勇者ヨシヒコと魔王カズマ   作:カイバーマン。

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弐ノ四

冒険者ギルドでの食事を終えたヨシヒコ一行は

 

アクア曰く、最近かなり良いお屋敷を手に入れたとかで

 

4人はまずそこへ向かう事にした。

 

「いやー異世界の飯ってどんなのかと思ったけど、まあ中々美味かったな」

「ええ、そういえばメレブさんが飲んでたあのシュワシュワしてた飲み物は美味しそうでしたね」

「アレかー、確かに美味かったけど結局何を飲んでるのかわからなかったなー、ずっとシュワシュワしてたしホントなんだったんだろう」

「それとこの世界の野菜は生きが良いのか、凄く飛び跳ねてましたね」

「そうか、アレって俺が疲れてるせいで幻覚を見てた訳じゃなかったのか、なんか今になってこの世界が怖くなってきた」

 

アレは一体何だったのであろうと恐怖を覚えるメレブをよそに、ヨシヒコは先頭を歩くアクアの方へ話しかける。

 

「女神の宴会芸も見事でした、あんな風に生き生きと水が飛んだり跳ねたりするのを見たのは初めてです」

「ふふん、これでますます私の事を尊敬する様になったでしょう」

「はい!」

 

純粋無垢なキラキラした目で強く頷くヨシヒコに、アクアはすっかり調子に乗った様子で振り返る。

 

「今度披露する時はアレよ、金魚鉢に入った金魚を飲んだ後、飲み込んだ金魚を口から吐いて金魚鉢に戻す技を見せてあげるわ!」

「凄い! そんな事も出来るとは流石は女神!」

「まあやった事はないけど私なら楽勝ね!」

「電撃ネットワークさんかお前は」

 

悪ノリして変なチャレンジをしようとしているアクアにメレブが冷静にツッコミを入れていると

 

 

 

 

ヨシヒコ―! ヨシヒコ―!!

 

「あ! このムカつく声は!」

「見ろ! 月と雲の隙間から!」

「はぁ~おいでなすったか、ほれヨシヒコ」

「ありがとうございます」

 

天から語りかける様に声が聞こえる。

 

アクアとダクネスがすっかり夜になった空を見上げていると

 

メレブも隣のヨシヒコにライダー〇ンのヘルメットを被せる

 

そして見上げた彼等の先にある月と雲の隙間から

 

神々しく仏が現れた。

 

「ヨシヒコよ、新たな力を授かる機会、どうやらかなり難儀したみたいだな」

「申し訳ありません仏、しかし私はどうあろうとこれからも勇者として魔王を討伐します」

「出鼻を挫かれてもなおまだお前自身は挫けなかったか、流石は私が見込んだ、真の勇者ヨシヒコ!」 

 

そう叫びながらヨシヒコを称賛した後、仏はまた口を開く。

 

「えーそれでそんなめげずに頑張るヨシヒコ君に、私から一曲披露しようと思います」

「は? ちょ、おいおいおい、急にどうした~?」

 

いきなり曲を披露するとか抜かす仏にメレブが目を細めていると

 

仏は下からゴソゴソと何かを取り出してすぐに構えた。

 

「HOTOKE」と書かれた大きな旗を肩に担ぎ、左手に謎の黒い物体を口に近づけながら

 

「それでは聞いて下さい、仏の歌う……ドラゲナイッ!」

「おま! それ! ひょっとしてわざわざ用意したのそれ!? ヨシヒコがドラゴンナイトだから!? ドラゴンナイトだからそれ!?」

「なんでアイツあんなダサい旗を掲げてんの? バカに見えるんですけど?」

「アクア、その事については触れるな! その言い方は仏だけでなく、あのグループにも酷い事言ってるのと同じだぞ! ファンからめっちゃ叩かれるぞ!」

「あのグループってどこのグループよ」

 

仏の格好に難癖付けるアクアにメレブが慌てて止めに入っていると

 

仏はカッコつけた様子で最後にフフッと笑うと、黒い謎の機器に向かって

 

