東方迷子伝   作:GA王

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三年後:鬼の祭_肆    ※挿絵有

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◆

 

 

 町の広場に設置された(やぐら)。その上では祭りに欠かせない大太鼓が力強く、町の隅々へ届くように打ち鳴らされていた。これもまた『祭り当番』の役目であり、四六時中ほぼ休みなく打ち続けなければならない。それは体力、筋力、持久力と精神を容赦なく削ぎ取り、実質祭り当番で一番辛い役目になる。

 そして今宵も魂のビートを刻む1人の鬼が、

 

??「当番じゃないのにぃー!」

 

歓喜していた。

 彼は例の罰則の対象者でなければ、その事と直接関わりのない、ただの善意に満ち(あふ)れた鬼。今は彼の直属の上司であり、尊敬する鬼から()()()()と言い渡された指令を全うできる喜びに浸っている。ただそれだけの事だ。

 

??「オイラも祭り楽しみてぇー!

   可愛い子と出会いてぇー!恋がしてぇー!」

 

その魂の叫びは太鼓の音を更に熱いものにし、祭りをより一層盛り上げていたが、打ち手である彼のポテンシャルはもう限界を迎えていた。

 

??「ダメだ…。ちょっと休憩」

 

その場に倒れ込む様に座り込み、持参して来た竹筒の中身を一気に飲み干した。

 

??「ふぃ〜、今日で祭りも終わりか…。

   あとは結びの一番、親方様の取組だけか。

   なんかここまであっと言う間だったなぁ」

 

祭り自体は2週間だが、その前の準備の段階から加わっていた彼にとって、今日という日はようやく迎えた言わばゴール地点。

 

??「終わり良ければ全てよしだ」

 

彼の好きな言葉だった。

 

??「もう一踏ん張りしますか」

 

悲鳴を上げる体に言い聞かせ、袖をたくし上げながら再び立ち上がると、バチに力を込めて

 

??「そーれっ!」

 

掛け声と共に振り下ろした。

 

??「うん、ここなら見晴らしいいねぇ」

 

その瞬間突然の声に驚き、振り下ろしたバチは手を離れ、太鼓のふちに当たると勢い良く跳ね返った。

 

 

ゴッ!

 

 

??「いってー!鼻が…、オイラの自慢の鼻が!」

 

然程高くもなく、至って普通の鼻を押さえて涙を浮かべる打ち手。

 

??「あんた大丈夫かい?」

??「あのなぁ………!?」

 

声の主を睨みつけ、威嚇をすると共に「ここは立入禁止だ!」と注意しようとしたが、その姿に目が釘付けになった。彼が尊敬する鬼にも引けを取らない抜群のプロポーション。更にその胸元ははだけ、見る者を誘惑していた。

 そんな彼女を見たこの鬼は一瞬で理解した。

 

??「(もろ好みだー!)」

 

と。

 

??「ん?どうかしたかい?」

??「いやいや、なんでも。オイラは鬼助だ。

   ここに来たって事はオイラに何か用かい?」

 

軽い自己紹介をする勇儀の部下兼、弟分兼、みんなの便利屋。彼のみが立ち入る事を許されているこの場所に、わざわざ足を運んでくれた彼女に、強い期待を込めて声を掛けた。

 

??「いやぁ、用って訳じゃないんだけど、

   暫くここにいてもいいかい?」

 

彼にとっては願ってもない返事。当然、

 

鬼助「どうぞ、どうぞ。お好きなだけ」

 

断る理由なんてない。ただ…。

 

鬼助「でも()()おっかないから、

   置いてくれない?」

 

彼女の背にある大きな凶器を指し、申し訳なさそうに下手にお願いした。だが彼女は笑顔を浮かべると、

 

??「あはは、悪いけどそいつは無理な相談だね。

   これがないと落ち着かなくてねぇ。

   見つける()()見つけたら直ぐ行くから、

   それまで我慢しておくれよ」

 

笑いながらそれを拒否した、と同時に彼女のこの言葉で彼はとうとう覚った。自分には全く用は無かったのだと。だが「ここで諦めては男が廃る!」と悟りを開いてもいた。

 

鬼助「じゃあ見つかったらオイラと店を回らない?

