勇者ヨシヒコと魔王カズマ   作:カイバーマン。

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拾ノ四

ヨシヒコがクーロンズヒュドラを手名付けようと優しくよしよしを始めてから数分後

 

ようやく湖の底からアクアが勢いよく水面から飛び出して来た。

 

「プハァ!! 獲ったどぉぉぉぉぉおぉぉ!!!」

 

「おお! 見ろメレブ! アクアが剣を掲げて戻って来たぞ!」

 

「なんだ、もう全然浮かび上がってこないから、普通に諦めて別の方法考えようと思ってた」

 

「なにひとの事見捨てようとしてんのよ! 水の女神をナメんじゃないわよ!」

 

全身ずぶ濡れになりながらも水面から高々と掲げ上げているのは金色の鞘に収まった美しい剣。

 

間違いなくアレこそが、魔王を倒す為のとっておきの聖剣・エクスカリヴァーンに違いない。

 

 

ぶっちゃけあんま期待していなかったダクネスとメレブは、彼女の成果に急いで駆け寄った。

 

「よくやったぞアクア! やはりお前はやる時はやるんだな! 偉いぞ!」

 

「うむ、これは俺も素直に認めるしかないみたいだな、どうせ潜って早々魚にでも食べられちゃったんだろと思っててゴメン」

 

「なんかその保護者面した上から目線が引っかかるけど……これからは私の事をキチンと水の女神として崇め奉れば許してあげてもいいわよ!」

 

「アクア、この期に及んでまだそんな痛い事を……」

 

「よし、もっぺん湖に飛び込んで頭を冷やして来い」

 

「ええぇー!?」

 

えへんと両手を腰に当てて勝ち誇るアクアだが、やはり女神と自称してもダクネスとメレブは信じてくれない様子。

 

そしてここまでしてもなおも信じてもらえないと嘆きつつ

 

「こうなったらヨシヒコの奴にいつもみたいに称賛されないとやってけないわ、アレ? そういえばヨシヒコはどこ行ったのよ」

 

自分に甘いヨシヒコの存在を求めて、アクアはチラリと別の方へと顔を向けると

 

「女神! 聖剣を手に入れたんですね!」

「あ、ヨシヒコってぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

ヨシヒコがこちらに向かって嬉しそうに手を振っている。

 

しかしいつもより視点が高い、アクアよりもずっと上で、こちらを見下ろしながらニコニコと手を振っている。

 

何故なら今の彼は……

 

「私もこのドラゴンを懐柔し仲間にする事に成功しました!」

「なんでさ!?」

 

あの恐るべし八つ首のドラゴン・クーロンズヒュドラの頭の上に跨り、完全に従わせている状態なのだ。

 

他の首にも冬将軍やロボ、それにあのよろいも楽しそうに乗っている。

 

「女神の言っていた通りに私も頑張って、ドラゴンナイトとしてスカウトしてみたら意外といけました」

 

「私ただ足止めさえしてくれればそれでいいって言っただけなんですけど!?」

 

「よーしよしよしよしよし!! よしよしよしよしよーし!」

 

「やだヨシヒコキモイわ! 甘え声出しながらドラゴンの頭を撫でるとかホントにキモイ!」

 

狂気じみた笑みを浮かべながらドラゴンを手懐けてる様子を魅せ付けて来るヨシヒコにアクアは必死に抗議すると、彼はやっとドラゴンの頭から降りて来た。

 

そして歩み寄って来たヨシヒコにアクアは「はいコレ」と持っていた聖剣を両手で渡す。

 

「湖の底にこれ見よがしに突き刺さってたから抜いて来たのよ、感謝しなさい、凄く女神に感謝しなさい」

 

「これが魔王を倒せる伝説の武器、聖剣エクスカリヴァーン……流石は女神、ありがとうございます、凄くありがとうございます」

 

「別に私が二回感謝しなさいって言ったから二回お礼言う必要は無いんですけど……」

 

アクアに二回分の礼を言って深々と頭を下げると、ヨシヒコは受け取った聖剣を金色の鞘から引き抜いて見せた。

 

