勇者ヨシヒコと魔王カズマ   作:カイバーマン。

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其ノ捌 アクシズ教徒ミュージカルwithスライム
捌ノ一


ヨシヒコ達は朝からいつもの様に魔物達と戦闘していた

 

 

魔王との決戦に備え戦いを続けて経験値を積んでいく為である。

 

するとそんなタイミングで都合良く……

 

『はぐれメタルがあらわれた』

 

「あ! アイツ倒したら超一杯経験値貰える奴だ!」

「いやーん銀色に輝いて綺麗なのに顔がいつもとおんなじで超可愛いー!」

 

目の前に一匹だけ横からスライドする感じで現れたのはヌメヌメした、ちょっと溶けてるんじゃないかと心配になる見た目の銀色のスライム。

 

それが現れたことにメレブが驚いて飛び上がってる中、アクアは相変わらずスライムに対して熱を上げていた。

 

「でも倒したら経験値超貰えるってどういう事? 見た感じ他のスライムと同じで超弱そうじゃない」

「それがねアイツ、超逃げるんだよ、そんで倒そうとしても超堅い上に超避けるし、何が恐ろしいって呪文が超効かないタイプなの、つまり超倒しにくい」

「え、そうなの!? 超ヤバいじゃない!」

 

どうやら滅多に現れないこの希少なスライムは、経験値を大量に貰えるチャンスもあるが同時にかなり倒すのが難しい様だ。

 

メレブからそれを聞いてアクアは慌ててそのスライムを指差し

 

「ならとっとと早く倒すべきね! 行きなさいヨシヒコ! 超倒して!」

「はい! 超戦います!」

「さっきからお前達、やたらと超という言葉を使いたがるな……」

 

同じ言葉を繰り返し使っている彼等にダクネスがボソリとツッコむ中で

 

ヨシヒコは素早く動いて銀色のスライムに斬りかかる

 

「はぁ!」

『ミス、はぐれメタルに超よけられてしまった』

「あぁ~んもう! 超しっかり当てなさいよ!」

「超すみません!」

 

彼の攻撃を難なく避けてしまう銀色のスライムにアクアが歯がゆそうに叫んでいると

 

攻撃を当てれなかったヨシヒコに代わってザッとダクネスが一歩前に出て

 

「よし! ならば私が!」

「あ、いいわよダクネスは、ゆっくり休んでて、うん」

「おいその扱いはなんだ! 私だと当たる訳がないと思っているのか!」

「いやだって、普通のモンスターにも当たらないアンタの剣じゃ絶対無理でしょ」

「う! え、ええい見てろ! 私だってやる時はやるんだと証明してやる!」

 

 

彼女もまた攻撃に参加しようと意気込んでいるのに対し

 

アクアはやや冷めた表情で全く期待していない様子。

 

それをすぐに感じ取ったダクネスはムキになってズンズンと銀色のスライムの方へ向かって行くのだが

 

「ってうわ! あふっ!」

「あーあー、ドジっ子アピールとかいらないのに……」

「さてはダクネス、まだ己が目立たない事を気にしているのか……」

 

偶然地面に転がっていたちょっと大きめの石に躓いてしまい、うっかりダクネスは剣を構えたまま地面に向かって転んでしまう

 

すると彼女の持っていた剣が、完全に油断してボーっとしていた銀色のスライムに……

 

直撃

 

『かいしんのいちげき! はぐれメタルをたおした』

 

「わ! わぁー! まさかのダクネスがラッキーパンチで倒しちゃったよ!」

「私はずっとやればできる子だと信じてたわダクネス」

「流石だダクネス、まさかあの態勢から攻撃に移るとは私には到底真似できない」

「いてて……え?」

 

転んだ瞬間突然周りから絶賛されるので、戸惑いながらダクネスが起き上がった。

 

「も、もしかして私が倒してしまったのか……?」

「ダクネス、アンタに任せて良かったわ」

「いや完全に私の事期待してなかっただろお前……」

 

そしてドヤ顔で馴れ馴れしく自分の肩に手を置いて来るアクアにダクネスがジト目で呟いていると

 

思いがけない更なる幸運が訪れた

 

「わ! わわ! わわわー! アクアアクアアクアー! 今目の前でとんでもない奇跡が!」

「何よそんなに慌てて……ってわ! わわ! わわわー!」

 

いきなり慌てふためくメレブにどうしたんだと、素直に彼が指差す方向に振り返ると

 

