私はかわいい派です。
かっこいいはずの彼らが、甘える瞬間が最高です。
グレイス隊長が私とクトアを引っ張り、階段を駆け上がる。
途中からは螺旋階段になっており、かなりの早さの隊長に半分振り回される形で上りきった。
階段が途切れると、そこには壁があった。
しかし、それは石の壁ではなく、木の壁だ。
「少し離れてろ。」
グレイス隊長の左手が一気に燃えたかと思うと、そのまま玉を投げるように振りかぶる。
すると、火だけが前方に飛んでいき、木の壁にあたる。
当然、木の壁は勢いよく燃え始めた。
そして、しばらくしない内に木の壁が焦げ、僅かな残り火を残して黒く燃え尽きた。
それを見計らって、グレイス隊長は燃え尽きた壁を蹴る。
ガシャァン
目の前の壁が、奥に倒れていく。
外側の燃えた壁周辺には、いくつかの本が落ちていた。
どうやら、先ほど倒した壁は、木製の本棚だったようだ。
その本棚があった部屋は噂通り、不死街の入り口の門の関所だった。
グレイス隊長は間髪入れず、不死街の外の方の扉を開ける。
私たちも隊長に続く。
パチパチ
関所から出ると、後ろから火の粉の爆ぜる音が聞こえ、足を止め後ろ振り返る。
不死街が燃えていた。
全体が燃えていた訳ではないが、少なくとも半分が燃えていた。
「あぁ…」
ただその光景を、なんとなく見続けていた。
「きれい?」
クトアが私を見て訪ねてくる。
きれい?この全てが燃えていく光景が?
あぁ、でも、悪くは無いのかもしれない。
「コロナお姉ちゃんが喜ぶなら、望むなら、私、頑張って燃やすヨ?」
喜ぶ?私が?
望む?私が?
でも、彼女の”赤い”瞳を見てると、それでも良いのかと…。
ピュゥー
後ろから、甲高い音が聞こえる。
ボーっとしながらも、後ろを見ると、少し離れた所でグレイス隊長が指笛を吹いていた。
隊長が数回指笛を吹くと、こっちへ歩いてくる。
「…ん?コロナ君、大丈夫か?少しボーっとしているようだが。」
「んっ、大丈夫です。少し熱気にやられてたのかも知れません。それで、隊長はさっき何をしていたのですか?」
「ああ、それは……」
ウォン!ウォン!
不死街の外、森の方から1匹の狼がこっちに向かってくる。
このタイミングで、1匹だけ出てきたということは、恐らく口笛で呼んだのだろう。
「まあ、こういう事だ。さて………こいつを南の拠点に、頼んだぞ!」
隊長は、鋭い葉っぱ、一般的に『剣草』と呼ばれるものを、狼に託した。その後、狼は駆けていき見えなくなっていった。
「…狼は、隊長の言葉が分かるのですか?」
「ああ、理解している。私も、ある程度は分かる。」
「そういう技術や、魔法ですか?」
「いや、ファランの老狼のソウルが成せる業だ。コロナ君も、入隊すれば嫌でも分かるさ。」
鼻で笑いながら、彼は近くの木に背を預ける。
ここで、仲間が来るのを待つようだ。
ん?服を引っ張られている感じがする。
下を見ると、クトアが私の服を引っ張っていた。
顔には嫉妬している表情が見てとれた。
その”青い”瞳は無垢にも、構ってほしいとうったえている。
かわいい。
とりあえず、頭を撫でてあげた。
「……」
ご機嫌になった。
とても笑顔である。
しばらく撫でてあげた。
少し時間が経ち、隊長が私に言ってきた。
「あと1刻(15分)もすれば、援軍が来る。君たちは、彼らと来る従者と一緒に臨時拠点に行くといい。」
私は頷く。
私自身、戦いができない訳ではないが、盗人だったときにナイフを使ったことがあるだけで、それも大分昔の話だ。
あんな異形や、意味のわからないものなんて、戦った事などない、素人だ。
そんな者が、たとえ不死者であっても、戦えるとは思えない。素直に、グレイス隊長の指示に従うべきだ。
続いて隊長が言う。
「あと…」
ドゴォォン
地響きが起こり、地面が揺れた。
その後、不死街の方で爆発と轟音が響く。
その爆発は、想像を絶する爆発だった。
見えるだけでも、炎の高さが家2つ分ぐらいある。
その炎の中腹に、見慣れた姿が2つと、見慣れない姿が1つあった。
フィーアさんと、軽口不死者、見慣れない姿は多分担がれていた不死者だ。
地上と、多くの炎があることもあり、彼らの姿がくしっかりと見える。
軽口不死者のアドムは、いつも通りの軽い表情の20代半ばのかなり色が薄い金髪の男性。
フィーアさんは、不死隊の兜とフードをしているため、分からない。
最後に、担がれていた不死者だが、黒髪の厳つい表情で、多分30代半ばだろう。一見の印象は、『歴戦の戦士』だ。なぜか、ボロボロのグレートソードを持っているし。
眺めている、場合では無かった。
こっち側に全員が落ちてくる。
「うおっと。」「くっ。」「ちっ。」
全員見事に受け身をとり、転がったりしながら着地する。
「フィーア!回復!」
「了解!」
「ここは……地上か?」
三人がそれぞれの反応をする。
軽口不死者は、指示をしながら、向こうを向き特殊な構えを解かない。
フィーアさんは、左手にあるタリスマンを握り、軽口不死者の傷を治した時のように淡い光に包まれる。
担がれていた不死者は、気楽にも周囲を見ている。少し驚いた表情をしている。よく見ると、彼の背中にはグレートソード程ではないが、大きな剣を背負っている。
そんな彼らの向こう側。
先ほど爆発が起きた場所には大きな穴が空いており、そこから這い上がってくる手、いや、手の形をした炎がある。
それは、まるで人間のように這い上がり、そして立った。
それは、文字通り人の形をした炎の化け物だった。
アドムさん、フィーアさん、担がれていた不死者の3人の戦闘は、本編と別の幕間を書く予定です。
サイドストーリーとも言う。
私はグレートソードの戦技、かっこいいと思います。
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