「ドラゲナイッ!」

「うわ超うるせぇ! アイツ音量の調整下手過ぎ!」

「うるさ! ふざけんじゃないわよ仏! 今夜中よ! 近所迷惑でしょうが!」

 

思った以上にデカい音量で歌い始める仏に、メレブもアクアも両耳を抑えながらすぐにブーイング

 

しかし仏はノリノリの様子で

 

「ドラゲナイッ! フッフフフ~ン フフフフフ~、フッフッフッフッフ~ン、ドラゲナイッ!」

「しかもほとんどうろ覚えじゃねぇか! リズム全然違うし!」

「フッフッフフフ~ン、フフフフフ~、フンフンフンフフ~ン、ブフッ! フフフ……」

「全然歌えてねぇ事に自分で笑ってんじゃん!」

「ドラゲナイッ! ドラゲナイッ!! ドラゲナイッ!!! ドラゲナイィ~ンッ!!!!」

「うわ結局ドラゲナイだけで締めやがった……も~そこしか知らねぇのになぜ歌おうとした~?」

 

自分なりにイイ感じで歌い終えたのか、仏は満足げに旗とトランシーバーを下に置いた後

 

期待してるように顔をこちらに向けて

 

「どうよ? ねぇどうよ俺の曲?」

「うーん、超最悪」

「ただやかましく叫んでただけじゃないの、仕方なく聞いてあげてた時間返しなさいよ」

「う~ん?」

 

メレブとアクアが死んだ目で低評価の結論を出すと、仏は不満げにしかめっ面を浮かべた後、嘲笑を浮かべ

 

「あーまあ凡人の君達には理解できないよね、知ってた私も、うん」

「ムカつくなホントに……あー誰でもいいからコイツをマジで殴って欲しい」

「ホント、アイツは痛い目に合って欲しいわ……」

 

仏に対する苛立ちが徐々に上がりつつあると、そんなメレブとアクアを放っておいて仏はずっと真顔で聞いていたヨシヒコの方へ

 

「どうだったヨシヒコ? 俺の歌どうだった?」

「……正直なんて言ってるのかはわかりませんでしたが、仏の喉チンコが思いの外小さいのがよく見えました」

「あ! 歌よりもそっち気になっちゃった! そうかー喉チンコの方に興味いっちゃったか~!」

「はい、とても小さな喉チンコでした、あんな小さな喉チンコを見たのは初めてです」

「うんうんうんそれ以上言わなくていいから、なんかこう……喉が付いてるからまだいいけど、それでも男としては言われると中々悲しくなるから」

 

喉チンコ小さいと真顔で言うヨシヒコに仏はちょっと傷付いた後、「え~」言いながら急にかしこまった様子で

 

「それでは前座をこれで終わりにして、早速本題に入ろうと思います、はい」

「え? どうした急に改まって」

「いや前回のお告げやった後にさ、風呂で首の後ろ洗ってる時にふと気付いたんだよね私、あぁ私なんて事をしたんだろうって」

「お! ようやく自分がやらかした事に気付いた?」

「いやーホントねー気付いちゃいました、だからこの場を借りて本気で謝ろうと思います、いいかな?」

「なんだよ、そういう事出来るんじゃん、俺てっきり絶対に謝らないと思ってたのに」

 

風呂入ってる時に気付いたというのが少々引っかかるが

 

どうやら前回上手く誤魔化して逃げた事に仏が反省したのだと思ったメレブは快く彼の謝罪を受け入れる。

 

「いいよやってやって、ここでちゃんと謝って綺麗にリセットしよう。お互い後腐れない関係になろう、スッキリさせて仲良くやっていこうこれから」

「じゃあ改めまして……えーと、ダクネスさん、でしたっけ?」

「へ? わ、私?」

「ん? なんでダクネス?」

 

てっきりこちら全体に謝るのかと思いきやまさかのダクネスを名指しする仏。

 

急に話しかけられて戸惑う彼女に、仏は申し訳なさそうな表情で

 

