憑依カルナさんの海軍生活   作:藍玉むづき

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前回の投稿から一年と約半年。なぜこうなった??


一話 出会い

 ふとほほを撫でていったそよ風が命の息吹を感じさせた。辺りを見回せば、そこかしこに新緑が芽吹いている。

 

 ここルスカイナ島の今の季節は春。

 

 この島では、二つある比較的過ごしやすい季節である春が訪れていた。カルナはセーフティーゾーンである草原にて座禅を組み瞑想をしていた。

 

 時間が経つ毎に己の感覚が内側から外側に拡がっていく。

 

 

(この周辺に今のところ大きな力を持つものはいないな)

 

 

 半径にしておよそ三キロ圏内に現在のカルナにとって勝算0%の猛獣が居ないことを確認すると、その感覚を維持したまま立ち上がり移動し始める。

 

 手には黒曜石を削り木の棒にくくりつけた原始的な槍を持ち感覚が教えてくれる標的の元に静かに近付いていく。息を殺し目の前でスヤスヤと眠りこけている大猪に狙いを定めると、一息に槍で急所を貫くと大猪は短く悲鳴をあげそのまま生き絶えた。

 

 

「ふぅ、今日は上手くいったな」

 

 

 腰から黒曜石の小刀を取り出すと手早く血抜きを行い解体していく。

 

(さて、ここからはスピード勝負だ)

 

 手早くこの作業を終わらせてしまわないと、血の匂いに釣られてどんな猛獣が現れるかわかったものではない。なので、必要な部位は剥ぎ取った毛皮でくるんでしまいさっさとこの場を離れ、さっきの草原まで早足で駆けていく。

 

 ちなみに、残された大猪の残骸はほぼ半日も経たずに骨だけとなりルスカイナ島の大地に還っていくのだった。

 

 一方、森の中を駆けていくカルナのその姿は久し振りの肉にありつけるからか少し浮かれていた。そして、ルンルン気分で草原まで戻ってくるとさっそく火を興し、炙った猪肉にかぶり付き腹に納めていく。

 

 

「はぁ~~!!食った食った!!!」

 

 

 肉を食べ終えたカルナは、そのまま仰向けに寝転がり穏やかな春の昼下がりを満喫しつつ、ふとこれまでの事が頭を過った。

 

 カルナの現在の年齢は15歳。このルスカイナ島に流れ着いてからかれこれ八年もの時間が経過していた。この島に流れ着いた当初の食料事情は中々に酷いものだったと当時を思いだし苦笑が漏れる。

 

 なにせ、七歳の少年に原作でも修行前のルフィが敵わない猛獣がいる島で生き残れというのは中々に無謀なものだった。なにせセーフティーゾーンである草原から一歩出れば何がいるか分かったのもではないのだ。

 

 加えて一週間程で移り変わる季節も幼いカルナの身を蝕んだ。当時のカルナは、全神経を集中させて森の中に入り果物を見つけると、直ぐ様安全地帯に逃げ帰るという行動を繰り返していた。

 

 当然、果物しか口に出来ないカルナは目まぐるしく変わっていく季節に体力を奪われ高熱で生死の境をさ迷ったのも一度や二度ではない。

 

 だが、その苦境を乗り越える毎に身体は丈夫になり、常に周囲に神経を張り巡らしていたお陰か原作でいうところの見聞色の覇気と思われるものを半ば習得していた。

 

 ある程度、動けるようになると今度は果物以外の食料を求めて、それを仕留める為の道具作りに手を出した。滅びたとはいえ、かつてはそれ相応の文明があったのは確からしく黒曜石で出来た小刀や鏃などが遺跡の土の中に眠っていた。

 

 それをありがたく頂戴し、手製の槍を作りこれで戦えるぞ!と意気込んだのも束の間、武器があることに気を大きくしてしまい、見聞色の覇気もどきを使わずに森に入り、自分の身長の十倍はあろうかというゴリラに遭遇。

 

 ぼこぼこにされながらも命からがら逃げ出した。似たようなこと事が両手両足の指で数えきれないことがあり、思わず溜め息を吐いてしまう。

 

 

 (オレ、よく今日まで生き抜いてこれたなぁ。…………んん?)

