魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost   作:hidon

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あらすじ……
 突然現れた魔法少女・由比鶴乃に弟子入りを志願されてしまった環いろはは、
 ひとまず、彼女の事情を聞くことに。

 神浜町参京区出身である彼女は、地元の駅前商店街が再開発事業の対象になっていることに、
 悩んでいた。
 事業関係者は、サンシャイングループ傘下の企業。
 開発工事が行われてしまえば、皆で築き上げた商店街は、サンシャイングループの手中に落ちてしまう……。

 それを危惧した鶴乃は、反対派の者達を集めて奔走するものの、ことごとく空回り。
 加えて、由比家では、居候の祖母と、母の散財や、
 万々歳の経営にあまりやる気を見せず、娘への関心さえ薄い父へのストレスで、
 精神的に追い詰められてしまう。
 尊敬する大叔父・由比木次郎に助けを求めるほどに……。

 だが、助けに来てくれた木次郎は両親を叱責し、祖母を由比家から追放。
 そして、彼が万々歳のオーナーとして由比家の実権を握ったことで、
 家庭内の問題は、どうにか治まりかけた。

 だが、再開発事業の件は、商店街内で着実に話が進んでいく……。
 焦る鶴乃の前に、偶然キュゥべえが現れる。
 鶴乃は彼と契約し、願いを叶えてしまう。

 『幸福が欲しい』と―――。

 だが、その効力は凄かった。
 宝くじで一等『8億円』を当てただけではなかった。

 祖父の遺産を食い荒らし、豪遊していた祖母と母。
 再開発関連事業のトップである梓つむぎと梓 康弘。(みふゆの両親)
 再開発事業に密かに協力していた七海やちよと梓みふゆの仲間である、雪野かなえと、安名メル……。

 自分に不幸を与えたとされる者達が次々と“不幸”に遭い、死んでいく。
 まるで、鶴乃に、幸福を捧げるための、“生贄”に選ばれたかのように。
 その現実を目の当たりした鶴乃の心は、歪んでしまう……。

 みんなを守る為に、『最強』になりたい――――。

 そんな、魔法少女としての純粋な目標も、歪んでしまうのだった。
 魔法少女となった鶴乃は素性を隠して、『決闘少女』と名乗ると、
 地方を回って、魔法少女達に暴力を働き、次々と打ちのめしていく。
 自分の強さを証明するために……。

 だがそれは、八つ当たりで『通り魔』をする犯罪者と同じだった。
 我に返ったころには、自分より幼い少女を殺す寸前であった。

 過ちを悔やんでも悔やみきれない鶴乃。
 だが、話を聞いたいろはは彼女に言う。
 『幸せになるべきだ』と――――。

 自分が鶴乃の友達となり、一緒にその方法を考えると。
 そして、七海やちよとの懸け橋になると。

 それを聞いた鶴乃は、いろはの度量に驚くも、
 安心して、心からの“笑顔”を見せるのだった。
 
 
  


2.5章 環いろは編 FILE #34~#45.5 ざっくり解説!

 

 

 

 

 

 

 

 

FILE #34

「頼れる時に頼れ。でないと……あいつみてえになる」

 

 万々歳・由比家に泊まることになったいろは。

 家族の事を知った木次郎から心配され、今後どうするべきか悩んでいた。

 一方、『由比さん』から『鶴乃ちゃん』へと呼べるようになったことで、

 鶴乃とは、友達としての仲がより深まっていく。

 

――――親友っていい言葉だよ。だって天文学的な確率だもんね。

 

 鶴乃とはいい友達になれそう……。

 そう思ったところで、ふと、昔馴染みの親友・里見灯火のことを思い出すのだった。

 

――――調べた年代や年齢によって違うんだけど―……。

 

 ――――親友の数って色んな統計や論文が出ててね。

 最近の教育心理学の発表だと大体三人なんだってー。

 

 ――――それって今の地球人口が74億人だとするとー…… 

 れーてんれーれーれーれーれーれーれーよん%ってすっごく小さい確率なんだよー。

 

 ――――お姉さまを含めるとわたくしたちはそれを3回も引き当ててるっ。

 

 ――――だから、わたくしたちってここでこうして話してるだけで、天文学的な確率に選ばれたかんけーなんだよ?

 

 

 しかし……

 

 

 

『そうは思わないか? ()()()

 

 

『だから、気にするな』

 

『奪ったもののことなど、気にするな』

 

 親友との輝かしい思い出は、突如、邪悪なものへと変貌するのであった。

 “白衣を着た知らない女性”が、いろはにそう囁く。

 

 そして、いろはは思い出す。

 “白衣を着た自分”が、罪の無い多くの少女達を犠牲にしてきた事を。

 

『だから、親友なんだよ。たまき』

 

『私とお前は、同じだから』

 

 覚えの無い罪の意識がそうさせたのか。

 いろはは、包丁で自分の喉を貫こうとする……が、鶴乃に止められた。

 震えながら、いろはは鶴乃に訴えるのだった。

 

「10人……いや、もっと……20、30……違う。100人は……殺しているかもしれない……!」

 

 

 その後、落ち着いたいろはは就寝し、鶴乃は木次郎に相談する。

 木次郎は言う。いろはの目は「人殺し」のものであったと。

 

