TS転生少女はくそびっちじゃないです+こぼれ話   作:薄いの

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TS転生少女はくそびっちじゃないです

障子越しに陽の光の降り注ぐ部屋。

そこは、周囲には開かれたままの画用紙に散らばるクレヨン、まさに子供部屋といった様相の場所だった。

不釣り合いなものがあるとしたら、ひとつだけ。

 

それは、来年から小学生になる二人の幼児。

 

片や年齢に見合わぬ鋭い眼光を宿した男の子であり、片やふわふわとした柔らかそうな黒髪から一束のアホ毛を屹立させた女の子である。

 

障子戸の枠に腰掛ける男の子。

彼が足を組む様は年齢不相応に似合っており、不思議と慣れに似たものを感じさせている。

 

「ねぇ、あたし――……じゃない、おれの言いたいこと、わかります?」

 

男の子の言葉は部屋を照らす日差しを凍てつかせるような冷たさを秘めていることが女の子にはありありとわかった。

 

「……あの」

 

弱弱しく声を上げたのは女の子の方だった。

彼女は、小さな体で正座のまま、腕ごと全身を前に投げ出すようにして伏していた。美しい――とは、言い難い、だがどこか慣れを感じさせる土下座であった。

 

「あ゛?」

 

「ぴぃっ!?」

 

蛇に睨まれた蛙。

足を組み、幼い少女を睨む、これまた幼い少年に。

堪らず少女の喉から悲鳴が漏れた。

 

「……顔をあげていいです」

「あ、あいっ」

 

男の子の声に、恐る恐る、といった様子で顔をあげる女の子。そして、その頭上で優雅に踊るアホ毛。

 

男の子は小さく、どこか吐き出すような様相で呟いた。

 

「……『わたしがおとなになったらあなたのおよめさんになってあげるね!』」

 

少女の口元がひくり、と引き攣って額から一粒の冷や汗が伝うのが彼にははっきりと分かった。

 

「おうちがおとなりさんどうしで、おさななじみで、なんだかんだで恋人になって、同棲してて?深夜におうちがもらい火の火事になって、気持ちよさそうに爆睡キメたまま煙吸って気絶してる彼氏引き摺って逃げようとして間に合わなくて?――ふたりとも死んじゃって?目が冷めたら並行世界っぽいのに生まれ変わってるし、なんかあたし、男の子になってるし?」

 

「……きびしい人生だった」

 

男の子から目を逸らしながら白々しい声音でぼやく女の子。

 

「ぶっちゃけ死んだこと気づかなかったでしょ。今なら怒んないからいってみ?ん?」

 

「ぜんぜんきづかなかった!!」

 

――どやぁ!

と言わんばかりにまったいらの胸を張って弾かれるように叫ぶ女の子の姿に男の子はその整った顔立ちにうっすらと青筋を浮かべた。

男の子は『きっと脳みそが小さくなってるからこの子はこんなにアホっぽいんだ』、時間の流れがこれ(あほのこ)を直してくれると自らに言い聞かせているが、残念ながら元からこんなん(あほのこ)である。

 

「あたs――、、おれはさ、おとなりさんがすぐにこ、恋人の……その、恋人の生まれ変わりだってすぐに分かったけどどうよ?こうみえてさ、じゃっかん運命感じちゃって、いつきづいてくれるかな、とかちょっとおろかにも乙女てきな、どきどきしながら期待しちゃってたんだけど?」

 

「ぜんぜんきづかなかった!!」

 

「なんちゃってロリ、そのアホ毛ぶち抜くぞ」

 

「ぴぃっ!?」

 

頭を押さえて、瞳に涙を浮かべて後ずさるアホ毛ロ、――女の子。

傍から見ると女の子をいびる男の子というDV染みたこの行為、この先十年、二十年と続いていくのだが、現時点ではそのことを薄々察している男の子と野生の本能で勘づいている女の子共々なんとなく理解していた。歪んだ信頼関係である。

 

「でさ、待ってたらさ。『わたしがおとなになったらあなたのおよめさんになってあげるね!』ですよ。元は男だったとはとても思えない感じの、むっっっだに愛らしい顔で、どういうことなんです?ねぇ?」

 

