ルドラサウムはランス君がお気に入りのようです   作:ヌヌハラ・レタス

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LP7年 9月後半 作戦(食券1)

◇ (サテラ)

 

 

サテラ達は、異変が発生したらしいマジノラインへと向かっていた。

現在の魔人討伐隊は、ランスが選抜した魔人討伐隊(選抜組)と帰還組にふたつにわけられている。

 

帰還組は、たくさんのカラーを引き連れて、そのまま人間たちの拠点CITY(ランス城)へと向かった。(カラーは、パステル、イージス以外の全員が帰還組。リセットは嫌がったが、パステルとランスが絶対に譲らず、サクラとアカシロ、ご先祖一同に任せて帰還組とした)

 

もちろん、サテラは討伐組だ。ふっふっふ。

まぁ、サテラからすれば、人類は魔軍にやられてもいいのだが……サテラにも気に入っている人間がちょっとだけいるのだ。だから、いや、どちらにしてもケイブリス派の連中なんかに好きにさせるのは気に入らない。

 

「ぐごー、んー……、ぐごごー」

(ランス……サテラのそばでよく無警戒に眠るな、コイツ)

 

なんとなく、戦いに備えて眠っているランスの髪を指で梳いてしまった。

巨大戦艦からランス達と一緒に早うし車で移動している最中にも、こんな時間を過ごしていたな。

 

あのときは、調子づいたケイブリス派の魔物将軍どもを何度も相手にする間に、ホーネット様がケイブリスに敗北したことをサテラも理解せざるを得なかった。

でも、慌てて魔人領に飛び立とうとするサテラを落ち着かせてくれたのが、ランスだった。

 

あのとき、サテラが魔人領へ向かっていても、魔王城にたどり着けずに間抜けな姿を晒したか、この作戦に参加できず、サテラは落ち込んだはずだ。だから、ランスにはちょっとだけ感謝している。

 

(……んふふ、それもだが)

 

巨大戦艦でのジャハルッカスとの戦いのときに感じた、ランスの圧倒的な“気”。

魔人のサテラならわかる。

 

やはり、あれは単なる人間が持つのとは全然違う。魔人がまとうものでも無い……サテラが知る限りでは、真に選ばれた強者のみが得る特別なオーラだ。

 

だから、サテラは早うし車の中で、こっそりランスに聞いたのだ。

あのときの力の秘密について。

 

「ふーむ。サテラは誤魔化せんか。みんなには内緒だぞ――」

 

――ランスは、それからサテラにある“約束”をしてくれた。

ま、まさかランスがサテラのために、こんな壮大な準備をしていただなんて。確かに、今のランスなら十分にありえることだ。サテラも大賛成だった。

 

惜しむべくは、感動のあまりボロボロ泣いてしまってランスに対するサテラのメンツがちょっと落ちてしまったかもしれない。サテラは、あのリーザスのへっぽこ忍者のように、ちょろい女ではないのだが。

 

(ふふふふ)

 

今思い返しても、いや、あんまり思い出しすぎると下着が危ない。今は、作戦中で予備があまりないのだ。

まぁ、ランスは、サテラの特別になってくれるのだ。なら、サテラも、その気持ちにこたえてあげないといけないだろう。他のランスの女たちには悪いが、これはそういうことなのだ。

 

やさしいランスのことだ、ちょっとくらいは女達と遊んでやることもあるだろう。そうだな、サテラもシィルくらいは、そばに置いてやってもいい。

でも、魔人であるサテラと、人間の女では、まさしく存在が違うのだ。つまり、ランスの一番はサテラということだ。

 

(んふふふ! サテラとランスが一番。んふふ)

 

 

――昔から感情的で暴走しやすいとされていた魔人サテラは、今も完全に熱暴走していた。

しかし、しっかりと手綱をにぎる男がいたおかげで、このあと、魔人サテラはこの激動の戦乱の中、魔人としての確かな活躍を歴史に残す。

 

常に最前線で戦う人類総統ランスの姿は、このあと各国の有名な画家の手で無数の絵画が描かれることになるが、絵画の多くには、ランスと肩を並べて戦う勇ましいも美しい魔人サテラの姿があった。

描かれた魔人サテラの姿は、初恋をかなえた乙女の表情をしている――というのが常でもあった。

 

 

 

 

◇ (マジック・ザ・ガンジー)

 

 

「がはははは! うむ……うむ。それでいいぞ。あと、ウルザちゃんは、もっと俺様を褒めていいのだぞ」

「……」

 

ランスは、魔法電話ごしに信頼する新四天王の一人、軍師ウルザと連絡を取っていた。

いろいろと積もる話もあるようで、こんなときだというのに……話が盛り上がっているようだ。

 

「ふん、ウルザちゃんは極端だからな。無茶するなっていっても無茶をするだろ。……ガハハハハ!! それは、口だけのウソだな。俺様はわかるぞ。0か100かみたいな子供だからなぁ。なに年上だ? ……ガハハハ!!」

(……むっ)

 

四天王の中で、もっとも荒事に経験をもつウルザ。

今回の大戦が始まる以前から、かなり長い時間魔人対策について、私も一緒に過ごしてきたつもりだ。

 

信頼もしているし、されているという気持ちもある。

でも、ランスとウルザの距離って……。ちょっと……今更だけど、すごくない?

