遂に魔王の城で真の姿を現した竜王が現れた。
長かった旅の集大成である、ヨシヒコ達の最後の戦いが今幕を開ける。
「コレが竜王の本当の姿か……だが今の私達ならきっと勝てる! 行くぞ! 竜王!!」
「流石ヨシヒコね! 竜王を前にしても果敢に立ち向かう気満々ね!」
「ギャァァァァァァァァス!!!」
「ギャァァァァァァァァこんなの勝てるか~~!!!」
「流石カズマね!竜王の雄叫びに負けないぐらいの良い叫びっぷりよ!」
聖剣・エクスカリヴァーンを抜いてすかさず立ち向かう姿勢を取るヨシヒコに対し、すっかり逃げ腰でちょっと泣きながら叫んでいるカズマ。
そんな対照的な二人に声を上げながら、アクアは更に他の仲間達に向かって
「回復と支援ならこの水の女神のアクア様に任せなさい! どんだけ傷付けられてもすぐに回復してあげんだから!!」
「よし! ならばまずこの戦士・ダンジョーの守備力を上げてくれ! 奴の攻撃を防ぎ切ってやる!」
「アクア、私にもだ! クルセイダーとして、仲間として、この世界を護る力を私に!」
「オッケー、えい!」
アクアの支援魔法を受けてダンジョーとダクネスが勢いよく竜王の前に躍り出た。
それと同時に竜王は力一杯大きく吸い込むと、口からボォ!と火炎の息をこちらに向かって吹き始めた。
「させるか! 受け止めるぞダクネス!」
「私に指図するな! この程度私だけで十分だ!」
「フ、抜かせ小娘ぇ!」
ダンジョーとダクネスが仲間を護る盾となり、その身を挺して剣で受け止める。
アクアの支援のおかげで守備力を底上げした事により、ただでさえ堅かった二人は竜王の一撃でさえもビクともしない。
「よくやった二人共! よし、今度は私の出番だコノヤロー!」
ダンジョーとダクネスの背後で隠れていたムラサキが威勢良く顔を上げた。
そして未だ火を吹き続ける竜王に向かって両手を突き出し
「ヒャダルコ!!」
「ぐ! ぬぅぅ~~!!」
氷系の中級呪文を思いきり放つ。火炎の息でさえ溶けない猛吹雪が竜王に周りに降り注がれ、若干ではあるがダメージが入ったらしい。
しかしムラサキの行動はまだ終わらない
「お次はコレだぁ!」
更なる追撃をかます為にムラサキは突然、竜王の前で突如不思議な動きを始めた。
「ほい、あ、そぉれ、よ、ほっほ~」
「え~ちょっとどうしたのアンタ……? なによそのキモイ不思議な踊り……」
見てるこっちが力抜けてしまう奇妙なダンスを行い始めるムラサキに、アクアが眉をひそめて可哀想な目で彼女を眺めていると
「うっほっほ~い!」
「てえぇ!? なんで!? いきなり竜王が踊り出したわ!」
「へっへ~、見たか頭のおかしい水色娘~、コレが私のとっておき、相手の動きを封じる不思議な踊りだ~!」
巨大な図体で突然リズミカルなサンバステップを取り始める竜王に、アクアがビックリしてる中で
ムラサキは一層楽しくダンスしながら相手の動きを隙だらけにしてやった。
「今だ! 行けぇヨシヒコ!」
「ああ!」
「カズマ! 今がチャンスよ! 攻撃力を上げてあげるからさっさと倒してよね!」
「あ~もう! 無茶振りしやがって! こうなったらヤケだチクショー!」
すっかり踊りに夢中になってしまっている竜王に対して、黄金の剣を両手に持って飛び掛かるヨシヒコ
カズマもアクアの支援を受けると、ヤケクソ気味に短剣を抜いて突っ走る。
「どりゃあ!!」
「うおぉ!!」
「ぐ、ぐぅ~~~!!」
ヨシヒコの輝く聖剣が竜王をよろつかせる程のダメージを与え、カズマの小刀がプスリと小指に刺さって地味に痛い攻撃を繰り出す。
二人の連携攻撃に怯む竜王であったが、すぐにギロッと大きな目に怒りを燃やしながら