「おぉ……」

 

長年湖の底に沈んでいた筈なのにその刃は眩しく光り輝き、自分の顔がハッキリと映る程であった。

 

真上に昇っている太陽にかざすと、長き眠りから覚めた聖剣は惚れ惚れする程美しかった

 

「これでいよいよ、もう一度魔王に挑むことが出来ますね」

「うむ、遂にこの旅が本当に終わる時が来たという訳だな」

「はぁ~ようやく終わりなのね~、長かったわぁホントに」

「まだ終わりとは決まってないだろ、魔王を倒して初めて終わりと言えるんだから」

 

剣を鞘に納めて右手で抱えるながら、いよいよクライマックスが近づいて来たと実感する三人。

 

そこへダクネスがまだ気を緩めるなとしっかり忠告する。

 

「ただ魔王に勝つだけではないぞヨシヒコ、お前とメレブの仲間であるダンジョーにムラサキ、そして私達の仲間であるカズマとめぐみんも取り戻さなきゃな」

 

「いやめぐみんは別に良いでしょ、魔王と一緒に片付け……いたッ!」

 

「ああ、奪われた仲間は必ず取り返す、そして闇に支配されようとしているこの世界を救おう」

 

また余計な事を言い出そうとするアクアをダクネスが無言で彼女の頭を殴って黙らせていると

 

ヨシヒコもちょっと前までは逃げ出したくて仕方なかったのに、今では勇ましい真の勇者の顔に戻っていた。

 

そして後ろにいる仲間にした魔物達の方にも振り返る。

 

冬将軍、ロボ、よろい、そしてさっき仲間にしたクーロンズヒュドラにヨシヒコは静かに頷き

 

「お前達、いよいよ私達は魔王の城へと向かう。どうか最後まで私に付き合ってくれ」

 

「Arrrrrrrr!!!」

 

「てかあのよろい……絶対よろいじゃなくて中身入ってるだろ」

 

他の魔物が賛同する様に無言で頷く中で、よろいだけは雄叫びを上げて右手を空に突きあげる。

 

事あるごとに叫び出すよろいにメレブが首を傾げながらその正体に疑問を持ち始めていると……

 

 

 

 

パァーッと空から眩い光がこちらに降り注がれた。

 

「お、来た仏。ヨシヒコ、ドラゴンナイトからライダーに変身だ」

 

「はい」

 

「今更だしツッコまなかったけど、変身するならヘルメットだけじゃなくてベルトも必要だと思うんですけど?」

 

「マジで今更過ぎるしどうでもいい、てかなんでそこ気になってたんだよお前」

 

上空からすっかりお馴染みのあの声が木霊したので、メレブはすぐに袖の下からいつものヘルメットをヨシヒコに被せる。

 

メレブがアクアにツッコミ返す中、ヨシヒコ達、そして魔物達も反射的にその声の方へと顔を上げると。

 

「うん……うん、かなり美味いわ、イケるイケる」

「あ! なんかアイツ食ってるぞ!」

「うん!?」

 

 

雲の上に現れたのは、ドンブリに入った牛丼を、下を向いて美味しそうにほおばる仏の姿であった。

 

メレブが早速叫ぶと、その声に気付いたかのようにバッと仏は顔を上げる。

 

「ええ! おま! 飯食ってる時に呼び出すんじゃねぇよバカヤロー!」

 

「こっちが呼び出してる訳じゃねぇよバカヤロー!」

 

「相変わらずこっちが大変な目に遭ってるのに、呑気に牛丼で昼食とかムカつくわね~ホント」

 

口をモグモグさせながらこっちに米粒飛ばしてくる仏にメレブとアクアが早速逆切れするも

 

空に映る仏は不意にこちらではなく横の方へと振り返って

 

「なに? ああコレ? こうやって繋がってる先の相手にお告げするのが私の仕事」

 

「しかもまた誰かと一緒にいるし……おい! こっちが魔王と戦おうとしてるのに、なに飯食ってんだよお前!」

 

