機動戦士ガンダム00@―lost・of・AGE― 作:アニュー・リターン
汗が滲み、たかにゃは心配そうに眺める。コンソールに表示されたミッションタイマー、今回そこに表示されるスメラギさんのキュリオスとヴァー チェの予測帰還時間まで50秒を切った。
シグマシスライフルに充填されている残りの粒子は10%、本体には49%を示している。そろそろ、シグマシスライフルを交換―――そんなことを考えた瞬間。
「――――…っ!? ……な、に…っ?」
突如飛んできたドッズ回転の粒子ビームの正確無比な狙撃の雨がティエレンを全て無力化した………。
「まさか…今の射撃は………」
ビームが放たれた方向には箒星が輝いていた…。
………………
ガンダムヴァーチェを操るティエリア・アーデが敵モビルスーツ部隊に向けてGNバズーカのトリガーを引く。不意を突かれた2機、そして応戦しようとした1機のティエレンが、ビームの直撃を受けて瞬く間に蒸発した。
敵輸送艦が陽動だと気づいたティエリアはオービタルリングに沿って急速反転し、帰還途中に敵 モビルスーツ隊を確認したのだ。
「別働隊がいたとは……なに……っ!?」
思わず絶句した。
「まさか、敵に鹵獲されたのか…!?――――ガンダムマイスターともあろう者が…!!計画の要であるGNドライヴを搭載したガンダムを敵の手に落とすとは!!……なんという失態だ、敵に鹵獲されるなど ―――万死に値する!!」
ティエリアは即座にGNフィールドを展開。そしてその中でGNバズーカを構え、敵の輸送艦を 狙う。……この距離ならば外しはしない。輸送艦もろともキュリオスを破片一つ残さずに溶解させ ることができるだろう。部品一つ渡さない、それこそがガンダムマイスターの死に様だ。
敵のティエレンの放つ長滑空砲は虚しくGNフィールドに弾かれ、ヴァーチェは確実にバズー カに高濃度圧縮粒子をチャージしていく。
「……アレルヤ・ハプティズム。君も刹那・F・ セイエイと同様、ガンダムマイスターに相応しい存在ではなかった」
ティエリアの冷たい目が敵輸送艦を見詰め、一切の躊躇いなくトリガーに指をかけ―――モニ ターに反応があった。サブウィンドウに表示される拡大映像を、紅桃色の機体が一瞬で通り抜け る。
「―――なっ!?」
―――速い! 敵機は既にメインモニターで捉えられる距離まで接近する。
「……ティエレンとは違う。新型か…!?」
ヴァーチェが敵機に向き直り、輸送艦が射線から外れる。
「邪魔をするな!」
両肩のGNキャノンを新型に向け、右のキャノンを放ち―――敵機が回避したところに左のキャノンを放つ。しかし、それすらも敵機は避けて見せた。
「二度も避けた…!?」
思わぬ機動性に驚きつつも、敵輸送艦が離れつつあることに気づく。
「輸送艦が…!」
焦りつつも、滑空砲で邪魔をしてくる新型に、ティエリアは再び狙 いを定める。
「たかが一機でヴァーチェに対抗する気かっ!!」
計4門のGNキャノンが一斉に火を噴き、敵機はその光に紛れるように猛進。ヴァー チェの機体すれすれを掠めるようにして通り過ぎる。そしてその直後、背後に敵機の反応。
「なにっ!?」
咄嗟にGNフィールドを張るが、至近距離からの砲撃がフィールドを突き破ってヴァーチェの装 甲に連続して着弾する。コクピットに警告の赤い明滅が繰り返される。
「このっ……調子に乗るなっ!!」
咄嗟に、GNキャノンのトリガーを引いた。敵機は接近しすぎており、撃てばどこかしらに当た る。その読みどおりにGNキャノンは敵の新型の右脚を溶解させるが、敵機はそこを即座にパー ジして再び滑空砲で攻撃をしかけてきた。 まだやる気か!!