「殺人犯の中にはてめえのやったことを忘れてたり、誰かがやったと思い込んでる奴が何人も居た。どうも、ショックが大きすぎると、人間の脳みそってのは悪いモンを取り除いちまうらしいな」

 

 だが、それを聞いても、鶴乃は、

 

「話を真剣に聞いてくれて、これからを一緒に考えようって言ってくれたの。だからわたし、いろはちゃんにもそうしてあげたい。いろはちゃんが抱え込んでる苦しみがどれだけ深くて暗いものでも、一緒に寄り添って、向き合ってあげたいの」

 

 いろはが例え何者であろうとも、“友達”で在り続ける事を決意するのだった。

 

 

 

 

FILE #34.5

『では、(おれ)引剥(ひはぎ)しようと恨むまいな。己もそうしなければ、餓死をする体なのだ』

 

 

                         ――――芥川龍之介「羅生門」より

 

 

 ・深月(みつき)フェリシア短編①

 

(少しは転がりこんできたのかねえ……オレが楽しめそうなものは……?)

 

 ヒッチハイクをしながら、日本各地を旅する西洋人風の風来坊。

 彼女の名は、深月フェリシア。魔法少女である。

 トラックの運転手をイジりながらと共に神浜市へと向かっている途中だ。

 

 街の景色を眺めるその目は残忍に光っていた。

 その目的と正体とは、一体……?

 

 

 ――――闇と光の邂逅まで、あと少し。

 

 

 

 

FILE #35

 次の日。

 いろはは一人、神浜市役所区へ。

 父親・環 輝一の旧友であり、自分を“託した”人物・夕霧青佐に会うために。

 

 両親の置手紙を確認する。

 両親は自分が忘れていた“うい”を忘れていなかった。

 そして、いろはの前から揃って居なくなることも想定していた。

 それを自分に教えなかったのは、なぜ……?

 

 考えていると、

 七海やちよとバッタリ出くわし、彼女から衝撃的な事実を知る!!

 

「夕霧青佐は、市長よ」

 

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!???」

 

 

 そんな訳で、市役所最上階の市長執務室へ向かういろは。

 女性市長・夕霧青佐は、緊張するいろはを温かく迎えるのだった。

 そして、いろはは覚えていないが、彼女が2歳の頃に会っている、という。

 

「事情は全て輝一(きいち)さんと(ひかり)さんから聞いてるわ。だから、安心して頂戴!」

 

「じゃあ……やっぱり、お父さんとお母さんは……」

 

「……ええ。お二人は、こうなることを予期していたわ……。本当に、残念だったわね……」

 

 そして、市長の隣には、スーツ姿の美少女も立っていた。

 

「私は粟根(あわね)こころ。市長の秘書を務めているの」

 

 こころもまた、父・輝一と親しい仲であり、

 いろはとも2歳の頃に会った、という。

 いろはは二人から、両親の事を尋ねることに。

 

「多分、もういなくなってる(・・・・・・・・・)

 

「……え?」 

 

「攫われたの。サンシャイングループに……」

 

 

 

 

FILE #36

 ・父は家を出る前に、市長に『いろはを頼みます』とメールを送っていたこと。

 

 ・両親が向かった先は、成田空港であり、本当に海外へ向かおうとしていたこと。

 

 ・市長がこころを派遣し、両親の護衛役として付けさせていたこと。

 

 ・しかし、「これ以上巻き込む訳にはいかない」と父に言われ、糀谷駅で一方的に別れを持ち出されたこと。

 

 ・それでも、心配になって影から両親に付いていったこと。

 

 ・路地裏で、両親が不審な男性の集団に襲われた事。その集団の正体がサンシャイングループであったこと。

 

 

 以上が、両親の経緯であった。

 こころも助けようとしたが、“何者か”に背後から襲われ、意識を失ったという。

 

 いろはは怒る。

 これは犯罪じゃないか!

 警察に訴えてやる!

 そう思い、突然外に出ようとするが、市長に呼び止められた。

 

「サンシャイングループの会長、日秀源道さんは、県警や警察庁とも太いパイプで結ばれている。貴女が訴えたところでタチの悪い子供の悪戯としか思われないでしょうね」

 

 冷徹にそう忠告されて、カッとなるいろは。

 

「じゃあどうしたらいいんですかっ!?」

 

「お父さんとお母さんが捕まって今も酷い目に遭ってるかもしれないのに!? 苦しんでるかもしれないのに! 自分だけそれを忘れたフリをしてのんきに過ごせっていうんですか!!?」

 

「それを何よりも、お二人は望んでいるわ」

 

「できない!! そんなことっ!! 大切な家族を忘れて自分だけ幸せになるだなんて私にはできない!! そんなことができる人は、もう人じゃないっ!」

 

 やり場の無い怒りを市長にぶつけてしまう。

 だが、市長は冷静に、いろはに問う。

 

「相手は強大よ。立ち向かえば貴女の人生から安寧は無くなるかもしれない。輝一さんと曜さんの期待を踏み躙り、悲しませるかもしれない。それでも貴女は、戦うつもりなの」

 

「……私は、家族みんなで、もう一度笑いあいたいんです。

 だから、行かせてください……っ! お父さんとお母さんを、私が助けないと……っ!!」

 

