勇者ヨシヒコと魔王カズマ   作:カイバーマン。

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漆ノ四

魔王軍の幹部・全てを見通す大悪魔バニルを見事に倒したダクネスとメレブ

 

無事に彼が持っていた宝箱も回収して、二人は時間を掛けてダンジョン内を進んで行くと、ようやく外に出られる出口を見つけた。

 

「出れたー! 夜だー!」

「ダンジョンから出るのに随分と時間掛かってしまったからな」

 

狭い出口からやっとこさ出て来たメレブが最初に叫んだのは、辺り一面がすっかり真っ暗になっている事であった。

 

大事そうに宝箱を抱えながらダクネスも出口から現れる。

 

「しかしほぼ一日を費やしただけあって、私にとっては実りのある冒険だった……」

「お前今日は大活躍だったからなー、あの心を読むとんでもない悪魔を一撃で倒しちゃうとは。これ間違いなく今回のMVPはお前で決まりだ」

「フフフ、MVPというのが一体何なのかは知らないが、素直に評価してくれているのはなんとなく理解出来るぞ」

 

普段はヨシヒコに美味しい所を持ってかれ続けていたので、彼が不在の中で勝利を収めたという充実感にダクネスはひどく機嫌が良かった。

 

無理もない、今まであまり目立たないポジションにいた彼女が、遂にボスを倒した上に貴重なアイテムを手に入れるという大戦果を成し遂げたのだから。

 

「しかし出口に着いたとはいえ、ヨシヒコとアクアの姿は見えないな……もしかしたらまだ中で迷っているのかもしれん」

「流石は聖騎士ダクネス、己の勝利に酔いしれる事無く仲間の安否も気に掛けるのを忘れないとは、俺は出口を探す事に夢中ですっかりあの二人の事を忘れていたというのに」

「気恥ずかしくなるから止めてくれ……何ならもう一度ダンジョンに潜って探しに行った方が良いのだろうか?」

「そして躊躇もなく再び危険なダンジョンに戻ろうとする勇敢な姿勢、ちょっとどうしたのダクネスー、今日超輝いてんじゃーん」

「だからそうやって褒めちぎるの止めてくれ! 恥ずかしいんだ本当に!」

 

バニルが言っていた事を気にしてやたらと自分の事を褒めてくれるメレブに顔を赤らめながら叫んだ後

 

ダクネスは大事そうに両手で抱えていた宝箱をスッと見せる。

 

「実を言うとあの二人にもすぐにこの宝箱を見せたくてな……私でもやれば出来るんだぞと二人を驚かせてやりたいんだ……」

「うむ、これはダンジョーとムラサキを救う為のアイテムが眠っているからな、二人もきっと喜ぶに違いない、そしてお前の事をもっと褒めちぎるぞ、ヨシヒコなんか絶対「凄い!」って言うだろうしアクアもきっと「流石ダクネスね!」とか言う事間違いなし」

「い、いやぁ……」

「照れるなよー」

 

 

ヨシヒコとアクアにも間違いなく評価されると言われて、内心嬉しそうに身をよじらせるダクネスを、メレブがニヤニヤしながら肘で小突いていると

 

「メレブさーん! ダクネス!」

「アンタ達も無事だったのね!」

「おおヨシヒコ! アクア! お前達も無事だったんだな!」

 

噂をしている内に出口の方からヨシヒコとアクアの声が飛んで来た。

 

ダクネスはすぐに顔を輝かせて後ろに振り返ると、準備していたかのように宝箱をサッと前に突き出す。

 

「聞いてくれ! ここのダンジョンのボスは私とメレブでやっつけたぞ! しかも無事に宝箱も回収……ってわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「あれ? どうしたのダクネ……わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

後ろに振り返ったダクネスが急にこの世の終わりに直面したかのように叫び出したので

 

メレブも釣られてヨシヒコ達の方へ振り返ると彼女同じ反応で口をあんぐりと開ける。

 

「ヨ、ヨシヒコ……それにアクア……お前達……」

 

