ーー波の音が聴こえる。
肌を焦がすかのように太陽がチリチリと身体に突き刺さる。瞼を上げ、ぼんやりと視線を巡らせるも写るのは白い景色のみ。
(……いや、これは砂…だ………)
目の前には砂があり、耳からは波の音が聴こえる。そして、時折下半身を濡らすように水が押し寄せてくる。ならば、答えは決まっている。
「……ははっ、まる…で…漂流……物…だ……」
ようやく、己が置かれている立場を理解する。そう、正しく漂流物のように波打ち際にうつ伏せで打ち上げられていたのである。起き上がろと身体に力を入れるも、少し身体が持ち上げた瞬間、力が抜ける始末。声を出そうにも、海水でやられたのかがらがら声で人を呼べそうにもない。よしんば出せたとして、もし此処が無人島であるならば体力の無駄遣いである。
(とりあえず、なんとかあの木陰までは動かなければ)
頭を上げた先に、およそ15メートルほど先には、身体を休めるのに丁度良さそうな
木陰ある。悲鳴をあげる身体に鞭打って、時間にしておよそ一時間ほどかけて、なんとか木陰までたどり着く。ようやく一息をいれることができると、目の前の状況に段々と考えがまわるようになってくる。
(そもそも、オレはどうしてこんな所にいるんだ?)
自分の一つ一つ確かめるようにプロフィールをなぞっていく。
(オレの名前は◼◼◼◼◼◼。性別は男。歳は26。職業は会社員。四人家族で今は一人暮らしをしている。趣味は漫画や小説を読むこと……くらいか?)
いや、違う。自分の頭の中にはこれまで過ごしてきた日本とは全く違う世界、価値観を持った記憶がある。
(名前はカルナ。性別は男。歳は七。〝東の海゛の行商人の息子だが、血の繋がりはなし。養父の手伝いで乗っていた船が海王類の縄張りに入ってしまい、攻撃を受けて船は沈没)
ーーそして現在に至る、と。
いや、ちょっと待ってほしい。聞き捨てならない単語がいくつかあったんたが。『カルナ』?『海王類』?『東の海』?木陰に入って涼しい筈なのに、汗が身体中から吹き出してくる。嫌な予感がする。それも特大の!二つの記憶を吟味し、擦り合わせ、示し出された答えは…………!!
「これ、ワンピースの世界でこの子に憑依しちゃってるよね!?」
しかも、この子の名前は『カルナ』である。容姿を確認しなければ確定しないが、恐らくはfate/シリーズに登場するカルナさんの気がして仕方がない。
兎に角、オレはワンピースの世界に来てしまったようだ。しかも、憑依というオマケ付きだ。
今がどの時代かははっきりとはわからない。分からないが、これから先のことがある程度わかる以上何かしらに巻き込まれるの必定だろう。ならばこそ、備えなければならない。身体を鍛え、技を磨き、心を研ぎ澄まさなければ。
だが、まずはこの窮地を脱しなけば意味がない。身体を休め、動けるようにならなければいけない。まぁ、叶うならば誰かが自分を見つけて助けてくれるのが一番手っ取り早いのだが。