「前回に初めてお会いした時! 一度も話を振らなくて本当に申し訳ありませんでした!」

「は!?」

「おーい仏ぇッ! お前謝罪するって……まさかのそっちの謝罪!?」

「ねぇねぇメレブさんなんなのアイツ、……今、何について謝ったの? 私達に迷惑かけたことじゃなくて、ダクネスに話振らなくてすみませんでしたって言ったの?」

 

どうやら仏が本気で謝ろうと思っていたのは自分”達”ではなくダクネス個人だったみたいだ。

 

これにはメレブとアクアも呆然としていると。

 

「あのねホントごめん! 普通初見だったしあそこは私がね! 司会者っぽく一人一人話を振るのが当たり前なのよ! なのにちょっとね、ずっとグチグチグチグチ言い続けるバカが二人いたせいで、尺の方が足らなくなっちゃったの! すみませんでしたホント!」

「い、いや私は別に……」

「あの誤解されてるかもしれないからこの場でハッキリと言わせてもらうけど! 別に私、君が嫌いとかじゃないから安心して! 私が話してる時に何度も割り込んで来るキノコヘッドや水色頭なんかよりも全然マシだから!! そこはもう自信を持って言える! だから落ち込まなくていいから、ね!」

「はぁ……だから私は別に気にしていないのだが……」

 

低姿勢で何度も謝って来る仏に、ダクネスはどう対応していいのか困っている様子。

 

すると仏は更に口を開いて

 

「という事で前回のお詫びとしてダクネスに……」

「おいまた下手くそな歌を歌い出すとかすんじゃねぇだろうな!」

「しねぇよ! それに下手じゃねぇよ! 今年紅白出るよ! ったくもう……」

「いや紅白は絶対無理だろ」

 

また旗を掲げて歌い出すんじゃないかと危惧したメレブに仏は一喝した後、ダクネスに向かって人差し指を立てて

 

「仏がなんでも答えてあげちゃうよコ~ナ~、はーいパチパチパチ~」

「……バカじゃないのアンタ?」

「はい女神(笑)は黙っててくださーい、えーダクネスさん」

 

自分で拍手しながらヘラヘラ笑い出す仏にアクアが直球で毒を吐くも

 

彼は気にせずにダクネスに親し気に口を開いた。

 

「なんか私に聞きたい事ある? クエスチョンある?」

「い、いきなりなんだ、私が仏に尋ねたい事だと?」

「今なら何でも一つだけ答えちゃうぜ~? 仏だからどんな事でも答えられちゃうんだぜ~? あ、でも「仏の年収いくつですか」とか、そういう仏個人に関わるプライバシーな質問には答えられないんだぜ~?」

「腹立つ顔と喋り方だな~……」

「ふむ、そうか……それでは」

 

何でも答えてあげると上機嫌の様子でニコニコしながら尋ねて来る仏に

 

ダクネスは顎に手を当てしばらく考え込んだ後

 

「それでは仏、私の世界の女神・エリス様の事は知っているのであろうか?」

「ん? エリス?」

「実は私は生まれながらのエリス教徒で、幼き頃から何度も彼女の話を聞いていたんだ」

 

彼女の口から出て来た女神・エリスという名に、仏でなくヨシヒコやメレブも興味持った様子で振り向く。

 

「エリスって……なんかどっかで聞いた覚えはあったけど、女神の名前だったのか、なるほどなるほど」

「うむ、通貨の単位にもその名を扱われてるぐらいだからな、エリス様はそれ程立派な御方なのだ」

 

自信ありげにメレブにそう言い切るダクネスに対し、ヨシヒコも得意げにアクアの肩にポンと手を置き

 

「ダクネスよ、女神なら私達の仲間にいるぞ」

「そうよ、エリスなんかよりも私を崇拝しなさいよ、今すぐアクシズ教徒に改宗しなさい」

「ヨシヒコ……ハッキリ言っておくが彼女は女神ではない」

「女神よ! いい加減信じてよ!」

 

頑なに自分の事を女神だと認めてくれないダクネスに、アクアが涙目で訴えていると

 

