ハイスクールD×D ~龍の兄と鬼の弟~   作:ショタ専用○ンダム

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七話 兄ちゃんの左手は昔、俺の物だった

「なんだ、これ?」

 

 

土砂や瓦礫が俺たち三人を完全に生き埋めにするはずだった。

 

しかし既に眼前に迫っていた土の壁はまるでガラスのバリケードのような半球状の空間を作り出し俺たちを護っていた。

 

 

「ははっ、今度は俺たちを護ってくれたみたいだな。何だよ、不思議ってのも捨てたものじゃないな」

 

 

また起こった不可思議現象だがこれは俺たちの味方らしい。

 

そこで木場と塔城さんが俺のことをじっと見つめている事に気づく。

 

 

「・・・先輩、『ソレ』は何ですか?」

 

「え?」

 

 

二人が視線を向けるのは俺の右手・・・いや、正確には右掌の上にあるモノだった。

 

黒く、何処までも黒く渦巻くソレ、例えるならブラックホールが一番しっくり来るだろう。

 

それが俺の掌の上でゆっくりと渦巻きながら佇んでいた。

 

右手を動かすとその小さなブラックホールはまるで掌に固定されたように一緒に移動する。

 

それだけじゃない、このブラックホールを動かすとブラックホールを中心として半球状に形成された空間そのものが移動する。

 

つまり、この空間を形成しているのはこのブラックホールって事になる。

 

 

「アキラ君、君が堕天使側の人間じゃないって言うのは今までの状況で証明されてる。でも、そんな力を持ちながら僕達悪魔に近づいたって言うのは偶然にしては少し出来過ぎじゃないかな?」

 

「・・・おい、木場。何の話をしてるんだ?」

 

「神器じゃない全く未知の能力。人間の範疇を超えた身体能力。僕達が来る前に受けただろう拷問のダメージを全く感じさせない生命力」

 

「木場、いったい何を・・・」

 

「そして、今、君に突き刺さっている槍。人間なら完全に致命傷だよ?どうして君は今生きているんだい?」

 

 

そういえば、槍刺さってるんだよな。

 

痛みは有るけど・・・最初に感じた激痛は既に治まってる。

 

耐え切れないほどの痛みは無い。

 

まさか、回復したのか?この短時間で?

 

 

「・・・アキラ先輩、アナタはいったい何者ですか?」

 

「・・・わかんねぇ。人外じみた身体能力は物心ついたときにはもう持ってたし死んでも可笑しくない程の怪我を負っても生き延びられる生命力も今日始めて知った」

 

「そのブラックホールを形成してる能力については?」

 

「これって、やっぱ俺が出してるのか?」

 

「僕にも小猫ちゃんにもそんな物を作る力は無いよ。だとしたら残るのは君だけだ。・・・もしかしてソレは無意識で使っているのかい?」

 

 

何となくそんな気はしてたけど、そうなのか。

 

元々人の範疇を明らかに超えた身体能力を持ってるのにここで不思議設定追加かよ。

 

でも、コレが俺の不思議能力だとしたら俺の意思次第で操ったりとかできるのか?

 

そう思い『形成している空間を広げろ』と念じてみる。

 

するとブラックホールの渦が激しく回りだし俺の思惑通り空間が約1メートルほど拡張された。

 

 

「マジかよ。どうも本当に俺の力っぽい」

 

「・・・本当に何も知らないのですか?」

 

「あぁ、どうして俺がこんな訳の分からない力が有るのか・・・どうして俺が明らかな致命傷を負っても生きていられるのか・・・俺自身でも全く付いていけない事態なんだ。正直、困惑してる」

 

 

二人とも訝しむ様な表情をする。

 

まぁ、俺だって二人の立場だったら同じ様な顔をしてるだろうし無理も無い。

 

 

「まぁ、君の力については後でじっくり聞かせてもらうとして、まずはここから脱出する事が先決だね。幸いアキラ君の力で簡単に脱出できるみたいだしね」

 

「あぁ、あのクソ女と兄ちゃんが鉢合わせしてたらヤバそうだしな。でも知らない事を聞かれても答えられる事なんてないからな?」

 

 

取りあえず天野が出て行った扉の方向に当たりをつけ歩き出そうとするが塔城さんが俺の腕を掴み歩みを止めざるを得なかった。

 

 

「・・・肩、お貸しします」

 

「へっ?いや、大した怪我じゃないしさ」

 

「アキラ君、槍がお腹を貫通して大した怪我じゃないって言っても説得力ないよ?ここは小猫ちゃんに甘えておいたほうがいい」

 

「な、なら木場に頼むよ。こういうのは男の役目だろ?」

 

「僕じゃアキラ君と体格が違いすぎるから逆にアキラ君の体の負担にしかならないよ。小猫ちゃんとアキラ君は体格的に似通っているからここは小猫ちゃんが適任だよ」

 

 

つまり170オーバーの木場と150前後の俺じゃ身長的に肩は貸せないってか?

