ルドラサウムはランス君がお気に入りのようです   作:ヌヌハラ・レタス

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LP7年 9月後半 準備(食券)

 

LP7年 9月後半――

ランス城 ――(かなみ)

 

コールドスリープ装置から目を覚ましたあとのランス、私の恋人の様子が変。えへへ。

変というか、ランスが、本気で世界一やさしくてカッコよくなってしまったとしか思えない。

 

 

――朝、目が覚める。外はまだ暗いようだ。

私は、王室の大きなキングベッドで、ランスと一緒に眠っていた。

その証拠に、私の大切なところにランスのものが、いっぱい溢れているのがわかる。肌にも髪にもベトベトについているけれど、いやではない。心が温かくなるくらい。

 

……とはいっても、今のあまーいな気持ちでベッドのまわりを確認するのは、さすがに躊躇われる。

おそらく、私のほかにも“たくさんの”女の子がホクホク顔でぐっすり眠っているだろうから。

 

それにしても、昨日のランスは……す、すごかった。ランスが、こんなにエッチうまかったなんて。

最近はやさしく抱いてくれることも増えて嬉しかったけど、その比じゃない。骨抜きにされちゃうって……こ、こんな感じなんだ。

 

「かなみか? ……起きちまったか? まだ、早いぞ。もうちょっと寝てろ」

「う、うん……」

 

今までのランスと違って、子供っぽさ……は、残るかな。でも、そう。

子供じみたワガママをあんまりしない気がする。かわりに、その。すごく……やさしい。

 

「ん~、ランスぅ~」

 

ランスの逞しい胸板に体を寄せて顔をうずめると、にゃんにゃんみたいに頭をなでてくれた。

くすぐったい。し、幸せすぎるぅ~~!! えへへ。

 

ランス城に帰ってきてから、なにやら本格的に世界が危ないことがわかったんだけど、今も全然その実感が無いなぁ。

 

世界がどんなになっていても、ランスがいればがんばれる。心の底からそう思える。

それはとっても素敵なことだと思えた――そんな人類反撃の朝。

(なお、本日のランスの代理警護は、同衾にシーラもいたため、フレイヤ・イズンが担当していた。代理は代理でいろいろと面白いものが見れて楽しめた)

 

 

 

 

◇ (リック)

 

 

その日の早朝、僕は、思いがけない幸運に恵まれた。

いつものトレーニングのために、ランス城のまわりをかるく走っていたのだが、そこにやってきたのがランス殿であった。

 

ランス殿は、「この時間に起きてしまうとは……微妙にジジイだな」とか言っておられたが、ともかく、僕の口から「(出立される前に)一度手合わせをしたかったです」と、考えなしの本音がこぼれてしまった。

すると、いつもはまるで相手にしてくれない“あの”ランス殿が今、この場で手合わせをしてくれるというのだ。

 

是が非もないことだ。

模擬刀(ランス殿は模擬刀、僕は魔法剣バイ・ロードの模擬長刀)を使うとはいえ、朝はまだ早かったためにヒーラーは、そばにいなかった。

もちろん、ランス殿に“なにか”があってはいけない。重々理解していたが、しかし、こんな僕もリーザスの武人だ。体の底から沸き上がる熱のせいだろうか、笑みを抑えきれないのも事実である。

 

そして、始まった試合は……いや、これは試合と呼べるものだったか――

 

「ウララララァーーーーッ!!」

 

加減など一切なく仕掛けた一撃−−―それは、ランス殿の剣によって、的確に長剣の腹を弾かれた。

構わずに得意の打ち合いに持ち込むべく、連撃をしかけにかかるも……

 

「お前はそれ一辺倒だな。がははは!! ほれっ」

「ウ、ぐっ……!!」

 

剣に気がいった途端、腹に強烈な足蹴りが飛んできた。……いつの間に長刀の間合いが殺されたのだ。

早朝のランニングから鎧をつけていて正解だった。そうでなければ、腹の骨を持っていかれるところだ。

今更わかっていたことだが、ランス殿の攻撃は、型にとらわれることがない。

 

「っ、ウラララァァーー!!」

 

すぐに間合いをつめ、僕から仕掛けていく。ヘルマンにおいてロレックス殿と一騎打ちしたときのように、変に距離をとってしまうと、ランス殿の「懸待一致」を崩す術がないように感じられた。

リーザスの剣はJAPANの剣のように、剣先を取り合うものではないのだが、それでも、剣を合わせただけで技量の差というものは理解できてしまうものだ。

 

ランス殿の緩んだ構えから感じる不気味な位に対して、真っ向から勝負することを僕の本能が完全に嫌っている。

つまり、そういうことだ。

 

「おー、なかなかの剣圧だ。だが、長刀は最初がダメだな。立ち上がり鈍すぎる」

「っぐ、ウラァァーー!!」

 