女神・エリスの事を教えて欲しいと言われた仏はというと……

 

何故かニヤニヤと面白そうに笑みを浮かべていた。

 

「……ホントに知りたい?」

「や、やはり知っているのか!?」

「うん、知ってる。それなりに知ってる、そこの水色頭の自称女神の事はなんにも知らないけどエリスは知ってる」

「私だって女神よ!」

「そうか、だったら是非教えて欲しい。その、信者として当然彼女の事は偉大で素晴らしい人物だとわかってはいるのだが……神の視点から一体どのような御方なのか少し聞かせて欲しいんだ……」

「フフ……うん、よしわかった教えてしんぜよう」

「おい、アイツ今なんか笑ったぞ」

 

ダクネスにお願いされながらも、笑うのを堪えてるかの様にプルプルと震えたまま仏は頷くと

 

「えーとエリスって奴はですねー」

 

そう言いながらおもむろに両手で胸を隠すようなポーズを取った後

 

そこから勢いよく胸を隠していた手の甲を前にしたまま突き出して

 

「ふん! ボォォォォォォォォォォン!!!!」

「どはははははははは! アンタ! アンタそれって!」

「え!? どういう意味なのそれ!? てかお前なんでいきなり大爆笑!?」

 

全く以て理解出来ない一同をよそに一人腹を抱えて大爆笑し始めるアクア。

 

そして困惑しているメレブをよそに、今度は下に何度も手を伸ばして必死に何かを拾っている仕草をしながら泣き顔で

 

「違うんです違うんです~! コレはそういう意味で付けてたんじゃないんです~!  アレですアレ! ただのアクセサリーみたいな感じで付けてただけなんです~! 大きく見せようとかそんな事決して考えてなかったんです~!!」

「ぎゃははははははは! そっくり! あの時のアイツと超そっくり! マジでお腹痛い!」

「ひょっとしてアレって物真似 てかお前笑い過ぎだから! 一体どこにハマった!?」

「笑い過ぎてホント苦しい、死にそう……どはははははははは!!!」

「おい仏! アクアの奴が笑い死にしそうだからもうその辺にしておけ!」

 

泣きながら何かを拾い上げてるのを見ただけでアクアはもう泣きながら苦しそうにしつつも笑うのを止めない。

 

このままだと笑い死にしかねないのでメレブが急いで仏に止めさせた。

 

「なにがそんなに可笑しかったのか俺達には全然わからなかったんだけど! 急にどうしたお前!?」

「大丈夫ですか女神!」

「だ、大丈夫……ちょっと昔の事を思い出しただけだから、フフ、神々の中で伝説となったパッドバズーカ事件……あん時も笑い過ぎてホントにヤバかった……」

 

その場にしゃがみ込んで呻き声を上げる彼女にヨシヒコが心配そうに駆け寄っていると

 

一人一番困惑しているダクネスはというとジト目で仏に向かって

 

「ていうか私はエリス様の話を聞きたいと尋ねたのだが……」

「あ! ゴメンゴメンついうっかり持ちネタ披露しちゃって! エリスと聞いたらねー、もう体が勝手にこう動いちゃうように出来てるのよ私、エリスと聞いたらもう勝手にゴングがカーンって鳴っちゃうの」

「てことは今の動きはエリス様に関係が……?」

「うんあるよ、超ある、まあ出来ればこの辺の話すげぇしたいんだけどさ、長くなっちゃうし時間も時間なんでまたいつかという事で、ね?」

 

仏自身も滅茶苦茶笑顔を浮かべながらそう言うと、ダクネスに向かってうんうんと頷きながらまた口を開く。

 

「まあアレだよ? エリスはね、私の後輩なんだけどいい奴よいい奴、そこはハッキリと言える、私が困ってる時に金貸してくれたりとかメシ奢ってくれたりとかしてくれたし、うん」

「お前! 後輩に金と飯たかってんじゃねぇよ!」

「いやあのね、家庭の事でゴタゴタしててお金が足りなくなった時があったのよホント……その辺は触れないでお願いだから」

「は~さては不倫と学歴詐称がバレた時か」

「だから触れるなつってんだろうがぃ~!! アレまだ解決してないんじゃ~い!」

 