 

 

 

 

『なんとはぐれメタルがおきあがり、なかまになりたそうにこちらをみている』

 

「わわわわわわわわぁー!!」

「アクア、なんかお前のそのリアクション、仏みたいだぞ……」

 

なんとずっと仲間にしたくてたまらなかったスライムが、しかもそのスライムの中でもかなりレアで仲間になりにくい銀色のスライムがまさかの仲間に加わる事を志願して来たのだ。

 

ダクネスがもたらしたとびっきりの幸運にアクアはただただ叫ぶしかなかったが、すぐにそのスライムの方へ駆け寄って

 

「もちろんOKよ! やったわダクネス! アンタが倒したおかげでこの子仲間に出来ちゃった!」

「私はただ転んだだけなんだが……まあこうして経験値も稼げたし仲間も増えたし良しとするか」

「うわコイツすげぇ仲間になりにくい魔物なのに……これは素直に凄いと認めるしかないない俺も」

「やりましたね女神、以前からずっとスライムを欲しがってましたもんね」

 

普通のスライムと違って持つとでろ~んとしてしまう銀色スライムを躊躇なく持ち上げて歓喜の声を上げるアクア。

 

遂に彼女が待ち望んでいたスライム系ゲットである。

 

「この子の名前は『はぐりん』ね! 私が責任もってこの子を立派な一人前にしてみせるわ!」

「アクアさんアクアさん、そうやって持ち上げてると、お前の指の隙間からでろでろとはぐりんの体の一部がこぼれていってるよ」

「あぁー! はぐりん!」

 

はぐりん本体は平気そうだがやはりスライム系な為に体は異様なほどドロドロしていた。

 

 

手に持ったままにしてしていると彼の体液がみるみる地面に滴り落ちるので、慌ててアクアは地面に下した。

 

「フゥー危ない危ない……それじゃあこの子も一緒に連れて行きましょう」

「では馬車に入れおきますね」

「ダメよ! 馬車だけは絶対にダメ! あんな所にこの子を入れておけないわ!」

「どうしてです?」

 

はぐりんを馬車に預けようとするヨシヒコだがアクアはそれを断固拒否

 

彼に向かって手を突き出しながら彼女は頬を膨らませて

 

「だってアンタ! 死体とミイラがいなくなってから戦力補強する為に色んなモンスターを次々と仲間にしてたじゃないの! しかもよりによって気持ち悪いモノばかり!」

「あーそういやヨシヒコ、魔物のエサ使って色んな魔物を仲間にしてたな、手だけの奴とか宝箱の奴とか」

「異様に唇の大きなナメクジみたいなのもいたなそういえば……アレは私も正直イヤだ……」

 

どうやらヨシヒコは死体とミイラが新婚旅行に出て行ってる間の穴を埋める為に様々な魔物を傘下に収めていたらしい。

 

しかしどういう訳かアクアにとっては生理的に受け付けないモノばかりであった。

 

「そんな危ない場所にこの子を預けるなんて絶対に出来ないわ! 私が面倒見るから連れてって良いでしょ!」

「え~お前ちゃんとスライムの世話出来んの? 夏場に放置すると溶けるんだぞそいつ」

「元々溶けてるわよ!」

「仕方ない、ここ女神にはぐりんを任せましょう」

 

結局はぐりんの世話をアクアが責任取って行うという事でヨシヒコ達は了承し

 

無事にはぐりんが彼等の仲間に加わりこのまま同行する事になると

 

 

 

 

ジャガ丸くんいかがっすかー! ジャガ丸くんいかがっすかーッ!

 

突如空から声がする。いつもとちょっと違う叫び声だが、すぐにヨシヒコ達は反応して顔を上げる

 

「あ、仏だわ、はいヨシヒコ」

「はい」

「相変わらず空気も読まずに来るわよねぇ、もしかしてわざとかしら?」

「いやそれよりも、ジャガ丸くんって誰の事だ……?」

 

ササッとメレブが取り出したいつものヘルメットをヨシヒコが被ると

 

アクアとダクネスの疑問をよそにパァーッと天から光が降り注がれて

 

 

 

「ジャガ丸くんいかがっすかー! 揚げたてで新鮮で美味しいジャガ……ってうわビックリした! 驚かすんじゃねぇよバカヤロー!」

「いや何やってんだよお前も、てかこっちの世界に現れるのって自己発信じゃないの?」

 

