墓場で結婚式を挙げ死体とミイラを無事に祝福し終える事が出来たヨシヒコ一行
朝日が昇った所でクリスは突然どこかへ消え、ムラサキとダンジョーもまた自分達の拠点に帰る事にした
「それではヨシヒコ、今度こそ会ったら敵同士だ、わかったな?」
「首あらって待ってろよコノヤロー」
「望む所です、私はまだ二人が元に戻ってくれるのを信じています」
アクセルの街にあるウィズの店の前で、ヨシヒコは去っていく二人に頷きながら見送る。
「ホントに次は敵として出てくるのだろうか……」
「次来るときは裏切りめぐみんも連れて来なさいよねー!」
去っていくダンジョーとムラサキを見つめながらメレブが心配そうにぼやき、アクアが叫ぶ
そしてダクネスは相変わらず死んだ魚のような目をしながら
「裏切られるってのは気分が良い、倒せる敵が増えれば増える程、人はより強く成長できるモノなのだからな」
「あの、ちょっとメレブさん、1パートまたいでもダクネスまだ元に戻ってないんですけど? どういう事?」
「うーむ、呪文の効力が思った以上に長いなぁ、これには掛けた俺自身もビックリ」
「ビックリしてないで何とかしなさいよね! ちょー絡みにくいのよ今のダクネス!」
今だダクネスが元に戻ってない事を確認しながら、なんとかしろとアクアがメレブに抗議していると
「み、皆さん大変です! 凄いのが見つかりました!」
そこへ店の中から慌ててドアを開けて出て来たのはウィズ
一行がどうかしたのかと振り返ると、彼女の両手にはあるモノが抱えられていたのだ
「死体さんとミイラさんは無事に結婚を終えた後、新婚旅行に行ってしまいました……ですがその後、二人が結婚を誓い合った場所になんとこんなモノが置いてあったんです!」
「これは……!」
「おいまさかそれは! モンスターのタマゴとかいう奴では!?」
アタフタしながら取り出したそれはなんとモンスターのタマゴ
恐らく親はあの死体とミイラであろう、二人の間で生まれたタマゴを大事そうに抱えたまま、ヨシヒコにそっと渡すウィズ。
「たまに中で動いてるので生まれるのも時間の問題かもしれませんね……とにかくおめでとうございます」
「おいおいおいマジかよ……それ持ってその辺グルグル回ってれば産まれてくるんじゃねぇの? あ、それは別のゲームだった」
「凄い! 去って行った死体とミイラまさかモンスターのタマゴを私達に残してくれるなんて!」
受け取った卵から鼓動を感じ興奮するヨシヒコではあるが、そこに水を差すのが自称・水の女神のアクア様
「待ってヨシヒコ! それはアンデット系のモンスター同士のタマゴよ! つまり中から現れるのは新たなアンデットモンスターって事じゃないの!? 捨てて来なさいそんなの!」
「何を言うんです女神、もしかしたらこの卵の中にいる魔物が我々に力を貸してくれるかもしれないんですよ」
「いーや! アンデット系のモンスターの仲間はもうホントに嫌なのー!」
産まれてくるのがアンデット系の魔物だとすぐに察したアクアがヨシヒコに本気で嫌がるそぶりを見せている中
メレブは「しかし」と呟きタマゴを持って来てくれたウィズの方へ顔を上げる。
「ヨシヒコとその仲間である死体とミイラの為に結婚式の手伝いをしてくれた上に、タマゴまで俺達の所へ持ってきてくれるとはな……どうやらウィズよ、お前は悪さをする様な卑劣な者ではないらしいな」
「い、いやぁ私はただやれるだけの事をやったまでですから……」
「そのやれるだけの事をやってくれたから、私の仲間の死体とミイラは心の底から幸せになれたんです」
「うむ、ヨシヒコの言う通りだ、女神エリスにはちゃんと俺達から伝えておこう」
手を横に振りながら大したことはやってないと謙虚なウィズにヨシヒコとメレブは縦に頷く。
「この街で働く魔王軍の幹部であるリッチーは、決して他人に害を与えるような輩ではないとな」
「ありがとうございます。あ、でも例のお札を売ってしまった事は本当に申し訳ありませんでした」