「うるさいよ! 仏だってねご飯ぐらい食べるんだよ! 神様だろうがお腹空くんだよ!」

 

「うわ口の中見えちゃった! 汚いってもう~! ちゃんとさ! 口の中のモン全部食べ終えてから喋りなさい!」

 

食事中の仏の口の中が見えた事にメレブが不快感を覚えてしかめっ面を浮かべると

 

仏はしばらく無言で噛み続けてようやくゴクンと飲み込み、更にコップに入った水を飲み終えると。

 

「ふぅ~、よし」

「いやなんでまた食べ始めようとしてんだよ!」

 

一呼吸整えて再び箸を手に取って牛丼にがっつこうとする仏を、すかさずメレブが手を伸ばして止める。

 

「牛丼はいいから早くお告げしろお告げ!」

 

「んだよそんなに仏の話聞きたいのかよ! だったら今すぐ聞かせてや……あ、そこの紅ショウガと焼き肉のタレ取って」

 

「いや牛丼へのトッピングよりこっちを優先しろ!」

 

「そうよ! 紅ショウガならともかかく牛丼に焼き肉のタレなんて邪道よ!」

 

「お前はお前で変な所にツッコミを入れるな」

 

隣に座っているのであろう一緒に食べている者から紅ショウガと焼き肉のタレを受け取って

 

沢山牛丼にかけ始めるのでメレブとアクアが怒鳴りつけると

 

仏は渋々といった感じでこちらに改めて振り返って来た。

 

「そんじゃまあ……ヨシヒコは無事に立ち直って、魔王を倒せる聖剣も手に入れた事だしね、それで魔王をとっとと倒しちゃってください」

 

「うわ、いつにも増して適当……どんだけ早く牛丼食べたいんだよ」

 

こっちを見つつもチラチラと下に目線を下ろして牛丼を食べたそうにしている仏

 

しかしこれもまた大事な仕事なので、少々雑ではあるもお告げを続ける。

 

「後ね、カズマ君に奪われた導きの笛はまだ彼が持っているみたいだから、それもなんとかして奪い返しなさい、そうすればまたダンジョーやムラサキ、それとカズマ君も元に戻すチャンスだから」

 

「Ohrrrrrrr!!!」

 

「……ん? なんでその魔物いきなり吠えたの? 返事してくれたの? 仏に返事してくれたのその子?」

 

お告げをしている最中に突然吠え始めたよろいに仏が首を傾げるも、アクアはめんどくさそうに手を横に振って

 

「気にしなくていいわよ、このよろいってば定期的にこうやって吠えるクセがあるのよ」

 

「てかそのよろい……ん? んん? 本当に魔物? てかそもそも、この世界の魔物? 私全く知らないんだけど、明らかに浮いてる様に見えるんだけど」

 

「いいからお告げ続けなさいよ、私達だってコイツの正体わからないのにアンタなんかがわかる訳ないでしょ」

 

「うわ……超ムカつく~、マジお前、いつか絶対にぶっ飛ばすから覚えとけよ絶対」

 

アクアの無愛想かつ失礼な態度に、よろいに対して強く疑問を持っていた仏はカチンときながら

 

彼女が天界に戻ってきた暁には仏ビーム13連射をお見舞いしてやろうと心に決めるのであった。

 

「え~あとなんか言う事あったっけ……あ! 確か魔王の城って今、毒の湖に囲まれてなかった?」

 

「はい、でも唯一城へと辿り着ける橋があったんですが、めぐみんの魔法によって破壊されてしまいました」

 

「大丈夫だヨシヒコ、いいかよく聞け」

 

橋が破壊されて城へと辿り着けないと呟くヨシヒコに、仏は自信を持って強く頷く。

 

「お前が新たに仲間にしたその八つの首を持つドラゴンが、きっとお前達を城へと導いていくはずだ」

 

「本当ですか!?」

 

