前回のあらすじ
ヨシヒコ達が強い盗賊三人をやっつけた、その後山の中で変な塔を見つけたからホイホイ中へと入って行った。
塔の扉の隣に「スズキ」という表札が貼られているのも気付かずに
「は~、ムラサキヤベェなホント~いやマジで」
「どうしたんすかメレブさん?」
「だって相手がさ~いやぁ凄いよホントに、次会ったらおめでとうって言わなきゃ」
「?」
意味深な事を呟きながらここにはいないムラサキにいずれお祝いの言葉を上げようと心に決めたメレブ
そんな彼にヨシヒコがよくわかってない様子で首を傾げていると
「しっかしさっきからずっと昇ってるけど随分と長いな~この塔」
「一体誰が建てたんでしょうね」
「冒険者からも苦情が出るぐらいだからな、早く作り主に訴えて撤去してもらおう」
延々と続くかのような長い螺旋階段を昇っている最中で
メレブがぼやき、ヨシヒコは疑問を覚えて、ダクネスが結論を述べた。
そして
「もう私疲れたー、ちょっと休憩タイム入りましょう~」
「アクア……ついさっき休憩したばかりだろお前」
アクアがしんどそうな表情で階段に座り込む。
先程から何度も何度も休みたがる彼女にダクネスがジト目でツッコむも、彼女は全く聞いてない様子で階段に座ったまま動こうとしない。
「ずっと続く階段を昇ってても退屈でつまんなーい、ちょっとメレブ、アンタ一発芸やって私を笑わせなさい」
「うわ出たよ、突然無茶振りしてくる奴。こういう奴が飲み会にいるとホントしらける」
「いいからほら、心の底から大爆笑できるギャグやってみなさいよ、職業に(笑)付いてるんだから」
「ダクネスよ、お前こんな奴とホントに仲間としてやっていけたのか? 俺もうさっきからぶん殴りたくて仕方ないんだが」
「あぁ~……まあこういう時のアクアは毎回カズマの奴が相手してくれていたんだがな」
さっさとやれと言った感じでけだるそうにこちらに振り返って来るアクアに、握り拳を固めながらメレブが苛立っていると
ダクネスがふとこういう時のアクアをよくカズマが対処してくれていた事を思い出す。
「アイツに言われれば大人しくなってくれたんだが、アイツがいないとなると……」
「なるほど、その役割はヨシヒコには出来ないしなぁ~……」
「女神見て下さい、ゲッツッ!!」
「ボツ、安直過ぎ、再現度低過ぎ、ただのパクリ、ダンディさんに謝って」
「空前絶後のぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「だからパクリはダメだって言ってるでしょ、サンシャインさんに謝って」
アクアのブレーキ役であるカズマが不在の為に彼女はもうワガママ言いたい放題である。
今はメレブの代わりにヨシヒコに一発ギャグをやらせて冷めた表情でダメ出しをしている。
「ねぇねぇ私だけココで休んでて良い? 3人でちょっと頂上まで昇って来てよ」
「おい水色頭、いい加減にしないと顎に鋭いアッパーかますぞ」
「そうだいい加減にしろアクア、それにヨシヒコも少しは抵抗してくれ、どうしてお前はコイツに甘いんだ」
ダクネスがワガママなアクアと彼女に従順なヨシヒコに注意する。
そしてメレブもアクアにイライラした様子でハァ~とため息を突き……
「あぁ~あ、全くこいつはホントにダメダメだな~……」
「と、パーティの中にいるお荷物小娘に不満を呟いているこのタイミングで……」
「新しい呪文を覚えたよ」
「ってこのタイミングでか!?」
「ホントですかメレブさん!?」
「本当だよ、このタイミングで急に頭に浮かんだんだよ」
急にドヤ顔を浮かべ出すメレブ
すぐにヨシヒコが期待の表情を浮かべて彼に詰め寄り、アクアは頭に手を置きながら目を細める。
「どうでもいい、アンタが新しく使えない呪文覚えてようがホントどうでもいいから」
「バカ、アクアさんホントにバカ、お荷物。この呪文の効果を知ればお前はすぐに驚きで言葉を失うであろう」