 

 

 しみじみと感慨に耽っていると、南の方の森から一斉に鳥が飛び立った。そこまでならこの島では日常茶飯事だが続いて人とおぼしき声が微かに聞こえてくる。しかも、恐らく十人以上の集団だ。

 

 この八年間、人が死体で流れ着くことはあっても、集団(それも生きたまま!)でこの島に足を踏み入れる者はいなかった。

 

 なら、これはもしやこのルスカイナ島から脱出のチャンスなのではないか!?とカルナは意気込んで辺りを警戒しつつ南の海岸に急いだ。

 

 

 ★

 

 

 海岸には、数十人もの男たちがおり食事の最中だった。

 

 浅瀬には彼らのものだろうガレオン船が停泊していたが、よく見ると所々に破損の跡が見受けられた。

 

 どこか国の兵士達なのか船の帆にはでかでかとその国の紋章らしきものが描かれており、ほぼ全員が腰に剣をぶら下げている。

 

 

 (少なくとも前世現世含めても見たことがないな)

 

 

 船と船員を木々の間潜んで観察していると、食事をしている男たちよりも上等そうな服を着た青年が寡黙そうな男を引き連れてガレオン船から小舟で砂浜までやってきた。

 

 誰だろうかと考えていると、寡黙そうな男が此方を凝視していた。

 

 

 (ん?これってバレてる?……っ!!)

 

 

 寡黙そうな男と目が合った瞬間、男は腰に下げていた剣を抜刀。そのまま流れるように此方に目掛けて投擲する。

 

 

「うぉわっ!!」

 

 

 なんとか投擲された剣をかわしたのも束の間。一瞬にして此方まで寡黙そうな男が移動し剣を回収し、問答無用で斬りかかってくる。右、左、正面、左、半身になって突きを避ける。

 

 攻撃に転じることも出来ずにただただ防戦を強いられる。なんとか持ち前の身体能力で凌いでいたが、対人戦闘経験皆無のカルナでは10秒持ちこたえるだけで限界が訪れた。あえなく槍は弾き飛ばされ膝をつく。

 

 

「貴様、何者だ。なぜ隠れて此方をみていた?」

 

 

 喉元に剣の切っ先を突き付けられ、低い声で問いかけられる。

 

 

「えっと、オレはカルナ。この島に漂流した遭難者です」

 

 

「……遭難者だと?」

 

 

「はい」

 

 疑わしげにカルナを頭の天辺から爪先まで観察すると、ある程度は納得したのか、少し敵意が弛む。すると、先程の上等そうな服を着た青年が近付いてくる。

 

 

「っ!!殿下あまり近付かれては…!」

 

「まぁまぁ、落ち着きなよ。君ごめんね?うちの護衛が急に襲いかかっちゃって」

 

「いや、まぁ」

 

 

 近くでみる青年は、どうやらカルナよりも二回りほど歳かさのようだった。

 

 

「ふふ、改めて君の名前を教えてくれるかい?あっと、こういう時はこちらからだね」

 

 青年はそう言うと、胸を張って自らの名を名乗る。

 

「私の名前は、アシュ。アシュ・ヴェーダ。君の名前は?」

 

「オレはカルナ……です」

 

 彼の堂々とした立ち振舞いと寡黙そうな男が口にした殿下という言葉に慌てて『です』を付け足した。それを微笑ましそうに見つめる彼。

 

 

 

 アシュ・ヴェーダとの出会いが、カルナの運命を大きく変えるとは、この時カルナは気付いていなかった。

 

 




正直、見聞色の覇気より心綱の方が語感もいいし格好いいと思うのは作者だけなんでしょうかね?
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