「おのれ小癪な! その程度で我を倒せると思うたかぁ!!」
「フフ、そんな事を言っているのも今の内だぞ、竜王よ」
「なに!?」
遊びは終わりだという風にズシン!と一歩前に出る竜王であるが、そこへ余裕の表情で颯爽と現れた一人の金髪ホクロ
ウィザード(笑)こと、メレブはクルクルと両手でぎこちなく杖を回しながら、最後にサッと杖を突き出して
「ブラズーレ!」
「フン、なんだその聞いた事無い呪文、そんなのが我に効くとでも……あ、あれ? く! 何故だ! 胸元から凄い違和感が!」
「ああ~! 魔王なのに! 魔王なのにブラがズレてイライラしてるよ~! ブラ付けてないのに!」
「き、貴様ぁ! こんなふざけた呪文をよく……がぁぁぁぁぁぁ!! ブラが気になる~~~!!!」
メレブが過去に覚えた呪文・ブラズーレ、それをお見舞いされた竜王は巨大な両手を背中に回しながら必死にブラを元の位置に戻そうとしているが、そもそもブラを付けていないので無駄に時間を費やす事に。
そしてそれをヨシヒコ達が見逃す筈がない。
「今だみんな! 俺のブラズーレが効いている内に一斉攻撃だ!」
「さあやっちまいなさいアンタ達! 全員の攻撃力を一気に上げてあげるんだから!!」
「うおぉぉぉぉぉ!! みなぎるぞ~~~~!!」
「いやヨシヒコ! アンタにはまだ支援魔法掛けてないから! あ!」
メレブの叫び声を合図にヨシヒコ、ダンジョー、ダクネス、カズマが得物を構えて一斉攻撃。
ヨシヒコが思い込みで攻撃力が上がったと突っ走ってしまったので、仕方なくアクアは他の三人に支援魔法を掛ける。
「仕方ないわね、ヨシヒコはそのまんまでいいわ……三人共、感謝しなさい! この私が更にあなた達を強くさせてあげるんだから!」
「御託は良いからさっさと掛けろ! 今は一分一秒が惜しいんだよこの駄女神!!」
「きー! カズマのクセに生意気な! わかったわよ! はい!」
カズマに煽られたアクアは、ムカッとしながらも彼とダクネス、ダンジョーに支援魔法を
攻撃力を倍にした彼等は単身で突っ込んだヨシヒコに続いて竜王を袋叩きにする形で
「これだけ的がデカければ私でも当たるぞ! 食らえ!」
『ミス、ダクネスのこうげきはあたらない』
「どんだけだよお前! いいからお前は一生肉壁やってろ!」
「あぁ! 魔王との戦いの最中なのに、人の事を肉壁呼ばわりするなんて……!」
『ダクネスはひとりもりあがっている』
「魔王との戦いの最中で興奮してんじゃねぇこの処女ビッチ!!」
いかに相手が巨大でも、もはや呪われてるレベルで全く攻撃を当てられないダクネス。
おまけにカズマに罵倒された事で、その場で膝から崩れ落ちながら勝手に顔を赤く染めて喜んでる始末。
もう付き合い切れんと思ったカズマは、彼女を無視してダンジョーとヨシヒコと共に竜王を攻め続ける。
「おら食らえ! 爪の間に思いきり刺してやる!」
「今までの借りを返してやるぞ竜王! かえんぎり!」
「聖剣の一撃! 倒れるまで幾度も浴びせ続けてやる!」
「ぎ! ぐふぅ~~~……!!」
一人は狡猾に弱点を突き、もう一人は火属性の付いた一撃を浴びせ、そして最後に伝説の剣で大ダメージを与えていくという三連コンボを前に流石の竜王も苦い表情を浮かべ始めた。
それを見てムラサキも「よーし!」と追い打ちを狙い、再び両王に手の平を突き出して
「ベギラゴン!!」
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
高威力の火炎呪文を放って更に大ダメージ。
そして剣と呪文で追い込まれていく竜王を見て、メレブは勝利を確信したかのようにニヤリと笑った。