声を震わせながらメレブは恐る恐る彼等に向かってプルプルと指を差す。ツッコんではいけないのではと危惧しながら

 

「どうしたんだそのファンシー溢れる恰好!?」

「コレですか、ちょっとあそこの国に相応しい服装に変えてみたんです、似合いますか?」

「フッフッフ~、どうよメレブにダクネス、この水玉模様の赤いリボンとか凄い素敵でしょ~?」

「いいか!落ち着け二人共! お前等今! 100パーモザイク!」

 

ダンジョンから出て来たヨシヒコとアクアは自分達の知る恰好では無かった。

 

上から下まで完全にどっかで見たようなファンタジーな服装に着替えており

 

しかも何故か二人ははち切れんばかりの飛びっきりの良い笑顔を浮かべながら両手に腰を当てている。

 

きっと全身漏れなくモザイク加工されているであろうとメレブは確信しつつ、恐る恐る彼等に尋ねた。

 

「あの、つかぬ事をお聞きしますが……ダンジョンの中で一体何があった?」

「聞いて下さい! 実はこのダンジョンは! 我々が見た事のない程の美しい国と繋がっていたんですよ!」

「美しいだけじゃないの! 滅茶苦茶楽しくてステキな所だったわ! もうサイコー!」

「私達はそこで一日中食べたり遊んでいたんです!」

「私、あの素敵な国のおかげで、人生の中で2番目と言えるぐらい笑えたわ……1番笑えたのはエリスが神々の前でやらかしたあの事件……」

「あ、ごめーん……お前等が言ってる事が全く理解出来なーい……だからこれ以上余計な事を言うな……モザイクだけじゃ済まんぞ……」

 

二人揃って満面の笑みを浮かべながらダンジョン内にあった通路を潜って夢の国へ行った事を報告し始めるも

 

メレブは何かを察したかのように声を潜めながら彼等に警告し、ダクネスは全く分かってない様子で怪訝な表情を浮かべながらも、慌てて両手に持った宝箱を彼等に突き出し

 

「そ、そうか、何が起こったのかは興味深いがその件は後で屋敷で聞かせてくれ……そ、それより見てくれ二人共! 私はこのダンジョンで魔王軍の幹部を倒したぞ!」

「なんだと! それは凄い!」

「流石じゃないダクネス!」

「ああ! しかもダンジョー達を助けるアイテムが入ってる宝箱も手に入れた!」

「なんだと! それは凄い!」

「流石じゃないダクネス!」

「い、いやぁあの時は私も本当に大変だった、なにせ魔王軍の幹部が悪魔でしかも……」

 

自分の活躍劇を早くヨシヒコ達に話したいと照れ臭そうにしながら話始めようとするダクネス、だが

 

「ところでそんなどうでもいい話よりもまずは私の話を聞いて下さい!」

「ど、どうでもいい話!?」

「あの国は本当に素晴らしいんです! 黒いネズミに青い服を着たアヒル! 二本足で立つ犬など様々な種族が手を取り合って暮らしているんです! 私はあそこまで平和で幸せな国は見た事ありません!」

「昼と夜に住民達が国の中をパレードする瞬間なんか凄すぎて声も出なかったわ! でもそれだけじゃないの! あそこには私達が楽しむ為の施設が沢山あるのよ!」

 

彼女が言いたくてウズウズしている武勇伝を物凄く雑に切り替えて、自分達の話を聞いてくれと目を爛々と輝かせながら話始めるヨシヒコとアクア。

 

その反応にダクネスが酷く傷ついた様子で絶句の顔を浮かべるも、二人は全く気付いていない。

 

「とっても面白いガイドさんに案内されながらジャングルを船で一周するツアーとか凄かったわ! ゴリラやワニ! ゾウまで出て来て凄いビビったけど! ガイドさんが用意したお守りのおかげで助かったの私達!」

 

「水を使って動かせる不思議な乗り物もありました、ゆったりとした動きで大変乗りこごちの良い乗り物だったんですが、なんとその乗り物! 時間を遡る事も出来てしまうんです!」

 