雲の上に現れたのはいつも通り仏なのだが

 

どこか様子がおかしく、こちらに向かって驚きの声を上げる。

 

「んも~、今こっちが大変な時に掛けてこないでよ、あのねみんな? 私今戦ってる最中だから邪魔しないでくれます~?」

「なに邪魔って? 俺達にお告げ下すのがお前の仕事じゃないの? 戦うより前に仕事だろ」

「何やってんのよアンタ」

「フ、お前達が魔王討伐に向けて日々戦ってる様に、私もまた己の戦いをしているのだ」

 

腕を組みながらちょっとカッコよく言ってみると、仏はすぐにまたいつものテンションで

 

こちら側では見えない何者かに手を伸ばして叫び始める。

 

「あ! 待たれよそこのカップルよ! ジャガ丸くん! 新作のジャガ丸くんハニークラウド味を食べていきなさい! 絶対美味しいから! はいはいはい!」

「おいアイツ! よく見たらなんかモノ売ってるぞ! ジャガ丸くんとかいう揚げ物を強引に売り付けてるぞ!」

「何やってんのよアイツ、ちょっと仏-! ジャガ丸くんよりも早くお告げ言いなさいよー!」

「はいじゃが丸くんお二つお買い上げー!」

 

こちらが仕事しろと叫んでいるのもお構いなしに、仏は今までにない素早い動きをしながら強引な手口で商品を売り捌きつつ、今度は慌てて誰かを呼び止めている

 

「あ! 待って待ってそこのお兄さん! その店で売ってるジャガ丸くんよりもこっちのを食べなさい! こっちの方が断然美味しいから! 買うならコッチの方が絶対いいから!」

「おやおや? 話はよく見えんが、どうやら店を向かい合わせてジャガ丸くんの売上勝負をしてる、的なノリに見えなくもないな」

「そこの紐の見た目と胸に騙されちゃダメよダメ、私を信じなさい、仏を信じなさい、ジャガ丸くんハニークラウド味を信じなさい、それで全てが救われるのです」

「紐……あぁ~私ってば仏の向かいで店やってる人わかっちゃったかも……人というより神だけど」

 

相手側に行こうとするお客を強引にこちら側に絡め取ろうとする仏を見て

 

何やら自分達そっちのけで勝手に売上勝負的な事をやっているのではメレブが推測し

 

アクアもまた何かわかった様子で頷いた。

 

「アンタなに? また紐の女神と揉めてる訳? 今度は何があったの?」

「いや別に、揉めてる訳ではないのよ、ただちょっとここ等でどっちが上か下なのか? え~それを? ハッキリさせる為に? ここで? 潰すという訳でございまして~」

「うわ、めっちゃ向かいの店に向かって煽ってる様な顔してるよアイツ……ムカつくだろうなあんな顔されて……」

 

完全に人をコケにした顔を浮かべながら挑発的な物言いをする仏

 

すると余裕が出来て来たのか、仏はまたこちらの方へと振り返って来た。

 

「ではヨシヒコよ、お告げを下そう」

「お、売るジャガ丸くんが尽きて揚げている所だから、その合間にお告げする気みたいだぞ」

 

下からパチパチパチ!と何かを揚げている音と共に

 

急に改まった様子で仏はヨシヒコにお告げを下した。

 

「えーそこから北にずっと先へ進んだところに、とある大きな都がある。そこは温泉で栄えた観光街であり、その名は……んー……」

「おいその都の名前忘れたの? てかさっきからチラチラ下見過ぎ、ジャガ丸揚がったかどうかチラチラ見過ぎ」

「その都の名は……んー、んーーーーー? ジャガ丸くん?」

「パニクるな仏! ジャガ丸くんは今お前が揚げてる奴!」

 

商品の揚がり具合が気になり過ぎて肝心な指し示す場所の名前をド忘れしてしまった仏だが

 

そこへアクアがピンと来た様子で顔を上げて

 

「もしかして! アルカンレティアの事!?」

「それだ! アルカンレティア! アルカンレティアだアルカンレティア あ! お客さん! 今丁度揚げたてのアルカンレティアが出来たばかりですよー!」

「フッ……! 都揚げてどうすんだよ……駄目だあのおっさん、全然台本覚えて来てねぇよ……!」

 

アクアが教えてくれたのはいいもののまだ慌てているのか、変な事をお客に口走る仏

 