「勝てる、今の我々はかつてない程の最強パーティー、この連携が崩れなければ絶対に竜王に勝てる!」
「……いいですねー、私一人残して皆さんで随分と盛り上がってるみたいで……」
しかしそこで彼に対して水を差す言葉を呟く者が一人。
初っ端から爆裂魔法を使った事で、魔力ゼロの状態で床に転がっているアーク・ウィザード、めぐみんだ。
彼女は一人つまらなさそうな表情でむすっとしながら、目の前の戦いを横になりながらただジッと見つめる事しか出来ないのだ。
「く、まさか竜王に第二形態があったなんて……! もうちょっと我慢しておけばこの巨大なドラゴンを相手に……! 派手な爆裂魔法をぶっ放せたのに……!」
「……」
「……む? なんですかあなた、私の顔をジロジロと見下ろして」
ふとメレブが真顔でこちらを見下ろしている事に気付いて見上げるめぐみん。
彼女にどうしたのかと尋ねられるとメレブはプイッと無言で顔を逸らし
「……フ」
「!?」
ただ鼻を鳴らして軽く笑い飛ばす、明かな嘲笑であった
これは馬鹿にされたり声を上げてゲラゲラと笑われるよりもムカつく
「こ、このぉ~!」
「ヒール、ヒール! よしこれでダンジョーとダクネスのHPがまた満タンになったわ」
「アクアアクア~?」
言葉に表せられない怒りを燃やしているめぐみんをよそに、中衛から仲間達に回復魔法を掛けているアクアの下に、メレブがヘラヘラしながら歩み寄り
「ん~めぐみんちゃんにも掛けてあげたら~? さっきからずっと倒れてて凄く辛そうだよ~?」
「は? めぐみんはいいわよ、だってあの子、一発爆裂魔法使ったらその日はもう使いモンにならないもの」
「あ、そっか! MP切れで倒れてるんだもんね! じゃあ起きてようが寝てようが関係無いか! うん!」
「んがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アクアと会話ししつつチラッとこちらを見下ろすメレブ、その表情はめぐみんの短い人生の中で最もムカつく、ぶん殴りたい衝動に駆られるレベルの、正にムカつく笑顔。
これ程までに魔力切れで立ち上がれないという事が恨めしいと思った事が無い、とめぐみんは床に這いつくばった状態でなんとか立ち上がろうとしていると
「ええい! さっきからチマチマと小癪な手ばかり使いよって!」
「「うわぁ~!」」
「ヨシヒコ!」
「カズマ!」
竜王は遠吠えを上げて周りに付き纏うヨシヒコ達を力任せに薙ぎ払う。
ダンジョーとダクネスは得意の防御で耐えるも、ヨシヒコとカズマは為す総べなく吹っ飛ばされてしまう。
「そこだ! 食らえ我が必殺! はげしいほのお!!」
先程の火炎の息よりも強くなった炎が、倒されたヨシヒコとカズマ目掛けて吹き荒れる。
直撃すれば間違いなく即死、しかし……
「セイクリッド・クリエイト・ウォーター!!!」
「なに!? 水の無い所でこのレベルの水魔法を発動できるとは!!」
今まで支援魔法に専念していたアクアであった。ヨシヒコとカズマを護るように炎の前に立ち塞がると、彼女の両手から凄まじい勢いで激しい水流が放たれて、そのまま簡単に炎を飲み込んだばかりか
「ふ、防ぎ切れん!! だぁ!!」
竜王の巨体さえも巻き込み、そのまま彼は水流に押されて背中から仰向けにズシーン!と倒れてしまう。
「ちょっとちょっと! 魔王とか名乗ってるのになにこのチンケな炎は! チョー笑えるんですけどプークスクス!!」
「うわ……助けてもらったのに、なんか無性にコイツぶん殴りたい」
「凄いです女神! 竜王を水流で押し倒すなんて!」
