東京にいる千早たちと静岡にいるオリ主では行ける大会に違いがあるので少し現実的じゃないですが、全国にかるた大会があり過ぎて妥協しました。
□滝野亮
どうすれば強くなれる?
練習終了後、俺は一人悩んでいた。合宿二日目のエロム先輩との対戦、名人になると意気込んで臨んだは良いが結果は5枚差で負け。
何が悪かったかと考えると暗記とか体力とかいろいろ思いつくが、一番は武器の少なさ。現状使えるのが若宮クイーンと先生の技のみ、これは少な過ぎる。
本来俺の能力はいろんな人の技術を組み合わせることで真価を発揮する。もっと技のバリエーションを増やさなければならない。
そのためには技を模倣する対象を見つけねば。どうすればそんな人が見つかるのか。
エロム先輩は今の俺よりは強いが、特に際立った技術がある訳ではない。強いていえばフワッと体を出してから札を見つけて取るという特徴があるが、それは決まり字まで手元で聞いてから飛び出す若宮クイーンの取り方とは対極的だ。
他に強い人…先生のライバルの猪熊さん?けどあの人の一番の強さは恐らく『感じ』の良さだ。「ちは」とかとんでもない速さで取ってたし。感じの良さは模倣できない。
けど全く札を寄せず札直で取るあの特徴的な配置のかるたは使えるかもしれない。配置を真似するのではなく、札直で取る技術のみ模倣する。配置は練習して体に叩き込まなければ意味がないって先生が言ってたしな。
そうと決まれば先生に頼みにいこう。
「え、あのビデオをもう一度見せて欲しい?ごめんなさい。もう持って帰ってしまったわ。それにどうして…ああ、模倣するのね。分かった、もう一度持ってくる」
ついでに俺の役に立ちそうな強い選手に心当たりがないか聞いてみる。
「…あなたの役に立つかは分からないけど、強い選手なら知ってるわ。綿谷始永世名人。かつて七連覇を果たした名選手。私の世代のヒーローよ」
「綿谷始…その人の映像はありますか?」
「私は持ってないけど、心当たりがあるわ。ちょっと待ってて」
そういうと先生は電話を掛け始めた。
「栗山先生?ご無沙汰しております。ちょっとお願いしたいことが…」
誰かと話し始めてしまった。よく分からないが映像は手に入るらしい。流石先生は頼りになる。
そうと決まれば俺は自分の練習をするしかない。
「ヨロシコ、試合するぞ」
「ええ、俺もう帰るとこだったんだけど。最近急にやる気出し始めたよな、エロム先輩に負けたのがそんなに悔しかったのか?」
「まあそれもあるけど。それだけじゃなくて俺には目標ができたんだよ。とにかくやるぞ!」
「え、ちょっと待って。今日は本当に無理なんだって。勘弁してくれ」
くそ、ヨロシコは駄目か。他に試合できそうな奴は…
「私とやろう、亮」
「理音?」
「私は暇だから。いくらでも相手できるよ」
そりゃ助かる。理音は1年生じゃ俺の次に強いからな。『感じ』が良い相手と戦えるのも嬉しい。それにしても相変わらず無表情な奴だ。
他の1年生女子たちがキャアキャア騒いでるのが気になるが。
◆
数日後、俺は先生が持ってきてくれた映像を見ていた。猪熊さんの札直の取りは無事模倣できたので、そのあと綿谷始さんの映像を見た。名人の凄さを思い知らされた気分だ。
「綿谷永世名人の強みは『感じ』の良さではなく技術よ。イヤな配置にイヤな送り札、札を払うスピードが手元から急に速くなる超加速。あなたが模倣できない部分が強かった」
その通りだ。俺は頭を使う技術やあの超加速を模倣できない。あれは永世名人の経験と筋肉が可能にしている技術だ。けど役に立つところもある。そこまで巻き戻してもう一度見る。
『なにわ『え』の』
『出ました、渡り手!綿谷名人の十八番!』
この渡り手。綺麗で滑らかな流れるような取り方だ。これは使える。この技があれば『感じ』の良い奴とも対等に取れる。もっと強くなれる。
「先生俺は一月後…9月下旬にある埼玉大会で、A級になります」
初めて自分から言った目標に、先生の口角が吊り上がる。そんな笑顔も美しい。
「期待してるわ」
新くんの超加速って彼の肉体のおかげでできる技という解釈で大丈夫ですか?技術で手の速さが上がるって違和感があったのでそういうことだと思ったんですが。
そしておじいちゃんも超加速ができるのはオリ設定です。