そんな彼のテンパり具合がツボが入ったのか思わずメレブは噴き出してしまう。

 

「もう本当に! 本当に真面目にやれよお前! こっちはずっと顔上げて首疲れてんだから!」

「はいすみません、ちょっと仏も疲れちゃってるのゴメンね……えーそれでですね、そのアルカンレティアにはなんと前に言っていたダンジョーやムラサキが掛かっている竜王の呪縛を解けるアイテムが眠ってるらしいんです」

「おいちょっと待て、前にそのアイテムはあのバニルがいたダンジョンにあると言っていたじゃないか」

 

仏の話に割り込んで来たのは、しかめっ面で疑いの眼差しで見つめるダクネス。

 

「あの時も私達は素直に信じたが結局バニルに騙されたってオチだった。今回は本当に大丈夫なんだろうな」

「大丈夫、今度こそ本当。これは絶対に本当にあると確信して頂いて結構です、本当にウチのジャガ丸君の方が、紐の奴よりも数段上手いから!」

「……おい、最後の最後にまたジャガ丸くんに戻ってるぞ」

「揚げたてサクサク! 甘くて美味しい! とっても安いのに食べればすぐに満足できる! そんなジャガ丸くんハニークラウド味いかがっすかー! 向かいの店なんかには置いてないレア物だよー!」

「おい! また私達を無視してジャガ丸くんか! いい加減にしろ!」

 

どうも信用ならないとダクネスは仏に対して懐疑的な表情でとても信用できないでいると

 

仏は仏で「あ、あ、あ、あー!」とかまた慌てた様子で

 

「ヨシヒコピンチ! 緊急事態だ! ジャガ丸くんの為に仕入れたジャガイモが遂にそこに尽きた! あとハチミツのストックも切らしちゃった!」

「あーあ、良い所まで行きそうだったのに詰めが甘いわね、これで紐の勝ちは決まったわね」

「いや~、紐なんかに負けたくない~! ヨシヒコ今すぐ最寄りの街に戻って! ジャガイモとハチミツ、それと油と塩買ってこっちに来て!」

「わかりました! すぐアクセルに戻ります!」

「いいわよ戻らなくて! 仏の自業自得なのにどうして私達が手伝わなきゃいけないのよ! てかどうやって行くのよそっちに!」

 

泣きそうな顔でこちらに頼み込んで来る仏の言う事を素直に聞いて、アクセルに戻ろうとするヨシヒコのマントを引っ張って止めるアクア

 

 

自分達の目的地はあくまでアルカンレティアであり、まずはそこへ行く事を優先すべきなのだから

 

「落ち着きなさいよ仏! 私達はアンタの言う事を聞いてこれからアルカンレティアに向かうのよ! アンタの問題はアンタで解決しなさい!」

「え~そんな~! あ~あ~向こうの方にお客さんがどんどん行ってる~どうするどうするどうする~!? ってあ!! 来たぁー! 救いの神!」

 

アクアにそう言われて仏はメソメソしながら周りを見渡し始める、誰か助けてくれる者はいないかと……

 

すると突然、何かを見つけた様子ですぐに指を差して

 

「ロキ! まさかこのタイミングで来るとか神かよお前!! あ、神だった」

 

助けてくれそうな人物を見つけたのか、仏はすぐに身を乗り上げて

 

「あのーですね、実はあの紐とまあ売上勝負してる所なんですよはい、それでウチの仕入れの在庫がヤバいので、ちょっとおたくの所の眷属……2、3人貸して手伝ってくんない?」

「うわ! アイツ他の神様の手を借りようとしてるぞ! 超汚ねぇ! 仏のクセに!」

「駄目? やっぱり? ちなみにアレだよ、私が勝った場合……あの紐の所の少年が私の……」

 

最初はすぐに断られたみたいだが仏はまだ諦めない

 

するとこの勝負によってもたらせる結果をコッソリと耳打ちし始めてしばしの間を置いた後

 

「うぃっしょぉ! 交渉成立!」

「成立した! ウソだろオイ! 仏の下衆さも大概だけど、そこで手を貸す神様もどうなのよ!」

 

仏とバシッと熱く握手を交える相手に疑問を持ってメレブが叫ぶと

 

ずっと黙って話を聞いていたヨシヒコもまた小首を傾げている。

 