「アンタはアンタで、いい加減コイツを甘やかすの止めてくれませんかね?」
無様に倒れた竜王を前にいつもの含み笑いを浮かべて挑発するアクアに流石だとガッツポーズして賞賛するヨシヒコ、両者にジト目でポツリと呟きつつ、カズマは倒れた竜王の方へ目をやり
「ていうか今がトドメを刺すチャンスだろ、いっちょかましてやろうぜ勇者様」
「よし! 女神が与えてくれた竜王を倒す絶好の機会だ! 行くぞサトウカズマ!」
「はいよ」
仰向けに倒れて動けないでいる竜王へと、ヨシヒコはカズマを連れて颯爽とその巨体の上に飛び乗ると
腹の上を駆けて一気に竜王の額に狙いを定めて
「これで!」
「終わりだ!」
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ヨシヒコの聖剣が、カズマの短剣が竜王の額に深々と突き刺さる。
その痛みで血走った目を剥き出しながら断末魔の叫びをあげる竜王。
「よし!」
「やったか!?」
「おの……れ……!」
「「うわ!!」」
二人は遂にやったと確信するも、最後の抵抗とばかりに自分の顔に立っているヨシヒコとカズマを、右手で掴んで勢い良く締め上げる。
「この程度で我が!!」
「いでででで! タイムタイム!」
「く! まだこれ程の力が!」
右手の中で締め付けられ身動き取れない状態でいるカズマとヨシヒコ
ようやく立ち上がれた竜王はこのまま彼等を手の中で絞殺しようとしたその時
「やらせはせん!」
「今回ばかりは絶対に当てる!」
「ぬわッ!!」
ダンジョーとダクネスがすかさず竜王の足下へと駆け込んで
二人で片足ずつ渾身の一撃を放ったのだ。
その大ダメージに竜王は思わず手の力を緩めて、ヨシヒコとカズマを床に落としてしまう。
「どうだカズマ! 私だって攻撃を当ててやったぞ!」
「あーはいはい、出来るなら普段でも他のモンスター相手にそうして欲しいんですけどね……」
「これでチャラになったつもりはないが、ようやくお前に借りを返せたな、ヨシヒコ」
「ありがとうございます、ダンジョーさん」
四人で声を掛け合いながら互いの健闘を祝うヨシヒコ達。
そして竜王もまた、フラリと後ろにゆっくりと体を傾けて
「この我が……」
再び大きな地響きを立てて床に崩れ落ちる竜王。立ち込める砂埃に一同が思わず目を手で覆いながらも、遂に達成出来たのだと確信した。
これでようやく、竜王を倒したのだと
「ゲホゲホ! やったわ! 竜王を倒したわよ!」
「イエーイ! 俺達最強~! めぐみんドンマ~イ!」
「くぅ~……!」
口に入った砂埃で咳き込みながらもアクアは喜びの花鳥風月をお披露目
メレブもまた隣で寝転がっているめぐみんを小馬鹿にしながら両手を上げて万歳のポーズ。
そしてめぐみんが心底悔しがっていると……
「ん? ちょっと待ってください……なんで竜王が倒れたのにまだ揺れているんですか……?」
「え?」
誰よりも一番床に密着している状態のめぐみんがいち早く気付いた。さっきから徐々に揺れが大きくなっていると
彼女の疑問にメレブがキョトンとした様子で見下ろしていると、立ち込める砂埃の中から一体の巨大な影が……
「ここまで我を追い詰めたのは素直に褒めてやろう……」
「「「「「!?」」」」」」
「まさか、まさか我が貴様等程度に真の姿を見せる事になるとはな……」
「お、おいまさか!」
「う、嘘でしょー!」
さっきよりも巨大なシルエットを前に一同は驚きながら、その中から聞こえる声にアクアとメレブが頬を引きつらせる。
そして砂埃を巨大な両手で薙ぎ払い、姿を現したのは……