「あまりにもしょーもない効果で呆れて言葉を失うの間違いでしょ?」
彼がどんな呪文を思いつこうが心底興味無さそうに顔を背けるアクアだが
ヨシヒコの方は既に興味津々の様子でメレブに目を輝かせている。
「教えて下さいメレブさん、一体どんな呪文を覚えたんですか?」
「うむ、流石はヨシヒコ、いい食いつきっぷりだ、この呪文はな……」
嬉しそうにしながらメレブは杖を構えるとニヤリと笑って
「掛けた相手のテンションを一時的に上昇させるという呪文なのだよ……」
「テンション?」
「あ、ヨシヒコ知らない? ちょっと前にあの、俺達に強く関わりのある例のゲームで実装されてるシステムなのよ」
テンションが上がると聞いていまいちよくわかっていない様子のヨシヒコにメレブは丁寧に説明して上げる。
「テンションっていうのはまあ、戦ってる途中で相手にダメージを与えたり受けたりする事で上がる奴で、それが上がれば上がる程相手に会心の一撃を与える様になったり呪文が暴走して強力になったりするの、うん」
「なるほど……それでメレブさんはそのテンションが上がる呪文を覚えたんですね」
「そんな効力は私達の世界では聞いた事無いんだが……」
聞き慣れないシステムにダクネスが不安そうに首を傾げてる中で、ヨシヒコはメレブの説明を聞いて一層身を乗り出した。
「ならば是非私に掛けて下さい! そのテンションが上がる呪文を!」
「フフフ、よかろう」
まずは自分に掛けてくれと興奮した面持ちで頼んで来るヨシヒコに、メレブは微笑を浮かべながら杖を構える。
そして
「ほいやさ!」
「!」
変な掛け声と共にヨシヒコに呪文を掛けてみる。
しかしヨシヒコの見た目は何も変わっていない。
「……すみませんメレブさん、何も起きてないんですが……」
自分の身体に何も変化が無い事に疑問を感じて、ヨシヒコがメレブの方へ一段階段を上がると次の瞬間
「わぁ凄い! ヨシヒコ! 階段を一段上がった!」
「何てことだヨシヒコ……階段を上るとはお前は本当に凄い奴だな!」
「流石よヨシヒコ! アンタならきっと階段を上がれると信じていたわ!」
「!?」
階段を上がっただけでいきなり周りが目の色を変えて賞賛されたヨシヒコ。
突然の出来事にヨシヒコがキョトンとした様子で固まっていると、ダクネスとアクアはすぐにハッと我に返り
「わ、私は一体どうしたんだ……? 階段を上っただけのヨシヒコをいきなり褒め称えるとは……」
「私も……なんか急にヨシヒコを褒めたくなったと思ったら口が勝手に……」
「メレブさんこれは一体……」
「フ、これがこの呪文の力だ」
二人して戸惑った様子を浮かべていると、メレブはしてやったりといった表情でニヤッと笑う。
「この呪文を掛けられた相手は、何をしても突然仲間から褒め称えられるという斬新な効果を持っているのだ」
「そ、それはつまり私達が急にヨシヒコを褒め出したのもその呪文の効果のせいなのか……?」
「な、何よそれ~……褒め称えるだけってどんな意味があるのよ~……」
メレブから呪文の効果を聞いてちょっと驚くダクネスとガックリ肩を落とすアクア。
そんな彼女達を尻目にメレブはヨシヒコに耳を傾けて
「ヨシヒコ今どうだった? 周りからいきなり賞賛された時どうだった?」
「最初は戸惑いましたが……不思議と悪い気はしませんでした」
「テンション上がった? なんかちょっと嬉しくなってテンション上がった?」
「……若干上がりました」
「よし!」
ヨシヒコの感想を聞いて満足げにメレブはガッツポーズを取った。そして
「突然周りに褒められて少しだけテンションが高揚するこの呪文、私はこの呪文を……」
「『サスオニ』と今名付けたよ」
「サスオニ……! 凄い呪文ですね……!」
「凄いだろ、流石はお兄様ですと呼びたくなるだろ」
「はい! 流石はお兄様です!」
「いい叫びだ、もしあのラノベが実写化したら、ヒロイン役は山田君決定だわコレ」
