艦隊これくしょん とある鎮守府のお話   作:順風

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意外にももうできたので投稿。




Episode2

雄輝は自己紹介した電をまじまじと見つめる。背中に背負っているのは12.7cm連装砲なのだがそれを苦もなく背負っているのはやはり彼女たちの力が駆逐艦といえども高い証拠だろうと感じた。

 

「初めまして。ここの提督に任命された平塚雄輝だ。若輩者だけどよろしく」

「い、いえ……私もまだ生まれたばかりなのでまださっぱりなのです。進水もしていませんので……」

 

電によるとまだ誕生してから二月ほどしかたっていないという。その間に事務仕事などの基本知識は学んだそうだが戦闘の知識はまだこれからということだった。

 

「それはこっちの仕事ってことか……まぁあの人もいるしそれに関してはたぶん大丈夫だろう」

「あの人? いったい誰なのです?」

「今日はまだ来てないけど君たちに進水の基礎とかを教えてくれる有能な人だ。来たら紹介するよ」

 

小首を傾げる電に雄輝はそう答える。

 

「さて、大橋さんの指示書によると『とりあえず鎮守府内を見て回れ』ってあるし……ちょっと散歩にでも行こうか?」

「大橋さんとは?」

「うちの上司。急にここへの異動が決まった後二週間みっちり艦娘のことについて叩き込まれた」

「そ、それは大変だったのですね……」

 

そんな雑談をしながら部屋を出る二人。歩き始めると雄輝が前に電がとてとてと後ろについて歩き、雄輝は地図を見ながら回るルートを選定していた。

 

「よし、じゃあ食堂から……ってあれ?」

 

雄輝が後ろを見ると電の姿がない。どこに行ったのかと視線を奥に向けると

 

「電ちゃんやっぱりかわいいわね~!」

「あ、あの……私司令官と散策を……」

「ちょっとぐらいいいじゃないの! 本当にこれ人造って言われても気付かないぐらい肌柔らかい!」

「や、やめてもらいたいです……」

 

女性職員にもみくちゃにされていた。艦娘という言葉の通り女性なので医療行為など男性がかかわると何かとまずいという問題があるためか鎮守府には女性職員も多々いる。軍医や整備士などが主にそうでそれらの部署に男性の姿はほぼない。もちろん男性の職員もいるのだが比率としてはあまり多くはない。

 

五分ほどが経ちようやく解放された電はだいぶもみくちゃにされたためか服も髪も乱れていた。それを電は直しながら二人は目的地である食堂へと到達した。

 

「とっても広いです!」

「確かに。ぱっと見500席はあるな」

 

舞鶴鎮守府内の食堂は今回追加で作られたので内装は特にきれいになっていた。

 

「あ、し……提督さん。サンプルがありますよ」

「ああ、呼びやすいほうでいいよ。司令官でも提督でも」

「わかりました! 司令官さん! それにしてもどっちもおいしそうなのです!」

 

確かに電の言うとおり食品サンプルの棚が二つ並んでいる。なぜ二つなのかというと一つは職員用、もう一つは艦娘用のサンプルだからだ。

 

そもそも艦娘はその強力なパワーを出すために多くの燃料を使用する。しかし、燃料には当然量的な限界があるので一般の食事が使えるか試したところ、普通を食事をとっても力をためることはできた。しかし、燃料に比べるとエネルギーへの変換率が落ちるためかなりの量を摂取しないと満腹にならないということもわかった。

 

そのため当時の横須賀鎮守府では艦娘に必要なエネルギー量を調べ、それに合うようなメニューを食堂に置いた。以前は艦娘はとりあえず1食分と食べても次々とおかわりを要求してくるため食堂の方々がてんやわんやで悲鳴を上げるほどだった。

 

しかし、今ではある程度の指針が示されているので「出しておけばとりあえず大丈夫」という状態になった。大人大盛りサイズの数倍という丼ものがあったりするが一回で終わると考えられるほうが精神的にも楽になる。故に今でも職員用、艦娘用にわけて食堂のサンプルがあるのだった。