「構いません、全ての根源は竜王のせいです、ウィズさんは何も悪くありませんよ」
「まあ……次からは気を付けてお客にモノ売ってね」
「はい、気を付けます」
エリスにはキチンとシロだと報告しておくと約束するメレブとヨシヒコにウィズが深々と頭を下げた。
しかしやはりというかなんというか、アクアはまだ納得してない様子で顔をしかめている。
「私はまだアンタの事疑ってるんだからね、隠れて悪事働いてもこの女神がちゃんと見張っているんだから、せいぜい夜道は気を付ける事ね」
「うぅ……アクアさんはいつになったら私の事を信じてくれるんですか……?」
「リッチーであるアンタの言う事なんか一生信じないわよ」
「そんなぁ~……」
腕を組みながら頑なに信じないと強く言うアクアにウィズが半ベソ掻きながら呻いていると
「よし、それじゃあ今日は色々あって疲れた事だし、俺達は屋敷へと戻る事にしますか」
「そうね、今日はアンデットに囲まれまくってホントに最悪だったわ……ほら、帰るわよダクネス、ついてこないとこの場で一人ぼっちにさせるわよ」
「今日から始める、一人なんて怖くない対策その一、「他人を見たら他人と思え」、ちなみにその二はない」
「……ヤバいわねいよいよ本格的に訳わからなくなってきたわこの子……」
空を見上げながらブツブツと呟くダクネスにちょっと怖がりながらも、彼女の袖を引っ張って屋敷へと連れて帰ろうとするアクア。
そしてメレブも続いて一緒に帰ろうとするのだが
「あれ? ヨシヒコどうした? さっさと帰ろうぜ」
「そうよヨシヒコ、早く帰って寝ましょう、徹夜して疲れちゃったし」
「……いえ私はもう戻りません」
何故かヨシヒコだけウィズの店の前から動こうとしない
どうしたのかとメレブとアクアがキョトンとした様子で尋ねると
彼は静かに首を横に振り
「私はもう彼女と、ウィズさんと共にこの店で働いて生きていく事を決めました」
「は!?」
「はぁ!?」
「えぇ!?」
ヨシヒコの思い切った発言にメレブとアクアだけでなくウィズすらも驚きの声を上げた。
強く決意したかのようにヨシヒコは更に話を続ける。
「彼女と最初に会った時にわかったんです、やはり私には勇者として魔王を倒す事よりも為すべき事があると」
「ま、待ってヨシヒコ? え、なに? もしかしていつもの? こっちの世界でも?」
「ア、アンタ何言ってるのマジで?」
「私は彼女を愛し続ける事こそが私の生涯為すべき事だとわかったんです! 結婚したい! 彼女と結婚して一生ぱふぱふして貰える人生を送りたいんです!!」
「アンタ! アンタ本当に何言ってんのマジで!? ねぇ!?」
背後でどう反応すればいいのか首を傾げて困っているウィズをよそに、ヨシヒコはすっかり熱くなった様子でメレブとアクアに語り始めた。
「この世界で最も護るべきモノは巨乳! 巨乳こそが勇者が護るにふさわしいモノなんですよ!」
「お前~! 薄々わかってたけどやっぱりそのビッグボインにやられてたんだな!」
「やられるに決まってるじゃないですか! 見て下さいこのボイン! 今まで見た事が無いぐらいデカいんですよ! そりゃ勇者だって! いや勇者だからこそこのボインに恋をしてしまうんです!」
「おお、開き直ったぞコイツ……」
ウィズの全身、特に胸囲辺りを見せつけながら力説するヨシヒコにメレブは呆れ気味
アクアの方はそんなヨシヒコにすっかりカンカンの様子で
「冗談じゃないわよ! アンタねぇ!さっきからボインボイン言ってるけど! 私だってボインじゃないの! 私が仲間にいるんだからそれで満足しなさいよ!」
「昼間から酒瓶抱き抱えて涎垂らしながら寝てる女神など! ボイン以前に女として見れません!!」
「……」
「あのギャーギャー騒ぎまくるアクアが絶句の表情で無言に……素でショック受けちゃったよ」
彼女の抗議に対して一声で黙らせてしまうヨシヒコ、思わず無言で固まってしまうアクアだが、隣からメレブが「大丈夫?」と声を掛けられてハッと我に返った。
