ストライクウィッチーズ 鷹の目を持つ少年   作:何処でも行方不明

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今回は四千文字です。
渡邊ユンカースさん星9評価ありがとうございます!


第5話 宮藤着任

カチコチと時計の針が進む音を耳にしながら目を覚ます。

時間は午前4時、冷水で顔を洗い隼のラインを連れ出し早朝のランニングを始める。夜にはスナッチを連れ出しているがあいつは勝手に飛び去って勝手にに帰ってくるから問題ない。

いや、鷹匠としては問題ありだな。

そもそも、スナッチは俺よりもリーネに懐いている節がある。……何故だろうか

 

「セイ!ヤア!」

 

海岸まで走っているいると、久々に聞く声がした。

 

「おはようございます少佐」

「あぁ、おはようディートリヒ」

 

そう、坂本少佐だ。早朝ランニング中に遭遇することはよくあることだ。

 

「ところで宮藤軍曹が先程からこちらを見てる気が……」

「そうか?気配は感じられないが……」

「あと2分後に来ると思いますよ。それじゃあまた後で」

 

そう言って去る。暇な時に意図的に未来を視ることがある。今日見た未来は坂本少佐が宮藤軍曹に話しかけられているところだ。城壁の上からでも観ていたんだろう。

 

said 坂本

 

「それじゃあまた後で」

 

そう言って同僚のディートリヒは去っていった。

男性にしては珍しく前線に配置されるほどの魔法力と技術を持つウィッチだ。

 

「それにしても固有魔法を日常的に使うのか……いざと言う時に戦えるならいいが……」

 

おっと、いけない。集中が途切れてしまっている。型の続きをしなければ。

 

said out

 

時間が経った、ブリーフィングルームに待機する。ミーナが改めて宮藤軍曹の紹介をするようだ。

ルッキーニは机の上に寝っ転がり、ペリーヌは坂本少佐を見つめている(平常運転)。サーニャは夜間哨戒任務で寝不足だからか睡眠中、結構自由な職場だと思う。

なお、リーネの頭の上にはスナッチが留まって寝ている。

コノハズクって人懐こかったか?

かく言う俺も左手の餌掛けにラインを留まらせているのでなんとも言えない。

 

「はい、皆さん注目。改めて今日から皆さんの仲間になる新人を紹介します」

 

そう言ってミーナは新人を紹介した。

 

「坂本少佐が扶桑皇国から連れてきてくれた、宮藤芳佳さんです」

「宮藤芳佳です。皆さん、よろしくお願いします」

 

まるで転校生のような紹介だと思った。先日まで民間人だったから当然といえば当然だ。

 

「階級は軍曹になるので同じ階級のリーネさんが面倒を見てあげてね」

「は、はい」

 

リーネは苦手意識を宮藤軍曹に向けているのだろうか。まあ、自分は実戦での戦績は芳しくないが宮藤軍曹は初の飛行でコアを露出させた。

 

「はい、じゃあ必要な書類、衣類一式、階級章、認識票なんかはここにあるから」

 

ミーナは壇上に置いてあるものを宮藤軍曹に見せた。その時、宮藤軍曹の顔色が変わった。

その表情は銃を……いや、武器を持つことへの拒絶か。

 

「あの……」

「はい?」

「これはいりません……」

 

宮藤軍曹は銃をミーナに手渡しした。戦闘時でしか武器は持つ気は無いらしい。

 

「何かの時には持っていた方がいいわよ?」

「使いませんから……」

「そう……」

 

ミーナは拳銃を受け取り壇上に戻した。

 

「あっははは、おかしなやつだな」

(人を傷つけるのが怖いのだろうな)

 

「なによ、なによ!」

 

いきなりペリーヌが癇癪を起こしブリーフィングルームを後にした。いきなりではないか。銃を持たなかった宮藤軍曹が気に入らなかったのだろう。

 

「あらあら、仕方ないわね……個別の紹介は改めてしましょう。では、解散!」

 