 

「夕食時になったら食べにくるか。次はここから近い倉庫に行こうか」

「はいなのです!」

 

          ○

「ここが倉庫だけど……なんというかここも広いな……」

「司令官さんが活躍すると送られてくる資源の量が増えるのです!」

「そうなのか……そこまでは聞いてなかったからなぁ。なにせ艦娘の知識入れるのだけで2週間終わったから……」

「送られてく量は一定です。そして上限を上回ると本部からの支援はなくなります」

「……ほしければ実績を上げろってことか」

「そういうことですね。資源は1日1回まとめて搬入されるそうなのです」

 

事務仕事の説明まで聞いていなかった雄輝にとってはありがたい説明ではあったが同時に最初は資源不足に悩まされそうだと雄輝は感じていた。

 

「次は電たちが寝泊まりする宿舎ですね。そういえば司令官さんはどこで寝泊りをするのです?」

「司令室の隣の部屋だ。近いほうがなにかと動きやすいからな」

「そうなのですか。あ、着きましたよ司令官さん!」

 

司令部ある建物の裏側にある宿舎。ここには最大100人の艦娘が入れるように部屋があるのだが……

 

「誰もいないな……」

「今は電以外誰もいません。ちょっぴりさみしいのです」

 

そうつぶやく電を見て雄輝は彼女の頭を軽く撫でる。

 

「まだここは始まったばかりだ。これからいろんな艦娘たちがここに配属されるだろう。その時に後輩たちに『頼りない先輩だ』とか思われたくはないだろ?」

 

その言葉にこくこくと首を縦に振る電。

 

「お前はうちの鎮守府の最初の艦娘だ。もっと胸を張っていけ。そして駆逐艦で背が小さくても後輩に大きな背中を見せられる……俺は電にそういう存在になってほしいんだ」

「牛乳は毎日飲んでいます! そうすれば大きくなれますよね?」

「……なんか違う気もするけどまぁ大きくなることはいいことだ」

 

それからしばらく雄輝は電を撫でていたが電も恥ずかしくなったのか途中でやめてもらったものの何か残念な気持ちもするのだった。

 

             ○

「というかんじですね。まだ本格的な作業には手をつけてないです」

『……お前よ、危機感無いにもほどがねぇか? 新設の鎮守府なんだ。いつあいつらが襲って来ても不思議じゃねーんだぞ?』

「……といってもまだ電だけですし」

『建造の指示を出すとかぐらいはできるだろうが! 二歩三歩先を読んで手を尽くせって言ったのを忘れたか!? ええ!』

「……申し訳ありません」

 

電話相手からの盛大な説教に雄輝は見えていないとは言えども頭を下げるほかなかった。

 

電との散策を夕食の時間のため打ち切って夕食を済ませたあと、指令室に戻り明日の予定を確認して今日の仕事は終了となった。

 

電は宿舎のほうに戻り、雄輝は上司である大橋義明(上司とは思えないぐらい口調が大雑把。ただし腕利きであり、呉鎮守府の初代提督)に報告の電話を入れていたのだがご覧のありさまである。

 

『ったく……相変わらずだな初対面の奴に優しくする癖』

「初対面で嫌われたら元も子もないと思うんですが」

『艦娘は意志をはっきりと出すからな気に入らなければ気に入らないって言う。俺も呉にいた時初対面で暴言吐かれたことがあった。艦娘っていうのは扱いが難しいんだ。そこんところきっちり肝にすりこむように命じておけ』

 

要するに大事なことだからしっかり記憶しておけという意味だ。彼の部下なら一度は耳にしたことのある単語であった。

 

「ありがとうございます。貴重な時間を割いてしまい申し訳ありませんでした。

『まったくだ。あー最後に一つ、俺が作った提督訓示第四条はなんだ?』

「えっと……帰ろう、帰ればまた来れる。ですよね?」

『絶対その言葉、忘れんじゃねーぞ』

 