「ま、待ってヨシヒコ! 私の事はとりあえずもう聞かないけど! そもそもアンタはウィズと結婚する前になすべき事があるでしょ! 勇者のアンタが魔王を倒さないでどうすんのよ!」
彼女が叫んだ言葉をキッカケに
ヨシヒコはカッと目を大きく見開いて声高々に
「もう魔王なんてどうでもいい!!!!」
「!」
「ありゃりゃまたか……」
「人間時には、逃げたっていいんだ」
勇者として100パー言ってはいけない言葉を思いきり大声で叫ぶヨシヒコ
ギョッと驚くアクアと慣れた感じでため息吐くメレブ、そしてダクネスがまた変な事を言っている
「私はもう決めたんです! 魔王より巨乳! 巨乳こそやはり私が求めていたモノなんです! だからもう魔王なんかと戦いたくありません! 私はここでずっとウィズさんとぱふぱふします!」
「ア、アンタねぇ……! この世界が魔王に襲われようとアンタはぱふぱふ出来ればどうでもいいって言うの!?」
「はい、もう私には、彼女とぱふぱふする事しか頭にありません」
「ヨシヒコォ! 女神の命令よ! 巨乳のリッチーなんてほっといて私達と一緒に魔王を倒しなさい!!」
「絶対に嫌です! 私はもうこの街から絶対に出ません! コレからは一生ここでぱふぱふです!!」
「……ふぅ~……わかったわ……」
当人のウィズはヨシヒコの後ろで激しく手を横に振って「やりませんよそんな事!」と必死にアピールしているのだがヨシヒコは全く見向きもしない。
アクアはそんな彼をジト目で見つめながらふと大きなため息を吐くと、隣に立つメレブの方へジト目を向け
「メレブ、アレかましてやりなさい」
「うむ、よかろう」
断固として魔王を倒しに行くことを拒絶するヨシヒコにアクアが顎でしゃくると
メレブが杖を構えて一歩前に出てそして……
「オレガイル!」
「!?」
流れるように呪文を唱えてヨシヒコに掛けてやった。
するとヨシヒコは一瞬ビクッと肩を震わせると、次の瞬間ダクネス同様目が死んだ状態になり
「巨乳……巨乳だからといってなんなのであろう、脂肪が無駄に余ってるだけなのにどうして人は巨乳などと言う言葉に現を抜かしてしまうのだろうか……私には全く理解できない、乳が大きければ大きい程女性としてのステータスが上がるというのなら、そんな事で頑張るならもっと社会に役に立つ事で頑張れと私は言いたい」
「……わぁヨシヒコが高二病になっちゃった、でも言ってる事凄くバカっぽい……」
「ついノリでアンタに掛けてもらったけど……これからどうしようかしら」
長々と巨乳に付いて呟き始めるヨシヒコ、斜に構えた思想に陥っており、どうやらメレブの呪文、オレガイルによってすっかり高二病になってしまったみたいだ。
「まあいいわ、ウィズ、アンタはもう店の中に戻りなさい、ヨシヒコの方はこっちでなんとかするから」
「わ、わかりました……後念の為に言っておきますけど……私、出会ったばかりの殿方といきなり結婚は流石にちょっと……」
「あ、大丈夫その辺は安心して、ただヨシヒコがまたいつものおバカ発言してるんだってちゃんとわかってるからこっちも」
ウィズにフォローを入れて上げながら彼女を無事に店の中へと行かせるアクアとメレブ
そして二人に残されたのは高二病になってとても使い物にならなくなってしまったダクネスとヨシヒコ
「世の中には言うべきではない言葉も多く存在する。特に人様の命に関わる言葉はとても強く作用する」
「誰かの命を背負う覚悟がないならけっして口にするべきではない」
「さてと……メレブ、これどうにかならないの本当に? このまま冒険とか絶対無理よ?」
「うーむ、俺もまさかこの呪文がここまで強力だったとは……まさか己の魔法の才能が裏目に出てしまうとは……」
「いやウィザード(笑)だからこんな変な呪文覚えたんでしょうが」
今度は二人で訳が分からない事を口走り始めるダクネスとヨシヒコに
アクアとメレブはすっかり困り果てた様子で目を細めながらうーんと頭を捻る
するとそこへ
ヨ、ヨシヒコさーん! ヨシヒコさーん!
