思いつくまま徒然雑記   作:デスイーター

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 前回のifルートの続きです。もし気が向いたら『BALDR SKY ifルートX』とでも名付けて連載するかもしれません。その場合、多少手直しして設定も練り直します。


捏造ifルートその2

 神父を撃退した翌日、甲達は甲のプライベートスペースへと集っていた。真の実体がない上に人に聞かれたくない話をする為、此処は打ってつけの場所と言えた。

 「ひとまず、状況を整理しよう…とはいえ、俺と真ちゃんの境遇は既に話した通りだ。だからクリス、まずはお前の話を聞かせてくれ」

 甲は取り敢えず、神父と浅からぬ関係があるクリスに話を振った。今更クリスが神父に寝返る等とは欠片も思っていないが、当面の敵であるグレゴリー神父の親類縁者であるクリスが持つ情報はこれからの助けになるだろうという判断だ。

 そんな甲の思惑を察したのか、クリスは表情を曇らせながらもおずおずと口を開いた。

 「…確かにグレゴリー神父は紛れもなく、私の祖父よ…けど、恐らく期待に沿える程の情報は持っていないわ。私は幼少期、教団の施設でいずれ教団幹部となるべく洗脳に近い教育を受けさせられていた…それは私だけではなく、同じような境遇の女の子達がたくさんいたのを覚えている…けれど、教団での日々はある日唐突に終わりを告げたわ…貴方のお父さん、門倉永二がお爺様を殺した事でね」

 「親父が、神父を殺した、か…確かに、傭兵である親父なら依頼さえ受ければドミニオンと戦ってもおかしくない…けど、あいつは実際に俺達の目の前に現れたぞ? シュミクラム戦闘までした相手が、まさか亡霊だとでも言うつもりか?」

 「私も今だって信じられないわよ…でも、あれは確かにお爺様だった…電子体の偽造が不可能なのは知っているでしょう? どういう理屈か分からないけれど、お爺様は確かに生きていた…これは、覆しようのない事実だわ」

 死んでいた筈の人物が、ある日突然目の前に現れて襲って来た…まるで、B級パニックホラーの映画の世界だ…だが、クリスが嘘をついているとは思えないし、あの神父が幻の類とも思えない…何がなんだか、分からなくなって来た。

 「私、あの人の気配には覚えがあります…久利原先生が発作に苦しんでいた時、あの神父さんとよく似た気配が先生から漂って来たんです」

 「え…?」

 だが、不意に口を挟んで来た真の言葉に思わず硬直する。まさか、此処でその名前が出て来るとは思いもしなかったのだ。

 久利原直樹、アセンブラの開発者で灰色のクリスマス以降はドレクスラー機関と共に行方を晦ましている…甲達の、恩師でもあった人間だ。正直、今でも彼があの惨劇を引き起こしたとは信じ難い…だが、彼のみが知る真実を問い質す為にも、なんとしてでも探し当てると誓った相手だ。彼が、あの神父と関わりがあると真は言ったのだ。

 「先生は、自分が自分でなくなる、といった恐怖に苛まれていました…先生がバルドルに接続したあの日から、先生は徐々におかしくなって行ったんです。その時先生の身体から感じるおぞましい気配が、あの神父の気配とそっくりだったんです」

 「…待ちなさい。今、久利原直樹がバルドルに接続した、と聞こえたのだけど…それは、真実かしら?」

 真の言葉を聞き、クリスは険しい表情で問い質す。正直迷ったが、此処まで来た以上もう腹を割って話す以外の選択肢などない。甲はゆっくりと、口を開いた。

 「…ああ、本当だ。先生はアセンブラを完成させる為、亜季姉が渡したツールを使ってバルドルシステムに接続した。確かに、先生の発作が起きていたのはその件以降みたいだが…」

 「そう、となると…真さんの言葉も、あながち間違ってはいないのかもしれないわ」

 「ちょっと待て、本当にあの神父と久利原先生に何か関係があるって言うのか?」

 クリスの言葉に、甲は思わずそう返した。確かに先生の発作については以前から気になっていたが、だからといってカルト教団の教祖と繋がりがあるなど信じられる話ではない。だが、クリスに冗談を言っている気配はなかった。少なくとも、クリスはある程度本気でそう言っているのだ。