「海賊達が暴れ回ってる所にも行ったわ! 急降下したり大砲が一杯飛んで来て焦ったけど! なんとか脱出してやったわ!」

 

「見た事のない不思議な魔物と会話するというのもありました、話しかけられた時は緊張しましたけど周りが笑ってくれるので、私もすぐに普通に返事が出来る様になりました!」

 

ひどく興奮した様子で次々と自分たちの体験談を話し始めるヨシヒコとアクア、だがメレブは「うんうん……」と呟きながらも非常に困った様子で

 

「あのー二人共凄く盛り上がってる所悪いんだけどそのー……あまりその国で起こった事を話さない方が良いと思うんだけど……」

 

「何故ですか! 私はまだまだ話足りません! この興奮をお二人にも是非聞いて欲しいんです!」

 

「私なんかまだ傑作のエピソード話してないんだから! アンデッドが出る屋敷に行った時にヨシヒコがどんだけビビったと思う? プークスクス!」

 

「あー女神! その話は絶対に内緒にして下さいって言ったじゃないですかー! ていうかあの時女神も! 必死に浄化の呪文を叫んでたじゃないですかー!」

 

「アレは女神としての義務を果たす為にやっただけですー! ビビッて私の腕にしがみ付いていたチキンな勇者様とは違うんですー!」

 

「うわ、なんだろうお前等の会話ちょっとウザイ……あとさっきからずっと笑顔なんだけど大丈夫?」

 

 

ダンジョンから出て来た時からずっと笑顔のヨシヒコとアクアがじゃれ合っている光景をメレブが不気味に思いつつも

 

隣で死んだ目をしながらしゃがみ込んで土いじりを始めているダクネスの名誉の為に彼は自ら話を切り出す。

 

「お前等さ、なんなんだよさっきからずっと遊んでたとか楽しかったとか! そうやってお前等が使命そっちにおけでその夢の国ではしゃいでる中で! 俺とダクネスは必死にダンジョンを攻略してたんだぞ!」

「はい、すみませんでした」

「アンタ達はちゃんと頑張ってたのね、反省してるわ」

「だったらその笑顔止めろー! なんなのお前等、もしかして笑い過ぎて元に戻らないの!?」

「はい、戻らないです」

「戻らないわね、多分今日一日このままよ私達」

「フフ……」

 

謝りつつもニヤニヤした笑みが一向に消える様子の無い二人に釣られて思わずメレブも半笑いになってしまうも、頬を手で触りながら真顔に戻して説教を続ける。

 

「今回のダクネスは本当に凄かったんだぞ!! 触ったら爆発するという恐ろしい人形を単身でバッタバッタと薙ぎ払い! そして魔王軍の幹部の大悪魔・バニルを一撃で葬り去り! ダンジョーとムラサキを助けるアイテムをゲットしてくれたんだぞ!」

 

「そうですね……それは本当に凄く大変だったと思います、それを成し遂げるなんてやはりダクネスは私達の誇れる仲間です、つい自然と流そうとしまって申し訳ない」

 

「ごめんねダクネス、アンタの話を軽く流して自分達の話で盛り上がろうとして……」

「あ、うん……別に気にしてないから安心してくれ……」

 

「だから謝るならニヤニヤ止めろニヤニヤ」

 

本当に反省する気あんのかコイツ等?とメレブが笑いを堪える中で、ダクネスに向かって頭を下げるヨシヒコとアクアだが以前ニヤついたままだ。

 

ダクネスの方は死んだ目で土を指でなぞりながらかも上げずに僅かに頷くだけである。

 

「今回一番頑張ったのは間違いなくこのダクネスさんだから! だから今日は彼女が文句なしの優勝! それで今ちょっとお前等のせいでブルーになっちゃってるから、ちゃんと励まして元気にさせてやるんだぞ!」

 

「大丈夫ですよメレブさん、ダクネスが落ち込んでいるのであれば、あの夢の国に連れてけば一発で元気になります!」

 

「そうね今のダクネスには夢の国が必要ね! ずっと酷い目に遭い続けて自暴自棄になっていた私でさえこんなに笑顔になれるんですもの!」

 

