ルドラサウムはランス君がお気に入りのようです   作:ヌヌハラ・レタス

6 / 10
LP7年 9月後半 作戦(1)

LP7年 9月後半――

ゼス――

 

かつて、幾度となく魔人の侵略を阻み続けてた大国ゼス。

此度の大戦においては、最も多い魔人3体(魔人レッドアイ、魔人メディウサ、魔人ガルディア)との戦いが始まっていた。

 

人類の総統であるランスの命によって、当初は(一か八かの)後詰めで控えていたレベル3魔法使いのアニスは、山田千鶴子と共に、魔人ガルディアを迎え撃つ部隊に編入。

魔人ガルディアの率いる魔軍を圧倒的な火力で吹き飛ばし、侵攻を確実に遅らせる活躍を見せていた。(なお、山田千鶴子のストレスは)

 

その他にもランスの命よって、当初は魔人レッドアイと戦闘を行う義勇軍に参加していたリズナ・ランフビットは、魔人討伐隊に強制移動となった。リズナの護衛として、同じく義勇軍として参加していた旧アイスフレーム三人娘(プリマ・ホノノマン、メガデス・モロミ、セスナ・ベンビール)も魔人討伐隊に合流している。

 

後に同三名は、ランス城の守備隊騎士団に配属されることになるのだが、守備隊の隊長であるサーナキアが、過去アイスフレーム所属時にゼスで活躍した話は、ゼスの元レジスタンス仲間が加入したことで、いくらか騎士団員にも理解され、副隊長のクルーチェ・マフィンも隊長にもうひとつ好感を得たようだった。

(また、懐かしい顔ぶれに、ランスのやる気もちょっぴり高まったようだった)

 

なお、ランスの強制赤紙の影響で、魔人レッドアイ部隊との戦いは厳しいものとなったかに思えたが、ラグナロックアーク・スーパー・ガンジーが援軍として編入、さらには勇猛果敢で知られる毛利三姉妹が戦線に合流したことで、なんとか戦線を持ちこたえることに成功。

(毛利三姉妹は、敵の魔法攻撃を苦手としたが、それを含めてこの戦場をとても堪能していた)

 

最後に、首都ではガンジーに代わって、代理の政務を行う副王の座にマジック・ザ・ガンジーがついたが、現在はランス率いる魔人討伐隊と共に行動をしている。戦いの動きは極めて激しく、どこも人が足りない状態であった。

 

首都に残っていたのは、新四天王チョチョマン・パブリただひとりであったが、大量に用意された甘味を食しつつ、影の主役ともいえる安定した参謀ぶりを発揮していた。その裏には、かつてはありえなかっただろう旧四天王パパイア・サーバーの支援も十二分に滲んだものだったといえる。

 

 

◇ (カラーの森)

 

 

「がははは! さっさとペンシルカウにいくぞー。久しぶりだなー。シーラは初めてか。ちゃんと俺様についてくるのだぞー」

「はい、ランス様」

「待て、ランス。サテラも行くぞ」

 

――ランスの電光石火の作戦行動が功を奏した。

魔人討伐隊がカラーの森に到着したとき、カラーの森は、まだ辛うじて平時の様相を保っていた。

 

とはいえ、外の情報に疎いカラーでも、現在の人類の状況くらいは把握している。

カラーの森の守備隊は、ランスの姿を見つけるや否や、これ幸いとばかりに、イージス・カラーに連絡を取った。

 

楽にイージスと合流することができたランスは、勝手知ったるペンシルカウへ手間なく向かうことができた。(ランスは、過去の功績からカラーに絶大な人気と信頼を勝ち得ていた。それが幸いしている)

 

 

◇ ペンシルカウ (パステル)

 

 

「がははははは! 来たぞー!」

「おとーさん! おとーさん!」

 

女王の執務室で、サクラと魔軍についての会議をしていると外が騒がしくなっていた。

まったく。今がどれだけ大切なときか、それがわかっておるのか。

 