 いろはの意志は固かった。

 市長は、イマジナリーフレンド“教授”なる少女に了解を得ると、

 いろはへ、アドバイスを送るのだった。

 

「いろはさん。貴女が本気で彼らに立ち向かいたいと思うのなら、ここで力を付けるべきだわ」

 

「個人のワガママが通じる相手は、自分より弱い者に限られる。サンシャイングループに敵わなかった時、行き場の無い怒りがどこに向くかは目に見えている。……そうなって欲しくないからこそ、貴女はこの街で、彼らに対抗する為の人脈と知恵を身に着けて貰いたいのよ」

 

「貴女は若いわ。時間はいくらでもある。この街の隅々まで歩き回って、色んな人たちと出会い、絆を深めて欲しい。神浜の全てが、貴女の力になってくれる」

 

 それが可能なのは、今しかない。

 いろはは『最強の魔法少女(七海やちよ)に勝った』。

 神浜市の全ての人間が、いろはに注目している、この時こそ。

 

「私……何も知らないんです。だから、手を貸してください」

 

 いろはの表情に怒りが消え、心に希望が宿る。

 市長の手を取り、共に戦うことを決意。

 

 そして市長は、いろはの未成年後見人となった。

 そして、いろはの新たな住まいを勝手に、“みかづき荘”に決めてしまうのだった。

 

 

 そして――

 

 

 

 

「環いろは。君は必ず、()の下へ辿り着くだろう」

 

「僕はいつでも待っている。この万年桜の木の下で――――」

 

 現実に存在しない、“楽園”のような世界で、

 “教授”なる少女は独り、そうつぶやくのだった。

 

 

 

 

FILE #37

 いろはは、妹・『環うい』と『大賢者様』の事を市長に尋ねるが、

 「分からない」と返されてしまう。

 

 翌日。

 いろはは、せめて妹の手がかりを得るべく、

 入院していた筈の、『神浜総合病院』へと向かうことに。

 

 しかし、いろはは『七海やちよに勝った』事で、市内じゃ大有名人。

 道中、女子中学生達やら、商店街じゃ店主のおっさん達やらに囲まれ……

 加えて、いろは自身が地図アプリすら使いこなせないレベルの、『スマホ音痴』のせいで、非常に難航。

 

 これには、市長の命令により、陰で見守っていたまさらも、呆れかえる程。

 しかし、一台の車が、いろはの前に現れる。

 運転しているのは――――

 

「みたまさんっ!?」

 

「お嬢さん、乗ってくかい?」

 

 自称17歳が運転していいの?

 八雲みたまの好意により、いろはは神浜総合病院まで乗せてもらうのだった。

 

 

 神浜総合病院。

 

「小児科病棟に問い合わせたのですが……環うい様、柊ねむ様、里見灯花様という名前のカルテは無い……と」

 

 落胆するいろは。

 ロビーで受付に問いかけるも、三人の入院記録は無い、と言われたのだ。

 しかし――

 

「あんた、環ういの血縁者かい?」

 

 偶然にも。

 『環うい』を知っている、という老婆・明槻(あかつき)月禰(つくね)と出会う。

 

 しかし……、

 

 

「びっくりしたよ。まさかあの人に――――()()()()がいたなんてね」

 

 

 まさかの言葉に、ショックを受けるのであった。

 

 

 

 

FILE #38

 一方、いろはと別れた八雲みたまは、

 神浜総合病院の院長室で、院長の里見浩一郎と会っていた。

 “いろはの記憶にしか存在しない少女”――『里見灯花』について、

 聞きたいことがあるからだ。

 

 ・いろはのソウルジェムの“記憶”から、神浜総合病院に入院していた、という証拠がある。

 ・“里見”という苗字は、院長と同じ。

 

 以上から、何らかの関係があるのでは?

 しかし、里見院長は「知らない」の一点張り。

 

「“人の頭の中が一番信用できる”とは断言できないでしょう。

 人の記憶とは機械のデータよりも遥かに曖昧なものです。

 誰のソウルジェムを覗き込んだかまでは問いませんが、

 対象の魔法少女が思い違いをしている可能性もあるのでは?」

 

 そう返されて、話が平行線になると思ったみたまは、里見院長を“脅迫”する。

 

「実は……最近知ったのですが、慶圓会の業績は芳しくないとか」

 

「新規に福祉事業を立ち上げたサンシャイングループと業務提携し、

 福祉事業を大規模に展開したものの、新規の施設が軒並み赤字続きであると……」

 

「サンシャイングループの福祉事業所の役員もカンカンでつい最近叱責を受けたばかりと

 …………あれぇ?

