何処からか獣の声が聞こえてくる。辺りを見回すも木々が邪魔で声の主を見つけることは叶わない。
「くそ、全然見つからないじゃないか」
自然と口から愚痴が溢れる。あの後、木陰で半日ほど休むと、なんとか立って歩けるまでに体力が回復した。以前の自分であれば丸1日は倒れていたであろう疲労は、この身体では半日もあれば回復してしまうらしい。それも7歳の子供が…である。
これが住む世界の差であるのか、それともこの子の自身の回復力が凄いのかは悩むところではあるのだが。
何はともあれ、歩けるまでに回復した俺は水と食料を求めて森の中に入っていったのである。だが、そこで待っていたのは穏やかな海とは一変して、そこかしこから聞こえてくる獣の声と深い森だった。
空から降ってくる鳥の鳴き声に上を見れば、巨大な怪鳥がそれよりも巨大な大怪鳥に補食されているショッキングな光景が目に飛び込んでくる。森の中では獣の唸り声に混じって、時折補食されたであろう獣の断末魔の叫びが聞こえてくる。
こんな子供の身体で、疲労困憊な状態では逃げ切るのは奇跡でも起きない限り無理だと思われた。
故に、神経を磨り減らしながら辺りに食料がないかを探すも見当たらず思わず愚痴が溢れるのだった。
幸運なことに特に猛獣に見つからずに歩きまわること数時間。森の中にぽっかりと空いた草原の様な所に出た。
「なんだここ?というかここだけ妙に開けてるな」
よく見るとそこは一際幹の太い樹が一本生えており、その樹の囲むように岩が連なっている。ただ、樹の表面が白いこともあって大根に見えないこともないなと、ふと思う。
「……?なんとなく見覚えがあるようなないような……?」
じっと見つめるも、特に思い当たる節もなくただただ時間だけが過ぎ去っていく。何時までも、この樹のことを考えていてもしょうがないと、顔をあげ辺りを見回す。
すると、そこに広がっていたのは正に大自然といった様子の島の一部だった。見える範囲には森は勿論、火山と思われる噴煙を上げる山があり、巨大な怪鳥や獅子、巨像などが闊歩しているのが時折目に映る。また、所々に人が作ったであろう建築物のような物が目に入るも、あるものは苔むしあるものは木々が根を張っている様をみるに、人がこの地を去って久しいことが読み取れる。
この大自然の中、頼れるものもなく人も恐らくいないであろうこの島で果たして生き残れるのか?という考えが脳裏を駆け巡る。
正直、生き残るのは無理なんじゃないかと弱気な自分が鎌首をあげるも、即座に否定する。
「違う、そうじゃない!!オレは誰だ?もう◼◼◼◼◼◼じゃないだろ!!!」
俺がこの身に憑依する前の意識がどこにあるのか、死んでいるのか眠っているのか今はわからない。だが、今この身を動かすのが俺の意識である以上、弱音は許されない。だってこの子が歩むはずだった人生を、代わりに歩いているのは俺だ。
だったら胸を張って、誇れる人生を歩まなくては申し訳ないじゃないか。だからこそ、俺は決意する。絶対に生き残って自分の名を残すことを。海軍でも海賊でもなんだって良い。
「俺は!必ず世界に名を轟かせる男になる!!!」
俺の物語はここから始まる!!
★
ここは、凪の帯にある無数の無人島の一つルスカイナ島。48季といい1週間ごとに季節が変わる過酷な自然環境。また、恐ろしく強い猛獣が蠢く正に弱肉強食の世界。
人知れず大きな誓いを立てたこの男が、良くか悪くか世界の運命を変えていくことになるが、それはまだ先の話。