東方迷子伝   作:GA王

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三年後:鬼の祭_拾肆

◇   ◆   ◇

 

 

勇儀「そんなのダメに決まってるだろ!」

親方「えー…、この流れでそりゃねぇだろ?」

 

酷く残念そうな表情を浮かべる父さん。

 父さんから聞かされた話には心を打たれた。それは認める。萃香の親父さんの事は残念に思うし、出来る事なら2人には後悔する事なく戦って欲しい。けど、だからと言って父さんのワガママを聞くわけにはいかない。

 

親方「なぁ、頼むよ」

 

手を顔の前で合わせ、懸命に頼んで来る。その内「一生のお願い」とか言い出しそうだ。例えそうだとしても、

 

勇儀「ダメなものはダメ!場外無し、殴る、蹴る、

   噛み付き、金的有りでどちらかが気絶するか

   降参を認めるまでやり合うなんて、それは

   ただの喧嘩だろ!そ・れ・に!そんな事を

   したら観客まで巻き込むし、何より土俵の

   意味が無いだろ!」

 

(ゆず)る気は更々ない。

 

親方「そりゃ、そうだけど…」

 

言葉が尻すぼみになり、表情も(しお)れてはいるがまだ引く気は無いと見た。目がそう語っている。

 

ヤマ「親方様、流石にそれはちょっと無理があるか

   と…」

パル「突然のルール変更…。妬ましい…」

 

ヤマメとパルスィの援護射撃。これはありがたい。私1人では平行線のままだっただろう。だが2人の味方ができた。今父さんは1人。これで諦めてくれるだろう。

 父さんの熱い心意気は理解している。できる事なら叶えてあげたい。でも、誰がどう考えてもその意見は常軌(じょうき)(いっ)している。その父に味方をする者など…

 

鬼助「親方様の心意気マジ分かります!熱いです!

   ハンパないです!固い友情で結ばれた男同士

   の最後の決戦、オイラ猛烈に感動です!さす

   が親方!そこにシビれる!あこがれるゥ!」

 

いやがった…。

 

親方「それみろ!鬼助は分かってくれているぞ!」

勇儀「あ゛ーっ!話がややこしくなる!ヤマメ!

   鬼助の口を(ふさ)げ!」

ヤマ「ガッテン承知の助ッ!」

 

私の指示に間髪入れず弟分の口に巻きつく糸の束。反応が早かったところから察するに、ヤマメもプッツンときて準備していたのだろう。

 

鬼助「ん゛ーっ!ん゛ーっ!!」

勇儀「パルスィ、ついでに妬み成分吸い取れ」

パル「何で妬むの?」

勇儀「なんかあるだろ?騒がしくて妬ましいとか、

   面倒くさくて妬ましいとか」

パル「あのさ………。見境無さ過ぎでしょ!人を妬

   みの掃除機みたいに言わないでくれる!?」

勇儀「上手いこと言うな。よっ、座布団一枚」

パル「その考えが妬ましい…」

 

いかん、矛先がこっちに向いた。

 

勇儀「私じゃなくてあっちを妬め!」

パル「もう…、じゃあ暑苦しくて妬ましいっていう

   事で…」

 

ため息を吐きながら零す愚痴に「何が違うんだ?」「やっぱり何でもいけるんじゃないのか?」と疑ってしまうが………考えるだけ無駄だ。

 

親方「なんでぇ、せっかく味方ができたのに…」

勇儀「アレは味方にカウントしません!それと

   ルールの変更はなし!これは譲らない!

   それで正々堂々、同じ土俵で勝負しな!」

親方「相撲だけにか?」

 

 

イラッ!

 

 

勇儀「アッレェー?オッカシイナー。ソラミミ

   カナァー?」

親方「いでででっ!悪かった悪かった、頭割れる!

   勇儀ちゃん、ワシまだ試合前!」

パル「勇儀のグリグリ…。洒落にならない…」ゾクッ

大鬼「うっわ…。痛そう…」

ヤマ「大鬼君もパルスィも気をつけなよー…」

 

つまらない事を()かした父さんへの制裁。だがこれは私からの喝。だから他の者へは聞こえない様に耳元で

 

勇儀「負けんなよ」

 

ドサクサに(まぎ)れて(ささや)いた。

 

 

ボォーン…

 

 

そして時を告げる音。

 

親方「そろそろ…か」

 

父さんはそう呟くと、頭から私の手を優しく添える様に下ろし、

 

ヤマ「親方様頑張ってください!」

パル「おとう…親方様、御武運を…」

鬼助「ん゛ん゛ん゛ーっ!!」

大鬼「カッコイイところ見せてね」

親方「まかせろっ!」

 

「心配無用」とでも言う様に、力こぶを作った自慢の腕を見せつけて笑顔で答えてくれた。

 

勇儀「じゃあ、お前さん達行くぞ」

 

 

 

 

 

 大切な家族達からの声援を受け、彼の仕上がりもまた100%…いや、120%のものとなった。

 

??「うおおおーーーっ!!」

 

そこへ闘志みなぎる者の雄叫びが。

 いつからか始まり、気付かぬ間に消えてしまった親友との因縁。その戦歴は最早遠い過去の事。全てを無かった事にし、今日この場で決着を付けるべく、今日この場で輝かしい自分達の時代の終わりを告げるべく、彼はあの頃と同じ様に吠える。

 

親方「うおおおーーーっ!!」

 

 

--小僧移動中--

 

 

