魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost   作:hidon

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あらすじ……
 魔法少女否定派団体の攻撃からいろはを庇ったやちよ。
 情報屋の老紳士・徳江龍二から黒装束の集団の話を聞くも、彼女のメンタルは割と限界で……相棒の副部長・都ひなのに、「引退するつもりだ」と零してしまう。

 一方、無事帰宅したいろはだが、両親は置き手紙を遺して行方不明に。
 手紙の指示通りに、自室を調べると、父の手紙と、もう一枚の手紙……いろはは確信する。これはういが書き遺したものだと。
 その内容の意味を調べるべく、再び神浜市へ。
 中央図書館へと向かうと、魔法少女・二葉さなと小説家・阿峡 慎と出会う。
 慎からの指摘を受け、自分が妹『うい』の望みを願いで否定したかもしれないと、 いろはは困惑する。

 一方、秘密結社『マギウスの翼』も動き出していた。
 トップに立つのは、『プロフェッサー・マギウス』と呼ばれる天才科学者の少女。
 彼女の目的とは一体……?


2章 FILE #16~#33 由比鶴乃編 ざっくり解説!

 

 

 

 

FILE #16

 

なさねばならぬと決断して

君が何かをする時

たとえ多くの人々が

それについて違った事を考えようとも

それをするのを見られまいと避けてはならない。

 

もし君のすることが正しく無いならば

その行為そのものを避けた方がいい

だがもし正しければ

正しくないと批難する人々をなんで恐れるか

 

                       ――――エピクテトス『要録』 三十五節より

 

 

『わたしって……●●ってるのかな?』

 

 

 神浜市神浜町参京区。

 駅前のメイン街道が“神浜商店街”と呼ばれていたのも、今や過去の栄光。

 その名は、『保護特区』指定後、発展が目覚ましい中央区の駅前商店街に取られた。

 

 以降、商店街の至る店で閑古鳥が鳴き止まない。

 だが、中華飯店“万々歳”だけは違った。

 魔法少女:由比鶴乃は、店主である父:隼太郎の日和見主義者ぶりに苦労しつつも、店を盛り上げるべく、日夜励んでいた。

 

 彼には大好きな大叔父がいる。

 情報屋の一人であり、先代店主の実弟にして万々歳オーナーそしてハゲ:『雉』こと木次郎だ。

 

 寂しい商店街の中で、以上の三人が切り盛りする万々歳だけが、今日も常連で賑わっていた。

 由比鶴乃の、太陽のような接客によって。

 

 

 

 

FILE #17

 昨日。

 いつもと違ってランチタイムなのに暇な万々歳。

 そこに一本の電話が。

 鶴乃が出ると、友人の魔法少女:朝香美代ことわっち/ですな子さんからである。

 魔女が出たから、“自分が”退治しなきゃ、と言って警察や治安維持部には通報せず、店を飛び出していこうとするが、木次郎に止められる。

 

「七海やちよが、近くに来てるんだな……」

 

 彼の鋭い指摘に観念し、本当の事を白状する鶴乃。

 

「おんじは、忘れたの……あいつらが、何をしたのか」

 

「忘れる訳がねえ」

 

「だったら、これはチャンスなんだよ?」

 

「あいつは農林公園にいるんだって。誰も見てない所で、潰せるよ……!」

 

 鶴乃は、やちよを憎んでいた。それは過去の因縁からだ。

 

「てめぇが今やろうとしてんのは、店の顔に泥を塗る行為だ」

 

「周囲には“治安維持部長が魔女に襲われました!!”って騒いどけばいいよ」

 

 そう言って、鶴乃は大叔父の説得を振り切り、店を飛び出してしまった……。

 

 つまり、以上がFILE #8~9でやちよと戦った経緯である。

 

 

 

 ここで、時間は現在に戻り。

 一方の、いろはとさなは、慎から

 

「神浜では色んな事が起きてるって話だ」

 

「だから二人とも、強く生きろよ」

 

 そうアドバイスを受けるのであった。

 

 

 

 

 

FILE #18

 時は現在。

 由比鶴乃は、自動車教習所にて。

 友人の朝香美代わっち/ですな子さんと、クラスメイト:最上ユカと談笑していた。

 二人が、『環いろは』の事を話題にしていて、鶴乃は興味を抱く。

 

 今まで、鶴乃は七海やちよを『力』で倒すことしか考えて無かった。

 でも、環いろはは『知恵』でやちよを破った。

 自分には無い『何か』を彼女は持っている筈だと、確信したからだ。

  

「……だからって、わっちに付いてくれば会えるとは限りませぬがな……」

 

「わからないでしょ!? 魔法少女と魔法少女は惹かれ合うって良く聞くし!! 知り合いなら尚更だよっ!!」

 

 鶴乃はわっち/ですな子さんにくっつき、いろはの到来を待つ。

 魔法少女であるが故の一般人からの偏見に、お互い愚痴を吐き出しあいながら。

 

 

 

「ところで環さん、心理学者のジークムント・フロイトは知っているかい?」

 

「彼の言葉で、『夢は現実の表出であり、想像の産物ではない』というのがあるんだ」

 

「環さん。夢に勝てよ」

 

「所詮夢は過去だ。辛い思いが混じっているのなら、できるだけ振り向かない方が良い。今、ここにいる君が全てだ。自信を持って、前を向いて歩いていって欲しい」

 