「お、これは入院した仏の代わりにヘルプに来てくれたエリスちゃんの声……あ! そうだ女神の力があれば!」
「女神の力があればなに? 私も女神よ、私の力で何するつもりなの?」
「う~ん、女神(自称)に頼む事は何もないかな?」
「(自称)って付けないで! 私はホントにホントの女神なの!」
天から聞こえた声は間違いなく女神エリスだった。
メレブとアクアはいつもの掛け合いを済ませると早速空を見上げる。
すると雲の上からひょっこりとちょっと荒い息を整えながらエリスが現れたのだ。
「ゼェゼェ……! 皆様お疲れさまでした……! ちゃんと見ていましたよ、アクセルの街で働くウィズさんはリッチーでありながらも、フゥ……! 特に害を与える気は無い親切な人だったという事も……!」
「ちょちょちょ! どしたぁ女神!? なんか全速力で走って来たかのような汗だくになってるぞ!」
「いえお気になさらず! こっちでちょっとゴタゴタしてただけですから!」
額から汗を流しながらしんどそうに呼吸を整えている女神・エリス。
メレブに指摘されるも深く追求しなくていいと着崩れてる服装を整えながら答える彼女
「往復するの疲れる……とにかく皆さんお疲れさまでした、療養中の仏先輩にも皆さんが無事にやっていけてる事を伝えておきますので」
「いや別にあんな奴に一々報告なんてしなくていいわよ、ていうかエリス、ちょっといい?」
「はいなんでしょう?」
「アンタのおっぱいって脇腹にあるの?」
「へ? あ! あぁー! 走ったせいでズレ……!」
自分達を労ってくれるエリスをジッと見上げていたアクアはふと気付いて彼女に指摘する。
それは衣服の上から明らかに脇腹の部分が大きく膨らんでいる事を
そしてその代わりに胸の部分は前回の登場の時よりずっとぺったんこになっているのだ。
指摘されて初めて気づいたエリスは慌てて両手で脇腹を手で抑える。
「違いますよ! 違いますからねコレは!」
「いや私達まだ何も言ってないんですけど~? どう思うメレブさん?」
「あ、パッド付けてたんすかエリス様」
「わぁー! 付けてません付けてません! 女神はパッドなんて付けません!」
メレブが何か面白いモンが見れたとニヤニヤしている中でエリスはこっそりと両手を脇腹から胸の部分に移すと
脇腹の膨らみは消えて胸がさっきまでよりもかなり大きくなっているのが容易に見て取れた。
「コホン……さあコレで何も不自然じゃないですよ、改めて話を……」
「ちょっとー、誤魔化し方下手過ぎなんですけどー」
「パッドずらしたのバレバレですよー」
「止めなさい! そうやって女神を乏しめるのはいけない事です! 天罰を下しますよ!」
無理矢理話題を切り替えようと下手な誤魔化しに出るエリスだがアクアとメレブには全く通じない。
遂にエリスがちょっと泣きそうになりながら彼等を一喝していると、メレブが不意に「まあそんな事より」と自ら話題を変えてあげた。
「エリス様のパッドについては後で聞くとしてさ、ちょっとウチのヨシヒコとダクネスを元に戻して欲しいんだけど?」
「後で聞こうとしないで下さい、一生聞かないで下さい……ヨシヒコさんとダクネスがどうかしたんですか?」
「いやほら、コレ見てよ」
メレブが隣に立っているヨシヒコとダクネスに振り向くと
二人は死んだ目でまだブツブツと
「変わるというのも現状からの逃げだ。どうして今の自分や過去の自分を肯定してやれないんだろう」
「自分の群れ以外とはあまり話さない。単独行動時に他の群れに交じろうとしない。それは結構排他的であり差別的だ」
「あの、俺が呪文掛けたらこうなっちゃったんだけど……女神なら何とか出来るよね?」
「……ダクネスだけでなくヨシヒコさんまでおかしく……あなた一体どんな呪文を掛けたんですか……」
二人揃って死んだ目をしながら意味深な事を口走っている光景というのはかなり怖かった。
エリスはちょっとビビッて引いていると、メレブが眉間にしわを寄せながら彼女に話を続ける。
「まあそういう事で、仏の時みたいにアレをヨシヒコ達にやってくれない?」
「え? ア、アレってなんですか?」
「だからほら、仏ビームよ仏ビーム、上手い具合に一部の記憶を消す奴」
「あぁ……アレってビームの事だったんですか……」