 何をそんなに焦った顔をしていらっしゃるんですかぁ?」

 

 以上の情報は、

 里見院長の秘書である魔法少女・(かぶら) 美奈子のソウルジェムを“調整”した時に、得たものだ。

 公にされてはまずい事実を、握られてしまい、焦る里見院長。

 

「貴女は……そこまでして存在しない少女(里見灯花)の事を知りたいのですか?」

 

「まあ、存じませんならそれで結構です。その子の勘違いであったと処理できますから。

 ただ……これだけは確信を持って言えます。

 私達が今まで覗いたソウルジェム……魔法少女達の記憶の中で、

 ()()()()()人物は一人も居なかったと……!」

 

 里見院長は焦り過ぎて、迂闊な事を口走ってしまう。

 

 <存在しない少女(里見灯花)を知るいろはは、“記憶改竄を受けている”のでは?>

 

 みたまの答えはNO。

 いろはの身辺には、記憶改竄が可能な魔法少女はいない、と。

 

「調整の対象者は、何の変哲も無い一般家庭の生まれの女の子です。

 魔法少女としても格別なものはない。

 記憶改竄したところで何かが得られるなんて思えませんし……

 そもそも、改竄されたと仮定した所で、『知らない少女の記憶を植え付ける』意図が分かりません。

 改竄した側に、何かメリットがあるとも思えませんが」

 

 みたまは、先の里見院長の“迂闊な発言”の揚げ足を取り、追い詰める。

 

「貴方は先ほど、ご自分のことを“凡人”と称しましたね。

 なら、尚更不思議なんです。

 『記憶改竄』は、魔法少女の界隈でも使い手は極僅か。

 魔法少女の事情に深く踏み込んだ者でなければそんな単語はそうそう出てこない筈です」

 

「更に貴方は、『人の頭の中は改竄しようが無い』と最初に仰いましたね。

 だから私はてっきり貴方が『記憶改竄できる魔法少女がいることを知らない』

 のかなあ、なんて思ってましたけど…………今、パッと仰いましたよね。

 もしかして、そんな魔法少女が身近にいるんじゃないですかぁ?」

 

 ――――そして、その少女の存在を口止めされていた、と。

 

 指摘されて、里見院長は、しばらく黙り込んだ。

 それが答え。

 『里見灯花』の事を知っているが、言えないのだ。

 みたまはそう確信したのだった。

 

 

 その後、病院の廊下にて。

 鏑 美奈子から叱責を受けるみたま。

 しかし、美奈子の“何かに怯えてる”様子から、

 彼女も『里見灯花』を知っている、と悟るのだった。

 

「じゃあ、これだけは教えて。“里見灯花”が、今、どこにいるのかを」

 

「誰も近寄ることのできない。深い暗闇の底に、その子は居る」

 

 美奈子の言葉に、みたまはふと思い出す。

 いろはのソウルジェムの中にある、深淵。

 “里見灯花”と同じく、『天才』と持て囃された“科学者の女性”の姿を。

 その狂気を。

 

 まさか――――!?

 

 

 一方、いろはも、老婆・明槻月禰と『環うい』について、話していた。

 

「月禰さんの知ってる『環うい』って、どんな人だったんですか?」

 

 月禰の知っている『環うい』は自分の妹とは別人。

 しかし、いろはにそっくりな、“おばあさん”だったという。

 いろはは気になってそう尋ねる。

 

「立派な人だったさ……」

 

「どのくらい前か忘れちまったが……あの人は突然、この街にやってきたんだ。お医者様でね。一時は中央区で診療所を開いていたことがあった。あたしもよく世話になったよ」

 

「根っからのお人好しだったよ。来るもの拒まずっていやいいのかな。金が無くっても傷病人なら、誰彼かまわず治療しちまうのさ」

 

「そりゃあ経営は火の車だったそうだが、自分の財産を投げ売って存続させていたって聞いたよ。そこまでして、人に尽くしたい情熱ってやらがあの人の中にはあったんだろうねえ」

 

 不思議と。

 月禰の語る『環うい』は、いろはのよく知る『環うい』と重なって見えた。

 しかし。

 

「本当に素晴らしい人だった。……“アレ”を知るまではそう思っていたよ」

 

 だが、そこで見てしまった。

 懐かしそうに語る月禰の瞳――――宝珠の様な輝きが、突然どす黒く澱み揺らいだのを。

 

 そこで、月禰は話を打ち切り、立ち去ってしまうのだった。

 

 

 

 

FILE #39

 ・マギウスの翼サイド

 

 アジトの最奥部では、最高幹部の二人。

 『実働部隊統括責任者』梓みふゆと、

 その祖父であり、スポンサーの

 『サンシャイングループ代表』日秀源道が話し合っていた。

 

 

 ※ここでざっくり解説! 『黒羽根』って何?

 

 実働部隊の下っ端だよ!

 元々は、神浜市で確保した魔法少女達を元に、()()()()()よ!

 最高幹部たちは、もっと数が欲しいと考えてるけど、

 神浜には、いろいろ厄介な敵がいるせいで、うまくいってないんだって!

 

 

 ……という事情なので。

 梓みふゆは、『黒羽根大量確保大作戦』を企画。

 

 

 ※ここでざっくり解説! 『黒羽根大量確保大作戦』byみふゆ!

 

 神浜市内がダメなら、“神浜市外”で集めればいいじゃない!

 そんな訳で、地方(限界集落とか)で、“行政の保護がまだ受けられてない”魔法少女を狙ってみるよ!

 いつ魔女に襲われるか分からないし、魔法少女同士で殺し合ってる子もいっぱいいるから……最適だね!

 

・里見灯花えもん

 「そういうときは、コレ! 電波発信機~☆」テッテレテッテッテーテテー♪

 

「これは、“魔法少女のみ受信可能”な特殊電波を発信するんだ!

