、
『おじゃまします』
3人で揃って一礼し、
大鬼「すごい…」
目に飛び込んで来たのは、赤い
大鬼「きれい…」
衝撃の事実だった。今までトラウマとして見ていた忌々しき館。その実態を少年は初めて認識したのだ。
目を見張り驚く少年。それと同時に、勇儀やこの屋敷の建設に関わっていた全ての鬼達の事を改めて感心していた。
大鬼「これが…、ユーネェ達が作った…」
棟梁「そう、
お屋敷です」
目を皿にして辺りを見回す少年の隣に並び、ゆっくりと語りかける
棟梁「この屋敷は
建設時にいくつかに分かれる組の長として、
初めて就任したのです。
慣れない責任ある役目に、
苦労していたと思います。
でも完成したこの屋敷を見れば分かります。
よくやったと思いますよ」
余程機嫌がいいのか、珍しく勇儀の事を褒める
大鬼「ユーネェー…。頑張ったんだ」
棟梁「ええ…、すごく。ですから…」
大鬼「うん、好きになれるように頑張る」
棟梁「ふふ、そうですね」
勇儀の想いを感じていた。そして少年の憧れは再び込み上げ、決意する様に思った。
「いつか自分も」と。
親方「いやいや、いつ来ても立派なお屋敷ですな」
さと「ふふ、ありがとうございます。
でも
親方「しかし、さとり殿も人が悪いですなー。
いたなら言って頂ければよかったのに」
さと「それは失礼しました。
突然大きな声が聞こえたので、
ビックリして様子を伺っていたのです」
親方「そうでしたか。驚かせてしまって面目ない」
さと「いえいえ、男らしくて鬼らしい、
力強いお声でしたよ」
親方「いや~、あははは…」
少年の前を歩く屋敷の主と
さと「もう皆さん揃っています。
部屋はいつもの所なので、どうぞ奥へ」
一階の廊下の先を手のひらを上に向け、丁寧に来客者達を案内する屋敷の主人。その言葉と共に屋敷の奥、会議室へと歩いて行く2人の鬼。
少年も遅れて2人の後ろを付いて行こうと歩き出したその時、
ムギュッ!
さと「ちょーっとチビっ子ー?
なーんであのまま言っちゃったのかなー?」
眉をピクピクと小刻みに動かし、作り笑顔で少年の両頬を摘んで広げる屋敷の主人。どうやら先程の事を根に持っているご様子。そして頬をムササビの様に広げられた少年は、一瞬驚き、焦るも…。
大鬼「
果敢に立ち向かっていった。
さと「離せ?ほー…。この屋敷の主人に向かって、
生意気な事を言うのはどの口かなー?」
少年の頬を「ビヨーンビヨーン」と伸ばしては縮めを繰り返す主人。少年の反応と意外と良く伸びる頬の感触が面白くなり、半分楽しんでいた。
大鬼「
少年の本気の抵抗。それを感じ取ったさとりは、
さと「うーん…。これで許してやりますか」
と呟き、
ビヨーン…。
思いっきり引っ張り…、
バチンッ!
そのまま指の摩擦を与えながらゆっくりと解放した。引っ張られている時よりもこの瞬間が一番のダメージ。
大鬼「いっっったぁー!!」
少年は激痛の走る頬を押さえ、飛び跳ねた。自分にダメージを与えた相手を睨みつける少年。
さと「ふんっ!これだからチビっ子は嫌いです」
その視線を鼻であしらい、少年に毒を吐く地霊殿の主人。少年が「何だ?コイツ」と刺すような視線を向けていると、
さと「お燐!お燐!!いらっしゃい!」
屋敷の主は手を叩きながら何者かの名を呼び始めた。そしてそこへ現れたのは…。
ニャー。
尻尾が2本生えた黒い猫。
さと「これから会合があります。
その間、このチビっ子の相手をしてあげて」
黒い猫に向かって指示するさとり。これは彼女なりの少年への優しさだった。会合に一緒に来ても退屈な時間を過ごすだけ、そう思っての事だった。しかし、少し配慮が足りなかった。彼女が少年の事をそう呼ぶのは通算これで…。
大鬼「チビっ子って呼ぶな!しかも3回も!」
叫びながら怒りを
さと「ふん、チビっ子にチビっ子って言って
何が悪いのですか?それに回数まで数えて。
男の子のクセに女々しい」
だがそれを見事に逆手に取り、倍返しにするさとり。見た目は幼い少女ではあるが、屋敷の主人であり、少年よりも遥かに常識を弁えた年長者。こんな事では相手にもしない。
一方、少年。『女々しい』の意味は分からなかったが、その前の『男の子のクセに』が響いていた。ここまで言われてはと、
大鬼「おい、チビ」
さと「あははは、私より小さいのに『チビ』って。
何かなぁ?チビっ子?」
反撃を開始するも
大鬼「今…いくつ?」
さと「ん〜?女性に年齢を聞いてはいけない、
って教えてもらわなかったのかな〜?」
少年の頭をペチペチと叩きながら答えるさとり。もはや少年を虐めている様にしか見えない。
黒猫「ニャー……」
主人を冷たい目で見て、ボソッと呟く様に一鳴きする黒猫。
さと「大人気ないって…、そんな事ないですよ。
私は可愛がってあげてるだけですよ。
ねー?」
黒猫に返事をする様に語りかけ、最後に少年を覗き込みながら、同意を求める大人気ない主人。少年の怒りは、もうキャパシティーを越えていた。
大鬼「今…いくつ?」
再び同じ質問。「他に言う事は無いのか」と呆れながら、
さと「こう見えても、あなたよりずっと
『お姉さん』ですよ」
答えた。少年は
この瞬間を、
その言葉を
ずっと待っていた。そしてここぞとばかりに大きな声で…。
大鬼「お姉さんのクセに、おっぱい
プッツン
さと「このガキィ!気にしている事をー!」
??「さとり様落ち着くニャ!相手は子供ニャ!」
少年のとっておきのカウンターは、彼女にとってヘビーブローだった。
少年がその言葉を発した瞬間、平常心を失い、鬼の形相で飛び掛かる地霊殿の主人。その勢いに圧倒された少年だったが、それ以上に驚いたのが、怒りを露わにした彼女を羽交い締めで取り押さえる赤毛の少女の事だった。さとりよりも背が高く、スラッとした体系にも関わらず、女性を強調する胸部。つい一瞬前までその場には居なかった。少年とさとりだけのはずだった。いつの間にか現れた謎の少女に少年は、
大鬼「お姉さん誰?」
お姉さんと呼び名前を聞いた。
??「お燐って呼んでニャ。
ダイキ君、久しぶりだニャ」
『はっ?』
2人仲良く目を点にし、口を大きく開けた。
頬の肉は男性は伸びますが、女性はあまり伸びないみたいです。本当かな?確かめようにも確かめる術が…orz
次回【三年後:少年と黒猫】