「夢の国もう禁止! ダクネスまでモザイクになっちゃうじゃん! やだよ俺めっちゃいい笑顔のモザイク三人と冒険するなんて!」

 

すっかり夢の国の虜になっている二人をビシッと叱りつけながら、これ以上のモザイクが生まれない為に必死にそれだけは勘弁してくれと頼むメレブ。

 

「普通に励ますだけでいいから! 彼女の活躍を素直に称えて、よくやったなと認めてあげればいいのそれで!」

「そうですか、わかりました」

「私も私なりのフォローでダクネスを笑顔にさせてあげるわ、夢の国のキャストさん達の様に」

「彼等も素晴らしかったですねぇ、女神が転んで持ってたポッポコーンを派手に地面に撒き散らした時はすぐに駆け寄って来てくれて、新しい物を持って来てくれましたしね」

「アレはもう本気で感動したわ私、ああいう些細な心遣いがゲストの心を鷲掴みにするのよねー」

「おい! おいおいおい! 言った傍から夢の国トーク再開するなよおい!」

 

油断するとすぐに夢の国での出来事を思い出して話始めるヨシヒコとアクアに、メレブがすかさず手を伸ばしてツッコミを入れていると

 

 

 

 

ヨシヒコォー! ヨシヒコよーッ!!

 

夜空に浮かぶ雲の上から突如例の声が聞こえて来た。

 

すぐに察したメレブは隣でまだしゃがみ込んでいるダクネスの腕を引っ張って

 

「ほら来た仏だ、ダクネス立って、今日頑張ったからアイツの褒められるぜきっと」

「いや私は別に他人に褒められたいから頑張った訳じゃなく……」

「ヨシヒコもホラ、ライダーマ〇ヘルメット」

 

落ち込む彼女を励ましながら腕を引っ張って立たせてあげると、ヨシヒコが仏を視認出来るようにヘルメットも準備しようとする

 

だが

 

「いえ、今日は必要ありません」

「え? ってヨシヒコ! なに洒落乙なサングラス!」

「あ! それってフレームの部分があの黄色い熊の顔になってる奴じゃない! チョー可愛いんですけどー!」

 

いつの間にか自分で用意していた夢の国産のサングラスをドヤ顔で掛けるヨシヒコ

 

それを見てメレブが驚きアクアがはしゃいでる中で

 

夜空に浮かぶ雲を掻き分けて、あの人物が降臨する。

 

 

 

 

 

 

珍しく怒り心頭と言った様子で仏なのに鬼のような顔をしながら

 

「ヨシヒコテメェコノヤロー!!」

「仏!」

「ああ、その洒落乙サングラスでホントに見えるんだ」

 

出て来てそうすぐにヨシヒコに向かって怒鳴りつけると、ムスーッとした表情を浮かべながら話を続ける。

 

「ヨシヒコ、お前の行いはちゃんと私は見ていたぞ、勇者である使命を忘れて随分と遊び回っていたようだな」

「はい……」

「おおなんだ仏! 今日は珍しく真面目モードで説教するのか! よーしヨシヒコに言ってやれ!」

「ヨシヒコ、お前に一つ大事な事を教えてやる、仏の言葉をしかと聞くのだ!」

 

相変わらずモザイクではあるヨシヒコに対してシリアスな雰囲気を出しながら厳しい口調の仏

 

そして彼を一喝すると仏は懐から二つ折りのちょっと大きめの厚めの紙を取り出して

 

「滝から落ちるジェットコースターに乗ったら! 落下する時はレバーから手を離して万歳しなさい!」

 

「ってまた夢の国トークかよ!」

 

「あーすみません仏、それ女神にも言われたんですけど絶対に私は無理です! 絶対にレバーから手を離せません!」

 

「いや怖いのはわかるよ! けど試しに一回だけやってみ! 手を離して万歳した方が怖くないんだよ実際! しかもすげぇテンション上がるぜ! これマジおススメだから!」

 