「仏に手を貸したのはロキという神様みたいですが、何者なんでしょうか?」

「ロキねぇ……まあ仏と仲良く出来る数少ない奴よ、結構洒落にならない事やらかしてる性悪の神様ね」

「なるほど、仏にはゼウス君以外にも友人がいたんですね」

「おおかた仏が勝てば紐の女神の方がなんらかの代償を払う必要があると聞いて、それで面白そうだから乗ったって所ね」

 

ゼウス君に続いてまた新たに名前だけ出て来たロキという神様に見覚えがあるのか、アクアがヨシヒコに説明してあげていると

 

戦力補強が出来たとわかって、仏の方も慌ただしく動かし始める。

 

「とりあえずすぐ! すぐ誰か連れて来て! なるべく使えそうな奴を! あと材料だけじゃなくて揚げる為の調理器具も欲しい! 私一人じゃ間に合わないからお前の所の眷属にもジャガ丸くんを揚げてもらうから!」

 

「おいそれは流石に卑怯過ぎだろ仏! お前とその紐の女神様のサシでの対決なんだろ!? なに全く関係ない奴にまでジャガ丸くん作って売って貰おうとしてんだよ!」

 

「ええい関係ないキノコは黙ってるんじゃい!! こちとら何をしようが絶対に勝つんじゃい! 紐の所の少年加入させて! 夢の仏ファミリア結成するんじゃい!」

 

「ほ、仏ファミリア!? お前! 俺達がこうして冒険してる間! そっちの世界でなにやろうとしてんの!?」

 

こちらの非難を一喝して内なる野望を叫ぶ仏に、メレブは信じられないという表情で再度彼に尋ねかけようとするも

 

「とりあえずあの娘絶対に呼んで! ちょっとウチのヨシヒコみたいな天然入ってる変な娘! あの小娘がこっちにいれば確実に少年はこっちに着くから!!」

 

徹底的に下衆な作戦をおっ始めようと、手助けしてくれるもう一人の神と打ち合わせをしてる途中で

 

こちらに背を向けながら仏の姿がスッと消えてしまうのであった。

 

「アイツさぁ……本当にこの世界を救う気あんの? ずっと前から思ってたけど、あっちの世界で遊び過ぎじゃね?」

「私も流石に度が過ぎていると思う……大変だなお前達の世界の管理者がアレだと……」

「そうなんすよーわかってくれますダクネスさん? マジであのエリスちゃんの方がまだマシだから」

「お前はお前で自然にエリス様をちゃん付けで呼ぶな」

 

ヨシヒコのヘルメットを自ら取ってあげて懐に戻しつつ

 

疲れた様子でメレブがダクネスに嘆いていると

 

一人だけちょっと機嫌良さそうにしている人物が一人

 

「アルカンレティア……フフフ、まさかあそこに行ける事になるとはね、はぐりんにも色々と教育できるチャンスだわ」

「どうしたんですか女神、そんなに嬉しそうにして」

「教えてあげるわヨシヒコ、アルカンレティアは温泉のある観光スポットとして有名だけど、あそこは別に温泉があるから有名って訳じゃないのよ」

 

 

ヘルメットを取って素顔に戻ったヨシヒコに、アクアは自分の足下にくっ付いているはぐりんの頭を撫でながら意味ありげな表情で

 

「アルカンレティアはね……この水の女神であるアクア様を崇め奉るアクシズ教徒の総本山なのよ!」

「アクシズ教徒……そういえば前に戦った盗賊の中にもその教徒だと主張する者がいましたね、つまりそこには女神を崇拝する信者の皆様が集まっているという事ですか?」

「そうよそう! そうなのよ! 日々私を信仰して、エリス教徒なんかに負けない為に信者を増やそうと頑張っている可愛い子達が一杯いるのよ!」

 

ヨシヒコの前でクルリと一回転しながら、すっかり舞い上がった様子の彼女。

 

彼に説明を終えると拳をグッと握って

 

 

 

 

 

「待ってなさい私の可愛い信徒達! あなた達が崇める女神が降臨してあげるんだから!」

 

自分が現れたら信徒の皆はどれだけ喜び、どれだけ自分を崇めてくれるんだろうという期待を胸に

 

すぐにでもアルカンレティアを目指そうとアクアは意気込むのであった。

 

 

 

 

 

 

「仏もそうだけど……あの子も本当に超大丈夫? 本気で自分の事を女神だと思い込んでるしヤバいって」

「アクアは超可哀想な子なんだ、どうか暖かい目で超見守ってあげてくれ……」

「ちょっとー! いい加減にアンタ達も超信じてよー!!」

「私は超信じています!」

「ヨシヒコ……アンタだけが私の超味方よ」

 