 

遠まわしにチビって言ってるよなそれって。

 

くそ、俺だって後3年もすればテメェの身長追い抜いてやるからな。

 

 

「・・・アキラ先輩、どうかしましたか?」

 

「い、いや、何ていうかさ・・・」

 

 

肩借りるって・・・かなり密着するよな?

 

塔城さんは一見小学生に見える(人のことは言えないが)けどれっきとした高校生の女の子。

 

今までの人生で俺は女の子に密着するなんて出来事は一回も無く流石に恥ずかしいっていうか・・・。

 

 

「・・・早くしてください。じゃないとお姫様抱っこで運びます」

 

「肩借りるね、塔城さん」

 

 

うん、恥ずかしがってる場合じゃないな。

 

別にお姫様抱っこが恥ずかしいとかじゃなくって兄ちゃんの事が純粋に心配なだけだ。

 

塔城さんの肩に腕を回し少し体重をかけさせてもらう。

 

・・・柔らかいな。

 

これが男の性か俺も兄ちゃんの事いえないかな?

 

 

「・・・先輩?」

 

「ん?あ、あぁ、ごめん。ちょっとボーっとしてた」

 

 

おい、こら木場。何ニヤニヤしてる?

 

その慈しむような視線はやめろ、鳥肌が立つだろうが!!

 

 

「どうしたのかな?顔が赤いよアキラ君」

 

「木場、それ以上可笑しなことを言うと何処とはいわないが体の一部を潰す」

 

 

木場が顔を真っ青にして口を噤んだ所で移動を開始する。

 

歩くたびにブラックホールを中心にして半円の空間も動く。

 

塔城さんに肩を借りながらだったから少し時間が掛かったけど程なくして天野の出て行った扉を出る。

 

するとブラックホールが徐々に小さくなり消えてしまった。

 

 

「あれ、消えた?」

 

 

困惑していると木場の方から説明された。

 

 

「多分、アキラ君が無意識にもうあの力は必要ないって思ったから消えたんじゃないかな?使う必要の無い力を何時までも出している必要は無いからね」

 

「無意識に・・・ねぇ。じゃあ意識すれば使えるのか?さっきの」

 

「それはアキラ君次第かな?さっきのは危機的状況に陥ったから本能的に眠っていた力が目覚めたって感じだと思うよ。もしさっきのでアキラ君の力が解放されているなら訓練次第では自由に使えるかもね」

 

 

俺は右手を閉じたり開いたりしながら凝視した。

 

念じながらさっきのブラックホールを出そうとするけど全く反応は無い。

 

 

「ダメだ。全然でない」

 

「・・・先輩、大怪我をしているのですから今はじっとしていてください」

 

 

塔城さんは幼げなその顔を俺に向けて睨む。

 

唯でさえ肩を貸してもらって距離が近かったのに顔をこっちに向けられたら吐息が感じられる程に近くなる。

 

塔城さんは恥ずかしがるような様子は見受けられないけど俺は違う。

 

たぶん・・・今、顔が真っ赤だよ。

 

 

「・・・どうしましたか」

 

「へっ、いや、にゃ、にゃんでもにゃいよ!?」

 

 

か、噛んだ・・・。

 

塔城さんは分かってないようだけど木場のほうはさっきから笑いを堪える様に口元に手を添えてる。

 

うぅ、俺って異性関係でここまで耐性無かったのか・・・。

 

今度、兄ちゃん達と一緒に馬鹿やって鍛えてみるのも手かもしれない。

 

 

 

「さて、この階段を上がれば出口だ。恐らくそこには・・・」

 

「・・・イッセー先輩が居ます。一緒にレイナーレも」

 

 

レイナーレ?

 

外人っぽい名前だけど味方ってわけじゃ無さそうだ。

 

その名前を口にした塔城さんは険しい顔をしてるし木場も何やら臨戦態勢って感じだ。

 

だけど天野の名前が出てこないのは何でだ?

 

天野がこの道をたどっていったなら確実にいると思うんだけどなぁ。

 

取りあえず塔城さんの肩を借りながら三人で階段を上り出口までたどり着く。

 

 

「吹っ飛べ!クソ天使!!」

 

 

兄ちゃんの声と共に俺の視界に入ったのは兄ちゃんに殴られて吹き飛ぶ天野の姿だった。

 

 

「やるじゃん。流石兄ちゃん」

 

 

思わず感嘆の言葉を紡ぐ。

 

しかし次の瞬間、兄ちゃんの左手に着いた紅いガントレットに目を奪われる。

 

ナンダ、アレ。

 

ナンダ、コノ、カンカク。

 

アレハ、アレハ、イッタイナンナンダ。

 

ソウ、アレハ、カツテオレノイチブダッタモノ。

 

オレノ、タマシイノイチブ。

 

フタゴトシテウマレ、リベツシタトキ、オレカラヌキトラレタモノダ。

 

ホシイ、アレガ、ホシイ。

 

 

『ダメだよ、アキラ』

 

 

ダレダ?