   オイラもあと少しでココが終わりなんだ」

??「へ?あたいを誘ってるのかい?」

鬼助「おうよ!絶対に楽しかったって思える時間を

   プレゼントするから」

??「へぇ〜…」

 

毎日()()()()三途の川で死者の霊を船に乗せ、上司の下へ送り届ける仕事に徹している彼女にとって、彼の様な存在は初めて。それは嬉しくもあり、心を踊らされる言葉だった。しかし彼女はこうも思っていた。

 

??「(あたいの正体を知っても、

    同じ事を言えるのかな?)」

 

と。自分が何者かを知った途端、「さっき出会った鬼と同様の反応をするのではないか?」という不安が彼女の中で渦を巻いていた。

 そんな彼女の気持ちとは裏腹に、ついに彼は口を開いた。

 

鬼助「ところでお嬢さん、お名前は?」

??「あたいの名前は小野塚小町。死神だよ」

 

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◆   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

??「ん〜、ほいひぃ(美味しい)♡」

 

口いっぱいに大好物を頬張りつつ、両手いっぱいに購入&獲得した同様の物を持って、大通りを満面の笑みで歩く少女。その量は数にして10本。彼女のじゃんけん無敗記録は未だ健在のようだ。だが不満に思う事もあるようで…。

 

??「全く…、小町は何処に行ったのでしょう?

   上司を残して勝手に何処かへ行くなんて、

   言語道断、前代未聞です!見つけたらお説教

   です!」

 

ブツブツと消えた部下への愚痴を(こぼ)しながら、腰を据えてゆっくりと食べられる場所を探していた。と、そこに1人の妖怪が現れ、

 

妖怪「おい!あっちで鬼同士の喧嘩だってよ!」

 

興奮しながら誰にというわけでもなく、大声で叫んだ。その声に反応した者達は、次々とその妖怪が指差す方角へと急ぎ足で向かって行った。

 

??「喧嘩…ですか。これは見過ごせませんね」

 

彼女はそう1人呟くと、他の野次馬達と同じ方角へと歩き出した。

 

 

◇   ◆   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

吹き飛んだ鬼は近くにあった出店へと、その身体ごと突っ込み、大きな破壊音を立てた。出店はぐちゃぐちゃに潰れ、辺りからは悲鳴とどよめきが上がり、場は騒然としていた。

 せっかくここまで頑張って来たのに、最後の最後でこの様…。あの時のヤマメの気持ちを理解していたつもりだったけど、いざその立場になるとこうまで辛いなんて…。

 私はその思いを瞳に乗せ、吹き飛ばした鬼を睨みつけた。

 

勇儀「おい!やり過ぎだろ!店までめちゃくちゃ

   じゃないか!」

鬼②「そんなの知るか!アイツが避ければ済む話だ

   ろ!?弱いアイツがいけないんだよ」

 

私の中で何かがギシギシと音を立て始めた。

 

勇儀「反省する気は…無いんだな?」

鬼②「喧嘩両成敗だろ?反省も何もないだろ?」

 

この馬鹿には………お灸を据える必要がある!

 

 

◇   ◇   ◆   ◇   ◇   ◇

 

 

??「ここがその店だよ」

 

彼女が2人のBoysを引き連れてやって来たのは、Pon-Ponと愉快なSoundを立て、周囲に乳製品の香ばしい匂いを漂わせるColorfulなShopだった。店員が彼女に気が付くと、明るいFaceで声を掛けた。

 

??「Hey,Master!Welcomeね!」

 

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??「ピースご苦労様、景気はどう?」

ピー「Bochi-Bochiね。ん?そこのBoysは?」

??「さっきのお店で会ってね。私1人だと寂しい

   から……」

 

彼女はそこまで語ると、地底の天井眺めて少し考えた後、

 

??「借りた?」

 

疑問形で簡潔に経緯をまとめた。

 

大鬼「どーも…」

カズ「無理矢理借りられました」

 

そんな彼女に恐れ多くも皮肉めいた言葉で挨拶をする少年達。

 

