ハイスクールD×D ~龍の兄と鬼の弟~ 作:ショタ専用○ンダム
「あ、起きた?アキラちゃん」
「・・・何してるんですか、神綺さん」
後頭部にあたる妙に柔らかい感触と視界に嫌でも入ってくる神綺さんの大き目の胸。
いや、どんな状況なのかは一目瞭然だけど。
「膝枕♪やりとげたアキラちゃんへのご褒美に」
「・・・ってことは俺は」
「うん、鬼になってる。ちゃんと角だってある」
頭を触ってみる。
うん、側頭部に一本ずつ巨大な棒みないな物がついていた。
鬼の最大の特徴である角だ。
「爪とかと一緒で角って感覚無いんだ」
『でも頭と直接繋がってるから鬼の急所でもある。角に攻撃を受けると脳が揺らされるから気をつけなよ』
「うわっ!萃香!?」
『おいおい、そこまで驚くことは無いだろう?これからはずっと一緒なんだ。この程度で驚いてたら先が思いやられるよ』
とりあえず起き上がりながら萃香を実体化させる。
「はぁ~、部屋のドアがなくなってプライベートが無くなったと思ったら今度は萃香と四六時中一緒とか。しかも萃香は俺の心を読めるんだろ?」
「そんな細かい事はいいだろ。八年前も同じ状況だったんだし慣れれば気にならなくなる」
「うふふ、萃香ちゃん。アキラちゃんも年頃の男の子なんだから少しは気を使ってあげなきゃ」
畜生なんだ、これ。
新手の羞恥プレイか。
「さて、アキラちゃんの今後のプライベートについては私が何とかするから今はアキラちゃんの体のことね」
「俺の体?・・・そういえば妖怪的な衝動とか一切無いんですけど」
「でしょうね。まさか妖怪化する過程で『あんな能力』を目覚めさせるなんて予想外もいいところね」
「あぁ、私もアキラの中で驚いたよ。妖怪に喧嘩売ってるような『能力』だね」
「・・・どういうこと?」
「鬼と人ってのは魂の格に隔絶した強さの隔たりがある。能力ってのは魂に宿る力だ。魂の格が跳ね上がれば能力を得られる可能性もあるのさ。そして能力は持ち主の本質を表すもの」
「アキラちゃんは鬼になる過程で強く思ったでしょ。人の心を持つ鬼になりたいって。それはつまり人でもあり鬼でもありたいというアキラちゃんの願い。もしその願いをトリガーとして力が目覚めればどんな力を目覚めさせるかしら?」
・・・もしかして俺の得た能力って。
でも、あり得るのか?
そんな都合のいい能力なんて。
「『人と鬼の要素を同時に内包する程度の能力』。それがアキラちゃんが得た二つ目の能力よ」
・
・・
・・・
簡単に説明するとこういう能力だった。
1.「人と鬼の要素を同時に内包する程度の能力」はその名の通り人と鬼の要素を矛盾なく持ち合わせることができる能力である。
2.鬼の要素を持つため鬼同様の戦闘能力を持てる。
3.鬼(妖怪)の要素を持つため寿命が長く肉体に依存しない生命活動(妖怪は魂依存の存在のため肉体損傷は余り意味がなく部分欠損すら短期間で修復可能)が可能。
4.鬼(妖怪)の要素を持つため恐怖、畏怖が増えるほど強くなり続ける。
5.鬼(妖怪)の要素を持つため年齢を重ねるほど強くなり続ける。
6.人の要素を持つため妖怪の維持に必要な恐怖、畏怖を必要としない。
7.人の要素を持つため成長速度が速く強くなるのに時間が掛からない。
8.人の要素を持つため妖怪の感性を無くす(正確には人の要素を優先する事で感性を人寄りにする)事ができる。
9.人の要素を持つため精神攻撃の耐性(妖怪は魂依存の存在のため精神攻撃が致命的になりかねない場合がある)が高い。
と基本的な効果は以上の通りだ。
まだ複雑で細かな効力もあるらしいけど大まかに言うとこんな感じらしい。
「チートですよね」
「チートねぇ」
「チートだねぇ」
何がチートって2番と6番が非常に可笑しい。