 

 

『アレはもうイッセーの物だ。アキラは私から代わりを受け取ったじゃないか』

 

 

オマエハ、ダレダ?

 

 

『全く、いくら記憶を封印されてるからって何時まで私を忘れてるつもりだい?力の一部を引き出せてるんだ。そろそろ封印の力も弱まって思い出してもいいだろうに』

 

 

キオク?フウイン?ナニヲイッテ・・・。

 

 

『まぁ、私が出てこられたってことは封印も既に崩壊が始まってるって事か。けど封印されてる状態じゃやっぱりアレを無意識に求めちまうか。欠けた魂を補うために』

 

 

カケタタマシイ?ナンダ、オマエハナニヲシッテイル?

 

 

『色々さ。アキラが失った魂の事、アキラが紡いだ命の事、アキラが持ってる力の事、アキラが継いだ想いの事、アキラが忘れた記憶の事。私はアキラの知らないアキラを知ってる』

 

 

ダレナンダ、キミハイッタイ、ダレナンダ?

 

 

『唯の鬼さ。まるで夢、そして幻。嘗て人間に恐れられ敬われ疎まれたたった一人の百鬼夜行。私はそんなしがない一人の鬼だよ』

 

 

オニ・・・、ナゼカナツカシイキガスル。

 

 

『お、いい傾向だ。鬼を懐かしむって事は思い出しかけてる事だからね。さて、イッセーのアレをアキラが求めるのは分かるけどそれはダメなんだ。アレを失えばイッセーは死ぬよ』

 

 

ニイチャンガ、シヌ?

 

 

『そう、アレは魂の一部だからね。そんな物を抜き取られれば死ぬのは通りってもんさ。だからアレはダメだ。諦めな』

 

 

デモ、オレハアレガナイト・・・。

 

 

『大丈夫さ。そのために私がいるんだろ?失われた魂の一部。それを補完してるのが私だ。アレを求めない程度まで力を引き戻すくらいはしてやるさ』

 

 

・・・ナンダ、チカラガアフレル。

 

 

『・・・さて、今、アキラが失った力の一部を戻した。これで人と鬼のバランスが崩れて封印の崩壊は一気に進むだろうね。でも、これでアレを求めなくなる程度には魂の欠損は補われたはずだ』

 

 

・・・俺は、一体。

 

 

『そろそろ私のほうも限界が近い。封印を無視して力を戻すなんて力技をしたからね。私は少し眠るよ。次ぎ会うときは私の名前くらい思い出してよ?』

 

 

待って!君は一体・・・!

 

 

『・・・』

 

 

声が聞こえなくなる。

 

何だったんだ、今のは。

 

 

「アキラ君、大丈夫かい?」

 

「あ・・・れ?・・・木場?」

 

「さっきから声をかけても反応しないし・・・心ここに非ずって感じで放心状態だったけど・・・どうかしたのかい?」

 

「・・・いや、なんでもない」

 

 

さっきの声は気になるけど・・・今は兄ちゃんだな。

 

周りを見れば何時の間にいたのかグレモリー先輩と姫島先輩が居た。

 

オカルト研究部勢揃いだ。

 

そして他には天野と眠っているアーシアだけか。

 

グレモリー先輩は意味不明なことを説明口調で話し始めた。

 

聞き取れる単語は『ブーステッド・ギア』とか『10秒ごとに力を倍にする』とか言ってる。

 

一通り離し終えて満足したのかグレモリー先輩はゆっくりと歩きながらこう言った。

 

 

「じゃあ、最後のお勤めをしようかしらね」

 

 

その言葉を聴きガクガクと震えだす天野、一瞬兄ちゃんのほうを見たかと思うと媚びた様な視線を送る。

 

 

「イッセー君、私を助けて!!」

 

 

でも兄ちゃんの天野を見る目は冷え切っていてどう考えても兄ちゃんは天野を許す気は無さそうだった。

 

それに気付かず天野は言葉を続けるけど兄ちゃんはそれを無視してグレモリー先輩にこう言った。

 

 

「部長、頼みます・・・」

 

「・・・私の可愛い下僕に言い寄るな。消し飛べ」

 

 

そして残酷に冷酷にグレモリー先輩の手から放たれた紅い衝撃は天野を飲み込んだ。

 

後には何も残らない、そんな結末だった。

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