「そのドラゴンは生き抜く為に水の上だけでなく、例え溶岩だろうが砂の中であろうが泳ぐことが出来る力を持っている、魔王が侵入者を阻む為に用意した毒の湖であろうと、きっと渡り切れるに違いない」

 

「凄い! まさか偶然仲間に出来たこのドラゴンのおかげで! 魔王の城へと辿り着ける事が出来るとは!」

 

「出た、終盤にきてなんというご都合主義……」

 

ヨシヒコがドラゴンナイトとして初めて懐かせる事に成功したクーロンズヒュドラが、まさかのここで役立つ事にヨシヒコ本人は素直に喜ぶも、メレブはその強引な設定を聞いてポツリと愚痴を漏らすのであった。

 

「まあ残り話数も少ないし仕方ないよねぇ~予算もかなりよろいのせいで使っちゃったし……」

 

「アンタ何言ってるの?」

 

「仏、では我々はもう、魔王の城へ赴いても問題ない力を得たという訳ですね」

 

「その通りだヨシヒコよ、ここに来るまでの幾度の試練がきっとお前達を成長させたに違いない、強くなった今のお前達であれば、きっと世界を平和に導く事も可能の筈だ」

 

キリッとした表情で調子の良い事を言ってくる仏だが、それを聞いていたダクネスはジト目で見上げながら

 

「なあ仏、私達、あんまり試練といった感じの事は経験してないんだが……」

「うわ! ダクネスちゃんがやっと喋ってくれた! 超嬉しー!」

「ちゃん付けは止めろ! それとなんで嬉しがる!」

「いやだって私、他の三人とは結構絡むけど、君とはあんまり絡まないからさ」

 

急に彼女に話しかけられたので喜ぶ仏に、ダクネスが声を荒げて叫ぶと急に真面目な表情を作り出す。

 

「その辺ずっと気になってんだよねー、最初から今までずっと」

「そ、そうだったのか……?」

「もっとさ、ダクネスちゃんさ、仏に対してツッコんだり話しかけたりしていいのよ?」

「そうか……ならば旅の終わりも近い事だしここはゆっくり話でも……」

 

しんみりした感じで自分とあまり絡まなかった事を気にしていたと話し始める仏に

 

ならばとダクネスが微笑を浮かべて自ら話しかけようとするも

 

「それではさらばだヨシヒコよー!」

「っておい!」

 

あっさりと別れの言葉を残していくと

 

こちらに元気よく手を振りながら仏はフッと消えて行ってしまった。

 

残されたダクネスはかなり不満げな様子でメレブの方へ振り返り

 

「メレブお前……よくあんないい加減な神様と長く付き合えるな……」

 

「まあ基本的にムカつく奴なんだけど、アイツいないと冒険進まないから仕方なく付き合ってる的な感じだし? ビジネスパートナー的な?」

 

「ヨシヒコも大変だろうに……」

 

「あ、ヨシヒコは基本的に物事深く考えられないおバカさんだから、仏のウザイ所とかあんま気にしてないと思う」

 

「なるほど、ある意味相性のいい神様と勇者なんだな……」

 

いまいち仏とのノリが合わないので困っているダクネスに、メレブはヘラヘラしながら「ま、気にすんなよ」と言いながら、隣でまだヨシヒコがヘルメットを被っていたので自然にそれをカポッと外した。

 

「さて、それじゃあそろそろ行くとしますか」

「はい、全ての決着を着けに行きましょう」

「さっさと終わらせてパァーッと盛り上がりましょ」

「ああ、私達の力を合わせて世界の平和を取り戻そう」

 

各々決戦前の最期の確認を取った後、ヨシヒコを先頭に一行は魔王の城へと歩き出す。

 

 

決戦と旅の終わり、そしてこの世界とのお別れがいよいよ近づいて来たのであった。

 

 

 

 

「兄様、いよいよ本当に戦いを終わらせる時が来たんですね……」

 

出発するヨシヒコ達を、木の影からコッソリと見送っているのはヨシヒコの妹であるヒサ。

 

金色に輝く神々しくも煌びやかな礼装に身を包み、魔王と決着を着けに行こうとする勇ましい兄を見つめながら両手でお祈りのポーズを取る。

 

