◇ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇
??「いっくよー!」
上空で大きく振りかぶる小さな鬼。
??「思いっきりお願い!」
彼女の腕の中でしっかりと愛車に捕まり、それに答える桶姫。
彼女達は焦っていた。故意ではないとは言え、自分達が放った物が事もあろうに、多くの者が集まっている町中へと迷う事なく、一直線に向かっているからだ。もし、それがこのまま突っ込んでしまったら、大惨事は間逃れない。旧地獄が文字通りの地獄と化してしまう。
そこで彼女達は町に着く前にそれを処理、つまり証拠隠滅をしようと考えたのだった。
萃香「お願いね!私も直ぐに行くから!」
彼女は担いだ桶姫に思いを託し、腕に有りったけの力を込め、
萃香「うおりゃぁーーーっ!」
全力投球。球種は文句なしのストレート、ど真ん中低めである。投じられた球は
キス「あばばばば」
顔全面で重力を受け、頬を
キス「
◆ ◆ ◆ ◇ ◆ ◇
??「あなたが来てからの一部始終を拝見させて
頂いておりました。」
勇儀「どうしてあんたがここに…」
私は目を疑っていた。彼女が来ているなんて話しは聞いていなかったし、それよりもこの人、
勇儀「両手の
あと口の周り真っ黒ですよ?」
祭りを楽しんでいやがる。
右手に5本のチョコバナナ、左手に残骸と思われる棒が5本。「全部一人で食べる気か?よっぽど好きなんだな…」などと思っていると、彼女の顔が徐々に赤く染まっていき、慌てたようにハンカチを取り出して
映姫「そ、そんな事より!」
口を拭いながら話を切り替えた。
映姫「揉め事を暴力で解決するのは感心しません!
言語道断です!」
始まった。彼女の説教は長い事で名高い。恐らく怒った時の母さんよりも長い。
映姫「いいですか?それでは彼等と何も変わりませ
んよ?大同小異です!そればかりか……」
くどくどと始まった説教に耳が痛くなる。さっきの私の余計な一言のせいもあって、彼女は怒り口調だ。あー…、できるならあの時に戻って放ってしまった言葉を取り消したい。
だが私には秘策がある。その名も『ちくわ耳』。
説明しよう。『ちくわ耳』とは、心を無にして言葉を右から左へ受け流すのだ。教育熱心な母さんの長い説教を受けていた時に、私があみだした技だ。
意識を集中させ、ゆっくりと無の境地へと足を踏み入れる。
勇儀「(…・ ・ ・ )」
??「どいて!どいて!女神様のお通りだよ!」
それを妨害するように、聞き捨てなら無い言葉が右からやって来た。
声の方へ目を向けると人集りの中に一本の道ができていた。そしてその先に、両手に大量のヨーヨーを持った『あの方』の姿があった。突然姿を
彼女の姿を目視した周囲の者は次々と
勇儀「ヘカーティア様!」
映姫「これはこれはヘカーティア様。
ご無沙汰しております。
この件が片付いた後に伺おうと…」
ヘカ「話しは後!ちょっとみんな頭上に気をつけて
ね!」
彼女は集まった者達に聞こえる様に大声で注意を促した。私がその言葉の意図が分からず、疑問に思っていると、
ヘカ「鬼さん肩を借りるよ!」
彼女はそう言い放ち、私の肩を踏み台にして後方へと飛び上がった。細くて
勇儀「なんだい、あれ?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇
映姫「地底で隕石!?落石襲来!?」
青い玉が不気味な炎を上げながら、こちらを目指して飛んで来ていた。私と閻魔様がその光景に目を丸くし、絶句している間に彼女は催促するように次の指示を出していた。
ヘカ「誰か上空に足場!」
??「はいっ!」
その指示に答える高い声。と同時に頭上に展開される大きな蜘蛛の巣。誰が対応したのか直ぐに分かった。彼女はその蜘蛛の巣に足を掛けると、青い火の玉へと向かって行った。
ヘカ「あれ?思いの外小さいね。このままでも塵に