その言葉を聞きメンバー全員が立ち上がる。そして、ミーナもブリーフィングルームを後にした。

宮藤軍曹が銃を持たないのも無理はない。しかし、ここは最前線だ。自衛の手段がないのであれば死んでしまうかもしれない。拳銃一つで生死を分けることもあるだろう。……ネウロイに拳銃一つで立ち向かうウィッチはなかなかにいないと思うが。

 

そろそろか……

「おわっ!」

「どうだ?」

 

俺やリーネの時と同じくルッキーニに背後から胸を揉まれる宮藤軍曹。俺の時は未来視で回避したが宮藤軍曹の固有魔法は治癒なので避けるのは無理だったようだ。

 

「……残念賞」

 

その評価を聞いたエイラが言った。

 

「リーネは大きかった」

「………」

 

リーネは俯く、今まで頭に留まっていたスナッチも起きたのか俺の方に飛んできた。

 

「鳥?」

「ああ、俺のペットみたいなものだ。ディートリヒ・D・クルーガー。カールスラント空軍所属、階級は中尉だ。ディートリヒでもディーでも好きに呼んでくれ」

 

ちょうど俺の方に目が向かれたので自己紹介をしておく、どのみち訓練で会うことになるのだろうがな。

 

「よろしくお願いします」

「ああ、よろしく。それじゃ少佐、俺は訓練に行くんで」

「了解した」

 

俺もブリーフィングルームを後にしよう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

持久力を付けるための走り込み、筋力を付けるために筋トレ……なるべく効率的なものを行う。一通りのメニューを終えたら射撃訓練だ。千里眼を生かすために長距離を攻撃する手段を得たい。友人の狙撃手に頼んでコツは教えてもらったから上手くいくはずだ……

 

「………」

 

Kar98kのトリガーに指を風を読む。爆撃制御の応用で火薬の爆発を制御しほぼロスがない形でエネルギーを伝達、かなりの集中力を必要とするが弾丸の飛距離を伸ばすことができる。

 

「………!」

 

有効射程オール無視の700m狙撃。トリガーを引き弾丸が発射される。結果は……

 

「……また外した」

 

元々狙撃の訓練を行っていなかったからかなかなかに上達しない。狙撃さえできれば目に見えたものを撃ち抜けるはずなんだがな……

へカートライフルとかがあればいいが、この時代にはまだ存在していない。そもそもジェット機も開発中という段階だ。

 

「リーネなら当てれたのだろうか……」

「そうでもないんじゃないかしら?」

「!?!?」

 

いつの間にか後ろを取られていたみたいだ。集中していると身の回りの気配感知が疎かになるのは悪い癖だ。

 

「なんだミーナか……」

 

すぐさま狙撃訓練にもどる俺、もちろんミーナは……

 

「少しぐらい相手してくれてもいいんじゃないかしら?」

「俺は息抜き要員じゃないんだぞ……ま、いいか」

 

このように話しかけてくる。書類整理が終わったので息抜きでもしてるのだろう。……そうじゃなくても話しかけてくることはあるが。

 

「ここでは他の訓練を行う人の邪魔になるから移動しないか?」

「そうね、じゃあ見張りもかねてあそこに行きましょうか」

 

 

 

 

ここはウィッチーズ基地で1番高い場所だ。見晴らしがよく開放感がある。俺はここから千里眼を用いた見張りを行うことがある。

 

「何か見える?」

「いや、特には。ネウロイの侵攻予報がズレが生じている今は特に気を抜けないが……」

「あれ?ディーさん、ミーナ中佐?」

 

声に振り向くとリーネと宮藤軍曹がいた。

 

「うわーー!広ーーい!!」

「こんにちは宮藤さん。ここは基地で1番高い場所なの」

「へぇー…この島全部が基地なんですね」

「ああ、ドーバー海峡に突き出した小島それがウィッチーズ基地だ。それであっちに見えるのがヨーロッパ大陸。今は殆どがネウロイの手に落ちている。見えないと思うがヨーロッパ大陸のほとんどの街は廃墟同然と化している」