過去のスキャンダルな事件を掘り当ててニヤリと笑うメレブに仏が怒り心頭になりつつも、気を取り直して「だからね」と誤魔化すように話を続けた。

 

「ちょっと……いや大分ぶっ飛んでる所はあるんだけどさ、コンプレックス凄いけどさ、マジでいい奴だからさ。今後ともエリス教徒としてやっていて欲しいなと、先輩としてお願いします」

「思いきりバカにしたような物真似してたクセに先輩面すんなよ……」

「いやエリスとはともかくね、エリス教徒は結構しっかりしてるんだよね昔から~、それですげぇ人気あるし。まあそこが私としては面白くないんだけど」

「おい、さり気なく嫉妬してるんじゃねぇよ」

 

エリス教徒の信者の事を高く評価しながらちょっと嫉妬心を燃やす仏にメレブがツッコんでいると

 

ダクネスはわかったかのようにコクリと縦に頷く。

 

「元々エリス教徒を止めるつもりは毛頭ないから安心してくれ、今も昔も、そしてこの先もずっと私はエリス様にこの身を捧げる覚悟だ」

「ちょっと仏ー! エリス教徒なんかよりもアクシズ教徒にもなんか言いなさいよー!」

「滅べ、以上」

「ほろ……!? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

エリス教徒とは対照的にアクシズ教徒についてはえらく簡潔に一言でまとめると、仏はこちらに手を振る。

 

「あ、それじゃあもう時間なんで~みんな頑張って下さ~い」

「ちょっとアンタ! お告げはどうしたのよお告げは!」

「ゴメン今から飲みに行く約束してるんで、お告げは今日はなし」

「ふざけんじゃないわよ! この大変な時に飲みに行くとか何考えてんのよ!」

「いやだって~、神同士の付き合いって結構大事よ? 下界に置き去りにされたどこぞのおバカさんにはわからないと思いますけど、フフ」

 

明らかな嘲笑を浮かべて見下してくる仏にアクアが激しく歯ぎしりしながら怒り心頭になっていると

 

メレブが呑気に「おい仏」と話しかける。

 

「お前本当に飲む相手いるの? お前なんかと飲んでくれる神様とかいるの?」

「い~る~し~! おい、おいキノコヘッド! お前って前もそうやって疑って来たよね!? 傷つくぜ? 流石に仏傷付きまくるぜ?」

「いやだってお前だし」

「だってお前だしってなんだよ! 飲み仲間ぐらいいるっつうの! アレだよアレ! ゼウス君!」

「おいおいおいまた出て来たよゼウス君、絶対友達じゃねぇだろいいかげん白状しろよ、素直になろうよ仏君」

「嘘じゃありませ~ん! ホントにズッ友なんです~! あの! 最近「ウチの孫最近滅茶苦茶モテててマジヤバいんスけど~、ワシの血マジGJ」って自慢されてるんです~! すげぇウザイんです~!」

「ムカつく口調だなぁゼウス君、それ絶対お前がキャラ付けしてるだろ」

 

呆れながらますます疑いを強くするメレブをよそに

 

程無くして仏は満面の笑みを浮かべながら消えていく。

 

「それではさらだばヨシヒコ―!」

「あーまた逃げやがったアイツ……」

 

フッと消えた彼の最期を見届けながらメレブが呟いていると、話を聞き終えたヨシヒコが彼の下へ

 

「メレブさん、仏の言っていたゼウス君とは一体どんな神様なんですか?」

「ゼウス君じゃなくてゼウスよゼウス、いや俺もそこまで詳しくは知らないけど、簡単に言えば神様の中でも1、2位を争うぐらい超有名な人で、浮気とか不倫とかもうとにかくやたらと女に手を出したがるスケベな神様」