妖怪っていうのは強い力を持つ代償として人間から恐怖と畏怖を得る必要がある。
なのに妖怪としての力を持ってるのにその代償を一切得る必要が無いというのは妖怪の存在意義を根本から覆しているような事だ。
そもそも妖怪とは人にとっての天敵としての役割を与えられた存在。
人が過剰進化し他の種や地球そのものを死滅させるのを遅延させるために自然節理の生み出した防衛本能みたいなものだ。
だから人という過剰増加を続ける種族に対し妖怪は単一で強力な力を持つ事が多い。
人の負の感情が増えるたび妖怪は強くなる。
人の負の感情が無くなれば妖怪は消滅する。
人の負の感情こそが妖怪の生命線であり力の源。
俺の力はその絶対的な法則を無視し有利な部分だけ総取りできる。
全妖怪に喧嘩を売っているような能力だ。
「なんでこんなご都合主義な能力を発現させてるんだよ・・・俺」
「能力は能力者自身の信念や願いを元に構成される事が多々あるの。アキラちゃんの場合は人と鬼の両立を信念として鬼になった。鬼になったことで魂の格が大幅に増えたから新しく能力を発現させるには十分な条件だった。その上で強い信念を持っていたとすれるなら、この能力を発現させたのにも納得できるわ」
「鬼になって負の感情集めるのとか結構覚悟してたんですよ。関係ない人沢山襲うことになるって」
「良かったじゃないか。おかげで誰も襲わないですむ。私としては是非アキラには鬼退治をしてもらいたかったけどね」
鬼になる覚悟とは何だったのかという感じがしてくる。
暴走しなくっても負の感情はやっぱり必要なため軽く人攫いとかする覚悟もしてたのに結果がこれとか正直ダレる。
「まぁ、今さそんな事どうでもいいじゃないか。大事なのはアキラが無事鬼になれたってことだしね」
「そして人でも居れるなんてこれ以上なく最高の結果よね。アキラちゃんと萃香ちゃんの両方の願いが同時に叶ったんだから」
「確かに嬉しいですけどね。なんかこう微妙にあっけなさ過ぎて」
拍子抜けというかなんと言うか。
もうちょっと何か試練的なものでもあれば分かりやすいのに。
まぁ、そんなものがあればそれこそご都合主義なんだろうけど。
「ところでアキラちゃん。力の制御って大丈夫?鬼になったからかなり力もあがって制御も難しいと思うんだけど」
「あ~、それですか。実は結構不安なんですよ。今も力が漲ってるって言うか有り余ってる感じで」
「じゃあ、力の制御を教えないとダメよね。今のアキラちゃんを外に出すと何かの拍子で一般人を殺しても可笑しくないだろうし」
・・・ありえそうで困る。
実際、萃香を封印する前は力を何かの拍子で使ってしまいそうだったから気を使いすぎて周りからは大人しい子供と勘違いされていた事がある。
それが原因で苛めに発展して反撃でもすればその拍子で相手を殺してしまう可能性もあるから反撃も出来ずにいい様にされっぱなしだったのを思い出す。
別に子供の力で殴られたりしても鬼の力を持っていた俺には蚊に刺されたほどにも感じなかったから別になんでもなかったけど兄ちゃんが助けてくれたのは印象に残っている。
あれで兄ちゃんも結構怪我したから悪い事してたなぁ、俺。
「でも力の制御って言っても俺はこれからグレモリー先輩と話しに行かなきゃ行けないんですけど」
そう、俺は漸く皆から認めてもらえる程の力を手に入れたんだからレーティングゲームの参加を認めてもらうことが出来るかもしれない。
グレモリー先輩は木場との勝負に勝てば出してくれるって言ってたし勝負が一度とも限定はしてなかった。
屁理屈のように聞こえるかもしれないけど別に嘘は言ってないんだから問題は無い。
要はもう一度木場と戦って勝てばいいのだ。