 こいつに、みふゆの“幻覚魔法”をプラスして、電波を発信(スイッチオン)

 すると、ほ~ら!」

 

 「マギウスの翼が理想とする世界を、

  遠くの魔法少女にも『疑似体験』してもらえるんだ!!」

 

・地方の魔法少女達

 「“解放された世界”って最高☆☆

  私もマギウスの翼に入れてくださ~い☆☆☆」

 

 

 ……とまあ、こんな感じで大成功!

 

 

 Q.えー??

 でも、“幻覚魔法が効かない”魔法少女がいたらどーするのさ?

 周りの魔法少女達が幻覚に惑わされてるの見ていたら、

 すごく不審に思うよね?

 

 A.誠実な魔法少女を派遣して、頑張って説得して貰います。

   例を挙げると、貝塚市では、天音月咲さんと月夜さん姉妹が

   頑張ってくれました。

 

 

 ※ここでざっくり解説! 実働部隊の裏事情!?

 

 みふゆは『実働部隊統括責任者』だけど

 実際に、現場で部隊を動かす立場にあるのは、『実働部隊長・紅羽根』の、双樹ルカだよ!

 二人の仲は、最悪だよ!

 天音姉妹は、双樹ルカの直属の部下で、副隊長の『白羽根』を務めているよ!

 でも、お人よしだから、仕事に優柔不断なところがあって、双樹にネチネチ虐められているよ!

 だから、みふゆは、二人に活躍の場を与えて、守ろうとしているんだよ!

 

 

「与えられた役割のみに没頭せず、多角的に見渡した上で、最適な人員を割いて事を成就した。

 ……見事だ。やはりお前には上に立つ資格があるのだな」

 

 そうみふゆを褒める源道だが、一つ懸念が。

 『七海やちよ』ことだ。

 治安維持部長である“神浜の英雄”が、マギウスの翼の対抗勢力の旗印となるのは必然。

 説得できるのは、みふゆしかいない。

 しかし、みふゆは一向に、そちらに動く様子は無い。

 

「みふゆよ。お前が争いを嫌悪する性情なのは重々承知だ。

 故に、幼馴染と対峙を避けたい気持ちもよく分かる」

 

「しかし、いつまでも手をこまねいていては大事に発展するぞ。

 これより先、ミス・ペインプランターの“アレ”を市内中に配置する以上、

 市内における我らの活動は活発化せざるを得ない。

 故に、治安維持部とも熾烈な闘争に発展しかねん。

 犠牲を極力避ける為には、相手の牙を早々に抜き、戦意を削ぐのが肝要ではないか?」

 

 源道の言葉に。

 みふゆは葛藤しながらも、強く言い返すのだった。

 

「やっちゃんが人で無いのならば、

 人であるワタシが彼女を救い、元に戻して見せる……

 それがワタシの使命です!

 お爺様、この度は手厳しくご指導いただき誠に感謝しております。

 しかし、未だ私の心構えが整っておりません故に、暫しの時間を頂戴したく願います」

 

 強い意志を見せる孫娘に、納得する源道。

 

 しかし……

 

 

 みふゆが退室した後、

 源道は背後に隠れていた双樹ルカを呼び出す。

 

「聞いていただろうが。みふゆはあの通りだ。恐らく、七海やちよは卸せん」

 

 実は源道は、

 みふゆに内緒で、恐ろしい計画を企てていたのだった。

 それは……、

 凄腕と呼ばれる傭兵“A”を雇い、七海やちよを暗殺する、というもの……。

 

(青いままでは全ては救えん。人は時に、全身に血潮を滾らせ、赤く熟さねばならん……)

 

 全ては、みふゆに現実を知り、甘さを捨ててもらう為の、親心でもあった……。

 

 

 

 

FILE #40

 ・いろは、新生活編①

 

 

 宝崎市時代で一緒にチームを組んでいた魔法少女・宮内 塁の言葉を励みに、

 みかづき荘での新生活に臨むいろは。

 

「それにしても……二日しか会ってないのに、ずいぶん久しぶりな気がするわねえ……」

 

 みかづき荘の管理人。

 ママパパ枠・ピーター=レイモンド。

 

「あ、それと……住んでもらう以上、家賃滞納は許さないから、そのつもりで」

 

 みかづき荘の大家。

 ママ長女?枠・八雲みたま。

 

「貴女が来てくれて本当に良かったと思ってるわ、()()は《・》」

 

 みかづき荘の居住者①。

 次女枠・七海やちよ。

 

「105号室に住んでる。魔法少女。固有魔法は『透明』。普段はこころと一緒に市長の秘書として働いている。まあ、仲良くできるか分からないけど、よろしく」

 

 みかづき荘の居住者②

 三女枠・加賀見真良(まさら)

 

 以上の個性豊かな女性達※一人を除くと共に暮らすことになる。

 最初は、うまくやっていけるか不安で、緊張するいろはだったが……

 

「みかづき荘では、住んでいる人は全員、家族と思うのがルール。みんなで協力し合わなくちゃ家は守れないでしょ?」

 

「家……」

 

「もうここは貴女の家なのよ、いろは。そして私達は貴女の家族。だからもう、安心していいの」

 