「ほら私もあの時言ったでしょ! ああいう時は覚悟決めて手を上げるのよ! そしたら怖さなんか吹き飛んじゃうんだから!」

 

「えー本当ですかー? 二人で私を騙してるとかじゃないですよね?」

 

「騙してないって! だってこの写真でもさ!」

 

先程までアクアとヨシヒコだけで盛り上がっていた夢の国トークが、今度は仏まで混ざって一段と熱狂的に

 

すると仏は持っていた紙をペラッと開いてニヤニヤ笑いながら

 

「滝から落ちた時に写真撮ってもらえるんだけどさ、私が買った写真だとほとんどの人が手を上げてるもん! 水色頭とその後ろに座ってる私もちゃんと手を上げてるモン!」

 

「はぁ!? アンタもしかして私達の真後ろに座ってたの!?」

 

「手をレバーから離さない様思いきり歯を食いしばりながら耐えてるのなんて! ヨシヒコとゼウス君だけだもん!」

 

「しかもゼウスの奴まで来てたの!? 何よアンタ等! 喧嘩中じゃなかったの!?」

 

「いや一緒に行こうぜって誘ったらすぐ仲直りしちゃった、夢の国って凄いねホント~」

 

どうやらヨシヒコとアクアが夢の国に迷い込んでる時、偶然仏とその友人も来ていたらしい。

 

しかし孫の件で喧嘩中であったにも関わらず、そんな相手によくもまあ夢の国へ行こうと誘えるもんだとアクアは唖然としていると

 

朗らかに笑いながら仏は話を続ける。

 

「しかもあそこさ、ゼウス君の息子もいるんだよね、マジビックリした、ゼウス君の息子超ムキムキで超ハンサムなの!」

「それってお孫さんのお父さん?」

「いや多分叔父さんじゃないかな~、ちなみにゼウス君はその息子に会った時「ちょっと孫に会ってくれない?」ってあっちの世界に招待しちゃった」

「いやお前それ! 向こうの作品にとんでもないモンを送りつけてんじゃん!」

 

一体何やらかしてんだと仏の友人にメレブが嘆きつつ、「ったくもー……」とこのまま延々と夢の国トークになるのを阻止するために話題を切り替える。

 

「仏、お前のお告げの言う通りに宝箱手に入れて来てやったんだぞ、夢の国は良いからこっちの成果も見てくれよ」

「そ、そうだぞ仏! 私が苦労して倒した魔王軍の幹部から手に入れた宝箱を見てくれ!」

「あーそれは凄いね、本当に頑張ったと思う、おめでとうダクネス……けどその宝箱、一回開けてみ?」

「え?」

 

胸を張って誇らしげに宝箱を見せつけるダクネスだが、仏はトーンを落としてちょっと遠慮がちに開けてみろと指示。

 

戸惑いつつも彼の言う通りにダクネスは持っている宝箱をパかッと開けてみると中には……

 

 

 

 

 

「スカ」と書かれた紙きれ一枚のみで後は空っぽであった。

 

「いやーやられちゃったねー、あの悪魔に」

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「仏もまんまと騙されました、あのダンジョンに凄いアイテムがあるって仏センサーがピピピッって反応してたのは確かなんだけど、その反応自体あの悪魔が作った幻だったみたいです」

「お、おいちょっと待って! ていう事は私が散々苦労しながらダンジョン内を駆け回ったのは!」

「んー全て無駄足だったって事ですねー、どんまい」

「……」

 

仏の全く悪びれもしない言葉を聞いて、ダクネスは紙切れ一枚しか入ってない宝箱を抱えたまま呆然とその場に立ちすくすと、しばらくしてまたしゃがみ込んで

 

「なんなんだ一体、ようやく活躍の機会が巡って来たと思ったらこの始末……私の価値って、私の存在理由って一体……」

「おい負けるなダクネス! 大丈夫俺はちゃんと見ていたから! 俺はちゃんとお前の頑張りを見ていたから! 結果的にダメだったけどお前の頑張りは今後生きる筈だから! ネバーギブアップ!」

 

