機動戦士ガンダム00@―lost・of・AGE― 作:アニュー・リターン
『――――目標対象確認。予定通り、ファーストフェイズを開始する』
通信を通して無口なガンダムマイスターの刹那・F・セイエイの行動の開始が、僕たちの全ての始まりだった。僕は待機状態のガンダムのコクピットに座りながらそれを聞き、各種機能に異常がないことをもう一度確認しながら機体制御ピットにちょこんと座る銀髪のデフォルメされた女の子のような生き物の頭を撫でた。
「……行くよ。たかにゃ…僕達の船出だ。」
「しじょ!!」【期待】
「ハハハ、そうか。なら期待に答えないとね。」
――――西暦、2307年。
化石燃料は枯渇し、しかし人類はそれに代わる新たなエネルギーを手に入れていた。3本の巨大 な軌道エレベーターと、それに伴う大規模な太陽光発電システム。しかし、このシステムの恩恵を 得られるのは、一部の大国とその同盟国のみ。
3つの軌道エレベーターを所有する3つの超大国群。アメリカ合衆国を中心とした『ユニオ ン』。中国、ロシア、インドを中心とした『人類革新連盟』。ヨーロッパを中心とした『AE U』。己の威信と繁栄のため、超大国群は壮大なゼロサム・ゲームを続けていた。
そして、今回……刹那はファーストフェイズとしてAEUの行う新型MSイナクトによるデ モンストレーションに乗り込み、撃破する。今まさに……
そして、僕の出番はセカンドフェイズから。
『エクシア、ファーストフェイズ終了。セカンド フェイズに移行する』
早いな。刹那とエクシア、モビルスーツの性能差を考えれば当然かもしれない。 刹那とガンダム―――エクシアはAEUの軍事演習場から飛び立つと、真っ直ぐに軌道エレベー ターへ向かう。 それを僕は自分のガンダムのメインスラスターを稼働させながら最大望遠で見ていた。
重要な防衛目標である軌道エレベーターを守るため、そして公開軍事演習に乗り込んでAEUの 新型機を叩き潰して面子も丸つぶれにしたエクシアを迎撃するべく、AEUの現在の主力モビル スーツ・ヘリオンが3機、飛行形態で出撃してきている。
しかし刹那はそれのヘリオンから放たれるリニアライフルを滑らかな動きで回避し、GNソード を一閃。ヘリオンの一部を切り裂くとヘリオンは地上へ向けて墜落……あれなら不時着できるだ ろう。
「……」
『刹那が心配なのか?』
無言でそれを睨む僕に、デュナメスのパイロット、ロックオン・ストラトスが声を掛けてくる。 もしかしたら、ロックオンも少しは緊張しているのかもしれない。とてもそうは見えないが……。
『やはり、AEUはピラーの中にも軍事力を…… これは条約に違反している』
刹那が呟く声が通信を通して聞こえる。 セカンドフェイズの目的。AEUによる軌道エ レベーターへの条約以上の軍事力の駐屯を暴く事。
……それを証明するようにわらわらと軌道エレベーターから出てきたヘリオンがエクシアを取り囲むようにして遠距離からのライフル攻撃を浴びせている。 もちろん刹那はしっかりと回避、あるいは防御しているが(当たってもどうと言う事はないだろ うけれど)、近接格闘戦に特化したエクシアには非常にやりにくい展開だろう。
『エクシア、カコマレタ、カコマレタ』
『ははっ、さすがの刹那でも手を焼くか』
ロックオンと、彼をサポートする独立AIロ ボットのハロが呟く。 そう、この展開は戦術予報士の予測通り ――――。
『なら、狙うとしようか――――行くぜ、ハロ!! ガンダムデュナメスと、ロックオン・ストラトスの初陣だ――――目標を狙い撃つ!!』
「撹乱しますよ――――たかにゃ!!ガンダムAGE-3・エール!!――目標を!!」
「しじょっ!!」【撹乱】
通信を聞きながら、操縦桿を握りなおす。 巨大な岩石が並ぶ荒野の一角、そこに両肩に大きな外套のようなモスグリーンのシールドを装備し、巨大な岩の一つに狙撃銃を固定するような体勢で空を見上げていた。
それと…本来は完成するはずではないトリコロールのガンダム。ウェア換装型万能モビルスーツ、ガンダムAGE-3。
その最大の特徴は胴体(ウェア)の換装によりあらゆる状況に対応した機体になり目標を迅速に駆逐する…。その重力下対応高機動ウェアに換装したAGE-3は、狙撃特化のロックオン・ストラトス とガンダムデュナメスが射撃を開始する中、ストライダー(戦闘機)に可変してエクシアを襲うAEUヘリオンの部隊に突っ込む―――!!