おおきな声ではしゃいでいるのは、間違いない。妾の子リセットじゃな。

それからあの男だな。……なぜ、ここにおるのか。

キャアキャアと妾の民の黄色い声もよく聞こえる。ぐぬぬ……なぜ、あのような男が、こうも人気なのか。

 

と、執務室のドアがノックも無しに開かれた。ぐ、やはりランスだ。

 

「パステル。とっとと逃げるぞー。あと、話を早くする。聖地の洞窟にいくぞ」

「!?」

 

ぐふっ。こいつ、いきなり急所をついてきおる! だ、だからこいつ嫌いなんじゃあ。

妾は抵抗したものの(サクラもイージスも助けてくれなかった)、女王の立場上あまり強く抵抗するわけにもいかず、結局聖地にやってくると――やっぱり母上たちに怒られた。

 

「あのね。こういうときにまで、ここを守る必要はないのよ」「来るのが遅いわ」「……行くぞ」

「ひえっ、し、しかし」

 

わかっているつもりだった。でも、それは簡単なことではなかったのだ。

ペンシルカウは、妾の、カラー全員の大切な場所なのだ。それを自分の代で終わらせるのは、魔軍に踏み荒らされるのは、どれほど耐え難いことか――

 

「モダンちゃん、そのくらいにしてやってくれ。パステルもカラーの女王だぞ。それくらいわかっていたはずだ。苦しい決断だったのだろう」

 

(ヒソヒソ……ちょっと、考えすぎてやることが空回りしたってところだろ。よーく見ていろ、俺様がネジを締め直してやる)

(ヒソヒソ……あー、それはたぶんそんな感じっぽいですねぇ。娘が申し訳ないです)

 

なんで、ランスが妾の気持ちをわかったように言うのだ……!

しかも、正鵠を射てきておるのが、また腹立たしいわ。

 

「はー、ランスさん。パステルの気持ちがわかるのですね」

「ふふん。当たり前だ。リセットは、俺様とパステルの子だぞ」

「えへへー」

 

うれしそうなニコニコ顔で、妾とランスを見つめるリセット。ぐっ……。

いくつかランスに憎まれ口をくれてやろうとしたところで――ランスが、急に妾の耳元に顔をよせて、一言つぶやいた。

 

「パステル。もう少し俺様を頼れ。俺様もお前を頼る。貸し借り無しだ」

 

……は? 一瞬、ランスの言っている言葉の意味が理解できなかった。

この男が妾を頼る? 冗談を言う空気でもないし、そんな表情でもない。どういうつもりじゃ。

妾も歴代女王の前だ。(やけに信頼されとる)ランスの言葉を軽々と流すわけにもいかぬ。

 

「貴様……本気で言っておるのか?」

 

妾に対して、それ以上の言葉はなく目で訴えてくるランス。

……はっ。そうか、他の者の手前、口にすることができないというわけじゃな。

 

「……ふん。そうならそうと……」

「おかーさん、おとーさんと仲良し?」

「う、うるさいリセット! そういうことは言わんでよい!」

「がはははは!」

 

――ふっふっふ。おっと、口元が緩まぬようにせんといかんな。

しかし……なるほどのう。ふむ。

 

人間にしては、なかなか堂に入った立派な立ち振る舞いである……が、実はそうだったのじゃな。

そうじゃろう。そうじゃろう。

 

今回の戦いは、必ず過去最大に激しいものとなるだろう。

ランスのやつは人類の代表なんぞをやっておるようじゃが、やはりまだまだ力不足といえよう。

だが、妾(村長)ともなれば、ランスの労を察することも、援することもできよう。

ようやくわかってきたようじゃな。妾の――“偉大”さが。

 

「ごほん。パステル、ちなみに、俺様はペンシルカウから完全撤退する気はないぞ。今は一時の“転進”にすぎん! 必ず取り戻すぞー! がはははは!!」

「!! (なるほど、その手があったわ!)よ、よくわかってるようじゃな。なら、妾は魔人をすべて蹴散らしたのち、再びこの地に戻ってこよう! あっはっはー」

 