今日だけで何回も励まされているメレブに叱咤されながら、ダクネスはまた地面を指でなぞり始めていると

 

「えー」と呟きながら仏はポリポリと髪を掻き毟って

 

「まあ今回はダメでしたけど、次回はきっと上手くいくと思うので頑張ってください、以上」

「え、え、なにその他人事な感じ? 俺達が無駄足食らったのって、お前が適当なお告げしたせいだからね?」

「いや私も被害者だからね腐れ悪魔に騙されたんだから、つまりここにいるみんな誰も悪くない、悪いのはあの悪魔、です」

「俺達が大変な目に遭ってる間も、ゼウス君と一緒に夢の国満喫してたクセに……」

 

毎度の如く自分は決して悪くないと何度も頷きながらそう言い切る仏にメレブがイラッとしている中で

 

仏は「それじゃあね、うん」と自己完結した感じで満足げに頷くと

 

「それじゃあ今回はコレで終わりという事で、またいい感じのアイテムが見つかったらまた出てくるから」

 

「仏! 仏の中で一番好きなアトラクションはなんだったんですか!?」

 

「おいヨシヒコく~ん、せっかく私が締めようと思ったのにそれ言っちゃ……答えるしかないじゃないの」

 

「ちなみに私はいろんな場所に隠れてる魔物を見つけるというアトラクションが好きです!」

 

「ああ王道ね、私もアレ好き、けど私は色んな熊が演奏する奴が一番大好き、夜に観るとホントたまんない」

 

「は? 夜に観に行くならやっぱりアレでしょ「せ~かいは~」の奴」

 

「いやいや、アレは夜に行くんじゃなくて帰る間際の締めに見るんだよ、私は毎回行く度に締めはあそこって決めてるから、最近変わったけどあそこも良いね、うん」

 

 

一通りの夢の国トークをヨシヒコとアクアと共に堪能し終えると、仏は満足したかのように微笑みながらスゥっと消えていく。

 

「それじゃあみんなー! また会おうねー! ハハッ!」

「その笑い声止めろ!」

 

最後の最後までふざけっぱなしでいなくなった仏に叫び終えると、メレブは「ったくもー」としかめっ面を浮かべながらまだ笑顔を浮かべているヨシヒコとアクアの方へ振り向く。

 

「ハッキリ言うけど、今まで色々な事があった中で、多分今回が一番の反省回だと思うわ俺、やらかし過ぎだしふざけ過ぎ」

 

ヨシヒコ達にそう言うとメレブはチラリと足下でまだ土いじりをしているダクネスの方を見下ろす。

 

「せっかく頑張ったのにコイツこんなんなっちゃったし……だからお前等はキチンと反省して、ダクネスを元気付けてやらないといかんのですよ」

「わかりました、彼女の為なら我々は全力で何でもやります、それで一体何をすればいいのでしょうか?」

「決まってんだろ……」

 

 

 

 

「俺達も夢の国へ連れてけって言ってんだよぉ!!」

「メレブさん! やはりメレブさんも行きたかったんですね!」

「当たり前だろコノヤロー! さっきからずっとお前等だけで盛り上がりやがって!」

 

突然その場で子供の様にはしゃぎながら大きく飛び上がるメレブ。

 

どうやら彼も夢の国へずっと行きたくて仕方なかったらしい

 

「ここで一晩明かして朝になったらすぐ出発しようぜ!」

「なによやっぱアンタも好きなんじゃないの、しょうがないわね~連れてってあげるわよ、私ももう一度行きたかったし」

「あざーす! 全力でお供しまーす!」

 

夢の国へ行くのであれば2日連続であろうと全く問題ないとアクアもまた乗り気でいると、メレブは急いで落ち込んでいるダクネスの腕を引っ張る。

 

「断言しようダクネス、お前のそのブルーな気持ちは、夢の国ですべて取り払われるであろう!」

「……いや私はあんまり乗り気じゃないんだが……」

「思わず抱きしめたくなるぐらい可愛いキャラクターがわんさかいるぞ」

「本当か!?」

 