デュナメスの放ったビームは一撃でヘリオンの一部を吹き飛ばし、墜落させる。エクシアの攻撃 の背後に回り込もうとするヘリオンの動きが見える。ロックオンの凄まじい狙撃に動揺し、注意が散漫になっている。
「―――おっちろ!!おっちろ!!おっちろ!!」
戦場での動揺は致命的。AGE-3が、一瞬で死角に回ると、頭部GNバルカンを連射する。
それは狙い違わずにヘリオンの翼を中ほどから吹き飛ばす。
「ちゃんと脱出してろよ――――…!」
「しじょっ!!」【気障】
ロックオンが2機目を撃墜―――する時にはAGE-3はGNバルカンのみですでに三機目を撃墜していた。
『うまく脱出しろよ……コクピットは撃ち抜いてねぇんだから』
「―――だな」
……ロックオンは狙撃手、僕はあくまでその狙撃の隙間の支援……そして何より、お互いに戦争根絶のために戦う仲間なのだから妙に張り合う必要なんてない。
『五つ! 六つ! 七つ!』
「7―8―9っと…!!」
狙撃で混乱し、こちらに注意を向けてしまったヘリオンをエクシアが流れるように連続して斬り捨てる。一分程度という驚異的な時間で、大空にヘリオンが消えた。
『セカンドフェイズ―――』
『―――終了だ』
『ま、とりあえず面倒事になる前に予定ポイントに向かうとしますか』
『……了解』
「ロックオン、乗ってください。予定ポイントまで一気に行きますよ…」
『最短距離で頼むぜ。チップ払うからよ。』
そう、いつまでもここでボーッとしているわけにもいかない。僕はGNドライヴやGN粒子の散 布状況に異常が無いことを確認して、デュナメスをしがみつかせ予定ポイントまでスラスター
を出力大にしてぶっとばした…。
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『―――私たちは、ソレスタルビーング。機動兵器ガンダムを有する私設武装組織です。ソレスタ ルビーイングの活動目的はこの世界から戦争行為を根絶することにあります。私たちは自らの利益のためには行動しません。戦争根絶という大きな目的のために立ち上がったのです。 ただいまをもって全ての人類に宣言します。領土、宗教、エネルギー……どのような理由であっても、私たちは全ての戦争行為に対して武力による介入を開始します。戦争を幇助する国、組織、 企業なども我々の武力介入の対象となります。 私たちは、ソレスタルビーング―――――…」
ソレスタルビーイングによるビデオメッセージ。サードフェイズ、人類革新連盟の軌道エレベーター『天柱』で起こったテロを未然に防いだ団体を名乗って(というか本当だが)マスコミに送りつけたそれが世界に流れていた。
そして南太平洋に浮かぶ孤島、身の隠し場所として指定された場所の一つで、たかにゃを抱き上げた僕と刹那、ロックオンは携帯端末でこの放送を見ていた。
(……ティエリアさんとアレルヤさん、スメラギさんたちも見ているのかな)
僕たちは何となく3人でそれを眺めていたのだが、ロックオンは携帯端末を閉じて放送を見るの を止めた。……まぁ、もう今までに飽きるほど見ましたからな。
「始めちまったぞ……ああ、始めちまった」
ロックオンが自分に言い聞かせるように呟いて、何か苦々しげな顔をしている。……刹那も何 か思うところがあるのか、ロックオンの様子には気づいていない。 僕はそんなロックオンを眺めながら小さく呟く。
「こりゃ当分…たかにゃにあげるラーメンはお預けかな?」
「しじょっ!?」【ショック】
「おまっ!!いくつラーメン食う気だ!?食費がエライことになってんのはたかにゃが原因だろ!!」
僕とたかにゃの平和ボケ会話が堅苦しい空気を壊していった…。