呪文名を呟いたメレブにヨシヒコは朗らかな笑顔で高評価を下すも、彼にお兄様と呼ばれても全く嬉しくないメレブは苦笑を浮かべ首を傾げていると、アクアが面白くなさそうにムッとした表情で振り返り
「騙されちゃダメだよヨシヒコ、そんななんの役にも立たない呪文をなんて私達に必要ないから」
「おお? なんだなんだ、いきなり俺のサスオニにイチャモン付けて来てどうしたのアクアさん? もしかして興味ないフリして本当は掛けて欲しいの? サスオニ掛けて欲しいの?」
「はん、冗談じゃないわよ誰がそんな呪文なんか……」
小馬鹿にした感じで詰め寄って来るメレブをアクアが鼻で笑い飛ばそうとするも
そこへすかさずメレブが杖を再び構えて
「そんなあなたにほい! サスオニ!」
「ちょ! いきなり掛けんじゃないわよ!」
彼女が油断している所を突いてすかさず新呪文のサスオニを掛けてやるメレブ。
面食らった様子でアクアは驚きつつも、すぐに抗議する為に立ち上がると……
「そういう変な呪文掛けられる担当はヨシヒコとダクネスだけでしょ!」
「おお~! アクアが立った! アクアが立ったぁ~!!」
「な! 凄いぞアクア! まさかいきなり立ち上がれるなんて! 本当に大した奴だ!」
「なかなか出来る事じゃないですね、流石は女神、一生ついて行きます!」
「え? え?」
ただ立ち上がっただけでいきなり周りから褒めちぎられるアクア。
口をポカンと開けて周りを見渡しつつ、アクアは困惑の色を浮かべながら自分の髪を指に巻く。
「な、何コレ?」
「は! またしても呪文の効果で褒め称えてしまった!」
「無敵ですよメレブさん! こんなに褒められたらテンション上がりますね!」
「フフフ、どうだアクアよ、俺のサスオニを掛けられた感想は?」
「あ、え~と、う~ん……」
ちょっとの間だけだがいきなり周りが顔を輝かせて凄く褒めてくれた。
その事に対して内心ほんの少しだけ喜んでいる事に自分で気付いたアクアは頬を引きつらせながら
「ま、まあ確かに、悪くは……無いわねぇ……でもホラ、一回だけじゃ使えるかどうかわからないからもう一度私に掛けてみても……」
「ではメレブさんが新呪文を覚えた所で先を進みましょう」
「そうだな」
「うむ、まだまだ上る必要があるからなこの階段を」
「ちょ、ちょっとー!!」
もう一度だけ周りから褒められたいと思ったアクアを放置して、三人は塔を昇るのを再開する。
後ろから必死に「もう一回! もう一回だけサスオニ掛けて!」と懇願してくるアクアをついて来させながら
しばらく階段を上り続けると、ようやく階段が終わり
代わりに簡素な作りのドアがヨシヒコ達の目の前に現れた。
「ここが塔の最上階……きっと中には恐ろしく強いボスが」
「大丈夫だヨシヒコ、俺達にはサスオニがある、どれ程相手が強くても俺達にはお兄様がついている」
「いやお兄様はいないわよ、てかお兄様って誰よ」
「では、開けます」
新しい呪文を覚えてすっかり余裕の表情を浮かべるメレブにアクアがツッコんでる中
一体何が待ち構えているのかと危惧しながらヨシヒコはゆっくりとドアを開けてみた。
すると
ひどくこじんまりし殺風景な部屋の中で
見た目ヒョロっとした眼鏡を掛けた気弱そうな男が
ご飯の入った茶碗を片手に食事の真っ最中であった。
「あ」
「……」
箸を手に持ったまま男はヨシヒコを見てビクッとしてすぐに固まると、しばしの間を置いてゆっくりと首を傾げて
「どうも……」
「どうも」
「あのーもしかして? 前に一度お会いした勇者さんですか?」
「いえすみません……前にどこかで会いましたっけ?」
「あ! 間違いない! 僕ですよ僕! ほら! 随分前ですけど一度だけお会いした事あったじゃないですか!」
その男はヨシヒコを見た途端急に顔をほころばせて茶碗を床に置きながら彼に指を突き付ける。
しかしヨシヒコの方は全く思い出せないでいると、何事かとメレブが彼の背後からひょっこり顔を覗かせる。