 一方のいろはも、慎からエールを送られて、二人と別れたのであった。

 直後、わっち/ですな子さん&鶴乃ペアとばったり。

 丁度いろはは、わっち/ですな子さんに尋ねたいことがあったのだが……

 

「ふむ、それなら条件がありますな……」

 

「この子の話を聞いてもらいたいのですな」

 

 わっち/ですな子さんに鶴乃を押し付けられの事をお願いされ、

 

「環さん……いや、環師匠(・・)!! お願いが有ります!!」

 

「わたしを、弟子(・・)にして頂けませんかっ!!??」

 

 鶴乃からは、そう懇願されてしまうのであった……。

 

 

 

 

 

FILE #19

 まずは由比鶴乃のことをよく知るべきだと判断したいろは。

 鶴乃に連れられ、チェーンの中華飯店『Taiyan』で話を聞くことに。

 餃子を食べるいろは。美味しい。だが、鶴乃は静かに言う。

 

「ここで出されてる料理はさ……もともとうちで開発したものなんだよ」

 

 鶴乃はまず、自分の店“万々歳”について、いろはに説明する。

 先代店主である祖父:鶏太郎の代の頃は、市内で一番の人気店だった。

 だが、五年前に他界。

 後を継いだ父は、祖父と折り合いが悪く、“味”を継ぐことに消極的。

 店舗運営さえ積極的で無く、このままでは店を畳むしかない。

 

 そこへ日本有数の大企業・サンシャイングループ代表:日秀源道がハイエナの如く現れる。

 

「神浜市の都市化に多大な貢献を果たした、偉大なる実業家……どこのメディアもそう持ち上げてるけどね、実際はそうじゃない」

 

「アイツは……怪物だよ」

 

「当時の神浜市は、国から提案された都市開発を行う為に、最大の資金援助先だったサンシャイングループの提案を全部飲み込んでたんだ」

 

「それが始まりだったんだよ……」

 

「奴らは、神浜市で経営難に陥っている老舗の店に次々と手を付けて、支配していったんだ」

 

 

 

 ※ここでざっくり解説! 万々歳とサンシャイングループの因縁って?

 

日秀源道

  「Taiyanの二号店出したいんで、お宅の店サンシャイングループ(うち)に買収させてー?」

 

鶴乃パパ(店主)

 「え? 自分の店売ったら、こんなにお金出してくれるって? やったー☆」

 

おんじ

 「こらこら! 店も兄貴のレシピもやっちゃダメ!」

 

日秀源道

 「うわこのハゲマジうっざ……! じゃあ、ハゲいない時に店主と交渉しよっと!」

 

 -----

 

日秀源道

 「今日はあのハゲいないな……よし! ねえ店長。買収は諦めるよ。代わりにこんだけお金出してあげるからアナタのパパのレシピちょうだい?」

 

鶴乃パパ

 「いいよ☆☆」

 

ハゲおんじ

 「念のためコピー取っといたのに、それもねえよ……orz」

 

 

 その後、おんじの血の滲む努力と、鶴乃のアイドル性によって、どうにか経営を持ち直した万々歳であったが……

 

「始まったんだよ。苦しくて、思い出すだけでも胸が焼ける様な戦いが、始まったんだ」

 

 

 

 

 

FILE #20

 

 Taiyanの店内テレビには丁度インタビューを受ける日秀源道が映っていた。

 

『私が若い人達に言いたいことは……【経営者にはなるな】、ということでしょうか?』

 

『今の子達には、起業なんて博打はしてほしくないんです。いっぱい勉強して、なるべく自分に合った良い会社……今の言葉で例えるならホワイト起業ですな……そういうのに入って、堅実に働いてもらいたいんですよ』

 

 無邪気に回答するその姿に、鶴乃の感情が掻き乱される……。 

 

 

 一方で、鶴乃は語る。

 かつて、自分達が住む『参京駅前商店街』が行政により『再開発』の危機にあったというのだ。

 

 

 ※ここでざっくり解説! 『再開発事業』って?

 

 『市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図る為』に

 『都市計画法に従って行われる建築物・建築敷地の整備、並びに、公共施設の整備に関する事業』

 

 作中でざっくり例を挙げると……

 

・神浜市神浜町中央区

 「参京区並に、人がいなくて、畑もいっぱいで寂しい田舎町だー!しくしく……」

 

・行政(政府)

 「保護特区に指定したから、魔法少女も人もどんどん集まるよ。だから、人がいっぱいいても困らないように、じゃんじゃん金注ぎ込んで、開発してあげるからね!」

 

・サンシャイングループ

 「うちらも積極的に資金投資! 人材援助するよ!!」

 

 ↓ 8年後……

 

・神浜市神浜町中央区

 「東京都の都心部並の大都会に生まれ変わった!! これで人が集まっても平気だし盛り上がるぞー!」

 

 

 

「それって良いことなんじゃないですか? 都会になれば栄えますし、人が集まってきますし」

 

「そう簡単に言わないでよっ!」

 

 よく分からず言ってしまったいろはに、カッとなる鶴乃。

 すぐに謝ったが、彼女がそこまで怒る理由をいろはは知りたくなった。

 

 

 

 

FILE #21

 

 ※ここでざっくり解説! 魔法少女・『梓みふゆ』って誰?

 

 七海やちよとは元相棒で、元治安維持副部長。つまり、都ひなのの前任者だったよ!

 日秀源道の孫娘。神浜市随一の名門校:水名女学園を主席で卒業。七海やちよに匹敵する美人! つまり、全部恵まれてるよ!