「たしかに、われながら父、母ともにたぐいまれな、うでのいい造型師につくられたものだと、おもう」

 

「おのれは美少女フィギュアかっ!そして、問題はそこじゃないっ!」

 

ほう、とどこか熱っぽい吐息を吐き出した女の子に向けて男の子は叫んだ。

半眼でジトっとした視線を女の子に向け続けると、彼女は居心地悪そうに口元を歪める。

 

「いや、まぁ……でも、切り替え早すぎじゃないです?――まぁ、わかりますよ。前世は前世でさ、今を生きる為にどこかで割り切んないといけないのはさ、今は何歳でしたっけ?」

 

「わたし、ごさい!!」

 

「よぅし、いきの良い五歳児だ。中身が二十代後半の男だと考えなければそれなりにいけますね。で、なんでこんなあざといセリフ吐いたんです?」

 

「……あたま、良さそうだったから、いまのうちにこなかけとこうかなって」

 

「おい、薄情浮気ロリクソビッチ」

 

「ひどい……。わたしは……こんどは、ひとりで、生きていくつもりだったから、でも、ひとりが、つらくなった時のために、なにかしておきたかった、だけ」

 

「―――あっ」

 

女の子は表情に影を落として小さな声でそう言った。

その姿はどこか弱弱しく目を離せばどこかへ消えてしまいそうに男の子からは見えて、自然に声が漏れた。

 

思えば、昔から自分にくっついてくるような寂しがりやな子だった。幼い頃の記憶に想いを馳せる彼の口元は小さく笑みをかたどっている。

 

「……どうしてもさびしくなったら、むりやり。寝取りも辞さない、かくご、だった」

 

「おい、薄情浮気ロリクソゲスビッチ」

 

「ほんとうに、ひどい」

 

女の子の姿に弱弱しいとかそんな儚い過去の幻想を重ねていた、さっきまでの自分を殴り飛ばしたい気分だった。

 

「仮にも元男なのに子供とはいえ男の子相手にそのセリフを吐ける精神性が一番ひどいのかもしれないですね。恋愛観が歪みすぎじゃないですか」

 

前世(まえ)は、恋する前に、愛してたから」

 

「…………ねぇ、それ、言ってて恥ずかしくなんないんですか」

 

『あんまり』、と女の子は答えると小さく首を傾げて微笑んだ。

純粋に、心からの笑みを見たのは生まれ変わってからは初めてかもしれない。

不意の攻撃を受けて、若干苦々しい顔をしながら胸を高鳴らせてしまった男の子はどこか逃げられない宿命というか、かといって新たな世界の男どもに女の子(これ)を放流する気にもならない諦めの悪い自らの性根とか諸々を自然と受け入れてしまっていて、思わず溜息を吐いた。

 

「言われてみれば、ちょっかいだすの、たしかに女の子でもよかった。ううん、むしろ女の子がよかった。男と女、倫理観はいつもわたしの足をひっぱる。非常にないすな、助言」

 

「外してはいけない(たが)を外してしまった感があります」

 

「さすがのわたしも、男の人に純潔を奪われるのは心が折れる、かもしれない。それなら女の子の方がきずが少なくて、すむ」

 

「そういえば、精通って何歳ぐらいでしたっけ?ちなみに何歳ぐらいでした?」

 

「覚えていない。というか、ちょ、ちょっとなにいってるか理解できななにゃい」

 

「今回は貰う側ですね」

 

男の子はこれまで見たことないくらいに怯えと恐怖を顔と震える声音で表現する女の子の姿に若干の興奮を禁じえなかった。

 

「損する側に回っただけですよ」

 

「むり。こわい。それはさすがにあたまぶんぶんはろーゆーちゅーぶ。ぶんぶん」

 

「それは違う人ですよ」

 

男の子は青い顔で首をぶんぶんしている女の子の髪にそっと手を添えるとふわふわの髪の毛を優しく撫で始めた。――下種な笑みを浮かべながら。

 

「中身がこれなら罪悪感を感じないで前は出来なかったスク水も体操服でも出来ますね」

 

「……わたしたち、わかれたほうがいいとおもう」

 

「無理矢理がいいんですかね」

 

