皆様こんにちは、ファルクラムでございます。
今作でSEED物の二次創作は4作目となるのですが、今回は時代を若干遡り、IllusionとFateの間の話と言う事になりました。
「キラが南米独立戦争に参戦したと言うIFで書いてくれ」と言う要請により始まった今作ですが、久々に原作沿いに書いたおかげで、なかなかいい感じにスムーズに書けたと思っています。
更に、これまでの作品で出演させたオリキャラを何人か(ラキヤ、ベイル、バルク、イレーナ)を友情出演的に出す事ができたのは、個人的にも満足です。本当はエンドレスのメンバーとかも出せればよかったのですが、話が収拾のつかない物になりそうだったので没にしました。
ただ、南米独立戦争はSEEDの中でもほんの一部のエピソードであり、扱っている書籍も殆ど無い(Destiny ASTRAYの3分の1弱、及びその他)ので、あまり尺を長くとる事ができないと言う事は初めから判っていました。
更に、その数少ない資料が、近所のどの書店に行っても手に入らず苦労しました。ぶっちゃけて言うと、執筆の時間よりも資料探している時間の方が長かったくらいです(汗
そんなわけで、今回は尺が短すぎる事もあり、大して伏線を張る事ができなかった事が、個人的にはやや不満だったりします。
テーマ
今回のテーマは、「英雄とは?」「復活」の2つでしょうか?
キラはヤキン・ドゥーエ戦役の後、心身ともに傷ついた状態で南米に辿り着き、そこからスタートする訳ですが、全てを捨てて彷徨っていたキラが、南米で多くの人達と触れ合い、再び立ち上がって前へと進んで行く、と言う形にしてみました。
もう一つのテーマである「英雄」についてですが、結局のところ、英雄が1人いたところで戦況は何も変わりはしない、と言う事。それはキラのように強大な力を持っていても同じ。必要なのはより多くの人間に自分の戦いを知ってもらう事だと言う事。
原作でエドが言っている通り「たとえ俺がいなくなっても、南米の人々が立ち上がってくれればそれで良い」と言うのは、正しくその事を言っているんだと、書いている間思いました。
英雄の活躍を知った多くの民衆が、「彼を助けたい」「彼のようになりたい」と思って立ち上がる事ができれば、英雄としての役割は充分に果たされた、と考えても良いのではないでしょうか。
さて・・・・・・・・・・・・
今回、あまり語る事が無いです(汗
何しろ発案自体私の物ではないですし、前述したとおり尺が短すぎて、大した仕掛けを施す余裕もありませんでしたから。モビルスーツも、今まで出した物を劣化させた感じでしたからね。
と言う訳で、簡単ではありますが、こんな感じです。
それでは、ご愛読ありがとうございました。
2013年10月2日
ファルクラム
Episode Final「光り輝く明日へ」
「そうか、色々あったんだな、あれから・・・・・・・・・・・・」
ジェスはそう言うと、隣に座った青年に向き直る。
数年ぶりの再会だと言うのに、青年の外見はジェスの記憶からはあまり変わっていないように見える。
だが、明らかに、あの頃と比べて何かが変わっているような気がした。
しいて言うなら、内面からにじみ出ている雰囲気とでも言うべきか、ジェスと出会った頃は、触れただけで壊れてしまいそうな脆い雰囲気を持っていたのだが、今の彼は、どんな困難であっても立ち向かっていく、強い信念が見えるようだった。
キラ・ヒビキ。
かつてジェスが南米の地で出会い、ほんの短い間だったが行動を共にした青年。
かつては年齢的にも精神的にも少年と言って良かったキラだが、時を経た今、立派な大人へと成長を遂げていた。