 一年前に、同じチームだった雪野かなえと安名メルの殉職がショックで、退職したよ!

 今は秘密結社で、実働部隊統括責任者をやってるよ! つまり、最高幹部の一人だよ!

 ちなみに表向きは、“行方不明”扱いだよ!

 

 一方。

 秘密結社・『マギウスの翼』にて。

 

 『プロフェッサー・マギウス』と呼ばれる最高幹部の少女に、

 黒羽根の一人でありながら、“トップシークレット・エージェント”でもある、

 『匿名希望』がいろはの両親を捕らえたことを報告。

 

 『マギウス』は褒美として、14名の黒羽根達を与える。

 それは、匿名希望の()()()()()()操れる、“特別製”だという……。

 

 

「およそ人事には潮時というものがある」

 

「上げ潮に乗れば行き着くは幸運の港、あえて乗り損ねれば人生のその航路、浅瀬と悲惨に身動きもならない」

 

「我々が今浮かぶのは大いなる満潮だ。流れに逆らわず流れを捉えよう、せっかくの積荷を失ってはならぬ」

 

 そして、匿名希望が去った後。

 『マギウス』は、シェイクスピアの悲劇・『ジュリアス・シーザー』の一部を引用し、

 頭上の“不気味に蠢く巨大な異物”を見上げて、嗤うのだった。

 

 

 

 

FILE #22

 

 ※ここでざっくり解説! 鶴乃の大叔父・『由比木次郎』って誰?

 

 万々歳のオーナーだよ!

 鶴乃が尊敬している人で、「おんじ」って呼ばれてるよ!

 友人からは「雉さん」ってよばれてるよ!

 元刑事(市警察署刑事課巡査部長)で年齢は68歳。典型的なツンデレガンコ親父! でも交友関係は広いよ

 情報屋『雉』としての顔も持ってるよ!

 ハゲ

 

 二年前。

 鶴乃は地元の鉄工所経営者・織田との話し合いで、参京区が再開発されることを知る。

 

 

・事業名:参京駅北口地区市街地再開発事業

 

・都市計画決定の告示:2018年5月15日(つまり2年後)

 

・総責任者:神浜市市長・夕霧青佐

 

・事業協力会社:株式会社Divine Light of CITY & TOYAMA不動産株式会社

 (どちらもサンシャイングループの系列企業・代表者は日秀源道の親族)

 

 

「……本地区は、狭隘(きょうあい)な道路が多く老朽建物が密集しているエリアです。建物の不燃・耐震化による防災性を向上させ、商業の集積による更なる駅前のにぎわい、区の広域行政拠点にふさわしいまちづくりを目指し、住民が集える憩いの広場、交通広場による利便性の向上を予定しております……」

 

 これは詭弁。

 実態は、サンシャイングループの産業支配の一環で、

 地元が、連中の“拠点作り”に利用されると看破した鶴乃。

 

「つきましては、当該の地域にお住まいの皆様には……住宅を立ち退いて頂くよう、要求させて頂きます…………っ!?」

 

 商店街のうち、東側と南側が対象であった。

 

 

 商店街を回る鶴乃。

 幼馴染の友人・内海理恵の店も、経営が苦しくて閉店するという。

 他の友人たちの店も同じだった。

 また、若者離れによる跡継ぎ問題も深刻化していた。

 

 原因として参京区は、時代を省みなかった。

 今は地価グローバル社会なのだ。

 鶴乃は時が止まった商店街に住んでいるせいで、この時代感覚が養われていなかった。

 

 ならばと、望みを“再開発”に賭ける鶴乃。

 中央区ばりの都会に生まれ変われば、また活気を取り戻せるのではないか……!?

 そう思うのだった。

 

 

 

 

FILE #23

 

 ※ここでざっくり解説! 中華飯店・『万々歳』ってどんな店?

 

 神浜市神浜町参京区駅前商店街にあるお店で、鶴乃の実家だよ!

 創業者は鶴乃の曽祖父、由比雀七だよ!

 日本軍人の時に、『黄河決壊事件』で被災した中国料理人から、技術を教わり、日本で店を開いたのがルーツだよ!

 

 閉店予定の肉屋・理恵の店。

 人気のコロッケとカツサンドを地元から失くすのは惜しい。

 だから、作り方を教えて、と頼む鶴乃だが、断られてしまう。

 

 理恵は「万々歳があるからこれ以上背負わせたくない」という気遣いだが、

 逆に鶴乃に『自分には何もできない』という無念を与える結果となった。

 

 無気力な鶴乃。

 そこで、彼の母方の祖母・津和吹美江(よしえ)が現れる。

 木次郎が去った後、入れ替わりで万々歳に居候してきたのだ。

 セレブじみた格好、連日の外出に豪遊……

 質素倹約を家訓とする由比家の中では異端者そのもので、鶴乃は辟易する。

 

 とはいえ、元々、大金を持っていた訳でもない。

 父親の口座から引き落とした様子もない。

 

 では、お金はどこから……?

 

 しかし、祖母を問い詰める余裕も無い鶴乃は、

 ただ日々迫っていく再開発の事に頭を悩ませるのだった……。

 

 

 

 

 

FILE #24

 

 再開発事業の説明会の日。

 「参京区地域センター」へと足を運ぶ鶴乃。

 そこには、多くの参京区民たちの姿もあり、顔なじみの老店主たちも居た。

 

 開発事業主である株式会社『Divine Light of CITY』代表・梓 つむぎが登壇し、説明を始める。

 

 ※ここでざっくり解説! 梓つむぎって誰?