「女の肉を裂いて血と涙の海にわたしをしずめたいという趣向は、ちょっと、かなり、困る。マジで」

 

「マジでって言葉を通算三十年近くあなたと過ごして初めて聞きました。死ぬほど似合わないですね」

 

「そこにふれないでほしい」

 

呆れたような言葉を放つ男の子へと彼女は真っすぐな視線を向けた。

若干の涙を溜め込んだ瞳、熟れた林檎のように紅潮した柔らかそうな頬、珍しく不満そうなジトっとした視線。

 

「……余生かな、とおもったら、延長戦だったのでもう少しがんばろうかな、って気になってたのに」

 

「そうですか」

 

「うん」

 

「じゃあ、キスからはじめましょう。大丈夫ですよ。これは練習ですから。子供同士の他愛ないじゃれあいだからセーフです」

 

そっと肩に添えられた手から感じる見た目以上の力に女の子の表情が引き攣った。

怯えの表情を向けてくる彼女の姿を見て、男の子はにっこりと笑って見せると女の子の目が絶望に濁った。

 

「まって、――まってほしい、それは犯罪者のりく―――ちょっ、――ちゅ――ぁぁぁ――んっっ――――!!」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

やや癖っ毛の黒髪をボブにして、穏やかそうな気質を思わせる垂れ目。瞳の色は夜の色。

中学指定のブレザーに身を包み、同じ年頃にしてはやや発育過多な胸元に深紅のスカーフを結んだ身の丈は小さいもののそれをロリ巨乳に昇華させた美少女がそこに在る。

 

それに対して彼は深く溜息を吐いた。

 

「育ちすぎじゃないですかね」

 

「わたしの造形師の腕はやはり一流」

 

「だから、美少女フィギュアかおのれは」

 

「年頃の少女に美少女フィギュアうんぬんの話題はモテない」

 

「女にモテてもどうすればいいんですかね……」

 

「わたしも男にモテても割りとしんどい……実際顔じゃなくて胸に視線が向いているとむかむかするより微妙に気持ちが分かるだけ、割りと純粋に悲しい」

 

学ランに身を包んだ少年とブレザーに身を包んだ少女。フレッシュな年代のはずの二人がそのフレッシュさと相反する鬱々とした瘴気を部屋全体に撒き散らしている。

これが学園屈指の秀才カップルで通っているのだから始末に負えない。

 

ちなみに、過去子供部屋であったこの部屋は少女の部屋になっている。

綺麗に整頓された学生机とやや無機質じみた色気のない白と黒ばかりの色彩が多い。

こういったところは性別というより少女の元来の淡泊な性根が表れているのかもしれない。

 

「ロリ巨乳とかいうマニア向け商品が持て囃される世の中なんて」

 

「……累計三十年以上連れ添った恋人をマニア向け商品と扱き下ろさないでほしい」

 

「マニア向け商品のお陰で漫画みたいな思春期男子特有のリビドーみたいなものが処理出来てるから同級生の青臭い感情もいまいちわかんないんですよね。男の人っぽい人生の機会損失してるんでしょうか、これ」

 

「ちょっとわたし、たまにあなたのこと自分の過去と比べても想像を絶する変態さんすぎて、なんで愛してるのかわからなくなりそう」

 

少女の瞳に広がる夜の闇に雲がかかって、濁り、どす黒いものが混じり始める。

一体少女の過去になにがあったのかは誰にも分からないが、ニューゲームで持ち越したただでさえ少なかった男性意識的なものを大きく抉り取っていったのは想像に難くない。成人向けされちゃうようなことがあったり、現在進行形で進んでいるのかもしれないし、なかったのかもしれない。

 

「そういう自分だって後輩ちゃんといちゃいちゃしてるじゃないですか。うーわー、浮気ですよ。びっちびっちー!」

 

「……び、びっちではない!」

 

「なんかボディタッチ多いじゃないですか、あの子、なにも感じないんですか」

 

「おっぱい大きいとおもう」

 

「正直」

 

「もしかしたら、わたしたちはどちらかくらいは歯に衣を着せたほうがよいのかもしれない。傍から聞かれたら会話内容が汚れているのではないかとおもう」

 