「スケベ……先程おっしゃていたエリス様といい、仏以外の神様も是非見てみたいものですね」

「う~ん……ゼウス君には会わない方が良いかな、何故だか知らないけど、会ったら会ったらでちょっと面倒な事になると思う……色々な意味で」

 

ヨシヒコの被ってるライ〇ーマンヘルメットを取ってあげながら軽く説明してあげていると

 

消えた仏にプンスカ怒りながら、アクアは再び歩き出す。

 

「あーもう寝る前にあんな奴の下らない話聞かされて最悪だったわ! ほらみんな! さっさとお屋敷に帰るわよ!」

「そう言えばお前、お屋敷があるとか言ってるけどホントにあんの? 言っとくけど馬小屋はお屋敷じゃないからね?」

「わかってるわよ! 正真正銘の本当のお屋敷よ! ちょっと訳アリな物件だけど条件付きで住む事になってるの!」

「はて、訳アリな物件という所が何か猛烈に引っ掛かるのだが……」

「つべこべ言わずについてきなさい! 実物見て腰抜かすんじゃないわよ!」

 

そう叫んだアクアは我が道を行くかの如く、どんどん前へと進んでいくので、残りの三人も黙ってついて行く事にした。

 

 

 

 

 

そして

 

数分後、アクア率いるヨシヒコ達は

 

街中で一際大きく構えるお屋敷の前でドヤ顔で振り返った。

 

「どうよこれが今日から私達が住むお屋敷よ!」

「うわ! 超デケェ! マジでここ!?」

「凄い……! やはり女神が住んでいるだけあって立派な屋敷ですね!」

 

少々暗そうな雰囲気はあるものの中々の豪邸

 

元の世界では野宿も多かったヨシヒコとメレブにとってコレは心底ありがたかった

 

「正確には私やアクアも今日から初めてここに住むのだがな」

「そうそう、元々は私とダクネス、それとカズマとめぐみんの4人で済む予定だったんだけど、今日色々あったせいで二人共どっか行っちゃったし……特別にアンタ達が代わりに住んでも良いわ」

「いやそれはマジ嬉しいんだけど」

 

二人の代わりに住むというのはいささか複雑ではあるが、やはり素直に嬉しいと思いつつ

 

メレブはふと疑問が頭をよぎった。

 

「あの、どうやってこんな高そうな屋敷に住めることが出来たのおたく等?」

「簡単よ、ここ元々幽霊屋敷だから」

「わぁお、聞かなきゃよかった。俺やっぱ馬小屋で良いです」

「安心しなさい、この女神たる私の力によって屋敷にはびこる霊はほとんど浄化させてやったから」

「……ほとんど?」

「一体だけ残ってるのよ、この屋敷で死んだ女の子の幽霊が」

「……」

 

地縛霊の女の子がまだ屋敷の中をウロついている、それを聞いたメレブも隣にいたヨシヒコも黙り込むが、アクアはあっけらかんとした態度で

 

「まあでも基本的に無害だから大丈夫よ、ただ子供だからちょっとイタズラ好きだけど、この私がいるんだから住む事には何も問題ない筈だわ」

「すみません女神、もしかして2階の窓からこちらに笑いながら手を振ってる少女が……」

「え!? アンタ見えるのヨシヒコ!? へぇ~仏は見えないクセにあの子の事はバッチリ見えるのね~!」

「……」

 

バッチリと2階の窓を凝視しながら動かなくなってしまったヨシヒコ、お化けやそういう類が大の苦手である彼は、こんな恐ろしい場所に住みたくなかったが……

 

「ビビらなくていいわよ! この私が付いてるって何度も言ってるでしょ! それに聖騎士のダクネスもいるんだし!」

「そうだぞヨシヒコ、それにアクアに気を遣って幽霊が見えるフリをしなくてもいい」

「いや本当に見えるんだが……」

「ダクネスとめぐみんは絶対に信じてくれないのよねぇ……ちなみに彼女は貴族の隠し子で冒険の話が好きな箱入り娘らしいわ」

「冒険の話……?」

「そうそう、家主にここの屋敷に住まわせてもらう代わりに私達に条件が出されたのよ、「冒険が終わったら夕食の時にでも冒険話で花を咲かせて欲しい」って、それと屋敷の庭に一つだけ置かれている墓の手入れも」

