嘘か真か、単騎で軍を撃滅する規格外の戦闘力!
鉄風雷火のかの地から異形の戦士が現れました!
人呼んで《
人呼んで《戦地の悪霊》!
また人呼んで《
異名の数は伝説の数か!?
中東のブラックボックスが七星の頂に殴り込む!
年齢、不明!
出身、不明!
実力?能力?─────全てが未知数!!
あいつは誰だ? あいつは誰だ!?
正体不明のベールの中身が今明かされようとしています!
青ゲートより戦の鬼が闊歩する!
見たままズバリのプレッシャーを引っ提げ、《傭兵》ヨルの入場だー!
────決闘におけるヨルの紹介文
月夜見半月の原稿より抜粋
VS 落第騎士
『さて、いよいよ時間が差し迫って参りました!
謎の転入生ヨル。突如として決定した彼と我等が《七星剣王》との決闘!
そのルールはよもやよもやの実戦形式!
本日の実況は私、放送部の月夜見半月が、解説は西京寧音先生が担当します!』
『よろしくぅ。さて、どんなもんが見れるかねぇ』
『……おっと?今回、西京先生はかなり真剣な雰囲気を醸し出しております!それほどの相手であるということでしょうか!?』
ここは第二訓練場。
開催が受諾された一輝とヨルの決闘に割り振られた舞台に、大勢の観客が詰めかけている。
刀華の時とは事情が違うため、今回は観覧に制限がかけられていないのだ。
皆が一輝の戦いを目当てに今か今かと待ちわびる中で、生徒会メンバーの表情は固い。
刀華が負けた相手だからというのもある。
しかしそれ以上に、一輝にすらヨルが勝ってしまうという展開が恐ろしいのだ。
生徒の中では校内一の実力者よりも上だと格付けがされてしまえば、いよいよヨルを縛るものは無くなる。
あるいはステラ=ヴァーミリオンなら止められるかもしれない。
だが、それでも不可能だったら……
あの正体不明の虐殺者の好き勝手を、止められなくなる。
「………勝って下さい、黒鉄さん」
表情に違わぬ重い声で刀華はそんな願いを口に出していた。
「………始まっちゃったわね」
「……この結果は誰かから見て最良なのか最悪なのか、それだけでもわかれば良かったのですが」
「単位で言えば個人と個人だけど、元々ヨルがこの学園に入れられた理由から考えればあまり望ましくはないわね」
一輝とヨルの交流に関しては最後まで蚊帳の外だったステラと珠雫は、複雑な面持ちで眼前の舞台を見つめていた。
その隣にはようやく心が復帰したアリスがいる。
あの精神状態がなんだったのかは聞いても教えてくれないが、本人はもう大丈夫というので珠雫はそれを信じることにしていた。
「それでもまだ気になりますね。お兄様はどうしてあの男にここまで……」
「感じるものがあったんでしょう。ヨルと話して思ったんだけど、あの二人が引かれ合う理由、あたし何となくわかるわ」
「「え!?」」
予想外の言葉に、ステラと珠雫は同時にアリスの方を振り返る。
アリスはやれやれと言葉の端に笑みを匂わせながら二人に言った。
「『仲良くなりたい』のよ。生まれもキャラも真逆に感じるけれどね。あの二人、実は結構似た者同士なのよ」
(………盛り上がってんな)
ゲートの向こうから響いてくる大歓声に、ヨルは少しだけ辟易した。
余興で自分達少年兵を殴り合わせた過去の上官が頭を過ったからだ。
あの世界で少なくとも同輩と呼べるのが同じ少年兵しかいない状況での出来事である。色々と適応した今もあまり良い記憶ではない。
ただここから聞こえるこの歓声に、そのような下卑た色が一切ないのもわかっている。
(あの男、えらく人気の
そいつの過去もその口から聞いた。
いやはや、自分とは綺麗に真逆である。
強さの理由。
今までの疑問を紐解くために戦ってその答えを知ろうとしたが……東堂刀華(トードートーカ)の時の様に、環境が違ってはそれは叶わないのか。
────だが関係ない。
俺の目的を果たすため、今回も俺は俺を貫くまで。
未だ扉を開かぬゲートの前で、ヨルは大きくその身体を沈めた。
そしてその時は訪れた。
『さあ!時間となりました!いよいよ激戦の火蓋が切って落とされる!この決闘の主役両名の入場です!!』
実況の宣言に観衆が一気に沸いた。
待ち望んでいた刺激的な時間が、やっと始まるのだ。
『今、赤ゲートから姿を見せました!
《落第騎士》から《無冠の剣王》、そしてとうとう頂点へ!
Fランクという十字架を背負いながらも苦難の道をひた走り、
それは正に下克上!あるいは希望の体現か!?
血の滲む道を行く優しき修羅!
《七星剣王》黒鉄一輝、堂々の登場です!!』
大歓声と共に彼はゲートから姿を見せた。
大仰な紹介に悪い気はしないながらも気恥ずかしそうに苦笑する姿は、誰が見ても戦いを好む剣の鬼とはとても思えない。
しかしそれでも、その十数秒後には彼は人を超えた絶技を以て己の剣を振るうのだろう。
努力の英雄が奮い戦う姿を全員が期待していた。
その彼が静かに睨む青ゲート。
その扉が今まさに起動し、隠された相手の姿を
そして。
『続いて挑戦者の入場です!
嘘か真か、単騎で軍を撃m
何を語る時もなかった。
衆目の前を、目で追えない何かが駆け抜けて。
それは真っ直ぐに彼に向けて疾走し。
そして激突した。
その瞬間、間違いなく時間が凍った。
ゲートの扉が僅かに開いた瞬間。
駆け抜けたヨルの全力の飛び膝蹴りが、一直線に黒鉄一輝の顔面に突き刺さった。