勇儀「じゃあ私はここで」

 

父さんと別れ、大鬼を妖怪の2人に託す。私と萃香にはまだ役目が残っているから、一緒に観戦する事は出来ない。

 

ヤマ「うん、分かった。キスメとお空ちゃんが席を

   取ってくれているから、みんなで観てるよ」

パル「大鬼はまかせろっ!」

 

先程の父さんと同じポーズで答える妬み姫。どうやらそれが気に入ったらしい。そこに

 

??「うおおおーーーっ!!」

 

反対側から聞こえて来た男の決意。それには威圧感はなく、己を奮い立たせるものだ。

 

??「うおおおーーーっ!!」

 

そして連鎖反応の様に近くから聞こえて来た男の意志。こちらは威圧感に溢れ、闘争心()き出し。両者とも気合い充分だ。

 

大鬼「すごい迫力」

ヤマ「親方様もやる気満々だね」

パル「御義父様…」ボソッ

 

試合開始まではあと(わず)か。そしてこれで今年の祭は終わる。私達も最後の役割を全うしよう。

 

勇儀「大鬼、ちゃんとヤマメ達の言う事聞けよ?」

大鬼「分かってるよそれくらい。子供扱いしないで

   よ」

パル「まだまだ子供のクセに…。妬ましい」

 

あんな事を言って不貞腐(ふてくさ)れているが、大鬼は大丈夫だろう。問題は、

 

鬼助「ん゛ーっ!」

 

妬み成分を吸ってもらったが、まだまだ元気な弟分。

 

勇儀「あとそれも頼むな」

ヤマ「えっと…、観覧席ってペット持ち込み平気?」

 

そこへ弟分から伸びる紐を見せて苦笑いを浮かべる蜘蛛姫。そうきたか。

 

勇儀「それ言い出したらお燐とお空ダメだろ?」

パル「2人は(しつけ)がちゃんとしているから

   問題ない」

勇儀「リードを(つな)いだまま大人しくさせておけ。

   なんならもう少し削ってもいいぞ」

パル「玉こんにゃくが地味に効いてお腹いっぱい。

   消費しないと」

勇儀「どうすればいい?」

パル「勇儀に壁ドンしてもらったり、

   勇儀に顎クイしてもらったり、

   勇儀に額にチューしてもらったり…」

勇儀「うわぁ甘酸っぱーい。憧れるー、分かるー。

   って分かるか!」

パル「せめて壁ドンだけでも…」

勇儀「よし、なら()()()()で壁ドンするか?

   地底の壁は直ぐそこだ」

 

そう答えながら腕を回して軽く準備運動を始める。こっちは何時でもいける。

 

パル「勇儀…、アレ凄い痛かったんだからね。

   暫く動けなかったんだからね!」

ヤマ「パルスィから聞いた聞いた。投げ飛ばしたら

   壁に届いちゃったんでしょ?」

パル「ただ届いただけじゃない。埋まった」

勇儀「悪かったって…」

ヤマ「でもみんなで食事した時は届かなかったんで

   しょ?力抑えたの?」

 

確かにあの時私は3回ヤツを投げ飛ばした。特に最初の一回の後、ヤツは元気に戻って来ていた。という事はあの時は壁には…。

 でもこれだけは断言出来る。

 

勇儀「コイツを投げる時は手加減なんてしない!」

 

私は胸を張ってヤマメの質問に「No!」と答えた。

 

パル「妬ましい…」

ヤマ「じゃあ何でその時だけ?」

勇儀「調子良かったんだろ?投げ飛ばす前に…」

 

そういえばその時、大鬼にパワーチャージをお願いしていた。それでその後元気が出て…。いや、力がみなぎる様なそんな感覚だった。

 そこまで考えがまとまった時、ある疑惑が脳裏を横切り、慌てる様に大鬼へ視線を向けていた。

 

大鬼「ん?なに?」

 

まだ少し幼い無邪気な表情で私の視線に答える人間の小僧。

 まさか…ね。私の仮説は自分自信でも信じ難い物。でもそう考えるのが自然なのかもしれない。それがコイツの能力であると。

 

パル「思い出したぁー!大鬼、勇儀のホッペに

   チューしてたぁーっ!」

 

突然私の『秘密のパワーチャージ』を大声で叫び出す橋姫。(たま)らず顔が一気に火照り、言葉使いまで

 

勇儀「パパパパパッルゥスゥィーッ!」

 

(ども)り出す始末。

 

大鬼「パルパル言うなよ!」

ヤマ「えーっ!?いがーい。大鬼君と勇儀

   可愛いーっ!」

パル「思い出嫉ーーーーーーーーーーーーっ妬!(おもいだしーーーーーーーーーーーーっと)

 

大量の妖気を吹き出し、

 

パル「パルパルパルパルパルパルパルパル…」

 

ブツブツと唱えながら戦闘モードへと入る嫉妬姫。事態は滅茶苦茶。「この場を静めるにはやはりアレか」と覚悟を決めて歩を進めた。

 

 

ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ!

 

 

そこへ鳴り始めた太鼓の音。これはもう間もなくで選手入場の時間…。

 

勇儀「ヤッバ!急がないと、後宜しくな!」

ヤマ「ちょっと勇儀!どうすんのよこれ…」

鬼助「ん゛ーっ!」

パル「パルパルパルパルパル」

大鬼「ヤマメー…、もう行こ…」

 

 

 




次回【三年後:鬼の祭_拾伍】
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