ピー「きゃははは、それはUnhappyだったね。

   My masterがYouにTroubleを掛けたお詫び

   に、PopcornをPresentするね」

 

そう言って店員は少年達に、ポップコーンがこんもりと盛られたBucketを一つずつ手渡した。

 

カズ「は?え?くれるの?」

大鬼「何これ?」

 

 少年達が初めて見る物体に呆然としていると、店員の主人はくすりと笑い、カズキのバケツから一粒摘み上げ、口の中へと入れた。

 

??「う〜ん、美味しぃ。ポップコーンはやっぱり

   オーソドックスな塩バターだね。

   2人とも食べてみなよ」

 

彼女の様子から手にしたそれが、食べ物であるとようやく理解出来た少年達は、一粒ずつ摘み上げてまじまじと観察し、

 

  『いただきます』

 

仲良く声を揃えて、いざ実食。

 

カズ「あ、これ美味しい!」

大鬼「うーん、ボクは今一…。かな?」

??「ピース良かったね。

   1名様が気に入ってくれたみたいだよ」

ピー「I'm happyね。Not good だったBoyは

   Other taste もあるよ。Sugar、Curry、

   Honey。Let's select ね。

   どれもYummy , Yummyよ」

 

「あまり気に入らなかった」と答えた少年を微笑みながらジッと見つめ、返事を待つ店員。

 その様子から彼は状況を覚り、救いを求めるように休戦中の相手に小声で話し掛けた。

 

大鬼「これ、ボクに言ってるのかな?」ヒソヒソ

カズ「多分そうだろ?」ヒソヒソ

大鬼「何て言ってるか分かる?」ヒソヒソ

カズ「さぁ…。さっきから何を言ってるのか…」ヒソ

大鬼「初めて聞く言葉だよ?」ヒソ

カズ「あの人の部下だって言うんだから、

   神様語とかじゃないのか?」ヒソ

大鬼「何て答えればいい?」ヒソ

カズ「知らねぇよ!自分で考えろよ!」

大鬼「一緒に考えてくれてもいいじゃん!」

カズ「オレは関係ないだろ!巻き込むなよ!」

 

休戦は解けかけ、言い合いを始める2人。少年達の声はいつしか店員と、その主人の耳にも届く程になっていた。

 そんな2人にただ苦笑いを浮かべて見守る店員。実はこの店員、話そうと思えば他の者達と同様にJapanese onlyでSpeakする事が可能なのだ。だが、もめ始めた少年達のために言い直そうとしたところを、彼女の主人からの指令によりStopさせられているのだ。その指令とは「面白いからほっとけ」だった。と、そこに…。

 

??「見つけた!」

 

 

◇   ◇   ◇   ◆   ◇   ◇

 

 

 落下点に到着した彼女は上空の様子を伺っていた。眼に映るのは不気味な色の鬼火を構える妖怪の友達。それは最高の物だと彼女もすぐに感じた。

 

キス「胸の大きさがなんぼのもんじゃー!」

 

上空から聞こえて来た心の叫びは、下にいる彼女にも届き、

 

萃香「そうだそうだ!こちとら希少価値じゃー!」

 

共鳴した。

 そして間も無く視界を覆う様にやって来た球に、その思いと理不尽な世の中への恨みを乗せ、

 

萃香「トォーーーッス!!」

 

全力のバトンタッチ。が、

 

萃香「くしゅんっ!」

 

突然巻き上がった砂埃が彼女の鼻を刺激した。その瞬間手元が狂い、球はこれまでの軌道を外れ、全てを乗せたままアタッカー目掛けて飛んで行った。

 

萃香「やばいっ!避けて!」

 

彼女の危険を知らせる声に気付いたアタッカー。

 

キス「きゃっ!」

 

間一髪の所で避けた彼女だったが、

 

 

バチコーーーンッ!!

 

 

振り上げていたその手は体制を崩しながらも、それを見事に打ち抜いていた。

 最高の鬼火を乗せたゴミ袋はターゲットを大きく外れ、

 

萃香「まずい…」

キス「あっちゃー…」

 

青い直線となり、町中へと向かっていった。

 

 




次回【三年後:鬼の祭_伍】

※小野塚小町_カラーバージョン

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