そんな所へ行く気分じゃないとやんわりと断ろうとするダクネスだが、既に行く気満々のメレブの一言に反応してすぐに自らの足で立ち上がるのであった。

 

そしてそれから時が流れた後

 

 

 

 

 

ヨシヒコのパーティ全員が

 

 

 

 

 

しばらくモザイク加工されたのは言うまでもない

 

「ちょっとヨシヒコ! アンタまた落ちる時に手を離してないじゃない! どんだけビビリなのよ!」

 

「無理です! 周り全てが真っ暗の中から落ちていく時に絶対に万歳なんて出来ません! 次はもっとのんびりした奴に乗りましょう!」

 

「あ! みんなちょっとごめん! 次行く前にあそこのお土産屋寄っていい!? なんかあの店限定の奴があるみたいだから!」

 

「ま、待ってくれ! それよりもまずあの黄色い熊のアトラクションの優先チケットを取らせてくれ! あれだけにはどうしても乗りたいんだ私は!」

 

 

 

夢の国、それはどんな生まれ、どんな世界の人でもたちまち笑顔になれる不思議な場所

 

 

 

 

 

「流石は兄様です、戦う時も全力、そして楽しむ時も全力なのですね」

 

そんなはしゃぎ回っているヨシヒコ一同を変わった形で生えている木の裏からコッソリ見ているのは

 

全身モザイクになっているヨシヒコの妹・ヒサだ。

 

「ならばヒサも全力で楽しもうと思います!」

「う、う~む……我輩が作っていたダンジョンによもやこんな場所に繋がる通路が出来ていたとは……もしやあのデカい耳を付けた黒いネズミの様なモノが勝手に作っていたと言うのか……我輩の全てを見通す力をもってしても心を読めぬかったからただ者ではないと思っていたんだが……」

「は! 何者でございますか!?」

 

彼女のすぐ背後から声がしたのでヒサは慌ててバッと振り返ると

 

そこには依然ダクネスが倒した筈の大悪魔・バニルがピンピンした様子で立っていたのだ。

 

周りをキョロキョロ見渡しながら居心地悪そうにしていたのだが、ヒサに尋ねられるとすぐにいつもの調子で

 

「フハハハハ! 初めまして小娘! 我輩は全てを見通す力を持つ有能なる紳士にして華麗なる大悪魔! バニルさんだ!!」

「なんと! 悪魔が一体この様な場所に一体どんな御用なのでございますか!?」

「う、うむ実はな……あそこにいるクルセイダーをまんまと騙す為に倒れたふりをしてハズレの宝箱を渡してやったのは良いのだが……」

 

顎に手を当てながらバニルは非常に困惑した様子でここに来た経緯を話し始める。

 

「てっきり盛大に落ち込んでいるのだろうと思って、それを嘲笑う為に後を追いかけてここに来たのだが……どういう訳かあの小娘、物凄く良い笑顔を浮かべているので正直意味が分かならくて戸惑っているのだ……」

「あ! もしかしてそこにいるのってバニルさんじゃないですか!?」

「む? はて、どこかで聞いたような声が……」

 

ヒサに困り顔で話をしている途中で、背後から聞いた事のある声が自分を呼んで来た。

 

咄嗟にバニルが振り返るとそこには

 

「私ですウィズです! お久しぶりですバニルさん!」

「なぁ! 貴様ウィズか!? ど、どうしたその恰好は!?」

 

同じ魔王軍の幹部であるウィズがモザイク加工されながら無邪気にはしゃいだ様子で現れたのだ。

 

上下しっかり夢の国コーディネートしている彼女に、流石のバニルもゾッとした様子で後ずさり

 

「久方ぶりに会った友がそんな年不相応な恰好をしていては流石に我輩もどう反応すればいいのかわからんぞ!」

「年なんて関係ありません、それに私は永遠の20ですから、これは立派な年相応の恰好です」

「おっと、目つきを険しくさせるのは止してくれ……失言だったすまん」

「はい、それにしてもここは凄いですよバニルさん!」

 

ウィズから不穏な殺気を感じて慌てて謝罪すると、彼女はケロッとした表情で楽しげに話しを続ける。

 