「どしたどしたー? ん? そこのヒョロヒョロ眼鏡君前にどっかで会った様な気があるような無いような……」
メレブを見て男はまたハッと何かに気付く。
「あ、あの時一緒にいた魔法使いさんじゃないですか! ひょっとしてお二人共、僕みたいにいきなりこっちの世界に飛ばされちゃったんですか!?」
「んーどっかで会ったような気がするんだけど上手く思い出せないな~……何かとてつもなく凄い目に遭った様な気がするんだけど」
メレブの方はその男に対して見た記憶はあるらしいも、詳しい所まで思い出せないでいた。
そうしているとダクネスとアクアも部屋の中へと入って来る。
「うわ何よココ随分ボロッちい部屋ね、住んでる奴も貧相だし」
「アクア、いきなり部屋に上がり込んだクセに家主に対してその口の利き方はなんだ」
「ん~あれ? ひょっとしてこの二人も勇者さんのお仲間ですか? 前はモミヒゲの生えた男の人と胸の無い女の人がいた様な覚えがあるんですけど?」
「なに? もしやあなた、私とメレブさんだけでなくダンジョーさんやムラサキの事も知っているんですか?」
「名前までは忘れちゃいましたけど、一応顔は覚えていますよ、はい」
少し驚いたかのように目を開くヨシヒコに男は素直に頷く。
「それにしてもいきなりこんな世界に飛ばされてお二人も大変だったでしょ、ささ、そこに座って休んでてください、今お茶淹れますんで」
「ありがとうございます……メレブさんひょっとして彼は」
「うむ、どうやらバカ(仏)の手違いでこちらの世界に飛ばされてしまった不幸な一般人である可能性が高いな」
ニコニコしながらお茶を淹れに厨房へと向かう男を見つめながら一同は床に座りつつ、彼が何者なのかと推理し始める。
「ったく仏の野郎、俺達だけじゃなくてまさか一般人もこっちの世界に飛ばしちゃってたのかよ……」
「職務怠慢ね、このことはすぐに上に報告しましょう、エリスの奴にチクればすぐにやってくれるわ」
「それにしても塔の最上階だからてっきりボスがいるのかと思ったら拍子抜けだなこれは……」
メレブ、アクア、ダクネスが順に呟いている中でヨシヒコは顔をしかめて男を思い出そうとしていると
男はすぐにお盆に湯飲み茶碗を4つ乗せて戻って来た。
「あー別に思い出さなくていいですよ僕の事なんて、きっとあれから皆さんずっと旅を続けて来たんでしょうし、私みたいな地味な人なんて忘れちゃうのも仕方ないですよ」
「すみません……もう少しで思い出せそうなんですが」
「いえいえ全然気にしてないですから! ほら! お茶飲んでゆっくりして行ってください!」
男は全く気にして無さそうな態度でニコニコしながら4人にお茶を差し出す。
「いやぁそれにしても勇者さんもこっちの世界に飛ばされていたなんてビックリですよー」
「あなたはいつからこっちの世界に?」
「僕は結構前ですかねー、釣りをしてたらいつの間にか右も左もわからない場所に飛ばされてて、最初はかなり焦りましたよホントに」
苦笑しながらそう言うと、男は自分が入れた茶を一口飲む。
「だからとりあえず寝床を作らなきゃヤバいと思いましてね、それに魔物に襲われない様な建物にしなきゃと考えて、地道にコツコツとこの塔を建てたんですよ」
「この塔はあなたが建てたんですか?」
「はい、こっちも生きるのに必死だったんで建てちゃいました」
異世界に飛ばされ何もわからない状態で、こんなにも大きな塔を一人で建てるとは
男の話を聞いてヨシヒコが軽くビックリするも、ダクネスは申し訳なさそうに男の方へ顔を上げて
「う~む、実はこの塔は前々から私達の住む街で苦情が来ているんだ、怪しい建物があって怖くて近付けないとかで……そちらが大変な思いでこの塔を建てた理由はわかったんだが……すまないがすぐに撤去してはくれないだろうか?」
「え! そうなんですか!? あ~だったらこっちこそすみません、いきなり山の中にこんな塔を建てちゃって、街の住人さんにも悪いですしすぐに取り壊しますんで」