「あの機体から、特別なものを感じる……ヴェー ダ、これは……」
その時、新たな敵影がモニターに表示される。 総勢八機のティエレン宇宙型。密集しつつこちらに向かってくる。
「新手か……舐められたものだ!」
密集する敵部隊を纏めて薙ぎ払うべく、GNバズーカを放つ。 しかし、敵機はそれを読んでいたかのように散開。一機も当たることなくヴァーチェを取り囲み ―――。
「何っ!?」
更に、ティエレン4機からワイヤーが射出されてヴァーチェの両腕両脚に巻きつき、引かれ、四 肢を大の字に広げられる。間を置かずに放たれた 固着用ジェルがヴァーチェの関節にへばりつき、 関節が動かなくなる。
「これしきのことで……ッ!」
苦虫を噛み潰したような思いを味わいつつも、 右腕をわずかに動かしてGNバズーカを右腕にワ イヤーを絡める敵機に向ける。狙いを定められたティエレン宇宙型が必死に機体を動かそうとする が、遅い――――!
しかし、またしても紅桃色の新型が邪魔をする。蹴飛ばされたGNバズーカが右手からこぼれ 落ちる。
「くっ……それでもっ!」
左右のGNキャノンを展開し、敵機を狙う。しかし手の空いていた2機のティエレン がそれぞれGNキャノンにとりついて無理矢理に砲塔を互いに向けさせてしまう。これで撃てば ヴァーチェも大ダメージを免れないだろう。
「だとしてもっ!」
一気にペダルを踏み込む。背面の噴射口から大量のGN粒子が放たれ、6機のティエレンを引き摺りながら加速を始める ――――が、新型が突進してくるのを視界の端に捉えた。恐らくはヴァーチェの一部を破壊してでも止めるつもりだろうが…!
「GNフィールド、展開!」
しかし、GNフィールドは展開できなかった。 四肢に巻きつくワイヤーが、GN粒子の散布口を 閉じさせている。
「しまった…」
接近する新型が、滑空砲を振り上げ―――。
その時、GNキャノンにへばりついていたティエレンが飛来したドッズ回転のビームに両腕を纏めて吹き飛ばされ、更にドッズがカーボンブレイドを抜こうとした敵の新型の腕を斬り飛ばす。
さらに諦め悪く滑空砲を向けたティエレンを振り向きもせずライフルで撃ち抜いてみせた。
『―――貴女、大丈夫かしら…? 』
「――――っ!?」
そこにいたのは…………ガンダムフェイスによく似た顔、赤いバイザーをつけたカメラアイが輝
く薄緑を基調にしたモビルスーツ…。
ティエリアは、自分がナドレの機体を晒そうとしていたことに気づいた…。
『余計なものを排除するわ。 ヴァーチェを動かさないでね?痛い痛いだからね?』
「な…っ!?」
子供に注意する母親のような言い方をした直後、いきなりスカートアーマーからビームサーベルを出し、ヴァーチェに向かって振り上げ僅かに装甲の表面を溶かしたものの固着ジェルとワイヤーを焼き切った。
『状態は…?』
「……問題ない! …………すまない」
『……これでいいわね?』
ティエリアはキュリオスの太陽炉奪還、そしてキュリオスの確保か排除を考えることにした。が…。
『じゃあ…キュリオスは安全みたいだし私はこれで…』
「おい、待て!!」
モビルスーツは箒星のように飛び去った………後を追いかける最中に彼が見たのはどういうわけか宇宙にぽつんと佇むキュリオスで、既に敵の輸送艦は陰も形も無く。ただ、その残滓と思われる破片だけがキュリオスの周囲を漂っていた。
そして間もなく帰還した3機を出迎えたのは、 損害軽微といっても差し支えの無いエクシア、 デュナメス、そしてプトレマイオス。……こうして人革連が大量の物資を投入したガンダム鹵獲作 戦は終了し、そしてこの戦いが後に世界に大きな動きをもたらすことになる。
『腕が鈍ったかしら…?』
パイロットは薄緑のモビルスーツ…Gバウンサー・デオスの中で呟いた…。