しかし10日の準備期間中にやらなければいけないから早いところ勝負に行きたい。
遅くなって手遅れでしたでは話にもならない。
だからすぐにグレモリー先輩と話を付けに行きたいんだけど・・・。
「力の制御が出来るようになるまで店からは出しません。大丈夫、私が教えてあげるから。5日も有れば完璧にしてみせるから」
「・・・ついでにどんな修行をさせるつもりで?」
萃香封印前に何年かけてもできなかったことを5日でするって結構なスパルタだよな。
とたん不安になってきた。
「不安になることないわ。凄く簡単これから5日間でアキラちゃんにはある物を作って貰います」
「・・・ある物?」
そして神綺さんは飛び切りの笑顔で飛び切り予想外の物を注文した。
「アキラちゃんにはショートケーキを作ってもらおうと思います♪」
ショートケーキ。
それはケーキの王道。
純白の生クリームと真紅に輝く一粒のイチゴ。
その二つの醸し出すハーモニーは多くの女性を虜にして止まない魅惑のスイーツ。
数多くの女性を陥落せしめた紅白の女王。
成程、確かに俺の力を制御するのに相応しい課題・・・
「ってんなわけあるか~!!」
思わず敬語も忘れて突っ込んだ。
当たり前だ。
ショートケーキと力の制御に何の関係がある!!
「今、馬鹿にしたでしょ?でもきっとアキラちゃんはこれからショートケーキを馬鹿になんて出来なくなるわ。アキラちゃんの力の制御を修行する上でショートケーキを作るというのは一種の鬼門になるから」
「どんだけ壮大なんですか、ショートケーキ!!神綺さんが食べたいだけじゃないですか!!」
「生クリーム、イチゴ、卵、砂糖、バターに小麦粉。使っていいのはこれだけね」
「別に材料は聞いてないですってば!!」
「いいえ、これは重要な話よ。だって使っていいのは
「だからその材料がどうしっ・・・?」
何だ、今の強調?
まるで
「ふふっ、やっぱりアキラちゃんは気がつく?そう、材料以外は一切使用しないで自分の力と能力のみで作るの。道具の使用は一切禁止の状態でね」
「はぁ~、良く考えたもんだね。確かに密度の力があればケーキくらい道具を使わないで作れるね。実際、私にも力があれば出来るだろうからね」
「・・・ショートケーキを作るのが修行になるのは分かりました。でもそれにどんな効果があるかくらい教えてもらってもいいですよね」
そうして俺の五日間に渡るショートケーキつくりが始まった。
・
・・
・・・
まず最初に苦労したのは卵だ。
割ろうとする所か持つだけで潰れてしまった。
鬼の力が強いお陰で人の頃の感覚で物に触れるとこんな風に壊れてしまうと改めて実感した。
なんとか潰さないように卵を握れるようになっても次は割るのに戸惑った。
道具の使用禁止って言うのはかなり厳しく卵を何かの角にぶつけるのも禁止だったからだ。
普通、卵を割るときは皹を入れるために角にぶつけるのが普通だけどそれが出来ないから俺は指で圧力をかけて卵を割る事にした。
結果、卵は割れた。
中の黄身まで一緒に割れていた。
力が強すぎるため微妙な匙加減が上手くいかずに力が入りすぎた結果だ。
ケーキを作る際に卵は白身と黄身に分ける必要があるためこれでは失敗。
最初の難関はここだった。
卵を上手く割るだけで一日費やす事になった。
漸く上手く割れたと思ったら肝心な事を忘れているのの気付いた。
入れ物がない。
気付いたときには時遅く、卵の中身はべちゃっと床に落ちていた。
自分のアホさ加減に自分自身呆れた。
入れ物がないならどうやって卵を維持するのか。
答えは簡単だった。
密度の能力使えばいい。
卵の中身を黄身と白身で別々に密めて維持すれば問題なく解決する。
そう思い実行してみた。
結果、失敗した。
何を間違えたかって?