 

 梓みふゆの母親だよ!

 サンシャイングループ代表・日秀源道の5人兄妹の3番目(長女)だよ!

 神浜市の大手の大企業、TOYAMA不動産の若社長・梓 康弘の嫁だよ!

 結婚と同時にTOYAMA不動産はサンシャイングループの傘下に入ったよ!

 ↑こんな訳で、サンシャイングループの関東支配の橋頭堡とする為の政略結婚、とか噂されてるよ!

 

 

 ※ここでざっくり解説! 再開発って何をどうするの?

 

 ●その壱

 

 参京区の北部にある大工場跡地(35万㎡)に、

 屋外型リゾート付きテーマパーク『キレーションランド』を造るよ!

 

 ●その弐

 

 複合商業施設・サンライズスクエアモールを立てるよ。

 場所は参京駅前商店街の東側と南側。

 だから、元々そこにあった商店はこぞって立ち退いてね!

 

 あ、心配しなくていいよ!

 ちゃんと補償は出すし、『迷惑料』も超高額で上乗せするよ!

 立ち退いてくれた店は、モール一階に新しいお店出していいから!

 出店準備金もぜ~んぶこっちが負担してあげる!

 昭和の雰囲気の商店街より、新しいモールに出した方が客いっぱい来てくれるでしょ?

 

 やったね!

 

 

 

 

FILE #25

 

『サンシャイングループなら、可能です』

 

 つむぎはその一言で押し切った。

 サンシャイングループの力は強大だと、皆知っている。

 立ち向かえる者は、参京区にいなかった。

 

 しかし、鶴乃や、一部の商店街店舗経営者は危惧する。

 

 

「対立が、起きる。商店街の皆で……」

 

 

 ここでざっくり解説!

 ショッピングモールが建った場合、参京商店街に起きる『3つの問題』とは?

 

 ●その1

 

 (例)

・店主A

 「俺の店、モール内で、新しく綺麗に作り変えたよ! サンシャイングループ様様っ!」

 

・サンシャイングループ

 (バカが……“俺の腹の中で店開いた”ってことは、生かすも殺すもこっちの自由なんだよ!)

 

 ↓(数か月後)

 

・店主A

 「せっかく良い店できたのに、商品が売れない……畳むしかない……」

 

・サンシャイングループ

 「じゃあ閉店したらそこ、ウチのチェーン(orフランチャイズ)店にするから。君店長(orオーナー)で雇ってあげるよ? 大企業のバックができて、安心安泰だね!」

 

 

 つまり、売上が悪ければ、

 (かつて万々歳を、『Taiyan』二号店にしようとしたのと同じく)

 甘言を用いて近づき、自社のチェーン店に差し替える!!

 

 

 ●その弐

 

・サンシャイングループ

 「立ち退いてくれたり、モール内に新規店舗開設してくれる人には、オイシイ補償い~っぱい出すよ!」

 

・商店街:東&南側・商店経営者の皆様(年齢・70~85歳ぐらい。跡継ぎ無し)

 「マジか! よっしゃ! これでしばらく懐がぬくいぜ!!」

 

・サンシャイングループ

 (モール出来上がるまで『6年』かかるけどな! その間に皆様、介護施設入居とか、入院とか、急病で亡くなったりとかで店舗経営どころじゃないと思うけどな!! まあ精々お楽しみに!!) 

 

 

 商店街の誰もが経営が苦しい。

 目先に“高価なお宝”があれば真っ先に飛びつきたい心理を利用する。

 つまり、『建設中に加盟する店舗の経営者が亡くなってしまった』ら、

 自社のチェーン店を、代わりに入れるだけ!!

 

 

 ●その参

 

・商店街:西&北側・商店経営者

 「今までみんなで力を合わせてきたのに……! 大企業に泣きついて西&北を見捨てた裏切り者!」

 

・商店街:東&南側・商店経営者

 「いやいや、大企業の恩恵が無かったら、経営維持できないって!」

 

・商店街:西&北側・商店経営者

 「それがズルいんだって!」

 「ねえ、サンシャイングループさんさあ、俺たちも経営厳しいの! あやかりたいの!」

 

・サンシャイングループ

 「はいはい、わかりました~。 じゃあ、モール増築するから。加盟してくれたら、そこで新規店舗出していいよ~!」

 

・商店街:西&北側・商店経営者

 「よっしゃ! 話分かってる~!!」

 

・サンシャイングループ

 (しめしめ……。これで参京商店街は全部、“俺の腹の中”だぞ……!)

 

 

 つまり、

 

・新規ショッピングモール建設 = 神浜市内外から大勢の客が来る。

・結果、『東&南側』、『西&北側』で“経営格差”が起きて、分裂が発生。

・参京商店街同士で争い合う。

・サンシャイングループがそこで介入、仲裁案を掲示。

・西&北側は剣を鞘に納めて、首を縦に振る。

・東&南側に続き、西&北側もモールに加盟。

・サンシャイングループ、参京商店街、完全支配完了。

 

 

 

「そんなことで、本当に、参京商店街が……由比さんの地元が救われるんですか?」

 

「……わからない。だって開発は、行われなかった(・・・・・・・)んだから」

 

 現在。

 いろはの疑問に、鶴乃はそう答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

FILE #26

 

 一カ月後。

 サンシャイングループは参京区民の説得に回り続けた。

 結果、元々8割いた反対派は、今は3割まで減少。

 駅前商店街:東&南側はほぼ全員が賛成。

 残るは、『なかやま陶器店』中山三郎と、定食屋『いなほ』川野ケイ子くらいだが、時間の問題であった。

 

 一方、鶴乃は失意のあまり『機械』を続けていた。

 万々歳の手伝いだけで精一杯の毎日で、再開発や、祖母の散財に気を回す余裕も無かった。

 

 ふいに、おんじのことが気になる鶴乃。

 

 祖父は急死した。もしかしたらいつか彼も―――!?