ギルバート・デュランダルのクローンであるカーディナル率いる武装組織「エンドレス」が引き起こした大規模紛争。所謂「カーディナル戦役」の勝利に大きく貢献したキラは、その後、オーブ軍に復帰して一軍を率いる立場になっていた。
そんな最中だった。ジェスと再会したのは。
南米独立戦争の終戦から、既に9年の時が経過していた。
たまたま仕事でオーブに来ていたジェスは、そこで家族と共に外出していたキラと偶然の再会を果たしたのである。
妻と子供たちは今、友人達とショッピングモールの方に出かけて行っている。その為、キラとジェスは気兼ねなく昔話に花を咲かせる事ができた訳である。
「それで・・・・・・・・・・・・」
ひとしきり昔の事を話した後、キラは話題を変えるようにして口を開いた。
「やっぱり、大西洋連邦の解体は免れませんか?」
「ああ、それはもう、確定事項と言って良いだろうな。もうすでに、いくつかの自治区が独立して行政を始めてるって話だ」
ジェスもため息交じりに答える。
北米関連のニュースは、今現在、連日のように新聞の一面を飾るホットな話題である。
先のカーディナル戦役において、エンドレスは大量破壊兵器オラクルを用いて、北米大陸にある主要都市に対して無差別核攻撃を敢行した。
結果、北米大陸は壊滅状態に陥り、政治、軍事、流通、経済、交通、情報、インフラ、あらゆる要素が崩壊してしまった。
北米大陸は、地球連合の盟主国である大西洋連邦の本拠地でもある。
それ以前の戦況では、スカンジナビア王国壊滅、欧州戦線崩壊、ジブラルタル基地陥落など、比較的、共和連合に対して戦況を優位に進めてきた地球連合だったが、そのたった一撃で状況はひっくりかえってしまった。
エンドレスが壊滅した後、地球連合は共和連合に対して正式に停戦、講和条約の締結を打診してきた。事実上の降伏である。
その後、共和連合と地球連合との間で講和が成立し、戦争が終結したのは良かったのだが、本土が壊滅した大西洋連邦はその後も殉職者への年金や遺族への一時金、戦傷者の収容と治療費、核攻撃を受けた都市の復興支援金、更に欧州、及びスカンジナビア復興支援の為の助成金などで多額の出費を強いられ、ついには国庫が破綻する事態に陥った。
大西洋連邦は、領有する島嶼国家の独立を認め、国内に残った株式や領土の、兵器の売却、さらに臨時国債を発行する事で負債の削減に努めたが、もはやそんなレベルの政策では追いつかない程、国も人も疲弊しきってしまっていた。
そしてとうとう北米本土からも独立を主張する自治体が現れ始め、ついに大西洋連邦は国家としての体裁すら保つ事ができなくなってしまった。
大西洋連邦崩壊
ヤキン・ドゥーエ戦役以来、常に地球圏最大の国家として位置づけられ、多くの紛争に関わってきた大国が、今、轟音と共に倒れようとしていた。
「俺も何度か仕事で北米の様子は見に行ったが、ひどい物だった。一部を除いて、当分は人が住めるような感じじゃなかったな」
「ええ」
ジェスの言葉に、キラも頷きを返す。
キラもまた、講和条約の交渉の際に何度も北米大陸に行き、その際に被害状況を視察した事があったが、ジェスの言うとおり、言葉では言い尽くせない程凄惨な光景が広がっていた。
ある意味、カーディナル戦役が終結した時点で、大西洋連邦の崩壊は免れない事であると言えた。
「後は、連鎖的に地球連合が崩壊するかどうか、だが」
「流石に、そこまでは難しいでしょうね」
ジェスの言葉を聞いて、キラは否定的な意見を述べた。
大西洋連邦は崩壊したが、まだユーラシア連邦や東アジア共和国等、いくつかの有力な国家が残り、新たなる地球連合盟主の座を虎視眈々と狙っている。
盟主国である大西洋連邦が崩壊したとしても、それが即座に地球連合の崩壊につながる可能性は低かった。
「連中は、落ち着いたらまた、戦火を広げてくる可能性が高い。非公式な情報だが、ブルーコスモスの残党も活動を再開してるって話だ。そいつらが出てきたらキラ、お前は・・・・・・」