多少トーンが下がったその言葉を最後に携帯の電源が切れた。

 

(訓示のことになると特に怖くなるよなうちの上司)

 

大橋の部下はほとんどが艦娘に関わった、もしくは関わる予定の人物が多々いるため提督訓示というものを製作して暗唱させていたりする。第四条は第二次世界大戦中に木村昌福少将が発言したとされる言葉で作戦を強行しようとした部下に告げた言葉である。

 

大橋はこの言葉に特にこだわりを持っているようでこの訓示を忘れた日には延々四時間の説教コースが待っており部下の間では絶対に覚えておくべきもののトップに挙げられているほどだ。

 

(明日は最低限、建造の注文はやっておかないとな。電だけじゃきついだろうから最低限1艦隊を組めるだけの人数は必要……)

 

舞鶴は深海棲艦の出没数は多くはないがいないわけではないのでそれ相応の準備は必要になってくる。……本来なら先ほどまでにやるべきだったのだが新しい家に来た時のような興奮状態で半分ほど忘れており、それが先刻の説教タイムにつながった原因なのだが。

 

そんな感じで夜は更けていき、雄輝は資源と事前にもらった艦ごとの製作率の割合を示したバランスシートを見ながら建造の計画を立てていた。

 

コンコン

 

控えめなノックがドアから聞こえてきたのはそんな時だった。

 

「はい、誰です……か?」

「あ、あの……」

「電? どうしたんだこんな時間に」

 

ドアを開けると電が枕を持って立っていた。ちなみに服装は就寝用のパジャマである。

 

「そ、その……私……」

 

パジャマ、枕、初日。それらのことから雄輝が導き出した結論は

 

「眠れないのか?」

「え? あ、はい。そうなんです……」

 

若干シュンとした表情を見せる電。昼間の散策の際にもさびしいと語っていたこともその結論に至る理由となっていた。

 

「入りな。ココアもあるし飲むか?」

「あ、はい。いただきます……」

 

ココアができるまでの間ソファにちょこんと座って付けていた武装を外す。えらく大きい音がその装備の重さを表していた。

 

「出来たぞ。熱いから冷ましながら飲んだほうがいいぞ」

「はいなのです。あっ!」

「だから言わんこっちゃない……」

 

こんなこともあろうかと用意しておいた冷やしタオルを電に渡す。ちなみにこのタオル、徹夜で仕事の時などに雄輝がよく使っているものだったりする。

 

「司令官さんはまだ仕事なのですか?」

「ああ、今日あんまり仕事してなかったものだから上司に怒られちゃってね。明日の建造の発注の準備をしているところ」

「そうですか……ふぁぁ……」

「ベットは広めだから先に寝てていいぞ。幅取りすぎないようにな」

「……じゃあ、お言葉に甘えて……」

 

先ほどまでは遠慮しがちだったのだが眠気には勝てなかったようで飲み終わったココアの容器を流し台に置いたあとベットに入る。この部屋にある物のほとんどは支給品扱いのようなものなのだが唯一ベットだけは雄輝が家から持ち込んだものだった。曰く『ベットが変わると寝れなくなる』かららしい。とはいってもそのベットでないと寝れないということでもないのだが。(本当に疲れていればきちんと眠れるということ)

 

(なんだか不思議な感じがするのです……)

 

雄輝愛用のベッドに入った電の最初の反応はそれだった。まだ生まれて2月ほどであり、その間は勉強の期間であり、人との交流はほとんどなかった。それが今日ここにきて職員にもみくちゃにされたり雄輝に頭を撫でられたりと感じたことのない暖かさを感じていた。人のぬくもりというものを電は感じ取ったのだろう。

 

(おやすみなさい。司令官さん)

 

そう思ったのを最後に電の意識は夢の中へと落ちて行った。




1日目、終了。電ちゃん暖かさを感じる。

生まれて2カ月といっても思考回路もそれなりにできてはいます。外見に合わせた精神年齢設定になっているのもこうなった理由かも。
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