 

 迷いを振り切り、亡き祖父の部屋を掃除する。

 木彫りの棚から、『千両箱』を見つける。

 それには遺産であり、由比家の家宝が眠っているはずだ。

 当然、鍵が掛かっている……筈だった。

 しかし、鍵はかかっておらず、しかも中身は“空”であった。

 

 呼吸が荒くなり、酸欠状態に陥る鶴乃。

 必死に祖父の部屋を探すと、一枚の『領収書』を見つける。

 

 

 そして、鶴乃は独り、自室に籠り震えていた。

 領収書に書かれていた名前には、“祖母”と“母”の名前があった。

 二人に激しい“憎悪”を抱いた事を、激しく自己嫌悪する鶴乃。

 

『おう、俺だ。どうした』

 

「たすけて、おんじ……っ!」

 

 鶴乃は、電話で彼に助けを求める。

 彼は即答。

 

『わかった。すぐ行く』

 

 

 

 

FILE #27

 

 ――――あいつは今、泣いている(・・・・・)

 

 通話先の声で理解した。

 一瞬で酔いが冷めて、万々歳へ駆けるおんじ。

 

 ――――おかしい。

 ここには大人が三人もいるはずだ。何をやっているんだ。

 

 兄(鶴乃の祖父)がいたころより、

 明らかに異様な雰囲気と化している万々歳に、強烈な違和感を覚えるおんじ。

 家に上がり、甥(鶴乃の父)に事情を問うも、

 

「昨日学校で何かあったんかなぁ~?」

 

 要領を得ない答えが返って、おんじは呆れ返る。

 そして、2階に上がると、兄の書斎にうずくまる黒い人影を発見。

 それが鶴乃だと気づき、おんじは彼女を抱きしめる。

 

「よく頑張ったな」

 

「ずっと我慢してたんだな。褒めてほしかったんだな」

 

「わかった。お前はよくやった」

 

「後は俺に任せろ」

 

「全部引き継ぐ。だからお前はもう何もするな。休め」

 

 絶対の決意を込めてそう伝えると。

 鶴乃の顔に光が差し、笑顔が戻るのだった。

 

 

 そして、鶴乃の両親と祖母。

 大の大人が三人もいながら、誰も鶴乃の様子に気づかない。

 気持ちを何も分かろうとしない姿に、おんじはキレる。

 

 ――――間違い無い。あいつを異常に染めたのは、こいつらが異常だったからだ。

 

「大人が雁首揃えて一体何をしてやがるんだあああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」

 

 

 

 

FILE #28

 

 見苦しい言い訳を続け、責任逃れしようとする鶴乃の両親。

 だが、おんじはそうはさせまいと“証拠”を突き付ける。

 

 それは鶴乃が兄の書斎で見つけた、『領収書』だ。

 

 

・購入物:ケイマン(ポルシェの高級モデル)

 

・金額:7,000,000¥ー

 

・購入者:由比紀子(鶴乃母)と、津和吹美江(鶴乃祖母)

 

 

 二人は、兄の部屋の千両箱の中から、

 遺産となる“家宝”を見つけ、勝手にネットオークションへ出品。

 1000万の額で購入されると、そのお金で高級車を予約したのだった。 

 

 幸運にも、家宝はまだ購入者に送られておらず、

 ネットオークションもキャンセルしたため、事なきを得た。

 

 だが、おんじが許すはずも無く、大鉈が振り下ろされる。

 

「ウチじゃあ、働かざるもの喰うべからずだ」

 

「人んちに転がり込んで遊び呆けていると思えば遺品食いつぶしやがって。とんだ寄生虫だな、あんたは」

 

 まず、万々歳一番の“癌”である、津和吹美江を永久追放。

 

「そもそもてめえが家主としてしっかりしてねえからこんなことになったんだろうが!!」

 

「これからは家の事も店の経営も俺が仕切らせてもらう」

 

 そして、なおも妻と義母を庇う、不甲斐ない甥を激しく叱責。

 おんじは『万々歳のオーナー』に就任し、由比家の指揮権を握るのであった。

 

 

 ※ここでざっくり解説! 全ての元凶は『鶴乃パパ』!?

 

 家宝が入ってた、千両箱の鍵の場所を知ってるのは、鶴乃と鶴乃パパだけ!

 鶴乃パパは、妻と義母に教えちゃったよ!

 

 実は父親への復讐だったんだ!

 “平凡”な鶴乃パパは幼い頃から、奇才な鶴乃ジジと比較されてきたせいで、彼を恨んでいたんだよ!

 しかも、鶴乃が鶴乃パパより、鶴乃ジジに懐いちゃったせいで、憎しみが一層深まったよ!