「褒美だ、勇敢なる貴様等を称えて! この真・竜王が痛み無き死を与えてやろう!」
「だ、第三形態……!?」
「そんな……!」
先程の竜王の時とは姿が大きく変わっていた。
肩や尻尾には鋭い角が生え揃っており、非常に腕が大きく凄まじく筋肉質に、背中に生える翼もまた大きくなっている。
そして全身には、紅く光る傷跡が生々しく輝いていた。
メレブとアクアがそれを見上げて絶句している中、ヨシヒコ達はすぐに集合して強化された竜王を見つめる。
「く! 凄まじいオーラだ! これが竜王の真の姿……!」
「マジかよ! またこんなの相手にしなきゃいけねぇの!?」
「フン! 姿が変わった程度ではないか! もう一度俺達の連携を奴に見せてやる!」
「ああそうだ、今の私達が集まれば無敵だ! どんだけ相手がデカくなっても負ける訳がない!」
「おいお前等、言っておくけどそれ死亡フラグだからな……」
ヨシヒコとカズマが新たな竜王の姿に怯んでいる中、ダンジョーとダクネスはだからどうしたと前に出て剣を構える。
そんな彼等にカズマがボソッとツッコんでいる中、真・竜王は大きく息を吸い込み始め……
「あ! また性懲りも無く炎系の攻撃を仕掛けて気ね! 芸が無いわね、水の女神様である私がサクッと打ち消してやるんだから!!」
そう言ってアクアが余裕といった感じで両手を突き出し、再びお得意の水系魔法を披露する。
「セイクリッド・クリエイト・ウォーター!!!」
津波の如く激流が放たれ、あっという間に相手を飲み込もうとする。
しかし真・竜王はそれを前にしても退く事も無く、白く染まった目をカッと見開いたと思いきや
「竜王のいかり……!!」
それはヨシヒコの前で起こった一瞬の出来事であった。
アクアが放った水系上級魔法は、目の前で突然蒸発したかと思えば、目の前が紅に染まり上げられ……
「え?」
前にいたアクアが漏らした間抜けな言葉を最後に
ヨシヒコの意識はそこで消えた。
「……ここは?」
次に目を開けた時、辺りは焦土と化していた。
部屋の中で会った筈なのに壁も天井も跡形も無く消え去り、瓦礫の中でヨシヒコは重たい身体を起こしてゆっくりと立ち上がる。
「一体何が……他のみんなはどこに……」
「う、う~ん……なんだ一体、何が起こった……?」
「は!」
ふと足元から声がしたのでヨシヒコはすぐに見下ろす。
自分と同じように意識を失っていたカズマが、ボロボロの状態でムクリと起き上がった。
「アクアの魔法が一瞬で掻き消されたのは覚えてんだけど……そっから先が思い出せねぇ……」
「私もだ、一瞬、目の前が凄まじい業火で紅く染まったのは覚えているんだが……」
「目覚めたか、勇者ヨシヒコ……」
「その声はダンジョーさん……な!」
二人して混乱しているとそこへ、弱々しくか細く声が聞こえて来た。
その声の主がダンジョーだとわかるとヨシヒコはすぐにそちらに振り返る、だがそこには……
全身を傷だらけにした状態のダンジョー、そしてその隣で片膝を突いて既に瀕死のダクネスがいたのだ。
「なんとかお前達を護り切る事は出来たみたいだな……」
「フ、これでようやくお前に聖騎士として認めて貰えるだろうか、カズマ……」
「おっさん! ダクネス! おい、しっかりしろ!」
どうやら二人は、ヨシヒコ達を護る為に竜王の一撃を己の身を盾にして防いだらしい。
既に喋る事もままならない状態のダンジョーとダクネスに、慌ててカズマとヨシヒコが駆け寄る。
「俺達の前に飛び出していたあの水色頭がどうなったかは知らん……もしかしたら奴の攻撃をまともに食らい死んでしまったのかもしれん……」
「女神が!」
アクアの姿はどこにも見当たらない、だがあの一撃をまともに浴びているとしたら彼女はもう……