(ひそひそ……おかーさんと、おとーさん、仲良しだねー)

(ひそひそ……ねっ。さっきの素敵でしたね。恋愛小説みたいで私キュンときちゃいました。年ですねー)

 

 

――こうして、カラーの森からの撤退作戦は、驚くほどわずかな時間のうちに達成することができた。

撤収作戦における犠牲者は、まったくの“ゼロ”。

のちに、「奇跡の撤退」と呼ばれる伝説的な撤収作戦であった。

 

カラー達のペンシルカウ放棄をまったく知ることができなかった魔人レッドアイが率いる魔軍は、ゼスの攻撃の手を止め、誰もいないペンシルカウを求めて、この後、無駄に時間を浪費することになる。

 

人間とカラーという難しい関係をものともせず、類まれなる指揮をとったランスとパステル。

この実話は、あとにドン・ドエススキーの手で小説化されることとなり、(特にカラーの間では)国民的、歴史的大ベストセラーとなる。

種族間を超えるような難しい恋愛を夢見る者にとっては、聖書的な希望となり、ランスとパステルの関係は、羨望の眼差しで見られるのであった。(ヌーク77にとっては、正しく聖書になった)

 

また、なんやかんやで、機嫌をよくした(難しそうで単純な)パステルはランスとの関係を回復させていくことになる。(実のところ、性格的に一致するところが多く、もちろん、リセットの存在も大きかった)

 

 

◇ (ランス)

 

 

がはははは! 今回は楽にカラーの森から脱出することができたぞ。

まぁ、今の俺様にかかればレッド・アイのヤツが出てきても問題ないのだが。

 

……いやいや、待て待て。ロナちゃんを助けねばならんのではないか。

たしか、昔はレッドアイのやつに捕まっていたってビスケッタさんに聞いた覚えがあるぞ。そうだ、だから俺様のメイドにしたとき、痩せたにゃんにゃんみたいな体をしていたじゃないか。

 

むむ。なにか罠を仕掛けておくか……くそ、やはり今回の魔人どもとの戦いは、同時にやらなくてはならんことが多すぎるぞ。

パーフェクトな俺様でも、いや、真・パーフェクトな俺様にしかできん難易度だ。

うむ。絶対に助けるのだ。

 

「えっ!? 本当ですか! は、はい! ……ランス様、大変です!」

「どうしたシィル。……何があった。落ち着いて報告するのだ」

 

急ぎの魔法電話を受けたシィルからだった。

シィルとシーラには、魔法電話を携帯させて、俺様の秘書(電話番)に据えていたのだ。各国からの定時連絡を徹底させることで、いつどこにいても俺様の女のピンチを知ることができるのだ。(もちろん、頭が賢く見えるから、眼鏡を装備させた)

 

「は、はい! マジノラインで異常が発生したようです。詳細はわかりませんが……あ、まだ、なんとかなっているみたいです。でも、あまり長くは持たないと」

「えっ!? ほ、ほんとなの!? ウルザからの報告、それ!?」

 

顔を真っ青にするマジック。……どういうことだ。今はまだ9月後半だぞ。

前回の俺様が最初にマジノラインが突破された報告を受けたのは10月より後だったはずだぞ。少なくとも10月前半は、マジノラインは突破されていなかったはずだ。

 

「ランス様……どうしましょう」

「ふんっ、決まっている! さっそく魔人討伐隊の出番が来たぞ! がはははは!! シィル、俺様に続け―!!」

 

 




※9月後半 準備(3)を修正しております。

私が、ゲームの1ターン目の状況を勘違いしていたため(魔人メディウサの悪行はまだだった)修正しました。
物書レベル0の私の力量ゆえです。申し訳ありませぬ。
今後もありそうなのを含めて、ご容赦いただきたく。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。