 

隼太郎

 「親父は死んだ! これで店は俺のものだ! この際だから、親父が大事にしているものは、みんな消えてなくなっちまえ!!」

 

 

 結果的に、鶴乃を傷つけてしまったことを、猛省する隼太郎。

 そして、おんじは吐露。

 自分も平凡で、優秀だった兄に“恨み”を抱いていたことを伝える。

 実は彼も、甥と全く同じ気持ちだったのだ。

 そして、兄が、隼太郎を本当は愛していたことを伝え、二人は和解する。

 

 こうして、万々歳は再スタートを切ったのであった。

 

 

 一方。

 いろはもまた、鶴乃の事情を深く知ったことで、仲良くなりたいと願うのであった。

 

 

 

 

 

FILE #29

 

 鶴乃と友達になったいろは。

 妹を探してる、というと、協力してあげる、と鶴乃はいう。

 しかし、

 

「由比さん、ご家庭の事で大変なのに……協力して頂くのは悪いですよ」

 

「気にしない気にしない! だってもうウチには“厄介な人”は、いないから」

 

 鶴乃ママと、祖母の身に何かが起きたのは明白だった。

 

 

 話は再び過去に。

 商店街は再び慌ただしくなっていた。

 七海やちよが、お忍びで参京区に来た、というのだ。

 

 このタイミングで参京商店街に来た。

 わざわざ反対派の者の店に。

 十中八九再開発の交渉に違いない。

 

 しかし、

 政治に魔法少女が参加、協力する権利は、法律上、認められていない。

 それに、七海やちよは同じ神浜町民(中央区)。

 小さい頃、よく商店街に遊びに来ていた姿を知る老店主達も多い。

 今回の“お忍び”も、単にそれではないのか……?

 

 一方で、懸念があった。

 やちよの相棒の『梓みふゆ』の事だ。

 サンシャイングループ代表の孫娘。

 両親は共に、再開発事業主の代表。

 そして昔、両親が亡くなったやちよの未成年後見人を買って出たのが、みふゆの母のつむぎだ。

 つまり、やちよは最初から、行政側の人間……?

 

 そして、みふゆの魔法は『幻覚』だ。

 ということは、未だ反発する一部の商店経営者達の首を、“縦に振らせる”ために、

 行政は『魔法少女』達を派遣した、ということに……?

 

 いずれも確信は得ない。

 だが、疑念は深まる一方だ。

 そこで、反対派の『なかやま陶器店』中山三郎がぽつりと零す。

 

「お鶴ちゃんが、魔法少女(・・・・)だったらなあ……」

 

 途端、周囲から非難を浴びる中山。

 しかし、鶴乃は、それこそが、

 やちよとみふゆに抗う“唯一の方法”だと気づく。

 

 

「そろそろ●●かねえ……」

 

 その様子を、冷静に眺めていた川野も、

 不可思議な事をぽつりと零すのだった。

 

 

 夜。

 鶴乃は、キュゥべえが自分の下へ来ることを祈る。

 しかし、どれだけ強く祈っても、キュゥべえは現れなかった。

 

 

 

 

FILE #30

 

 

 立ち退き反対を貫いていた定食屋『いなほ』の川野ケイ子が、

 再開発に賛成。

 七海やちよの説得によるものだという。

 

 川野のもとへ飛び込む鶴乃。

 既に引っ越しの準備を終えていた。

 息子は後を継がず、年齢的に経営継続は困難、やちよと話合ってふんぎりがついた、と川野はいう。

 

「古い物はいつか無くなり、新しいものに生まれ変わるもんなんだよ」

 

「そうして時代は変わっていくのさ。あたしらの世代のモンがいつまでも土地にしがみついて、若者に迷惑掛けてちゃいけないよ。まあ、中山のジジイ達はまだ根を張ってたいようだけどね。いい加減枯れてる事に気付くべきなのさ」

 

 食い下がる鶴乃をそう説得し、

 荷物を載せた軽トラックで、参京区を後にするのだった。

 

 

 そして、同じく徹底抗戦の姿勢だった『なかやま陶器店』中山三郎もまた、再開発に賛成。

 彼の意思決定にも、やはり七海やちよが絡んでいたのだという。

 

 鶴乃は激昂。

 地元の公園で、梓みふゆと談笑し合うやちよを発見し、飛び掛かる。

 が、みふゆに取り押さえられてしまう。

 

「貴女のお怒りはご尤もです。しかし、これは市が決定されたことです」

 

「これは貴方がた商店街に住まわれる皆様の救済処置でもあるのです。要求を受け入れて下されば、いずれ報われます」

 

 冷徹に告げるみふゆの言葉が、鶴乃の神経を逆撫でする。

 

「こちらに非礼があるのは、受け入れます。ですが、今は耐えていただきたい」

 

「耐える? 耐えろって何? 自分達は何も失わない癖に……わたし達にはそうしろって?」

 

「鬼ッ!! 悪魔ッ!! 人でなしッ!!」

 

「女神とか呼ばれていい気になってるけど本当は一人の人間の想いにすら寄り添えないっ!! 大企業の言いなりになってわたし達を脅かすお前らは屑だッ!!」

 

 

 ――――魔法少女、地獄に堕ちろ。

 

 

 この言葉に、みふゆも眉間に皺を寄せる。

 だが、やちよの方は冷静で、鶴乃の怒りを真摯に受け止めた様子だった。

 

「これは、私個人の連絡先です」

 

「何かあれば、ご連絡ください。私はいつでも、貴方の言葉を待っています」

 

