この世の中には強い人間が存在する。
それは、他人の人生を食物にしている卑怯な人種のことを指しているわけではない。
強さ。心身面が優れていることだろうか?揺るがない信念がある者は強者なのであろうか?
否、つまらない妄想以外の何物でもない。では真の強者とは―
ロトス城通路―
「俺だけで十分だって言ったろ?ロエス前衛隊長様。」
青年は、怪訝な表情でそう言うと息を漏らしつつ踵を返した。
「……シン王子…!お待ちください!このロエス、行かせるわけには参りませぬ!」
ロエスは間髪入れずにシンの進行を妨げ、シンは、またかよ、と悪態をつく。
「何度でも言わせて頂きますぞ!王子ただ一人で魔物討伐の任を行うなど言語道断ですぞ!立場をわきまえて頂きたい!王もそれを望んでおります!」
「で?無駄に兵士を死なせるのか?何度でも言うぞ?俺は時期に王になる器だ、だからオルギア様は俺を認め【継承の証 グランド】を親父から俺に授けてくれたんだ!親父は【グランド】の恩恵を、このラズリクス全土に与えた!そしてラズリクスは誰も苦しまない平和な世界になったんだ!平和な世界で誰かが死ぬのは正しいことか?」
シンは、右親指を自らの心臓部に当て言い放つ。その双眸には迷いは無く自信しかない。
「私は……」
「ロエス。俺は世界最強だ。任せとけ。飯作って待ってろ。」
シンは、ロエスの肩を軽く叩き、その場をあとにした。
「あのままでは王には………」
ロエスは自らの不甲斐なさに目を瞑る。
ーリベル高原ー
青天の霹靂と言う言葉がある。字としての意は【青空に突然雷鳴が轟くこと】だが、内容は【人を驚かせるような突然の出来事や事件】となっている。本来ならば【人】に対して使われるが、今回はそうではないらしい。
「貴方も私を傷つけにきたの?」
「人様を傷つけてんのはお前だろ」
シンの前方には、殺気の篭った低い女性の声で、黒いフードを身に纏った存在が1つ。
「私が何をしたって言うのかしら?ナイフで惨たらしく人を切り刻んだ訳でもなく、それを見せしめに吊るし上げでもしたかしら?私はただ!誰かとお話がしたいだけよ!」
他には一切内容が入ってこないことを流暢に語るが、シンに、あっそう。と流される。
「貴方もどうせ石に成り果てるのよ!私は一生孤独なの!私と貴方の違いはなにかしら!」
そう言うと女はフードに手をやり、自らの正体を明かす。
肩で呼吸をしている女の頭頂部から全体にかけて無数のヘビが息づいていた。
「もうすぐよ、もうすぐ貴方は後悔するのよ!私という存在に!」
晴天を背景に高らかと宣言する、が。
「効かねーよ、俺最強だから。」
「は?……」
女は困惑した。シンの発言にではなく、目にだ。迷いがないのだ、あるのは自信のみ。
「見せてやるよ、最強の証を」
この数日後、彼は最弱にー