「本当に悪いな、よろしく頼む」
「いいですって、勝手に建てちゃった僕が悪いんですから」
手を横に振りながら気楽な感じであっさりと承認する男にダクネスが軽く頭を下げていると
さっきから無言でジーッと男を眺めていたアクアが不意に口を開く。
「ねぇねぇ、さっきから疑問に思ってるんだけどアンタって、どうしてそんな弱っちぃ見た目のクセにこんなモンスターばかりの山の中で暮らそうと思ったの?」
「おいアクア! お前初対面の相手にそんな失礼な事を!」
「ああ大丈夫ですよ、実際私弱いですから」
失礼な態度をずっと取っているアクアにいい加減にしろとダクネスが怒っていると、男は機嫌を悪くせずにヘラヘラ笑い飛ばしながら答える。
「でもまあ一応呪文は覚えてるんですよ? けどそれで魔物を倒しても何故か経験値もお金も手に入らないので、だからこうしてしがない貧乏生活を送ってる訳ですね、はい」
「呪文? アンタその見た目で呪文覚えてるの?」
「1個だけなんですけどねー」
「ププ、たった1個って……裏切りめぐみんと一緒じゃないの」
いい加減男の方は怒ってもいいんじゃないかと思うぐらいナメきった態度を取って嘲笑を浮かべ始めるアクア。
そして更に調子に乗った彼女は
「なんなら余興代わりにその呪文を見てあげても良くてよ?」
「え、本当ですか? でもコレ前にも勇者さん達に披露したら大変になった様な……」
「あーはいはいノープロブレムノープロブレム、私ってば呪文に対しては耐性半端ないから、ダクネスも堅いし」
「へーそうなんですか? それじゃあちょっと久しぶりにやってみましょうかね~」
突然自分に呪文を掛けてみろと上から目線で要求してくるアクアに、男はやや心配そうな表情を浮かべながら傍にあった箸を一本手に取って杖代わりに構えて来た。
しかしそれを見てメレブは「むむむ」と呟き怪訝そうに目を細め
「なんだろうこの展開、俺なんか凄いデジャヴを感じる」
「私もです、ここからどうなるんでしたっけ?」
「なんだっけな~……んーどうしても思い出せない」
前に一度こんな掛け合いをしてとんでもない目に遭ったという記憶がおぼえげにあるのだが、どうしても鮮明に思い出せないでいると
男は箸を杖代わりにやや慎重な様子で
「それじゃあ皆さんに呪文掛けてみますね」
「いつでもどうぞー、プププ、どうせヨシヒコ達の世界の呪文なんだからメレブみたいにしょーもない効果なのよきっと」
「アクア、調子に乗り過ぎるとまたいつもの様に痛い目に遭うぞ?」
「ダクネス、私はこの世界の女神として、仏の世界がいかにこちらより劣っているのかキチンと検証する義務があるのよ」
「だから劣っているとかそういう言い方が……」
クスクス笑いを止めずに完全に小馬鹿にしているアクアにダクネスがしかめっ面で抗議しようとしていたその時
「えい」
男が短いSEを鳴らして呪文を唱えてみた
すると
「そういう態度がいつかヨシヒコ達の世界から反感を……う!」
アクアに何か言いかけた所で突然ダクネスが倒れた。
というか死んでしまった
『ダクネスはしんでしまった』
「え? ちょっとダクネスどうしたの? まさかアンタ呪文の耐性なかった? まあいかに聖騎士と言えど水の女神の私と比べれば大したことはないのはわかってたけど……あ!」
死んだダクネスに相変わらず調子乗った様子で話しかけようとするアクアだが、彼女も台詞の途中でバタンと倒れてしまう。
魔法に対して凄い耐性があると自負していた彼女だが……
『アクアはしんでしまった』
「あ! 今完全に思い出した! ヤバい確かこの呪文って! おうん!」
すぐ隣で倒れた二人を見てようやくこの呪文がなんなのか思い出したメレブだが時すでに遅し
『メレブはしんでしまった』
「そうだコレは……ザラキッ!」
三人が続いて死んでいく光景を見てヨシヒコもまた思い出して最期に呪文の名を叫ぶも
『ヨシヒコはしんでしまった』
『ヨシヒコたちはぜんめつしてしまった』