 やちよにそう言われて、

 いろはは、新しい“家族”の皆と、共に生きる決意を固めたのだった。

 

 

 

 

FILE #40.5

 ・深月フェリシア短編②

 

 トラックの運転手と共に、市内のパーキングエリアに寄ったフェリシア。

 そこで食事を摂ることにした二人。

 急にう〇こしたくなった運転手がトイレに行くと、

 狙いすましたかのように、

 フードを深く被った少女が、フェリシアの前に現れる。

 

「傭兵、ですよね」

 

「ああ……つっても、今は雇われ中だからな~~。仕事を二重に受け持つ気はねーし、他当たれよ」

 

 どうやら魔法少女のようだ。

 最初は警戒心から、あしらおうとしたフェリシアだが、

 

「“アステリオス”。貴女のあだ名でしょう……? ふふふ……」

 

「その名を知ってるんなら、高くつくぜ」

 

 フェリシアは、謎の魔法少女に連れられて、

 彼女の“ボス”から、仕事の依頼を受けるのだった。

 

 

 

 

FILE #41

 ・いろは、新生活編②

 

 

 いろはは、未成年後見人である神浜市長の意向により、

 『神浜市立大学附属学校』へ転向することに。

 

 よって、一度地元である宝崎市へ戻り、

 公立優戒中学校の送別会に参加した後、

 親しい友人達と、別れの挨拶に向かう。

 

 いろはの親友……それは学校のクラスメイトではない。

 宝崎市で一緒に戦ってきた、魔法少女チームの仲間のことである。

 同い年の皆木(みなき)葉菜(はな)

 少し上の先輩の宮内(くない) (るい)の事だ。

 

 最初に葉菜の実家である、『皆木植木店』へと向かったいろは。

 彼女の父親と会うが、話している最中、魔女に操られてしまう。

 助けるために、

 結界に入り魔女退治に挑むいろはであったが……

 

 使い魔は、まるでダンゴムシの大群。

 いろはのクロスボウとは圧倒的に相性が悪い相手だ。

 それでも、いろはは奮闘し、魔女と思しきダンゴムシを見つけて、狙撃した。

 

 しかし――――

 それは巧妙に仕組まれた罠であった。

 狙撃されたダンゴムシは、魔女ではなく、囮であった。

 羽虫の使い魔に変化して、いろはの顔面に纏わりつく。

 瞬く間に、ダンゴムシの大群がいろはの全身を覆い尽くし、絶体絶命の危機に。

 

「くっ……そ」

 

 

 ――――終わるのか。

 

「くそっ!」

 

「くそっ! くそっ!」

 

「くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! クソォッ!!

 

 “死”を前に、いろはは意地汚く足掻いた。

 

「ちくしょおっ! 離してぇっ! 離せよぉっ! 何で私ばっかりこんな目に遭うんだよぉっ!? ふざけんなよぉっ!! 私はまだやらなきゃいけないことが……ッ!! やりたいことだって沢山あるのにぃ……ッ!! こんなところで……お前らなんかにぃ……ッ!!」

 

 走馬灯のように、妹の姿が視界を過り、

 いろはは、渾身の力を込めて、必死に叫ぶのであった。

 

「こんなところで……死んでたまるかああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

「聞こえたぜッッ!! いろは――――――――――ッッ!!!」

 

 

 まさに、危機一髪。

 親友・皆木葉菜が助けに来てくれた!

 衝撃波で、ダンゴムシの大群を蹴散らし、いろはを救出したのであった。

 

 

 

 

FILE #42

 

 ・いろは、新生活編③

 

 

 ※ここでざっくり解説! いろはの親友A・皆木葉菜って?

 

 いろはが宝崎市に住んでた頃の魔法少女仲間だよ!

 愛称は『(よう)ちゃん』!

 両手から衝撃波を放って攻撃するよ!

 固有魔法で、聴力がメチャクチャ優れているよ!

 乱暴な性格で、口も悪いけど、

 頭は良くて面倒見が良いから、チームでは参謀役を務めるよ!

 

  【容姿イメージ】↓

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 (カスタムキャストで作成)

 

 

 ※ここでざっくり解説! いろはの親友B・宮内 塁って?

 

 いろはが宝崎市に住んでた頃の魔法少女仲間だよ!

 年長者だから、チームではリーダーを努めるよ!

 でも、固有魔法のせいで『勝てない』と思ったら、背中を向けて逃げてしまうよ! でも絶対に生き残るよ!

 (※葉ちゃん曰く、「殺されても次の日にはひょっこり顔出すタイプ」)

 超テキトー人間で、葉ちゃんはいつも苦労してるよ!

