けものフレンズ 〜ふぉーるあうと!〜 作:ガイガーカウンター
「どうだった?」
「いや、なんにも見つからんかった。しかし!たとえ見られていたとしても何も困る事は無い!明日も思いっきりたたかうぞーっ!」
ヘラジカのその一声で少し心配気味になっていたフレンズ達は明るさを取り戻し、一緒になって腕を上げ、叫んでいた。
「あ、相変わらずなんだな…」
「ぅるさいわね…なに?」
カラカルはパチっと目を見開くと目をこすりながらゆっくりと身体を起こす。座ったまま何度か頭をこすり、伸びをすると、眠たげな目を開けた。
「………あれ?クロー、この状況はなに?」
「ヘラジカ軍に入ったとこまでは覚えてるか?」
「あ、あぁ〜!私としたことがこんな…!」
いそいそと立ち上がったカラカルは毛皮をパンパンと払うと、ヘラジカ達の方を向いた。
「えーっと、とりあえず挨拶よね…」
カラカルは息を深く吸って、挨拶を始めた。
「私、カラカルよ。ネコ科で高いジャンプや足の速さには自信があるから必要になったら頼ってちょうだい。」
そして拍手が巻き起こり、よろしくー!と挨拶を交わし始めるフレンズ達。
……起きたばっかりなのにすごいなぁ
「よしっ!それではみなでジャパリまんを食べるとしよう!」
ヘラジカがそう言うと、私達は台の上で円を作って、ジャパリまんを取り出した。……私はカラカルから貰ったがな。
「未だにボスに会ったことがないんだ。」
「きっといつか会えるわよ。」
「ほんとか〜?」
「よし!今回だけとはいえ、新しい仲間だ!食べるぞー!」
おーっ!と声が響くとみんな一斉に食べ始めた。
私もすぐに食べ、そしてすぐに平らげた。
「うお!凄い速さだな!」
「まぁな!」
「私も負けてられませんわ!」
「ちょっとちょっと!私だって負けないよー!」
いつの間にか食事は早食い勝負となっていた。
そして、食事の時間は終わり、作戦会議へと話は進む。
「明日の合戦についてだが、いつも通り突撃あるのみだ!以上!」
「「……え?」」
え?何を言っているんだ?
「どうした?クロー。」
「いや、突撃だけって、それで本当に大丈夫なのか?」
「そうよ、さすがに突撃だけであのライオンに勝てるとは思えないわ。それに、城までだいぶ距離があるし…」
「うーむ、確かにそうだがこれ以外に何かできるか…?」
「ふむ。」
確かに。
「クロー、まずはみんなの特徴を知るのよ。そうすれば自ずとやり方は見えてくるはずよ。」
カラカルはウィンクをして私を見た。
期待されてる…!よし…
「それじゃあ、ヘラジカは何が得意だ?」
「私か?突撃だ!正面きっての戦いなら誰にも負けん!」
「なるほど、シロサイは?」
「私は武器を扱ったりできますわ。こんな風に」
そう言うとシロサイは立ち上がり、その槍をブンブンと振り回した。
ただ振り回すだけではなく、クルクルと槍だけを回したり、上に放り投げて受け止めたり、かなり扱い慣れているようだった。
「なるほど、それじゃあシロサイは前線だな。次はアンタだ。まずは名前を教えてくれるか?」
「あ、拙者は、パンサーカメレオンと申します…気軽にカメレオンとでも…」
「わかった。それじゃあカメレオンは何ができる?」
「よくぞ聞いてくれたでござる!拙者が出来るのはこれでござる!」
カメレオンは手を合わせると、…!?、き、消えた!?
「な!カメレオンが消えたぞ!?」
「拙者は姿を消すことが出来るでござる。だから潜入とか…」
おぉ!すごいすごい!他のやつは何が出来るんだ!?
「じゃあ次はあんただ!教えてくれ!」
「ちょ、まだ話は…」
「はいはーい!私の名前はオオアルマジロだよ!守りは得意らしいけど…出来れば攻撃したい!」
らしい…?何か引っかかるし、この名前って…
「あんた、確かセンちゃんが探してた…!」
「!?、し、知ってるの!?」
オオアルマジロはひどく驚いた様子で、一歩下がる。
「あ、あはははは…私の話は終わり!はい次々!」
そして、すぐに座って私から目を逸らした。
これは…
後で聞くか。
「じゃ、じゃあ次はアンタだな。さっきも話したな?」
コクリと頷くフレンズ。全体的に灰色で、目付きがとても悪い。
アレだけで人を殺せそうなぐらいだ。
「それじゃあ、教えてくれるか?」
「観察が得意だよ。」
ほう、偵察タイプって感じだろうか。
「じゃあ、最後にアンタ、頼む。」
「名前はアフリカタテガミヤマアラシですぅ!得意なことはこの針を使って背後からの攻撃も対応できることですぅ!」
なるほど…とりあえず、全員の特徴は聞けたかな…
………………………
………………………
………………ダメだ。何も思いつかん。
どうしよう、何をすればいいんだ?カラカルは聞けばわかるって言ってたけど、あぁ、カラカル、そんな期待の眼差しで私を見ないでくれ、みんなも!
どうしよう……
はっ!わかった!わかってしまったぞ!
「みんな、考えがまとまった。」
みんなの息を飲む音がする。
そして、私は声高らかに叫ぶ!
「突撃は日が昇る前にするべきなんだ!そうすれば連中が寝ているところを突ける!所謂夜襲だ!これだ!これで行けば必ず勝てる!!!」
「「「「「おおおおお!!!」」」」」
「え!?」
ふっふっふ、聞こえるか、この万雷の拍手を!