 そう鶴乃に名刺を渡し、みふゆを伴い、去っていくのだった。

 

 

 

 

FILE #31

 

「君が身を置く状況はあまりにも悪すぎる。不運に恵まれていると言っていいぐらいだ。どうだい? いっそ逆にしてみる、というのは?」

 

「逆……?」

 

「“幸運”を願ってみる、ということさ」

 

「そうだね。それがいいよ」

 

「決まりだね。では、君の口から僕に告げるといい」

 

「わたしは――――」

 

 “幸運が欲しい”

 

 

 鶴乃は遂にキュゥべえと邂逅。

 念願の魔法少女となる。ちなみに、家族には秘密だ。

 

 ……しかし、変わらない日々を過ごしていた。

 幸運がやってくる気配も無い。

 そこで、わっち/ですな子さんが万々歳に訪れる。彼女とはこれが初対面。

 なぜか手相を占ってもらったところ、

 

「“三奇紋”ですな」

 

「運命線と太陽線と財運線が集まり1本の線になっている手相のことですな。お喜びくだされお嬢さん。今は不幸でも、近々大金が懐に舞い込んくるのですな」

 

 そう言われて宝くじを買いに行く鶴乃。

 すると、びっくり仰天の出来事が!

 

 『一等、8億円』が当たったのである!

 

 気絶する程ショックを受けたおんじ。

 しかし、その宝くじを購入したのが鶴乃、というのが引っかかった。

 もしかしたら、魔法少女になってしまったのではないか……?

 

 

 後日、由比家でまた、騒動が。

 なんと、鶴乃ママ・紀子が懲りずに家宝を質に入れようとしたのである。

 これにおんじは激昂し、永久追放処分を下す。

 

「そんなに金が欲しいのか!! だったらくれてやるっ!!」

 

「8億だッ!! そこに8億が入ってる!! それを持って何処へでも行っちまえっ!! その代わりもう二度と万々歳の暖簾を潜るなッ!!!」

 

 そして、鶴乃もまた、

 

「どっか行ってよ!!」

 

 と嫌悪感を顕わに、母を突き飛ばすのであった。

 結局、鶴乃ママは、娘よりも、8億入りの銀行のカードを選んだのであった……。

 

 

 後日、2016年の7月25日。

 鶴乃ママは祖母の美江と共に豪華客船で海外旅行。

 「世界中を旅して、自分を見つめ直そうと思う」、そう鶴乃に手紙を残して……。

 

 しかし、大事件が発生。

 二人が搭乗していた豪華客船に、『過激派武装集団』(テロ)が潜伏していたのだ。

 

 

「運が悪かったんだと思う。一番に人質にされて、殺されちゃった

 

 

 だが、鶴乃は悲しまなかった。

 むしろ逆の感情。

 自然と、笑った――つまり、喜んでしまった。家族の“死”を。

 

 それが、自分の願いで得た“幸運”の結果なのだと、思い知る。

 

 

 

 

FILE #32

 

『私達は我らの宗教を守り、同胞を守り、故郷に勝利を捧げんが為に、これを遂行した。不浄と悪徳に満ちた異教徒共の撲滅を願った時、神は我らに祝福を賜りなさった。私は神に選ばれた純潔なる聖女である。私達はこの力を以てこの船に蔓延る不浄な不信仰者共を殲滅、及び服従させるものとする』

 

 

 母と祖母はテロリストの少女によって殺され、

 大勢の人たちも巻き添えとなった。

 その事実に“笑って”、“喜んで”しまった鶴乃は激しく自己嫌悪。

 だが、キュゥべえは、冷淡にこう告げるのだった。

 

『君の因果は強い。だから、“幸運”はこれで終わりじゃない』

 

『これ以上誰かが不幸になったとしても……気に病まないことだね。君には全く関係無いのだから。寧ろ、降ってきた幸運を、喜べばいい』

 

 

 そして鶴乃に、更なる“幸運”が舞い降りた。

 結果として、鶴乃の“幸運”の力は、

 

  ●鶴乃の家族

  ●再開発事業者

  ●七海やちよのチーム

 

 鶴乃に“不幸”を与えていたとされる、3つの陣営に大打撃を与える結果となった。

 由比家を破壊する、母と祖母は死んだ。

 

 再開発計画は、実質的指導者のみふゆの両親(つむぎ、康弘)が魔女に殺され、

 総責任者:神浜市長の決断で、無期限凍結。

 

 七海やちよと梓みふゆも、チームメンバーの雪野かなえと安名メルが上記の魔女と相討ちで死亡。

 心的ダメージを深く負ったみふゆは辞職し、行方不明に。

 やちよも同様で、しばらく活動を自粛した。

 

 これにて、綺麗さっぱり。

 参京区駅前商店街に“敵”はいなくなった。

 しかし、自分の“幸運”によって、誰かに不幸が落ち、死んでいく。

 その事実に、鶴乃の心は歪んでしまう。

 

 

 七海やちよは健在だ。

 日秀源道も健在だ。

 再開発計画も、いつまた再開されるのか分からない。

 

 だから、鶴乃は“最強”になりたいと願った。

 守るために。 

 そして、強さを証明するために、魔法少女を暴力で痛めつけるのだった。

 

 

 県外の地方を飛び回り、仮面で顔を隠し、『決闘少女』を名乗り、

 多くの魔法少女相手に“最強”を証明していく鶴乃。

 もはや通り魔そのものであった。

 しかし、

 