 「逆に聞くけど、貴方の恩師だった久利原直樹はあんな惨劇を引き起こすような性格だったのかしら? 確かに、結果としてあの惨劇は起きてしまった…けれど、貴方が見た久利原直樹という人間は、本当にあんな事を望んでいたと心から思っているのかしら?」

 「それは…」

 そう、行方を晦ましている久利原が疑わしいのは事実だが、甲自身彼を追おうと考えているのは彼の身の潔白を証明したい、という思いも少なからずあるのは確かだ。あの優しかった先生が、あんな惨劇を引き起こしたなんて信じたくはない…少なくとも、甲の知る久利原直樹という人間は、心優しい人格者だったのだから。

 そんな甲の反応で答えを察したのか、クリスは話を再開した。

 「もし本当に人格者だった久利原直樹があの惨劇を引き起こしたのだとしたら、その『原因』に目を向けるべきよ。彼自身が惨劇を望んでいなかったというのなら、そう仕向けた『何者か』がいるのは至極当然の帰結なのではないかしら」

 「何者かって、一体…久利原先生は、脅迫されてあんな事をやったって言うのか?」

 「脅迫、というのは少し違うと思うわ。一番近いのは、憑依…もしくは、洗脳かしら。少なくとも一度、久利原直樹はパンドラの箱を開けている…恐らくその時に、箱の中の破滅の種は彼の中に埋め込まれたのよ」

 パンドラの箱…クリスがそう表現したのは、間違いなくバルドルシステムの事だ。バルドルシステムは統合政府が開発した、無限のライブラリとデバイスを持つ自立成長型推論ネットワークだ。複数台再生産されたもののうちの一つが、清城市のミッド・スパイアに存在する。久利原が接続したのは、このミッド・スパイアのバルドルだ。

 「じゃあ、バルドルに洗脳されたとでも言うのかよ? あれはクオリアのない機械論的AIだぜ? 人を洗脳するような自発性が、バルドルにあるとは思えないが…」

 「…それについては、心当たりがあるわ。ねぇ、貴方…ノインツェーンの死因を知っていて?」

 ノインツェーン、現代でその名を知らない者はまずいないだろう。第二世代(セカンド)被造子(デザイナーズ・チャイルド)の研究の基礎を築いた、稀代のマッドサイエンティスト。数々の発明を行い統合に貢献して来た彼であるが、晩年には非合法な研究が発覚し、バルドルに脳を繋いで自殺したと言われている。

 甲がそんな教養としての知識を話すと、クリスは頷いた。

 「私、お爺様が何を考えていたのかどうしても知りたくて、色々調べていたのよ…そうしたら、お爺様が教団の教主となる以前にノインツェーンと会った事があるらしい事が分かったのよ」

 「なんだって…? じゃあ、神父はノインツェーンの手先だとでも?」

 「恐らく、間違いないわ。手記にはノインツェーンを『神』と呼んで、称える文章がズラリと並んでいたもの…だから、お爺様が信仰する『神』っていうのはソフィアなんて名前じゃなく、ノインツェーンそのものよ。そして、手記にはバルドルに『神の意志』が宿っているという文面があった…つまり、ノインツェーンはバルドルに脳を焼かれた際、バルドルに何かしら細工をした可能性があるのよ。相手は世紀のマッドサイエンティストだもの、多少常識外れの事が出来ても不思議じゃないわ」

 クリスの推測は想像の斜め上をかっとんでいるが、実際に『神父の手記』なんて曰くのありそうなものを見たクリスの言葉を、あまりにも突拍子のない結論だからとただの戯言と切って捨てる事は憚られた…しかも、真もクリスの話を聞いてしきりに頷いており、此処で反論しても碌な結果にはならない。経過はどうあれ二人に手を出してしまった身の上である以上、甲の発言権は一番下である事に変わりはないのだから。

 「信じ難いならそれでもいいわ。お爺様を捕まえて、神経接続子(ニュー・ロジャック)を剥ぎ取れば久利原直樹と同一人物かどうかはすぐに分かるでしょう。あの様子じゃ、近い将来また戦場で顔を会わせるだろうからね」

 「!」

 戦場、という言葉に甲がハッと目を見開いた。その様子を見て、クリスははぁと溜め息を吐いた。

 「あのね、貴方の考えてる事なんて察しはついてるのよ。大方、あの惨劇の真実を知りたいから、ドレクスラー機関を、久利原直樹を追う、とでも考えていたんでしょう? そして、何のコネもない私達が目的を為すには傭兵きになるしかない。だから、どうやって私達を引き離すか頭を悩ませていたんでしょうけれど…違うかしら?」