 

ランスと電話で話をしている今のウルザの声色。なにこれ、こんなだったの?

おそらく無自覚だろうけど、いつものウルザらしくない。ゼスの新四天王にして軍師様のウルザのはずが、“あんなにも”地のウルザが色濃くなっちゃってるじゃない!

 

ウルザは、ランスと一線引いているつもりなんでしょうけど……誰よりも心の内輪にランスを入れているのが、ビビってわかる。伊達にランスの赤ちゃん、産んでません。

 

(ずるいわよ。ランス)

 

新体制のゼスになってから、ウルザとは、けっこう仲良く仕事を一緒にやってきたつもりだったけど……でも、二人がアイスフレームという組織で過ごした時間は……。

ウルザにとって、私とランスのどっちが心の深いところにつながっているのか。

それがわかっちゃうくらいには、差を感じてしまった……かな。

 

(まさか、自分の夫に……寝取られる気分を味わされるなんて……いや、でも、まだまだこれからなのかも……)

 

マジノライン崩壊の危機のただなか、不謹慎な思いはあれど、いろいろと女の勘がビンビンしている。

あぶない。今のランスは別の意味でいろいろと危ない。何がどうとかじゃない。やたらとランスが大きくみえる。魅力の溢れかたがズルい。

 

(ウルザは、私の手前なんとか……でも、今のランスだと……もしも、そうなっちゃうと、スシヌに腹違いの妹か弟かぁ……あー、頭痛くなりそう)

 

この大戦、もしも人類が勝利することができたなら、私のライバルはいったい何人になっているのだろうか。

寒さを感じるには、まだ少し早い季節だというのに……身震いがした。

 

 

 

 

◇ (????)

 

 

(……あのランスが、人類の総統だって……? 何を言っているんだ?)

 

今日も僕はいつもの酒場ですこしばかり酒を楽しんでいたら、そんな馬鹿げたホラ話を耳にした。

 

「ど、どういうことですか? 僕にも……ヒック……ちょっと教えて、ください」

「あ? 息、酒くさっ! アンタも毎日そんなになるまで飲んでちゃダメだって、はやく帰んな……あっ、腕掴まれると、痛いって」

 

この酒場のアイドル、アタゴ・マカットさんだ。

ちょっと千鳥足になっていた僕は、彼女の腕をすこし乱暴につかんでしまったようだ。義手の調子がわるいらしい。

そういえば、アタゴさんは、ランスにいつもひどいことをされているとも聞く。

なので、彼女から詳しい話を聞くことにした。

 

「あぁ、ランスね。ひどい男よ、そうね。もう(そんなアンタもひどい常連ナンバー2よ)」

「同感です(よかった。彼女は、正常な女のかただ)」

 

現在、人類が魔軍に攻められていて、危険な状態になっていることは僕も知っている。

しかも、そんな状況であるにも関わらず、リーザス、ゼス、ヘルマンなんかの国がいがみ合っているせいで、魔軍は破竹の勢いで領土を広げていたはずだ。

僕としては、魔軍にもっと頑張ってもらってから、一旗揚げたいところなので、都合がいい。

 

そうなのだ。僕は、冒険者としての力量は一流なのだが、功績に欠けていたかもしれない。

若いころは功績よりも、やるべきことがあるという気がしていた。しかし、世の中の女は、見る目がないことがわかってきた。だから、わかりやすい功績が必要だったのだ。

 

功績さえ手に入れれば、今は相手にされていないアームズさんだって僕を見るだろう。

僕のもとを去ったマチルダだって、いや、あの子にはもう未練が無いのだが……そうだ、シィルさんだって。

 

「いや、それはランスが解決したらしいわ。まぁ、アイツだしねぇ」

「は?」

 

話を聞いてみると、ランスは本当に人類の総統になっているらしい……ありえないことだ。

すでに何体もの魔物将軍を倒して人類に貢献している? 次は、ゼス方面の大作戦に向かったらしいと?

 

「……」

「いた、痛いって……! もう、腕離してよ(コイツ、ちょっと怖い……)」

 

アタゴさんは、ちょっと気をぬいた隙に僕の義手をふりほどいて逃げてしまった。ひどい人だ。せっかくランスの悪口で気があっていたのに。もっと話をしたいところだったなぁ。

しかし、ランスが――。

 

「いけない……このままでは、ヒック、……ゼス、ゼスか……そうだ、フフ、フフフフ……」

 

 

――こうして、マカット酒場からひとりのあやしい常連客が姿を消した。

なお、あやしい常連客からツケの支払いがなされることは無かった。

 

アタゴは、店から変な客がひとり消えたことをひとしきり喜んでから、酒場の周りに塩を撒いた。

CITYにとっては、万々歳であるのだが……しかし、何ともいえない不安に襲われることになる。

 

(これ、ランスに言うべき? ……でも、ただのキチガイの酔っ払いってだけかもしれないし)

 

いいようのない不安を抱えたまま、魔人討伐隊のランスの帰還を待つことになるアタゴ。

残念かつ無自覚なことなのだが、アタゴにとって、もっとも強くて信頼できる気の知れた異性とは、ランスの他なかったのである。

 

 




誤字脱字のご報告ありがとうございます。とても助かりました。
下記6名様のおかげで、今のクオリティが保てている次第ですー。

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