別に間違っては居なかったんだ。
問題は制御の難しさだ。
卵を維持する際、俺は黄身と白身の二つに集中して力を使う必要がある。
さらにその二つに集中力を裂きながら今の俺では繊細な作業となる卵を割る工程が必要になってくる。
密める方に集中すれば卵が上手く割れない。
卵に集中すれば密度の維持に問題が出て卵が落下する。
スポンジ作成に必要な卵は3つだから俺は卵三つを割る間、二つの密度を操りながら繊細な力の制御を要求される作業を行わなくてはいけない。
卵を三つを白身と黄身に分けるだけで更に一日費やした。これで二日目。
次に黄身と砂糖を混ぜる作業に入る。
黄身と砂糖がクリーム状になるまで混ぜる必要があるがこれも難しい。
俺の能力では『かき混ぜる』という状態を作るのに先の制御よりも複雑な作業が必要だからだ。
俺の能力でこの黄身をかき混ぜるには黄身の中に極小の密度を作りそれを移動させ回転させる事でかき混ぜる事は可能だろう。
けれど俺は既にこの時点で黄身を密め維持する力に白身を密め維持する力を使っている。
そこに極小でしかも移動を行う密度を作り出すのは非常に困難。
しかも密度の移動によって生まれる回転は黄身を遠心力で外に飛ばす。
この遠心力を上回る力で黄身を維持しないと黄身は周りに飛び散り無くなってしまう。
しかも白身でも同じ作業を行う必要があるためこの困難な作業を二度も行わなくてはいけない。
やはりこの作業も一日がかりで計三日でスポンジすら完成できないという体たらくだった。
制御に自信が出てきた所で最後の難関が立ちはだかる。
黄身と白身は問題なく出来るようになりこの二つを混ぜて小麦粉とバターを加えるところまでは問題なく進んだが密度の制御での集大成を問われる作業、焼成があったんだ。
焼きの時間は170度で25分。
この温度を維持すればスポンジの完成だ。
焼くのはそれほど難しくない。
空気を適度に密めれば170度の温度で25分くらいは維持できる程度に俺の能力の制御は上達している。
問題なのはスポンジの形だ。
密度は基本的に球状で密まる。
普通にスポンジの元を密めれば当然球状になり焼けばさぞ綺麗な円形のスポンジが焼きあがるだろう。
これを解決するのはどうすればいいか。
答えは簡単、力の支点を増やす事だ。
密度を多数制御して限りなく円柱状にスポンジを維持しながら焼く。
少なく見積もっても円柱状にスポンジを固定するのに100以上の密度の支点が必要だろう。
まさに密度制御の集大成。
制御自体は基礎しかないが数が余りに膨大すぎる。
だが俺はここで密度に関しての裏技を発見する。
とあるものを密めた結果、俺はこの最難関の密度制御をクリアするに到った。
何を密めたかって?
ちょっと卑怯臭いが俺が密めたのは「集中力」だ。
元々、この能力は概念的なものですら密める事のできる応用力の高い能力だ。
だからここまでの成果で密度を極めつつある俺にとって集中力を密める程度は割りと簡単に出来た。
こうして漸く四日目にしてスポンジを完成させることが出来た。
最終日、五日目。
ここからは難関というべきものは存在せず能力のおさらいみたいな感じだ。
生クリームと砂糖をかき混ぜる作業。
密度で集めた空気の塊からの衝撃波でスポンジを二つに割る作業。
出来た生クリームを密度で密めて均等にスポンジに塗って行く作業。
最後にクリームとイチゴの装飾で漸く五日に渡るショートケーキ作りを終了させた。
なお、そのショートケーキはすぐさまお茶の準備をしていた神綺さんに強奪され美味しく頂かれた。
味は極普通のショートケーキだったと言っておく。