 「…参ったな、全部お見通しかよ…」

 甲はクリスの鋭い指摘に抵抗を諦め、白旗をあげた。自分達を置いて一人で傭兵になる決意を固めた事を知り、真がジト目で甲を見つめる。

 「甲先輩、私とずっと一緒にいるって言葉は嘘だったんですか?」

 「いや、けど真ちゃんやクリスを危険に晒すワケにはいかないし…」

 「先輩、私が実体に戻れない事を忘れましたか? 私だって、今の状態が単なる脳内チップのバグだとかそんな楽天的な事は考えてません…私はあの日、清城市の病院にいました…なのに私の電子体が消滅してないって事は、誰かが私の実体を病院から運び出したって事です。病院関係者が何処かに実体を移したなら、実体に戻れない状態になる、っていうのは考え辛いです…だから多分、私は攫われたんでしょう」

 真は何処か沈鬱な表情で、そう言い切った。自分の実体が顔も知らない誰かに攫われている…それは、紛れもない恐怖だろう。真の身体は、小刻みに震えている。

 だが、真はその震えを意志の力で抑え込み、続けて口を開いた。

 「実体を攫ったって事は、当然電子体も確保しようとする筈です…だから、何をしたって私には危険が付き纏うんです。だったら、先輩と一緒に戦うのが一番安全です。大丈夫です、先輩…私が強い事は、知っていますよね」

 「…ああ、まさかあの白い機体の正体が真ちゃんだとは思いもしなかったよ…降参だ、真ちゃん。約束通り、何処までも一緒にいてやるからな」

 「はいっ、先輩…っ!」

 真は感極まって甲に抱き着き、ぎゅっと腕に力を込めた。その一部始終を見ていたクリスは鋭い目つきを甲に向け、眉を潜めた。

 「…目の前でイチャつかれるのは、流石にイライラするわ。後で埋め合わせはたっぷりとして貰うから、覚悟しなさい」

 「…あ、ああ…」

 「言質は取ったわよ。それと、私から逃げられると思わない事ね。もし貴方が私を置いていくような事があれば、私との濡れ場を録画した画像をネットにバラまくわ。自分はともかく、私を晒しものにするのは本意じゃないでしょう?」

 妖しく笑うクリスは、あろう事か自分自身を人質にした脅迫を笑顔で仕掛けて来た。冗談では、断じてない…クリスは、本気だ。甲が此処で拒否をするならば、自分の人生を台無しにしかねない行為を平然と実行に移す気でいる…常識が吹っ飛んでいるにも程があるが、こんな事をされて根が善人である甲に抵抗など出来るワケがなかった。

 「…全く、仕方ないな…後で文句を言っても、遅いからな」

 「文句なんて、あるワケないじゃない。それに貴方一人じゃ危なっかしいし、フォローは任せておきなさい。私は、役に立つわよ」

 「ああ、頼りにしてるよ…クリス」

 こうして、甲はクリスと共に傭兵となる事を決めた。前途は多難だが、頼もしい相棒二人に囲まれ、甲は今まで自身を苛んでいた不安が消えていくのを感じていた…

 




 というワケで捏造設定ifルート、第二話です。やっぱこの二人は書いてて楽しいな。真ちゃんも結構自分の意見をしっかり言うから、クリスにも遠慮なく話しかけてるし。
 神父がノインツェーンと会っていた、というのは勿論捏造設定です。正直、オリジナルの神父がどうしてノインツェーンの信奉者となったのか分からなかったので、設定を加えてみました。ノインツェーンのウイルスで神父になるんだからノインツェーンは少なくともオリジナルの神父を何らかの形で知っている筈だと思いましたし。
 教団で教えを受けていた過去があり、グレゴリー神父の孫である為それなりの情報を手にしていたクリスと原作空ルートで「神父が久利原だと9割がた確信していた」と話していた真ちゃんがいるので、神父の正体に一気に迫って貰いました。初期情報が違えば、得られる情報も違うよね、という話です。
 今回は殆ど3人の相談話で終わりました。次話を書くかどうかは未定です。それではまた
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