「見えるんですか!?」

「ああ、俺の固有魔法の一つだ」

 

その説明はもうするつもりはないのだがな……

 

「改めてディートリヒ・D・クルーガーだ。後の訓練でも顔を合わせるだろうがよろしく」

 

そう言ってこの場を後にすることにした。一応、千里眼も固有魔法扱いなので休み休み使わないと変に疑われる。あの頃には戻りたくない。

 

 

 

「お前達の前には何が見える!」

「海です!」

 

今は宮藤軍曹とリーネが坂本少佐により走り込みを行っている。

 

「海の向こうには何が見える!」

「ヨーロッパです!」

「(俺の時と似たような感じだな……)」

 

俺はその光景を坂本少佐の隣で見ていた。俺の役目は……

 

「二人ともスピード落ち始めてる。ペース配分を怠ったな」

 

スピードメーターだ。行き過ぎた訓練は体を壊すことがあるので俺はその目安として使われている。

 

「すみません!」

「謝ってどうにかなる事じゃないだろう?」

 

あと坂本少佐がムチなら俺はアメらしい。

その後、二人は筋トレを行ったが規定の回数をこなす前にへばっていた。

 

「もう無理……」

「私も……」

 

まあ、リーネの方はペースが宮藤軍曹より早いしこなした回数も規定の数も多いのだがそれでもまだまだだな。

 

「ほら、これでも飲め」

 

俺は二人に水筒を差し出す。水分補給はこまめに行わないと後で色々支障をきたす可能性があるからな。

 

「ありがとうございます……」

「いつもすみません……」

 

二人はそう言いながら水筒に口をつける。

 

「冷たくないんですね」

「急に冷たいものを飲むと体に悪い。それが運動直後なら尚更な」

 

リーネはこの二ヶ月間で俺の指導用法に慣れたので常温水にも文句を言わない。

 

「次は飛行訓練だ。ディートリヒお前もどうだ?」

「ならご一緒さしてもらうかな」

 

その後?別段記述することは無いな。宮藤軍曹はやっぱりストライカーに乗るのが数える程しか無いからだろうか、飛行が安定していない。

 

「リーネ、旋回が遅いぞ」

「はい!」

 

そんなこんなで訓練が終わる。

 

「もうへばったのか宮藤」

「初心者ならこんなものじゃないか?」

 

宮藤軍曹はへばって滑走路に寝そべっている。リーネはその横で座り込み息をあげている。

 

「よくやったなリーネ。宮藤もよくここまでもったな」

「おいおいディートリヒ。甘やかしてどうする」

「俺は褒めて伸ばすタイプなんですよ。もしくは上げて落とすタイプです」

 

リーネは疲れた表情の中に喜びの微笑みを浮かべた。

 

「はい!一刻も早く皆さんに追いつけるように精進します!」

 

そこで坂本少佐はふと思い出したように言った。

 

「前と今じゃリーネの飛行に安定感が違うな。ディートリヒの教育の賜物か?」

「俺はリーネの特訓に口出ししただけですよ」

 

俺はリーネと宮藤軍曹に手を貸し立たせる。

 

「大丈夫か?歩けるか?」

「私は大丈夫です。けど宮藤さんが……」

「大丈夫……で、す」

「ならシャワーを浴びてくるといい。今日の訓練は終わりですよね?」

「ああ、ディートリヒはどうする?」

「……俺は二人のストライカーを回収してくるのでやめておきます」

「そうか」

 

俺はそう言いながらストライカーから足を引き抜く。ストライカーを手で持ち格納庫に向かう。

 

「……2日後か」

「ディーさん?」

「どうかしたんですか?」

「なんでもない」

 

俺はこの時、無意識下で言った言葉に意味があるなんて考えもしなかった。




遅れた理由?
………3500文字辺りから筆が止まりました

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