 

 【容姿イメージ】↓

【挿絵表示】

 

(カスタムキャストで作成)

 

 

 葉菜に続き、累まで助けに来てくれたことで、形成は逆転。

 “いつも通り”のチームプレイで、魔女を発見し、撃破するのであった。

 

 結界が消え、元の世界に戻る三人。

 いろはが勝手に、神浜市に移住したことについて、

 葉菜は腹を立てて怒鳴り散らすものの…… 

 

「あたし、安心したよっ!」

 

「『ふざけんなよ』って……『死んでたまるか』って叫んでさ……。ああ、こいつはまだやる気なんだって」

 

「あたし、嬉しかったよ。いろはが抱え込んで変な気を起こさなくって。ああいうことが腹の底から言える奴だって分かって、本当に安心したんだよ! だから、絶対に助けなきゃって思えたんだ!」

 

 涙を流して、そう伝えるのだった。

 そして累も……

 

「累さんも嬉しかったよー。いろっちが貫いてくれる子でー」

 

「だっていろっちってさー、()()()()()()()()じゃん」

 

 二人はいろはの“強さ”をしっかり見てくれていたのだ。

 二人の優しさに、いろはは涙を浮かべて、感謝するのだった。

 

 

 

 

FILE #43

 ・番外編

 

 

 side:常盤ななか

 こちらは、厄介な大人達に囲まれて苦労してます編。

 

 『明京町の陰の支配者』『女帝』等と呼ばれている彼女だが、

 実際は、そうでなかった。

 

 常盤ななかのチーム『アメノハバキリ』は、

 彼女含めて10代の少女4人……

 主に大東区に蔓延る、ヤクザや、麻薬密売、移民問題をどうにかするのは無理だ。

 

 常盤ななかが、犯罪撲滅を達成できたのは、

 彼女と密約を交わし、協力する組織がいたから。

 

 それが蒼海幇(現・(株)蒼海グループ)。

 圧倒的な武力を持つ精鋭の魔法少女達(通称『堕龍(デュオロン)』)が、上記の連中を、陰で抑えてくれていた。

 その中でも、蒼海幇のボスである(ワン) 海龍(ハイロン)は、最強の武術家である。

 

 つまり、

 ななかの今までの功績は、海龍によって齎された、偽りのものであった。

 海龍はななかを利用して、治安維持部乗っ取りを画策していた。

 中国武術こそが『最強』と信ずる彼女たちは、

 それこそが、民を守るに相応しい力だと、世間に証明したかった。

 

 全ては、蒼海幇が『悪党』のイメージを完全払拭し、

 『正義の味方』として生まれ変わるための、計画であった。

 

 駒扱いされながらも、ななかは思う。

 自分では、力関係はどうにもならない。

 治安維持部の象徴・七海やちよにこそ、海龍と“対等に”張り合ってもらわねば……。 

 

 

 

 

 side:十咎ももこ

 調整課もいろいろやってますよ編。

 

 ももこは、同じ町役場に勤務する調整員・八重いずもと共に、

 地方の街を回っていた。

 

 ここでざっくり解説! 『魔導管理局』と『魔導事務局』って何?

 

 神浜市をモデルケースに創設された、魔法少女専門の役所だよ!

 主に大都市内に建てられているよ!

 『管理局』では魔法少女の警察部隊が、魔女の駆除や魔法少女の犯罪を取り締まるよ!

 『事務局』では、八雲みたまみたいな調整員がいて、ソウルジェムの“調整”が受けられるよ!

 

 でも、規模拡大中で、まだ全国には広がっていないんだ!

 つまり、行政の保護を受けられていない魔法少女は、地方に沢山いるよ!

 しかも、地方自治体が、魔法少女に懐疑的な姿勢だと、中々創設にはいたれなくて、面倒くさいよ!

 

 

 そんな事情な訳で……

 調整員を各地に派遣し、地方の魔法少女を調整する“事業”を行っているのである。

 実は“調整”は、日本のみで行われている、唯一の魔法少女の『延命方』であるのだ。

 “調整”は誰でも受けられる。

 犯罪者だろうと反社会組織に属していようと、人間性と過去は問われないのだ。

 

「あたしらが目指すのは、グリーフシードのいらない未来ッスよ」

 

「口を慎めよ調整屋。キュゥべえが聞いたら睨まれるぞ」

 

  

 

 

FILE #44

 皆木葉菜と宮内 累に別れを告げ、

 いろはは、神浜市のみかづき荘へと帰っていった。

 

 家に帰ると、まさらしかいなかった。

 仏頂面で、態度が冷たく、言いたい事を単刀直入に言ってくるタイプ。

 いろはにとっては苦手な相手だ。

 自然と、緊張するいろはだったが……

 

「手で額を撫でるその仕草……この前、海外ドラマで見たけど……貴女、()()()()?」

 

 自分の“仕草”がきっかけで、まさらの方から話しかけてくれたのだった。

 いろはは自分の身に起きたことを話す。

 

「本当に、私って地元じゃ無作為に生きてたんだなあって思っちゃって……」

 

「何も積み上げてこなかった、何も興味を持てなかった自分が、恥ずかしいって?」

 

「あはは……まあ、そんなところです」

 

「悪いことじゃない。私にも、そういう時期があったから」

 

 そして、いろはにとって、意外なことを話すのだった。

 

「貴女が羨ましい。

 不謹慎だと思うけど、刺激的な毎日を送れてる貴女が羨ましい。

 だから、安心していいんじゃない?