 

家主が提示した条件を聞いてヨシヒコは「なるほど」と頷く。

 

「私やメレブさんも何度も冒険を終えてまた冒険と繰り返して来ました、その時の話ならいくらでも喋れます」

「マジで色々な場所冒険したからな俺達……多分俺達の話聞いたらその子飛び上がって驚くんじゃねぇの?」

「実際もう飛び上がってますよ、2階の窓から顔を出して私達の話が聞こえたのか、期待してる表情でぴょんぴょん跳ねてます」

「実況しなくていいヨシヒコ、マジ怖い」

 

徐々に慣れつつあるのか、ヨシヒコは淡々とした口調で説明して上げるとメレブは絶対に2階見ない様に目を背ける。

 

「まあでも、アクアやダクネスもいる事だし……とりあえずここに住んでみるか」

「そうですね、彼女もああして見るとさほど恐ろしくはなさそうなので」

「いやぁ~俺は見えないから逆にそのせいで怖いんすけど……」

「決まりね、じゃあ二人共行くわよ」

 

話が着いたのを確認して、アクアは意気揚々と屋敷の中へと入っていく、それに続いてダクネスとヨシヒコ

 

その背後からコッソリとメレブが中へと入っていく。

 

 

こうして彼等の長かった一日がようやく終わりを迎えたのであった。

 

冒険はまだ始まったばかり、彼等の物語はまだまだ続く。

 

それはつまり、”彼女”に聞かせてあげる冒険話も増えるという事だ。

 

 

 

 

 

 

 

「ヨシヒコ、アクア、幽霊の子いる?」

「はい」

「いるわよ」

「あの……どうして二人共俺を見ているんだい?」

「メレブさんに肩車されてる状態で、笑いながらメレブさんの頭をいじってます」

「アンタのキノコ頭が気に入ったみたいね、良かったじゃない」

「ハハハハ、通りで肩が重いと思った訳だイタズラ娘め……アクア様祓って下さい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

真夜中のお屋敷の中でメレブの悲鳴が飛んでいた頃

 

屋敷の傍にあった木の影にて

 

ヨシヒコの妹・ヒサが心配そうにその屋敷を眺めていた

 

「兄様、ヒサも兄様の様に先程職業を手に入れました」

 

そう言って一旦木の陰に隠れた後、一瞬にして全身を着替え終えてまた出て来た。

 

骨で作られた鎧で全身を着飾り、頭蓋骨で出来た兜を被って

 

「ヒサはこれから狂戦士として! 兄様と共に戦います!」

 

両手を腰に当てながら禍々しい格好でそう叫ぶヒサ

 

するとそこへ

 

「あぁこんな所にいた! ヒッサさぁ~ん!!」

 

彼女の下へ軽やかなステップで駆け寄って来る人物が

 

魔王の幹部、デュラハンのベルディアである。

 

陽気な声を掛けて彼女に近づくと、自分の頭を持ったままクイッと親指である方向を指差し

 

「今日はもう遅いから休みましょう! 俺! この近くに大きな城構えてるんで!」

「なんとお城でございますか!」

「ええ! コレでも俺! 魔王の幹部やってるんで! あの程度の屋敷なんかよりもチョー豪華な城持ってるんです! 最近色々あってちょっとボロボロになりましたけどね!」

 

誇らしげにそう言いながら、ベルディアは気分良さそうにスキップをしながら城のある方向へと駆けて行く。

 

「ほらほら早く行きましょ~! ハハハ~!!」

「見ててください兄様……ヒサはこれからも強うなって兄様のお役に立てるよう頑張ります!」

 

屋敷に向かって力強く宣言した後、ヒサも慌てて彼の後を追って、彼の持つ城へと赴くのであった。

 

狂戦士と化し、更に新たな仲間を手に入れたヒサ。

 

彼女の冒険もまた始まったばかりだ

 

 

次回へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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