メレブの説明を聞いてようやくわかった様に頷くエリスだが、その表情はどこか浮かない様子
「えとですね……実は私まだ仏先輩の様に上手くビーム撃てないんですよね……」
「はぁ~アンタまだビーム撃てないの? 最近じゃ研修生だって撃てるようになる子いるのよ、アンタたるんでるんじゃないの?」
「私だって練習はしてるんですよ! でも中々行かなくて……」
「じゃあその練習の成果をヨシヒコとダクネスで試してみなさいよ」
「えぇ~!? 良いんですかそれ!?」
「良いのよ、先輩の私が言うんだから早くしなさい」
まさかの仲間をダシにして本番やってみろと要求するアクア。
エリスはビックリしながらすぐに不安そうな顔になり
「あの……大丈夫なんですかホントに? 撃っちゃいますよビーム?」
「いいのいいの、どうせ失敗しても今の状態よりも悪くなる事は無いだろうし」
「わ、わかりましたそれでは……」
軽い感じで促してくるアクアにエリスは「本当にいいのかしら……」と呟くと、コホンと咳払いをし……
「め、女神ビーム!!」
「わ! 仏ビームみたいな感じで緩い光線が出て来た!」
「「あわわわわわわわわわ!!」」
「効いてる! 女神ビームがヨシヒコ達に効いてる!」
やや緊張しながらもエリスの額からビームが発射され、驚くメレブをよそにそのビームはヨシヒコとダクネスに降り注がれ、彼等が物凄い痙攣をした後ボンッ!と破裂した音と共に二人は白い煙に包まれる。
「さてさてヨシヒコとダクネスは元に戻っているのだろうか……?」
「どうかしらね、なんせエリスだし……ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「ん? おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「せ、成功しましたか? あ! あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
白い煙が晴れて一同がヨシヒコとダクネスに目をやるとすぐに喉の奥から叫ぶ様に思いきり声を上げた。
なんと女神ビームを食らったヨシヒコとダクネスが……
背中にギター、着ているのは白いシャツとジーンズ、極めつけは顔が黄色い星の形になっている男と
青色のドレスに金色の鎧で身を包む、金髪碧眼のいかにも強そうな女騎士がそこに立っていたのだ。
「いや誰ぇぇぇぇぇぇぇ!? ってぇぇ!? まさか女神ビーム食らったヨシヒコとダクネス!?」
「ちょっとアンタなんて事してくれんのよ! ヨシヒコとダクネスが……いや誰なのよホントにコイツ等!」
「だ、だって先輩がやれって言ったんじゃないですかー!」
さっきまでとは全くの別人になってしまっているヨシヒコとダクネス(?)
こんな失敗あるかとアクアが泣いてるエリスを怒鳴りつけていると、メレブは恐る恐る星形の顔をした男の方へ歩み寄り
「あのもし……ヨシヒコさんでございますか?」
「……いや、俺は”星”だけど、なにおたく、音楽に興味無いの? 俺、音楽の世界じゃ超有名なビッグスターなんだけど、ホントに知らない?」
「知らない……」
「チッ、田舎モンかよ……」
「わー顔はホントにヨシヒコそっくりなのに……全くの別人になっておられる……」
自分の事を知らないとメレブが静かに首を横に振ると、ヨシヒコ改め星は、ポケットからタバコを取り出してライターでカチッと火を点けながら悪態を突いている。
そしてアクアの方も金髪碧眼の女騎士の方へソロソロと歩み寄り
「ねぇ、アナタってダクネスよね?」
「私の名前はアリス。セントリア市域統括、公理協会整合騎士第三位、アリス・シンセシス・サーティです」
「セント……え、なんて? なんか思いきり変わっちゃってるわ……誰よアリスって……」
「人に尋ねておいていきなり噴き出すとは、整合騎士を侮辱しているのですかお前」
「整合騎士っなによ……声はダクネスと雰囲気似てるのよねぇ……」
長ったるい上に全く見知らぬ単語を用いるダクネス改めアリスに、真顔で睨まれながらも不意に噴き出してしまうアクア。
そしてアリスから一歩引くと彼女はすぐに空の上で狼狽えているエリスの方へ顔を上げ