「あなたが“最強”だなんて、私は認めない」

 

 一人の幼い魔法少女が、鶴乃の前に立ちふさがる。

 

「そんなの、強いって言えるの? 人を傷つけて調子に乗ってるのって、カッコ悪いよ。そんなのただの不良じゃん」

 

 少女は怯える様子も無く、鶴乃の地雷を踏み抜いた。

 カッとなって飛び乗り、少女の身体を滅多打ちにする鶴乃。

 

「そうやって、殴れば、認めて貰えるって思ってるの?」

 

「あなた、只のバカだよ!!」

 

 

 

「バカ野郎!!」

 

 瞬間、鶴乃は小さい頃。

 おんじに、“全く同じ理由”で、怒られた事を思い出したのだった。

 

 

 

 

「わたしが“最強”なんだあああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

 トラウマを振り切るように、鶴乃は少女の顔面をひたすら殴り、破壊していく。

 だが、そこで、もう一人の魔法少女が飛び掛かる!

 彼女は少女の妹であった。

 ボロボロの姉を庇い、鶴乃に憎悪の瞳を向ける。

 

「お前なんかよりおねえちゃんの方がよっぽど強いよ!! “最強”だよ!! おまえなんかちっとも強くない!! ただの犯罪者だよ!!」

 

「鬼、悪魔、人でなし」

 

 

 地獄に堕ちろ―――――!!

 

 

 かつて、自分が七海やちよに言った事と、“全く同じ言葉”を向けられて、

 鶴乃は怯え、足が竦んでしまう。

 

 

「違う……わたしは……、ただ、みんなを守りたいから……力が欲しかった、だけで……」

 

「そんなものの、為に、おねえちゃんを、殺そうとした(・・・・・・)の……っ!?」

 

 そこで鶴乃は気づく。

 今の自分が、母親と祖母を殺した、あのテロリストの少女と変わらない、ということに。

 『守る為』、その理由さえ付ければ、何をしてもいいんだ、と考えていたことに。

 

 鶴乃は慟哭。

 まるで獣のように泣き喚いた。

 

 

 

「いろはちゃんと話してて、なんとなく気づいたの。あの時、わたしが求めていたのは、多分……“力”なんかじゃなかった」

 

「わたしは……弱いままの自分を、消し去りたかった」

 

 だが、現在の鶴乃は、過去を振り返ることで、本当の理由に気づくのだった。

 そして、いろはに問いかける。

 

 

 ――――ねえ、いろはちゃん。

 

 ――――わたしって、くるってるのかな? 

 

 

 

 

FILE #32

 

「由比さんは、幸せになるべきだと思うんです」

 

 いろはは、鶴乃の過去を知っても、嫌悪も否定もしなかった。

 鶴乃としっかり向き合って、はっきりとそう言う。

 しかし、尚も自己嫌悪をする鶴乃に、

 

「由比さんは、本当にそれでいいんですか!?」

 

「自分勝手って言いましたよね? だったら、今まで自分をちゃんと考えた事が一度だって有るんですか? 私はそう思えない。由比さん、周りのことを気にしてばっかりで、自分の事は二の次にしてる……!」

 

「人を傷つけたのは間違ってますし、誰かを恨むことだって、きっと違ってると思うんです。でも、由比さんっ!」

 

「自分が間違ってるって分かってるのに、誰にも相談できないから治し方もわからなくて、結局……気持ちにも余裕が無くなって、間違ったまま突っ走るしかなくって……それで由比さんの欲しいものは手に入るんですか!?」

 

 いろはの言葉は、鶴乃の心に深く突き刺さるのだった。

 そして、いろはは、出会った時の鶴乃を思い出す。

 自分の弟子になりたい、と言った笑顔は、眩しかった。

 

「あれが本当の由比さんだって、今なら思えるんです! だから……由比さんが本当に取り戻したかったもの、なんとなく分かるんです」

 

「本当は、誰かを頼りたかったんですよね? やちよさんを倒したかったんじゃない……。今の自分を分かって貰って……元の、明るい自分に戻してほしかったんですよね?」

 

 それでも、鶴乃の気持ちは晴れない。

 そこで、いろはは、小説家:阿峡 慎からの応援を思い出し、言葉を続ける。

 

「私にとっても、ここにいる由比さんが全てなんです」

 

「過去を振り向くな、なんて言いませんし、言える資格なんてありません。だけど、辛い物がある過去に、ずっと縋りついたままで居て欲しくないんです」

 

 そしてもう一つ、思い出す。

 七海やちよの言葉。

 『治安維持部はどんな魔法少女も、見捨てない』、と。

 不器用だが、やちよは人を良く見て、人の為に動ける人だと、鶴乃に伝える。

 そして、自分が鶴乃とやちよの架け橋になる、と伝えるのだった。

 

「だから由比さん。安心してください」

 

 ようやく安堵した鶴乃の顔に、笑顔が戻る。

 そして……

 

「これからもご指導、ご鞭撻、よろしくお願いします!! 環師匠!!」

 

「ええ!? そ、そこまでは……ちょっと!! や、やめてよ由比さ~~~んっ!!?

 

「あっはっはっはっはっはっはっは!!!!」

 

 鶴乃は、本当の意味で。

 心地よさそうに、心から笑ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まとめながら、振り返ってみると色々思い出深い由比鶴乃編。
やはり、プロットはちゃんと作らないとダメ。

あと、全17話・総83000字を15000字にどうにか収めた。
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