どうだ!カラカル!?
………なんかすごい微妙そうな顔してる。
「ちょっと、それはダ…」
「よぉぉし!!流石だクロー!お前を仲間にできてよかった!よし!明日は早いから今のうちに寝るぞ!」
「「「「おーーーーっ!!!」」」」
「ちょっと!?」
みんなササッと暗がりの中に消えていった。
恐らく自分の寝床に行ったのだろう。
ふぅ…
「どうだ?カラカル」
「バカッ!それだけで勝てるわけないじゃない!」
ガーーーン、えぇ、そんな、そこまでダメ?
「な、なんでだ!いいじゃないか夜襲!」
「はぁ…私が言って欲しかったのはそんなのじゃなかったんだけど…」
「うぅ…そんなにダメか…」
はぁ…、あれ?そういえば、
「カラカル、カラカルはオオアルマジロの事知ってたんだよな?なんで教えてくれなかったんだ。」
「私から言っても面白くないでしょ?」
「それだけ?」
「それだけよ」
「カラカルはやっぱりおかしい。」
「え…やっぱりそうなのかしら…」
「そうさ、…へへっ、ま、変わり者どおし、いいじゃん。」
「むぅ…ふふっ、」
「ははっ、」
「「あははははは、はははは、」」
ほんと、なんで笑っちゃうのかな?
「それにしても、オオアルマジロのあの反応、気になるな…」
「そうね、何かあったのかもしれないわね。」
「うーん、考えても仕方がない。明日に備えて今日はもう寝よっか。」
「そうね。」
私たちは壁の角の隅っこの方に行くと、そこで座った。
「でも、夜行性だからそう簡単に眠れるものじゃないのよね」
「あ、そっか、……どうやったら眠れる?」
「そうね…暗くて、狭くて、周りが囲まれてて」
「誰かがあっためてくれたら寝やすいかしら。」
えっ
それって…
心臓が急に動き出したような気がする。
うるさくてカラカルに聞こえないか心配だ。どうしよう…どうしよう!
あぁ…顔まで赤くなってきやがった!
私は胸を片手で抑えながらカラカルの方を見てみると、トンっと、デコを押された。
「うっそぴょーん!騙されたかしら?そんなにメンドくさくないから安心して大丈夫よ」
ふっふーんと、得意げになるカラカル。
……………そうか、からかいやがったな!?
「ほんとは隠れられてさえいればどこでも寝れるわ。寒くても多少は…それにしてもどうしてそんなに赤くなってるの?」
カラカルは小首を傾げ、こちらを見つめてくる。
くぅっ、わざとだろ!絶対!
「お、おぉ覚えとけ!絶対にやり返してやる!」
「あ、怒った?ごめんごめん。」
「ふんっ!さぁ、さっさと寝るぞ!」
まったく!絶対にからかい返してやるからな!覚えとけ!
…………とはいえ、やはり抱きつきながら寝たかったのもあるなぁ
「……ねぇ、まだ起きてる?」
「なんだ」
「私、なんであの時寝てたのか分からないのよ、教えてくれないかしら?」
そして、私の頭に映像が浮かび上がる。
カラカルの涙。しゃくりあげるような声。私に、そばに居てと言った事。………もう見たくはない光景だ。
だから私は…
「なんにもなかったさ。眠かったんじゃないか?」
「それだと納得いかないのよね、あのトンネル?で長い間寝てたし…」
「とにかく、私は知らん。」
「そう…」
チッ、気分が悪い。
なんだってあんな事思い出さなきゃいけないんだ。
あのカラカルの姿は、とっても寂しそうで、悲しそうで、見てたらこっちも悲しくなって…!
あぁもう!頭から離れん!
「カラカル!」
「うひゃ!?と、突然なによ?」
「抱きつかせてくれ。」
「………また何かあったの?」
「ちょっとな、そのだ、…甘えてもいいか?」
「クロー…いつでも相談に乗るわよ?」
悪いな、これはカラカルに話せるような事じゃない。
「そん時は頼む。」
「………さ、おいで?」
振り返るとそこには手を広げて微笑んでるカラカルの姿。
私は遠慮なく飛び込んだ。
「………おやすみ、クロー。」
「おやすみ、カラカル。」
カラカルに抱きついていると、やっぱり落ち着く。
恥ずかしいけど、それ以上の安らぎが流れ込んでくる。
私は、これに病みつきになってしまったのかもしれないな。
「ライオン様。奴らの様子を見てきました。」
「そうか、話せ。」
「はっ、奴らは新たな仲間を二人つけました。」
「ほう?誰と誰だ?」
「それが……」
「どうした?」
「………仲間の一人に、カラカルの姿を見たのです。」
「ほう…?カラカルが………もう一人は?」
「誰かは分かりません。しかし、あまり強そうには見えませんでした。武器を持ってませんでしたし、ウロコもありましたが薄そうで…」
「武器を持ってなくとも強いやつはいる。油断はするな。」
「はっ!失礼しました。」
「ふむ…よろしい、報告は以上だな?」
「はっ、その通りです。」
「では退がれ。」
「はっ!」
襖は開かれ、人影はその奥へ消えて、襖は再び閉じられた。
「…………ふわぁ〜〜、やっぱ疲れるぅ〜。」
ぐにゃりと体勢を崩したライオンは適当に爪とぎをしながら考える。
(しかしカラカルがヘラジカの方に…これは勝ってくれるかもね〜)
ライオンはようやく終わりの見えた合戦にご機嫌な様子であった。
月の光に満たされた部屋で、百獣の王はニヤリと微笑んだ。