「ならばヒサも共に行きます、まだ力不足かもしれませんが、今度こそ兄様をご助力する為に……」

「大丈夫です! ヒサ様なら絶対に魔王だろうがなんだろうが倒せます!」

 

そこへズサーッ!と地面を滑りながら彼女の下へ馳せ参じたのは一人の信心深そうな女性。

 

魔王軍幹部唯一の人間であり、策略を好み、邪教を崇拝する信仰者のダークプリ―スト、セレスことセレスディナである。

 

「自信を持ってください、あたしにとってヒサ様は、他の神と名乗る連中なんかと比べ物にもならない程の真の女神! そんなヒサ様だからこそあたしは前の教徒を捨ててヒサ教を立ち上げたのです!」

 

ヒサの事を信仰対象として崇め奉る様に跪いてキラキラとした目を向けるセレナ。

 

何があったか知らないが、彼女の中でヒサの存在は神にも等しい、否、それ以上の存在であるらしい。

 

「あたしはあなたと出会って改心し! 新たな道を見つけることが出来ました! だからこのご恩を返す為に、哀れな信者であるあたしに手伝わせてください! あなたが望む者であればこのセレスディナ! 身命を賭して叶える事を誓います!」

 

「ありがとうございます」

 

「うっひょぉぉぉぉ!! ヒサ様にお礼を言われた! コレだけでご飯三杯いけるわコンチクショウ!」

 

狂信的にどんな事があっても支えると過剰にアピールするセレナにヒサが素直に礼を言うと

 

豹変して突然身悶えしながら叫び出す彼女

 

するとそこへ

 

「おい聞いたぞセレスディナ! ヒサさんを信仰する新興宗教を立ち上げたって!」

「あ? 誰アンタ? 気安くヒサ様の事をさん付けで呼ぶんじゃないわよ、殺すぞ」

「いや誰って! お前と同じ魔王軍の幹部の一人のベルディアだよ!」

 

急いでやって来たかのように駆け寄って来た首なし騎士のデュラハン・ベルディアに対し

 

ヒサに話しかける時とは全く違うチンピラの様な口調で邪険に扱うセレナだが、ベルディアは酷く慌てた様子で詰め寄ると

 

「お前! ヒサさんを女神として信仰してるんだろ! だったら俺もその信者に入れてくれ! 言っておくが俺はお前がヒサさんに会うずっと前からヒサさんを強く崇拝してたんだぞ!」

 

「あっそ、無理、さっさと去ね」

 

「即答!? なんでだよチクショー!」

 

「ああ!? デュラハンなんか信者に出来る訳ないだろうが!」

 

自らヒサ教に入れてくれとせがむベルディアに、セレナはゴミを見るかのような目つきで即座に断る。

 

「それにアンタ、ヒサ様によからぬ感情を秘めてるでしょ!」

「う!」

「ヒサ教はアンタみたいな下心を持ったアンデットなんてお断りよ! シッシッ!」

「なんだとコノヤロー! 新入りのクセに生意気な事抜かしやがって!」

 

彼がヒサに対して淡い恋心を秘めている事にセレナはすぐに見破っていた。

 

だからこそこんな奴をヒサのお傍に置いておく訳にはいかないのだ。

 

「俺が一番最初にヒサさんの仲間になったんだぞ!」

 

「順番なんか関係ないわよ! なにアンタ! やる気!? 浄化するわよ!」

 

「やってみろ! 例えこの身が浄化されようと! ヒサさんに対するこの胸のときめきは絶対に消えないんだぁ!」

 

「全然上手くねぇんだよ!!」

 

二人で取っ組み合いをして醜い争いを始めるセレナとベルディア

 

そんな二人をよそに、ヒサはただ一人、去って行くヨシヒコの背中を一層強い眼差しを向けて静かに頷く。

 

「兄様、ヒサは必ずやお役に立って見せます……!」

 

揺るがぬ決意、今こそ果たす時

 

 

 

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