「戦いますよ。勿論」
事も無げに、キラは言葉を返す。
その瞳には、ジェスが見た事も無いくらい、澄んだ真っ直ぐな光が宿っているのが分かる。
「『戦い続ける事が人の運命だって言うなら、運命と戦い続ける事が僕の運命』。ある人に対して僕が言った言葉です。確かに、戦争は無くならないかもしれない。人が人として生きている限り。でも、そう言って諦めてしまったら、何も始まりませんから」
そう告げるキラの表情には、一切の迷いは感じられない。やるべき事を完全に見定め、歩きはじめた男の顔だった。
戦争を終わらせる算段は、ラクスやカガリなど他の人が考える事である。キラはただ、彼女達が戦争を終わらせる事ができる下地を作る為に戦い続けるだけだった。
「それに、今は他にも戦う理由がありますから」
「他?」
キラの言葉に、ジェスが訝るように首をかしげた時だった。
「パパー!!」
元気な声と共に、こっちに向かって走ってくる小さな影が見えた。
キラに向かって手を振りながら走ってくる2人の子供達。その後ろからは、彼女の姉がやれやれとばかりに、重たい足取りでついて来るのが見える。
「ちょっと、お父さーん!! お話ばっかりしてないで、少しはこっちも手伝ってよ~!!」
散々振り回されてくたくたになった感じで、キラの長女リィスが泣き言を叫んでいる。恐らく、弟と妹の面倒を見るのに疲れ果てたのだろう。
「ごめんごめん・・・・・・あれ、そう言えば、お母さんは?」
先に辿り着いた長男ヒカルを抱き上げながら、キラは怪訝な調子で尋ねる。
確か、エストも彼女達と一緒に買い物に行ったはずだが、見慣れた小柄な姿がどこにも見えない事が気になった。
「お母さんなら、さっきラクスさんとカガリさんに連行されて行ったよ」
「いや、連行って・・・・・・」
リィスの言葉に、キラは苦笑を漏らす。まあ、状況は大体想像できたが。
また服でも買いに行ったのだろう。放っておくと自分の服は全く買おうとしないエストであるからして、カガリもラクスも時々こうして、強制的に買い物に連れ出す事が多い。
たぶん今頃は、エストは2人の手で着せ替え人形にされている事だろう。
と、
「パーパッ!! ルゥも!! ルゥも!!」
「はいはい、判ったから」
キラの膝を叩きながら、次女ルーチェがしきりにおねだりしてくる。どうやら抱き上げられている兄を見て、自分も抱っこしてほしいと言っている様子だ。
キラは微笑を浮かべると、ヒカルの体を左手に持ち替えて、右手でルーチェを抱き上げる。
ヒカルとルーチェ。どちらも「光」を表す名前である。
二卵性双生児であるこの子達は、あのカーディナル戦役の最中に生まれた、キラの子供達である。
双子とは言え二卵性であるから、ヒカルとルーチェは完全に顔立ちが似ていると言う訳ではない。全体としての輪郭や鼻立ちはキラに似ているが、目元はどちらかと言えばエストに似ている。ヒカルがエスト似の黒髪で、ルーチェの方はキラに似て、やや暗めの茶髪と言う違いもある。
しかし、リィスも含めて、この子達がキラにとって掛け替えの無い存在である事は間違いなかった。
「成程な」
家族と戯れるキラの様子を見て、ジェスは納得したように笑みを見せた。
愛する家族の為に戦う事ができる。
それが、キラにとっての強さだと思ったのだ。
たとえどれほど強大な敵が立ち塞がろうとも、家族の為ならキラは、全てを投げ打って立ち向かっていく。
それが、キラ・ヒビキと言う存在だった。
かつて、キラが語った南天に輝く星。
間違いなくキラは、今その輝きの下にいると、ジェスは感じていた。
Episode Final「光り輝く明日へ」 終わり
機動戦士ガンダムSEED 南天に輝く星 完