ダンジョーの言葉にショックを受けるヨシヒコ、そして彼女と最も付き合いの長かったカズマは呆然と立ちすくす。
「マジかよそれ……洒落にならねぇぞ……」
「アクアがいない以上、お前達が回復する手立てはない、そして死者を生き返らさせる事も……」
「死者を生き返らせるって……お前達まさか……!」
彼女の言葉を聞いてカズマはすぐに察して信じられないと言った表情を浮かべると、ダンジョーとダクネスはバタリとその場に倒れてしまう。
「託したぞヨシヒコ……お前の力で今度こそ竜王を倒すのだ……」
「カズマ、私からの最期の頼みだ、どうか私が愛したこの素晴らしい世界を護ってく……れ……」
「おっさん! ダクネス!」
「何てことだ……! 私達を護る為に二人は……!」
最期に言葉を残すと二人はもう動かなくなってしまった、呼吸もしていない、つまり死んでしまったのだ。
残されたカズマは目の前の現実を飲み込めずに混乱し、ヨシヒコもまた悔しそうに嘆いてると
「どうやら俺達は、ダンジョーとダクネスに助けられたみたいだな」
「ムラサキさんは倒れて動けなくなっていた私を庇って……どうして私を助けたんですか、今の私なんてなんの価値も無いのに……」
「メレブさん……!」
「めぐみん……」
そこへめぐみんを背中に担いだメレブが神妙な面持ちで現れた。
どうやら二人もまた、なんとか生き延びることが出来たらしい。しかしまた一つ新たな犠牲者が
「ヨシヒコさん、ムラサキさんは私を庇い死んでしまいました……私のせいで……」
「……そうか、しかしお前が気にする必要はない、仲間の命を守る為にその身を挺したムラサキを、私は仲間として誇りに思う」
「……」
メレブの背中で申し訳なさそうにしているめぐみんに対し、ヨシヒコは真顔で頷きながら励ましていると
「ほう、我の本気の一撃でまだ生き延びる者がいたとは……」
「「「「!!」」」」
頭上から聞こえたその声が一瞬にして彼等の安堵する気持ちを払拭させた。
声がしたほうこうに一同が振り返ると、そこからヌッと巨大な体でこちらを見下ろす、真・竜王の姿が
「やはり人間はしぶといモノだ、しかしだからこそ戦いがいがあるというモノだ……」
「竜王……貴様!」
「なんてこった、残った俺達だけでこの化け物を倒さねばならんとはな……」
「おまけに今の私にはもう爆裂魔法が撃てません……」
立ち塞がるは憎き魔王、勇者ヨシヒコは散って逝った仲間達の想いを胸に睨み付けるも、メレブとめぐみんはすっかり弱腰に
だが
「ったくどいつもこいつも面倒事押し付けて簡単に逝っちまいやがって……」
いつもヘタレで臆病で逃げてばかりのカズマであったが、仲間を失った事で吹っ切れたかのように立ち上がった。
「しょうがねぇなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「カズマ!?」
「やってやるよ! こんなクソったれドラゴン倒してやる! この世界も救ってやる!!!」
「ああそうだ! 竜王!! お前だけは絶対に許せん!!!!」
めぐみんがビックリする程カズマは怒りに燃えていた。
短剣を抜いて竜王へ彼が挑もうとすると、ヨシヒコもすかさず彼の隣に立つ。
「行くぞ! カズマ!! 私達で死んでしまった仲間の仇を取るんだ!!」
「ついていってやるよ勇者様! いやヨシヒコ! こうなったら死ぬ気で倒してやる!!」
今ここに、もう一人の勇者が生まれた。
ヨシヒコとカズマ、死んでしまった仲間の為に、彼等は正真正銘最後の戦いを始めるのであった。
その結果は果たして……
次回・冒険の決着