「アンデット系のモンスターが暮らす為に大きな住居まで用意されてるんです! バニルさんも観て来たらどうですか!?」

「そんな所まであるのかここは……人間達の幸福な感情があり過ぎて悪魔である我輩にとっては正直この場にいるだけでも限界なのだが……ていうかウィズよ、どうして貴様はここで遊び呆けているのだ?」

「い、いやぁそこにいるヒサさんと一緒にいる内にいつの間にかここに来ちゃいまして……」

「なに? この娘と行動を共にしているのか?」

 

彼女のここに来た経緯を聞いて咄嗟にバニルはヒサの方へ振り返ってジッと見つめる。

 

「うーむ、どうやら貴様はあのヨシヒコとかいう男の妹なのか……真っ直ぐに兄を強く慕い懸命に支えようとしている心構えが見える……ここまで純粋無垢な心を持った者を見るのは実に久しぶりだな」

「なんと、あなた様はヒサの心を読めるのでございますか!?」

「全てを見通す力を持つ我輩にすれば造作もない事よ、フハハハハハ!」

 

心を完全に読まれてヒサが驚いてバニルが盛大に高笑いを上げていると

 

「あ! ヒサさんにウィズさん! ベル君とゆんゆんとシルビアさんがあっちでトロッコで山を昇ったり落ちたりするアクションに乗りたいって言ってましたよ! 早く行きましょ!」

「ぬ! まてまて今度はいかにも貧弱そうな眼鏡の男が現れたぞ!」

 

そこへ不意に現れたのはヒサの仲間であり唯一の一般人のスズキ

 

指先で突けば倒れてしまいそうなひょろい体付きをした彼を見て、バニルはなんだコイツと振り返った。

 

「よしこ奴の頭の中も一応見ておくか、なになに……相方が大河ドラマで準レギュラーやってて大変そうだなーと思うだと……何が大変だ! 貴様も頑張れ!」

「いやそれ僕というか別の僕っすね、まあ一応頑張ってみます、はい」

 

心を読みながらつい一喝してしまうバニルにスズキはヘラヘラと笑いながら答えると、彼を指差してウィズの方へ振り向き

 

「というかこのお面被ってる人って、誰なんですかね? キャストさん?」

「この方は私と同じ魔王軍の幹部で、その中で唯一の友人のバニルさんです」

「ああ、幹部ってことはベル君やシルビアさんと一緒の……あれ? てことはヒサさんの仲間になるって流れですかコレ?」

「どんな流れだ、我輩がこの様な清らかな心を持つ小娘と手を取り合うなどある訳なかろう、もし仲間にしたいのであれば……」

 

変な勘違いをしているスズキにバニルは不満そうに鼻を鳴らすと、挑戦的な笑みを浮かべて

 

「この我輩を力でねじ伏せ倒してみせるのだな! 言っておくが我輩は滅茶苦茶強いぞ! 果たして貴様等に倒せるかな!?」

「えぇ~滅茶苦茶強いんですか? んーそれじゃあ一応やってみますか……」

「え? まさか貴様が私を倒す気なのか? え?」

 

相手が強いと聞いて困った様子で首を傾げつつも、懐から先っちょに星の付いた杖を取り出す。

 

この夢の国で売っていた土産品だ。

 

「待て貴様、なんだそのどっからどう見てもおもちゃにしか見えない杖は……まさかそれで我輩に呪文でも掛けるつもりなのか……」

「んーまあ一応やってみようかなと思いまして、まあ基本効かないんですけどね」

「地獄の公爵も随分とナメられたものだな……よかろう! ならば思う存分我輩に掛けてみるがいいわ!フハハハハハ!!」

 

こんな男のチンケナ呪文など聞く筈がない、バニルは対抗呪文も用意せずに真正面から受ける事を約束し、かかってこいと言わんばかりに構える。

 

一般人・スズキvs全てを見通す大悪魔・バニル

 

彼等の決着は果たして……

 

 

次回へ続く。

 

 

 

 

 

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