「ちょっとエリス……とんでもない事してくれたみたいね、ていうかどんな失敗すればこうなるのよ」
「すみません、掛かってる呪文を解こうと思っただけなんですけど……」
「これ、いつ元に戻るの? 星とアリスはいつになったら元の世界へ帰ってくれるの?」
「さぁ……3日か4日……いや一週間ぐらい経てば元の二人に戻る筈なんですけどねぇ……前失敗した時もそうでしたし」
「一週間!? じゃあなに!? 私達この二人と一週間共に冒険しなきゃいけない訳!?」
「そう言う事みたいですねぇ、はい……」
「いや! そう言う事みたいですねぇ、じゃないわよ!」
申し訳なさそうに何度も頭を下げながらも、ヨシヒコとダクネスが元に戻るのは一週間ぐらい等と言ってのけるエリスに、アクアが遂にキレた様子で指を突き付ける。
「どうしてくれんのよコレ! よりにもよって滅茶苦茶絡みづらそうな奴にしてくれたわね! アリスとかさっきからずっと私の事睨んでるのよ!」
「整合騎士を侮辱した事への謝罪はまだですか?」
「知らないわよ整合騎士なんて! 今こっち立て込んでんのよ後にしなさい!」
隣りで無表情ながらちょっと怒ってる様子のアリスに逆切れしながらアクアが一喝していると
メレブもまたエリスに向かってしかめっ面を浮かべて星を指差し
「そっちの金髪騎士はまだ強そう、つかダクネスより明らか使えそうだからとりあえず良しとする、だが女神エリス、肝心のヨシヒコがこんな……こんなまともに魔物と戦える気が全くない奴にされたら俺達はどうすればいい?」
「は~? おいキノコヘッド、この荒川河川敷のスーパースター星様を、まさかナメてんじゃねぇだろうな?」
「荒川河川敷ってなんだよ……じゃあお前なんか魔物と戦える武器とかあんのかよ!」
タバコを口に咥えたままカチンと来た様子で抗議して来た星に、メレブが怒鳴ると
「武器ならずっと持ってるぜ」
「え?」
彼は自信ありげな態度でメレブの方へ歩み寄って自分の胸と親指で指しながら
「ロック」
「……はい?」
「俺の中にあるニノに対しての強い愛がロックとして生まれ変わる、このロックこそ俺が持つ最強の武器、OK?」
「なんだろうコイツ……ニノが誰なのか知らないけど、嫌いじゃないわ俺」
アホなのか本気で言っているのか、恐らくその両方だと思われる星に、メレブはちょっぴり彼に対して好感度が上がった。
その後、星の方からスッと手を差し出して来たのでメレブは笑みを浮かべながら手を出して握手を交えている中
「あ、あの~それじゃあ私はこの辺で……」
「ちょっとエリス! まだ私の話終わってないんですけど!? アンタちょっとここに降りて来なさい! 直に説教してあげるから!」
「いや本当に! 本当に申し訳ありませんでした! この事については後でなんらかのお詫びをしますんで! という事でお疲れさまでした!」
「逃げんなゴラァァァァァァ!!!」
アクアに対して怯えた顔を浮かべながら最後まで頭を下げ続け、エリスは逃げる様に空の上からフッと姿を消してしまった。
後に残されたのはメレブとアクア
そしてヨシヒコとダクネスがどういう訳か姿形、内面や設定までも変わってしまった星とアリスである。
「……とりあえず、どうするコレ?」
「あんのダメ後輩! 自分の失敗に責任取らずに逃げるとかどこの仏よ! もういいわ帰るわよ! コイツ等連れて屋敷に!」
「はい、という事で二人とも帰りますよ~俺達について来てくださ~い」
逃げたエリスに悪態突きながらアクアはカンカンの様子で屋敷へと帰り始めた。
メレブもまた一緒について行き、後ろで突っ立っている星とアリスに手を振ってついて来てと素早く指示を飛ばすのであった。
「お、なんだよこのムッツリ小娘、よく見りゃ綺麗な髪色してんじゃん、まあ俺のニノの滑らかに整ってる金髪に比べれば敵じゃねぇけど」
「別に髪の事など気にはしませんが、非常に不快な気持ちになりました。整合騎士である私をムッツリ小娘などと呼んだことを撤回しなさい、さもないと本当に星にさせますよ?」
「おーおー最近の子供ってのはすぐキレるなぁーあんまり大人ナメると怪我するよ、俺の中にある熱いロック魂が火ぃ噴いちゃうよ?」
「コラ二人共! 喧嘩するの止めなさい! ホントにもうこの子達はしょうがないんだから!」