一行は馬車に乗り、新たな冒険へと出る。

 

いざアルカンレティアへ

 

 

 

 

 

 

 

おまけ 仏の近況報告

 

「えー毎週「勇者ヨシヒコと魔王カズマ」を読んでくださる読者の皆様、仏です、みんな大好き仏です、私もそんなみんなが大好きな仏です」

「また突然呼ばれた幸運の女神のエリスです……」

 

軽くお辞儀しながら挨拶する仏の隣で、ちょこんと立っているエリスが深々と頭を下げる。

 

「仏先輩、今回は一体なんですか? また兄貴用語解説とかみたいなのだったら私帰りたいんですけど……」

「え、なにそのいきなり超帰りたい様な顔して……大丈夫、今回は兄貴いないから、今回はね、私から読者の皆さんにご報告があります」

「報告って……もしかして今回で最終回とかですか!?」

「最終回じゃねぇよバカヤロー! まだ続くわ! もうちょっとだけ続くわ! いきなりボケるな! ツッコミがボケるな!」

 

 

珍しくエリスがヨシヒコみたいなボケをかまして来たので仏は戸惑いつつツッコミを入れて

 

早速自分の本題を話し始めた。

 

「えとですね、なんと、なんとなんとなんと!」

 

 

 

 

「この度仏のスピンオフssが連載開始となりました! パチパチパチ!」

「えぇ!? 仏先輩のスピンオフ!?」

「タイトル名はズバリ! 「聖者ホトケと神の孫ベル」!」

「あぁなるほど……タイトル的に遂に公式に絡ませようって事ですね、あそこの作品と……」

 

ドヤ顔で手をビシッと立てながらタイトル名を公開する仏に、その名を聞いて納得した様子でエリスが頷くと、仏も「そうそうそう!」と指を突き付けて何度も頷き返す。

 

「アレね、勇者ヨシヒコシリーズとあの作品のクロスオーバーssになるって事よ、あれ……あの作品の名前なんだっけ? 「転生したらスライムだった件」だっけ?」

「全然違います! 「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」ですよ!」

「あ~そっちか~、私てっきり、主人公がすげぇ強いスライムに転生出来たと思ったら。仏のうっかりでドラクエ仕様の最弱のスライムになっちゃって、日々勇者ヨシヒコに襲われる生活を余儀なくされるというダークファンタジー路線で行くのかと思ってた」

「嫌ですよそんな悲しいストーリー! 主人公可哀想にも程がありますよ!」

 

勝手にストーリーどころかクロス先の作品までうろ覚え気味な仏にエリスが一喝。

 

「ていうか仏先輩が主役なのに相手方の作品を忘れちゃダメですよ!」

「冗談冗談、ちゃんと覚えてるから、えー「聖者ホトケと神の孫ベル」は勇者ヨシヒコシリーズとダンまちのクロスssです! 主人公はヨシヒコではなく私、仏が担当しております!」

 

エリスに怒られてヘラヘラ笑いながら誤魔化すと、仏は改まって作品の宣伝を始めた。

 

「私がダンまちの世界にうっかり間違えて降臨しちゃった所からお話は始まり! そこから白髪紅眼の少年や紐の女神、その他様々なキャラ達と関わりを持ち、絆を深めるお話です!」

「つまり私達のいる世界の裏側で仏先輩がどこで何をしているのか、という部分が書かれたお話、という事ですね」

「んーそういう事だね、こっちでも私がね、度々降臨してる時によく向こうの世界のお話してたじゃない? だから今回のスピンオフはその辺の話を詳しくした仏主観の物語。という事です」

 

 

エリスの相槌に答えながら仏はニコニコと笑ったまま頷く。

 

「という事で、「勇者ヨシヒコと魔王カズマ」だけでなく、もしよろしければ、ね? 仏をね、仏の活躍をもっと見たい、もしくは仏がヨシヒコ達のいない所でなにやってたのか知りたいって人達は是非! 「聖者ホトケと神の孫ベル」を是非読んでください! 是非是非!」

「仏先輩のスピンオフですかぁ、私は作品違うから影ながら応援してますね」

「コイツもたまに出ます!」

「えぇ!?」

 

聖者ホトケと神の孫ベル

 

本作と並行して連載中

 

 

 

 

 


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