今更である。

少女は髪の毛と性格と脳みそがゆるふわなので、そういった会話のタイミングと場所のコントロールは大体少年の方が取っている。

 

そして、脳みそがゆるふわでロリ巨乳の超絶美少女というだいぶ救いがたい属性を奇跡的に兼ね備えてしまった選択肢一個間違っただけでエロ同人待ったなしの少女の在りように少年はかなり本気で気を揉んでいる。気づかぬは少女ばかりである。

 

「わたしだけあれこれ言われるのも不快。そもそもの話、そちらも――」

 

少女はむすっとした表情で少年を睨み、口を開こうとして、ぱく、ぱくと口を上下させて、やめる。若干少女の顔色は悪く、思わずといったように口元に手をやってえずくように震えた。

 

「――――なんでも、ない」

 

「おい、こら!なにを想像した!一体なにを想像した!」

 

「わたしは、人の性癖には寛容でありたかった」

 

「察しが付いたけど今のあたしにそういう趣味はない!接触があってもそういう目で見るのはやめろ!」

 

「この体になって初めてそのジャンルに踏み込んだ時、ふと、過去のわたしと今のあなたの絡みを想像してしまった時にわたしは自分の限界を知った」

 

「なんで想像しうる限り最悪に近い地雷を最初に踏み抜いてトラウマにしてるんだよ!」

 

「……わたしは今の体でも前のあなたを好きでいられる自信がある。なのに、逆だと……結構、大分……かなりきつい。わたしは、わたしの狭量さを心底軽蔑する。――ごめんなさい。ごめんなさい。……ごめんなさい」

 

深く、深く世にはびこる性癖の暗黒面に堕ちていく少女。アホ毛も萎れているあたり、芸が細かい。

本人がかなり本気で言っているあたりが割りかし笑えないし、なまじ性別逆転して生まれ変わっちゃったミラクルが発生しちゃった時点であんまり笑い飛ばせないあたりどうしようもなく救いがたかった。

 

愛されているのは嬉しい。

そもそも想定してない感じのそびえたってはいるけど特にこっちを邪魔してないような障害を一人で勝手に乗り越えて謎の成長を遂げていることも含めてどうしようもなく愛らしいと少年は女の子であり、少女であり、一人の女であった頃から思うのだ。

 

だが、愛され方が非常にヘビィでファンタジーで冗談で誤魔化しにくすぎたことから少年は半月ほど苦悩する羽目になったが、結局は強引にエロいことしたり、しなかったりする感じでごまかした。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「人の妹を誑かしてどうするつもりなんですかね」

 

「わたしとて、今回ばかりはびっち言われても浮気者言われても受け入れる覚悟」

 

「ほう」

 

「最悪、薄情浮気ロリクソゲスビッチまではぎりぎり泣いて済ませるつもり」

 

「泣いてるんですがそれは」

 

「実はわたしは十年単位で昔に言われた悪口でも忘れないタイプ」

 

「知ってた」

 

合法ロリは執念深い。

それはともかくとして、そう、ロリは順調に歳を重ね無事合法に――ではなく、合法ロ――いや、少女は高校卒業を控える時期にあった。

 

「うちの愛しの妹が全く懐かないんですけど」

 

「兄としての能力不足を悔いた方がいい」

 

「納得いかない」

 

「お姉ちゃんと呼ばれるのは、なかなか胸にきゅんと来るものがある。感無量。最悪、義姉ちゃんと呼ばれるためだけにあなたと結婚してあげてもいい」

 

「義姉ちゃんと呼ばれる前にお母さんって言われるようにぽこぽこ孕ませてやろうか、この似非ロリ」

 

「定職に就いたらいいよ」

 

「……えっ、あっ、はい」

 

かなり下種な冗談のつもりで吐いた言葉があっさり受け入れられて自分を見失いかける。

そんな有様の彼に対して彼女は特になにも気負っていない様子でなんとなく納得がいかないのが彼であった。

 

「わたしたち二人だけの一人っ子同盟から勝手に離脱したことを妬んでいるわけではない」

 

「あー。うん。まぁ、兄弟姉妹の存在は(ぜんせ)からずっと憧れだった時期はありますけどね。逆恨み全開すぎでは?」

 

