四神としてのお仕事?いや、仕事がなくて自由にしてます。 作:第三のケモナー
チマチマ書きます…
石段を登った先の目の前には、屋根に雪が積もった神社があった。肆が空から見たときよりも古く、他の参拝客はいないようだ。
「いたって普通に見えるが…何か能力の調子が悪い。」
何故かここだけ肆の能力が制限されているように感じる。具体的に言えば方角がはっきりしておらず、東西南北がバラバラになったり戻ったりしていた。
肆にとっては些細な影響だが、この場所は普通の神社ではないという事が分かった。
そのまま進んでいくとあるものを見つけた。
「賽銭箱…」
何処にでもある…まではいかないが、賽銭箱があった。肆はそれに近づき中のお賽銭の確認をする。昔はこうして神社の整備や食事に使ったものだ。
しかし、
「…あれ?お金が入って無いやん!」
この賽銭箱には秋に枯れて落ちたであろう葉っぱしか入っていなかった。
(とったのか?でも落ち葉くらい掃除すればいいのに…おっと)
博麗神社に用事があった事を思い出し、失礼ながら縁側から入る。さっきまで人がいたのか、こたつが付いたままだった。こたつの上には美味しそうな鍋がガスコンロによってグツグツと煮込まれている。
「…!うまそう」
(まてぃ!落ち着け…ちょっと待って、『こたつ』と『ガスコンロ』!?)
長年見てこなかった電化製品が今ここにあるという疑問。町の雰囲気や風景も現代とはいえないはずなのに、なぜこんなものが?こたつの中を見たが、ちゃんと動いてた。…結構現代に近いのか?
(どうせ紫の事だからここに来る事分かってやったんだろ。)
電化製品を見せびらかして驚かせようとしていたんだろうが、残念だったな。じゃあ火の調節して、こたつに入って、ちょうどお椀と箸があるから頂こうか。
鍋の中にはつみれや椎茸、ネギ、白菜などたくさんの具材が入っている。鶏肉や豚肉は入っていないようだが、とても美味しそうだ。
神社の用事を忘れて食べた。
(豆腐ウメー、椎茸最高。)
出来れば鶏肉が欲しかったが贅沢はいけない。一杯目を食べ終わり二杯目を取ろうとした時、隠れている鶏肉を見つけた。見たところ一つしかないようだが、すぐさま一口食べる。
(身がしかっりしてて美味い、手羽元か?これ…)
…襖が開いた
肆はその方向を見る。
こっちを凝視している女性がいた。髪は黒、赤いリボンを身につけている。一見、巫女に見えるが赤い袴ではなく、スカートになっている。袖が外れて、肌が露出している所があり、胸には黄色いリボンのようなものがある。流石に寒いのか、上に羽織っていた。
「あえ(誰)?」
肆は反射的に質問してしまった。よくよく考えたらこの神社の関係者、例えば巫女とか紫と交流がある人物かもしれない。肆は「紫元気にしてる?」と聞いてみようとした。しかし、少女は「誰?」という質問が逆鱗にふれたのか、それとも鍋を勝手に食べたのがいけないのか、どこから出したか分からないお祓い棒を肆に振りかざしてきた。
「…!」
(危なっ!)
肆はこたつから素早く脱出し、攻撃を避けながら外に出る。…鶏肉をくわえたまま。
人間とは思えないスピードで迫って来るが、肆は体がゲンブであるものの、長年の経験で避けていく。改めて少女を見れば、けっこうな霊力の量と質を兼ね備えている。肆がこのような人を見たのは初めてだった。
お祓い棒の攻撃は意味がないと思ったのか、弾幕らしきものを繰り出し、陰陽玉とお札、針まで出してきた。
(それ…普通に死ぬやつだから!)
弾幕を避ける事はできるが、そのあとに来る少女からの針は完全には避けられない。かすり傷で済むが、肆は少女の姿を見失ってしまう。
(上かッ!)
大きい霊力を頼りに上を向くと、上空から迫って来る少女の姿。
(いや…霊力の質は同じだが、量が違う)
肆はゲンブの能力の一つである「水」を操り、周りの水からあの少女の場所を特定する。水蒸気、雪そして…
(吐息!)
高圧洗浄のように水を数発発射させ、ダミーと本体の少女を狙う。ダミーは消えていき、少女は難なく避けていく。
(簡単に避けていくな…結構集中的に狙っているのだけど)
肆は弾幕での勝負は、あまり経験したことがない。なので、『自機狙い』という簡単な弾幕になってしまった。例え弾がいくら速くても、少しずれただけでも避けられる。
(弾幕じゃあ通用しないか…直接っと!)
近接に持っていこうと肆は地面を蹴って少女へと接近する。地面をえぐっていたため、スピードが若干落ちていたが、それでも速かった。
「っ!?」
少女が弾幕を繰り出すが、肆のパワーでかき消される。パワーと防御に特化している肆にとっては、手加減された弾幕は無いに等しい。
「覚悟!」
肆の拳が少女へと迫ってくる。少女もさすがに避けられず結界をつくる。
(!?それは…まさか4重結界!)
見覚えのある技、まさしく紫が使用していたもの。
「覚悟しなさいっ!」
(しまっ…)
肆は隙を見せてしまい、少女の全力の一発が決まった…そのまま鳥居の所まで飛ばされた。神力で底上げはしてないものの、ゲンブを吹っ飛ばすのは至難の技。余程の霊力がなければ不可能に近い。
(油断した…まさか紫が使っていたものが…)
少し混乱している肆の前に件の少女が飛んできた。
「さーて…私の鍋を勝手に食べた罪は重いわよ。あと、何をしたか分からないけどあんた人間じゃ無いでしょ。どうせ人間だったら許されると思ったのかしら?」
(この巫女…フフ…)
思わず肆はにやけてしまう。
「な…なににやけてるのよ…」
「いや…その割りには手加減された弾幕だったなって…」
肆は気がついていた。あれだけの四重結界を作れたならば、ゲンブでも防ぎようがない弾幕を繰り出せるだけの実力があるということ。
最初は激怒していたが、戦いのでは冷静そのものだった。
「はぁ…ところであんた何者?霊力使う妖怪なんて見たことないわよ。」
「ああ…すまねぇ…紹介が遅れた。おr…私は肆。今は四神のゲンブ…よろしく。」
「四神…?ああ…あの朱雀とかってやつでしょ。…待って妖怪じゃなくて神ってこと?」
肆は頷き、肯定する。
これが幻想郷の巫女と四神の出会いとなった。