□滝野亮
本当に10周走らされた後武道場に戻ると、他の1年生は素振りを始めていた。
「滝野くん、ランニングはもう終わったの?」
「はい!!」
「じゃ、ストレッチした後素振りに混ざって。ストレッチの仕方は仮入部中に教えたでしょ?」
「分かりました!!」
それだけ言うと先生は、他の1年生の指導に戻っていった。
先生の声を聞くだけで幸せな気持ちになる。やはり女神(確信)。
先生と話している間、メガネの先輩がずっとこちらを睨んできていた。なんだったんだろう?ちなみに今日の1年生は2、3年生と一緒のメニューで練習する。
30分のストレッチが終わった俺は他に混じって素振りをし、それも終わったところで先生が集合をかける。
「ウォームアップは終わったわね。では、1年生同士で試合をしてもらいます。」
(これから試合!?)(既にヘトヘトですけど!?)
他の1年の声にならない叫びが聞こえる。しかし俺は動じない。先生にやれと言われればなんでもやる、それが愛。
「まだ百首覚えていない人もいるかもしれないけど、試合の流れを覚えるためよ。対戦相手を確認し、札を並べて暗記を始めなさい」
先生の有無を言わせぬ口ぶりに、他の1年生も覚悟を決めたようだ。対戦相手の確認に行っている。あ、俺も確認しなきゃ。
2試合と30分のストレッチを行い、すっかり陽が暮れてからこの日の練習は終わった。
◆
なかなかハードな練習だったな。俺は元運動部だし、文化部の練習なんて余裕だと思ってたが……
「意外とキツかった」
「いや、ホントそうだよね!超キツい!」
独り言に返答されたことに驚いて振り向くと、やたら髪にパーマのかかった男子生徒がいた。
「…誰?」
「君と同じかるた部1年、日向良彦!ヨロシク!!」
「あ、ああ…よろしく」
「ていうなひどいよ滝野くん!自己紹介しただろ!」
「先生のことで頭が一杯だった」
正直に言うと、ヨロシク男は納得顔になった。
「滝野くん桜沢先生好きなんだもんね!凄かったもんね、自己紹介!」
「まあな」
「分かるよ、だって桜沢先生ってびじ「お前も先生が好きなのか!?」
だとすればライバルだ。負ける訳にはいかない。
ヨロシク男は急変した俺の態度にびっくりしたようだ。慌てて否定してくる。
「いやいや俺は同年代の子にモテたいから!」
「そうか」
よかった。ライバルではなかったようだ。
「って訳でさ、女の子紹介してくれよ滝野くん!」
「どういう訳だ」
「だって滝野くんモテそうじゃん!イケメンだし!ぶっちゃけそのために声かけた!」
下心丸出しか、こいつ。
「まあ、女友達は多いけど」
「よし!これからヨロシク!!親友!!」
「誰が親友だ」
◆
□桜沢翠
桜沢翠は今日の試合で確認した、1年生の実力について考えていた。
この代は山城さんが一番良いわね。2年生の下位と試合させても良い勝負をしていた。他にも小粒だけど数人。あと気になるのは…
1人、頭に思い浮かぶ。
滝野亮。いきなり教師に告白してくるという非常識な自己紹介には驚いたが、試合ではそれ以上に驚かされた。
(彼は一体何者なの?)
試合中の彼の姿勢、手の位置、膝の位置、札の払い方、押さえ方、拾い方…何から何まで自分にそっくりだったのだから。
転生特典の説明まで行けませんでした。申し訳ありません。油断すると主人公が変態になる…。
※1話改訂しました