ハイスクールD×D ~龍の兄と鬼の弟~ 作:ショタ専用○ンダム
「ハハッ!楽しいな!!」
始めは妖怪である紫が私の起こした異変に介入するのは無粋だと思っていた。
本来なら博麗の巫女である博麗霊夢あたりが私に挑み戦うのが幻想郷の流儀であり異変を収める方法で妖怪が異変解決なんて前代未聞だ。
しかし博麗霊夢を含めた人間達は私の起こす異変に気付かず気付いた僅かな者達も返り討ちにしてしまったため見かねた紫が自ら私に挑んできた。
飛び交う弾幕、人知を超えた対術による肉弾戦、能力を最大限に使った互いの戦術。
その全てが私を熱くさせる。
鬼である私の本能がこの戦いを楽しんでいた。
「あなたの相手は骨が折れるわ、萃香」
あぁ、紫。
私をここまで熱くさせるのは数えるほどしかいない。
だから、
「本気でいくよ!紫!!」
疎の力を使い自身を散らす。
本体から疎の力によって切り離された私は私と同じ思考を持った別の私として独立する。
そうして誕生した私の十分の一程しかない大きさの私達が紫へ飛び掛る。
「甘いわね、萃香!境符『四重結界』」
しかし、紫の張る結界に阻まれ私達の攻撃は届かない。
けどっ・・・!
「甘いのはそっちだろ!紫!!」
次の瞬間、私達が霧散する。
自身を疎にし霧状となり紫の背後で再集合し本体の五分の一ほどの大きさの私が出現した。
そして同時に本体である私も紫に接近し紫の張る結界に対し力を最高まで密の状態にした拳を振りかぶり結界ごと紫を吹き飛ばす気で殴りつける。
しかし、紫の判断も早かった。
「くっ!?結界『魅力的な四重結界』」
更に強力な結界で私の攻撃を防ぐ。
だが、その背後にはもう一人の私が紫に対して一撃を放とうとしている。
「頼んだ私!」
「任された私!」
私の拳は無防備な紫の背中を狙い放たれ、
「残念賞♪」
その瞬間、紫の背後に現れたスキマによって阻まれ、
「なっ!?」
スキマに私は吸い込まれていった。
私を飲み込んだスキマはその役目を終えたと言う様に消えてゆく。
これは・・・かなりの痛手だ。
先程の私は分身にしては非常に濃い状態だった。
私の持つ密と疎を操る程度の能力によって生まれた分身は単純に自分自身の身を分けて作り出される分身。
分身の質を上げれば本体の私自身はその分の力を失ってしまう。
紫のスキマに飲み込まれた分身は全体の二割程度の力は持っていた。
つまり。その分だけ本体である私は弱体化している。
紫相手にその損失は非常に大きい。
本体から切り離された分身はある程度時間がたてば自然消滅し消滅した分の力は本体のほうで時間をかけて回復するがこの戦闘中に回復できる時間なんて無い。
「これで能力的には私の方が上かしら?」
「っ!?」
紫の口ぶりからこの行為が狙って行われたのがひしひしと伝わる。
・・・あぁ、確かに今は紫の方が能力的に上だろう。
けど、
「鬼を嘗めるな、紫!」
この程度で勝負を投げ出すほど鬼は甘くないのだ。
・
・・
・・・
「全く、紫も酷いことするな」
スキマに飲み込まれた後すぐに吐き出された私はここが幻想郷でなく外の世界であることを悟った。
溢れる光は夜を照らし星達は人工の光に飲み込まれ殆ど見えない。
騒音の中闊歩する人間達の冴えない顔はどうにも私の趣味に合わない。
ただ流されるままに生きている。
殆どの人間がそんな顔をしていた。
私は必死な人間が好きだ。
元来、人間は力の及ばない妖怪達に知恵と勇気を振り絞り挑む。
私達鬼はそんな必死な人間が大好きなんだ。
なのにここの人間どもはどいつもこいつも腐った溝川のような目で日々を過ごすようにしか私の目には映らない。
外の人間は私達が居ない間にこんなにも腐ってしまったのかと思うと無性に悲しくなる。
「あぁ、こんな気持ちで消えるのか」
そう消える。
本体で無い私は本体から切り離されある程度時間が経過すると自然消滅する。
こればかりはどうしようもないし割り切っているけど・・・、こんな気持ちで消えるなんて冗談じゃない。
せめて、せめて私が希望を持てる人間を見てから消えたい。
だから探した。
私が希望を持てる人間。
少しだけでいい。
ほんの少しだけでいいから私に希望を魅せて欲しい。
・
・・
・・・
探し始めて数刻ほどの事だった。
妙に大きい建物の中にマシな人間達がいるのを見つけたのは。
どうやらこの建物は病院らしく中には重い病気を患いながら生きる事を諦めない人間たちが数多く居たのだ。
そうだ、こんな人間たちを私は見たかった。
大きな困難にも立ち向かう鬼好みの人間達。
少し気分の良くなった私はもう少しこの建物を回ろうと思った。
どうせもう半刻もすれば私は消えてしまうだろうし、それまでは少しくらい楽しんでもいいだろうと思っていたんだ。
偶然だった。
本当に偶然だったんだ。
私がある部屋を通り過ぎる時、中から赤子の声が聞こえてきた。
興味本位で覗いて見た。
そこには男の子が元気に泣き声を上げて父親に抱かれていた。
いいなぁ、この光景。
あらゆる生命に一番初めに訪れる出産という困難を乗り越えた一人の人間。
最後にこんな光景を見れて私は満足した。
もう、消えてもいいな。
そう思った瞬間だった。
「先生!二人目の子が産声を上げません!!」
ふたり・・・め?
よくよく見れば母親はもう一人子を宿していたらしかった。
しかし二人目の子は無事、と呼べる状態で生まれる事は出来ずその儚い命を散らせようとしていた。
その二人目の赤子は必死に、必死に生きようとしている。
しかし、目に見えるほどに衰弱しきったその子はきっとこのままその生を終わらせる事になるだろう。
私にはわかった。
その子の魂が欠けている事が。
いくら体を治療しようとしても魂に問題があるからこの子が助かる事はない。
医者にはどうにも出来ない事なのだから。
せめて見取るくらいはしてやろうとする私は気がついた。
その赤子が薄く開けた目で私を見ていることに。
その小さい手で私を掴もうとしている事に。
その赤子が必死に行き足掻いている事に。
普段の私ならそのまま事が運ぶのを見守るだけだろう。
どんなに頑張っても報われないことがある。
必死になれば必ず報われるなんて事になれば私達は人間を愛してなどいない事だろう。
だから私は手を貸したりしない。
それば侮辱だから。
人間に対する最大の侮辱にしかなりえないから私は人に手を貸す事などしない。
だけど・・・、
楽しみだ。
もし、この子が成長したならどんな人間になるのかが。
それを見れるならこの子を助けたいと思った。
だから私は自分を捧げる。
この子に私を同化させて欠けている部分の魂を補えばこの子は生きられる。
どうせ消えてしまうんだ。
この子供が生きられるなら自分なんて惜しくない。
そう思い私はこの赤子を助けると決めた。