「正直に言えば精神の穢れのない子どもというだけで割りかし癒し」

 

「我々が言うからこそ恐ろしいほど説得力のある言葉」

 

「昔、五歳くらいから発言がR-18に両足沈めてるような男の子の知り合いがいた、ので」

 

「身に覚えがないです」

 

「わたしはやっぱり義妹と結婚することにした」

 

「妹に彼女を寝取られる超展開。そもそもまだおまえの義妹じゃない」

 

「わたしには、そのジャンルは需要があるかもしれない」

 

「おれにも、ギリギリ需要がある」

 

「…………」

 

「おいっ、なんで無言で後ずさったんだよ!冗談!冗談だろうが!」

 

少女は『えっ、なにこの人実の妹相手に欲情しちゃってんの』みたいな信じられないとばかりの視線を向けている。少女は(ぜんせ)から義妹派であった。だからといってアニメ版とか漫画版とかで実妹がなぜか義妹になってたりするとそれはそれでもにょっていたのだが、その話は特に関係ない。

 

「義妹に奪われるわたしに興奮しているのか、わたしを奪っていく義妹に興奮しているのか、奪われた後の展開に興奮しているのかで対応を変えなければいけない」

 

「妹に奪われるおまえに興奮しているって言ったら」

 

「許す」

 

「おまえを奪っていく妹に興奮しているといったら」

 

「許さない」

 

「……奪われた後の展開に興奮しているって言ったら?」

 

「わたしと握手」

 

彼がこよなく愛する少女は一体自分をどこに連れて行こうとしているのか。

真顔で差し出してきた掌を無言で押し返す。

 

「くそびっち」

 

「くそびっちではない。男性に対してこれ以上ないくらい理解のある優しい彼女。周りに自慢するといい」

 

「知り合いにはロリコン扱いされてるんですがそれは」

 

「『わたしがおとなになったらあなたのおよめさんになってあげるね!』って言われたからおれが大人にしてやったぜ、げへへ、とか言えばいい」

 

「言う機会がないことを切に祈りたい」

 

「出来れば結婚式のスピーチで言ってほしい」

 

「ケーキではなく新郎にブチ切れた親族が集団入刀浴びせていくスタイル」

 

「きっと、親族が遺族になる瞬間が見れる」

 

くすくす、と鈴を転がすように彼女は笑う。

それを目を細めて眺めていた彼は努めて真剣な表情を作り、真っすぐに彼女へ視線を向けた。

 

「おれはどっかの薄情者とは違ってやすやすと死なないし死なせないから安心して欲しいな」

 

彼女は目を丸くして、数度、瞬きを繰り返して――。

 

「今度はうっかり寝過ごして死なないように頑張る」

 

心から幸せそうな笑みを浮かべ、正面から彼の首元に勢いよく抱き着いた。

 

「ここはどう考えても唇を重ねる場面だと思ったのですけど」

 

若干不満そうな声が耳元から聞こえる。

それに、彼女は浮かべていた笑みを深めて、いつかどこかで言ったような、いつも通りの空気の読めない発言をなぞるのだ。

 

 

 

 

 

「ぜんぜんきづかなかった!!」

 

どこまでも楽しそうに、幸せでたまらない、というように。




◇少女
火災で死んだらしいが寝過ごして死亡。
本人的には朝起きたら幼児化してたぐらいなので、悲壮感薄め。
自分が死亡したことは知らないが特に当時のニュースになかったので元居た世界じゃないくらいは理解していたらしい。
半身だと思っていた幼馴染が居ない世界で割りかしやけっぱちに生きようとしてたらしい。
髪の毛と性格と頭脳がゆるふわ。ロリ巨乳。

◇少年
煙吸って気絶してる少女(元・男)放置して一人で逃げるより引き摺って駄目そうなら一緒に死んでやるかなと思ってた覚悟決まってる系の人。
少女以外の前では敬語で話すが少女の前で興奮したり、油断していると前の口調と一人称(あたし)が混じったりする。少女を使って今のうちにできること()は大体した自信がある。

◇後輩ちゃん
おっぱい。

◇妹(義妹)
お姉ちゃん(お義姉ちゃん)呼びを仕込んだのは少年。

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