初撃だ。それをランス殿に上手くさばかれると、正中線を得られない。そればかりか、相手の剣の鋒(きっさき)は常に僕を捉えて離さない。いつでも、僕が切れるといわんばかりだ。

 

すごい。ランス殿からすれば、小手試しもいいところじゃないか。

僕との手合わせを断り続けていたのはこういうことだったのか……! 剣の強さ、技量、そればかりか、癖のある魔法剣バイ・ロード(の模擬刀)を相手にすることに驚くほど慣れておられる。

 

それから、5度、10度と僕は、ランス殿に打ち込んでいき、そして、同じように足蹴りを食らって土の上を転がった。

 

「――はっ、はっ、はっ!! ま、参りまし、た! か、完敗ですッ!」

「がはははは! うむ。俺様の勝ちだ。久しぶりに生意気な“がきんちょ”と剣を合わせた気分だ。暇つぶしになったぞ」

 

ランス殿は、いつものように笑いながらこの場をあとにされた。

土の上に寝転がっている……と、ランス殿が立っていたところを中心にして、円を描くように僕の足跡が無数に広がっていることに気が付いた。最初からずっと同じところに居られたのか。

 

「すごい――」

 

元々、ランス殿の剣は、普通の剣士とは異なるイメージであった。

しかし、今日手合わせをしたランス殿の剣は、ランス殿の剣のイメージ、大陸の剣、JAPANの剣、すべてが合わさったような――。

ここまで一方的にボロボロにされたのは、義父(アルト・ハンブラ)との訓練以来になるか。しかし……幸運な時間だった。

 

今も笑みをこらえきれない。

 

「くっく。剣の道は、こうも奥深い――」

 

そうだ。一つ疑問が残ってしまった。

 

ランス殿は“片手で”剣を軽々扱うようなスタイルだっただろうか。

僕程度の腕では、両手を使うまでもない……ということだったのだろうか。常に、余った右手が腰のあたりに添えられていたが、あれは、いったい――。

 

 

 

 

◇ (ランス・ハーレム 王妃たち)

 

 

窓から……見てしまった。ランスが、リーザスの赤の軍の将軍リックと戦っている姿を。

いや、戦いというのか、一方的に勝っている姿を。

 

「リア。み、見ちゃった……ダーリンすごーーーい!! きゃーきゃー!!」

「ランス様、すごいですね。朝のお稽古をつけておられたのでしょうか」

「いや、すごいってもんじゃないわよアレ!? あれ、リーザスの赤い死神よね!?」

 

ランスの王室で、沸き立つ各国の王女様と大統領。

ピョンピョンと子供のように飛び跳ねるリアは、子供とはいえない豊かな胸が、すごいことになっていた。

 

彼女たちは、ランスとの熱い夜を過ごしていたあと、今朝、リックの獰猛さ溢れるあの掛け声に驚いて目を覚ましていたのだ。そこで目にしたものは、驚くべきものであり、朝から気分が昂ぶらせるものだった。

 

「ねぇ……リーザス、赤の軍の将軍で間違いないのよね……そんなに強くなかったのかしら? ゼスのカミーラダークで共闘したときは、とんでもない化け物に感じたんだけど」

「へー、でこちゃん言うわね。だったら、ゼスの将軍だれでもいいから、リックに手合わせさせてみなさい」

 

なんともいえない空気が漂う。女として、本能的なものかもしれない。

 

「うふふふふ……」

 

ごくり。誰ともなく、生唾をのみこんでしまう。

きっと、昨夜随分と可愛がられてしまったせいだろう。下腹部のあたりが、すっかりできあがってしまっている。もじもじと白いものが滴る内股をすりあわせて、にっこりと微笑み合う。

 

(ダーリンは、絶対絶対ぜーったい渡さないんだから!)

(今日はとても素敵な朝になりました。ランス様のおかげで、リア様とマジック様と仲良くなれました……!)

(ランスは、絶対スシヌのためにもゼスに来てもらうわ! わ、私だって……)

 

 

――なお、この日のランスとリックの試合に気付いていたものは少なくない。

ランス城における合同会議のために、各国から選抜された精鋭が守備隊として多数駐屯していたのだ。

 

ランスの普段のふるまいもあって、胸の内でランスを侮っていた兵はいくらか存在したのだが、この日を境にそうした考えを持つものは、ほとんどいなくなったといえる。また、この戦いぶりを見て、ランスは当然のことながら、リックの腕前を見損なうようなこともなかった。

精鋭とは、正しく人類を代表する精鋭なのだから。(逆に、これがわからない者は、大戦の中で命を落としていくことになる)

 

つけ加えると、王室の窓のそばで仲良く(妖艶な白ガウン一枚で)ランスとリックの試合を見守って笑い合う王妃、大統領らの姿に気づいたものも少数いた。

彼らは思った。この城の王様は、本当に“この世界の王様”なんだな、と。

(なお、微笑み合う女達の姿が、どのように解釈されたのかは、後世の歴史家たちに評価を委ねるとする)

 

 


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