「あ~めんどくさい事になりそうだから仲良くしなさい! さもないとご飯抜きにするわよ!」
初対面(?)で早速互いに喧嘩腰になっている星とアリスを叱りつけながら
メレブとアクアはようやく帰路へと就く。
一週間後、二人が元に戻ってくれる事を願いながら
そしてそんな以前よりも更に奇妙な集団になってしまった彼等を木の陰から見ている者が一人
「なんという事でしょう、兄様がまるで別人だと見違うぐらい姿が変わってしまいました、やはりより高みを目指す為に強うなると見た目も変わるという事ですね」
木の裏側からスッと現れたのはヨシヒコの妹のヒサ
黒いレザーコートに身を包み、背中には二本の剣がバツの字の形で鞘に納められている。
「流石は常に前を歩き続ける兄様です、一刻も早く兄様に追いつく為には、やはりヒサもまだまだ修行が足りないという訳ですね」
「あ、あの~ちょっといいですか?」
「?」
ヨシヒコの止まらぬ成長速度に感動したヒサは、これからはもっと精進せねばと強く心に誓っていると
そんな彼女の下へ傍にあった店から一人の女性が出て来て歩み寄って来る。
先程ヨシヒコに言い寄られていた店主・ウィズだ。
「貴女ってあのヨシヒコさんのお知合いですか? もしよろしければ言伝とかお願いできないでしょうか? その、出会ったばかりの人とそういう関係になるのはやっぱり駄目だと思うからごめんなさいと……」
「なんと? それは一体どういう事でございましょう?」
突然言伝をお願いして来たウィズにヒサがキョトンとした様子で首を傾げていると
「お~い、ヒッサさ~ん! 俺を置いていかないでくれよ~!!てあぁぁぁぁ!!」
彼女達の下へスキップしながら軽快な足取りで現れた首なし騎士・ベルディア
浮ついた声を上げながらヒサの方へ駆け寄ろうとしたのだが、そこに偶然いたウィズを見てすぐに驚きの声を上げる。
「お、お前……! ウィズか……!?」
「あ、ベルディアさんお久しぶりです、でもどうしたんですかこんな街中にいらっしゃるなんて」
「すまん!」
「へ!?」
自分とは違ってバッチリ見た目から完全に魔物だと認識できるベルディアが、どうして堂々とアクセルにいるのかとウィズが純粋に不思議に思っていると
突然彼は手に持っている頭を深々と下げて彼女に向かって謝る。
「お前には散々気のあるアピールして来たけど! 実は今の俺には心の底から愛する人が出来てしまったんだ! だからごめんなさい!!」
「は、はい!? なんですか急に!? ベルディアさん私に気のあるアピールなんかしてましたっけ!? なんか頭を何度も私のスカートの下に投げていたのは覚えてますけど……え、ひょっとしてアレですか!?」
「頼むウィズ、俺の事はどうか……忘れてくれ」
「いや忘れるも何も私は最初からベルディアさんの事は別に……」
急に何を言いだすんだとウィズが頭を下げて来るベルディアに困惑しながらも誤解を解こうとすると
「まあベル君の事を許してやってくださいよ、彼もきっと反省してますから」
「っていきなり誰ですかあなたは!?」
「スズキです」
「ど、どうか気をしっかり持ってくださいね……フラれたからって落ち込まずに元気出してください……」
「わ! また別の人が! どちら様ですか!?」
「ゆんゆんです」
いきなり背後からにゅっと現れたヒサとベルディアの仲間のスズキとゆんゆんの登場にウィズが驚きつつ、ふと彼等の言ってる事にハッと気付いた様子。
「も、もしかして私がベルディアさんにフラれた事になってるんですか!? 違います誤解です! 私最初からベルディアさんに恋愛感情とかこれっぽっちも無いですから!」
「あ、大丈夫ですよ無理に意地張らないで、僕等ちゃんとわかってるんで」
「新しい恋を探してください」
「その、お前を裏切ってしまった俺が言うのもなんだが……達者でなウィズ!」
「違うんです! ホントに違うんですってば~! ちょっと一から説明させてくださいホントに!」
わかった様子で優しく何度も頷く三人組に慌てて詳しく話を聞いてくれと詰め寄る
ヨシヒコを振る筈だったのに
どういう訳か、ベルディアに振られてしまうウィズであった。
「私の話を聞いて下さ~い!!」
貧乏店主・ウィズの必死の叫びはむなしく町に響く……
次回へ続く