なりそうだけど、一応消火しておきますか。
おりゃっ!」
そして両手の大量のヨーヨーをそれに打ち当てた。炎に触れたヨーヨーは各々が含んだ少量の水分を落とし、やがて青い炎と共に姿を消していった。
ヘカ「地獄に降る雨か…。うん、悪くないね」
結局あれは何だったのか疑問に思う事は色々あるけど、彼女のおかげで大事にならなくて助かった。
ヘカ「きゃっ!」
だがまだ終わりではなかった。もう一つ飛んで来ていた。それは彼女の横を掠るように通過すると、蜘蛛姫の作り出した網を見事に
??「ウツホミラクルスペシャルウルトラ…」
翼の生えた黒髪の女が、それを迎え撃つように飛んで行き、
黒髪「うにゅーーーっ!」
そのまま弾き飛ばされた。
結局何がしたかったのか分からない正体不明の女。だが彼女の体当たりのおかげで、それは少し軌道を変えていた。落下地点は恐らく私の後方の野次馬達。私は振り向き連中に逃げる様に指示を出した。
勇儀「お前さん達そこから離れろ!」
言い切った時、目を疑った。幻だと信じたかった。慌てて逃げ出す野次馬達の最前列に呆然と佇む子供が、あの仲の悪い二人がいるという事に。「ここからでは間に合わない」と焦る気持ちの中、そこに救いの手が差し伸べられた。
??「大鬼君!カズキ君!こっちニャ!!」
人だかりを掻き分け、猫娘が2人の手を引いてその場から逃げ出す様に離れてくれた。
「よかった、これなら大丈夫だ」と気を抜いた矢先だった。私の耳に聞き覚えのある声で、悲痛な叫びが入ってきた。
??「誰か止めてー!」
この声は…。
??「キスメ!?勇儀!あれキスメだよ!」
どこからか聞こえて来たヤツの声。だがそのおかげでようやく気づく事ができた。
勇儀「はあーっ!?なんであいつが突っ込んで…」
見上げた時にはもう彼女の顔を完全に目視出来る距離だった。その顔は強張った表情で青くなり、泣きべそをかいていた。この速度で地面にそのまま衝突したら大怪我は間逃れない。けど助けようにも今から動き出したのでは届かない。私はただ祈る思いで見届ける事しかできないのか?私にもっと力があれば、何か能力があれば…。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
??「四季様みーつけた!」
そこに突然現れた赤髪の女と、
??「ぬわぁーっ!」
弟分。どこから湧いて出てきたのか疑問に思うところだが、ナイスタイミング!それにあの位置なら…。
勇儀「鬼助!そいつを受け止めろ!」
鬼助「へ?」
弟分が目で認識するよりも早く、
鬼助「オウフ!」
それは彼の胸へと飛び込んでいた。
メキッメキッメキッ…
何かが砕けるような鈍い音を立て、弟分は背を地面に擦りながら桶姫と共に砂塵を巻き上げて吹き飛んだ。
??「きゃん!」
あと赤毛の女も。
『キスメ!』
映姫「小町!?」
彼女達の身を案じて名前を叫ぶ一同。
次第に舞い上がった砂の霧が晴れていき、3人の姿が薄ぼんやりと現れ、その姿がはっきりと確認できた時、
『うおーーーっ!』
一斉に歓声が上がった。
キスメは無事に緩衝材の上に着地し、赤毛の女は腰を
パル「キスメ!」
ヤマ「キスメ大丈夫!?」
彼女に駆け寄る橋姫と蜘蛛姫。飛んで来たモノが彼女と知り、気が気ではなかったのだろう。
映姫「小町、怪我は!?体大丈夫?」
小町「あたたた…。はい、なんとか。
尻餅をついて腰を打っただけです」
赤毛の女に近付いて、不安な表情を浮かべる閻魔様。どうやら赤毛の女は彼女の知り合いようだ。
鬼助「だぁー!もーっ!」
そこに急に聞こえて来た叫び声。
鬼助「なんで誰もオイラの心配をしてくれないんで
すか!!」
その声に周りに笑いが起きた。だが私の弟分は良くやった。この働きは称賛に値する。
勇儀「鬼助でかした!」
私の声に野次馬連中から大きな拍手が鳴り、
鬼助「ありがとうございます!」
大きな声でそれに答える緩衝材だった。