 変われる可能性があるから」

 

 お互いの気持ちを正直に伝えあう二人。

 

「安心したんだと思います。私とまさらさん、結構似てるところがあるんだなあ、って分かって」

 

「似てる? 私と、貴女が?」

 

「まさらさんと距離が近くなれて、嬉しかったんだと思います」

 

「距離が、近く?」

 

「はい。だって私たち、家族なんですから。仲良くなれなかったら嫌ですよ」

 

 性格は全く違っても。

 お互いに似ていることに気付き、二人は、笑い合う。

 お互いに安心して、これから良い家族になっていけると、確信するのだった。

 

 

 その後、中々帰ってこない家族を迎えに行く二人。

 まずみたまを探しに、市役所地下・ミロワールへ向かう。

 が、そこにいたのは、みたまではなく……

 

「初めまして環いろはさんっ!! わたくし、夕霧 碧(みどり)と申しますっ!」

 

 犬耳娘……ではなく、一人の女性。

 神浜市長・夕霧青佐の娘、碧であった。

 

【挿絵表示】

 

 大学生であり、ミロワールでバイトしているのだ。

 みたまの所在を尋ねると、「ピーターと一緒に飲んでいる」と答える碧。

 

 

 一方、ある居酒屋。

 みたまはピーターと飲みながらも、ある調査を依頼していた。

 

「PROJECT MAGIA RECORD」

 

「まさか、それって……」

 

「ええ、いろはちゃんの魂を覗いた時に見えた“深淵”の一部。研究所のような施設で、そのワードがあったの」

 

()()()()()()は戦後職を失い困窮する日本人への救済処置として雇用という形で、“少女狩り”を行ってきた歴史がある。貴女を疑う訳じゃないけど、可能性は否めない」

 

 みたまの依頼に、ピーターは決心を固めて、頷くのだった。

 

 

 

 

FILE #45

 翌日。

 市役所へ向かったいろはは、やちよと話し合っていた。

 彼女の執務室で、小さい頃のやちよと一緒に写っている、

 “知らない女性”の写真を見つけるいろは。

 

 その女性の名は、和泉(いずみ)十七夜(かなぎ)

 やちよにとって“恩師”となる魔法少女であったという。

 

「私は彼女から総てを教わった。平和と平等の事を。この世の正義と悪も。人との向き合い方も」

 

「本来、治安維持部長(私の席)は彼女のもので……全ての魔法少女を正しい方向へと引率してくれる筈だった」

 

 

『いつか、全ての魔法少女がキュゥべえの敷いたレールから外れる時が来る。その時が、はじまりだ。世界は魔法少女を必要とし、絶望から切り離された魔法少女(我々)もまた、世界とどう向き合うか、改めて考えなおすだろう』

 

 和泉十七夜は、

 『世界で蔓延る差別・戦争・貧困・飢餓・麻薬・無法・悪政に喘ぐ人々を救う為に、魔法少女を派遣する機関』

 の創設を夢見ていた。

 機関名は【マギア・リユニオン】と名付けるつもりであった。

  

「かなり極端なところはあったけど、あの人は普通とは違っていた。誰よりも正しくあろうとし、どうすれば社会が公平になり人々を平和に導けるのかって……口にするのはいつもそればっかりで、それしか頭になかったの。正義に憑りつかれた人、といえばいいのかな。あまりにも真っ白過ぎてね……私には、眩し過ぎた」

 

 思い出を語るやちよ。

 しかし、和泉十七夜は、行方不明になってしまったという。

 やちよ曰く、理由は「“不平等からなる不合理による理不尽”」だと。

 いろはには、何の事だか、さっぱり理解できなかった。

 

 

 ――と、それはさておき。

 いろはには、やちよにどうしても確認したいことがあった。

 

「やちよさんは……参京区の再開発計画に、本当に心から賛同していたんですか?」

 

 尋ねると、遠い目を向けてやちよは答えるのだった。

 

「あの頃の私は、大人を信じすぎていた。それが、人々の救済に繋がる道だと信じていたからね……」

 

 

 

 

FILE #45.5

 ・深月フェリシア短編③

 

 明京町・大東区。

 神浜でも一番治安が悪いと言われている地区。

 そこの沿岸部には他国籍の不法移民達で形成された“スラム街”がある。

 蒼海幇の管轄下にあり、腕の良い傭兵達が警察代わりとして巡回し、不法移民達を見張っている。

 

 フェリシアはスラム街を一人、歩いていた。

 実はフェリシアは“傭兵”であったのだ。

 元々、裏社会の人間であり、スラム街は庭も同然。

 

 道中、巡回している傭兵に出くわし、喧嘩となる。

 幻覚魔法を使う相手だったが、フェリシアは軽く蹴散らした。

 そして、目的地となる“板金屋”へ向かう。

 

 

 板金屋は、一組の親娘が経営していた。

 『とっつぁん』と呼ばれる初老の父親と、

 大学生くらいの娘・『伊月ジュン』である。

 

【挿絵表示】

 

 ジュンは、フェリシアと同じく“傭兵”で、父親も裏社会の人間であった。

 

 フェリシアは全財産の300万を差し出し、依頼する。

 伊月ジュンに、『自分の仕事のサポート』で100万。

 とっちゃんに、『買えるだけのドローン』で200万。

 

「ジュンまで連れてくたあ、百戦錬磨のお前が弱気になっちまう程か? フェリー」

 

「まあ、そんなところだ」

 

「しかし……どこのどいつだ。そんな馬鹿げた事を依頼する奴はよ?」

 

「言えねえけど、これだけははっきり言えるよ」

 

「そいつ、イカれてる」

 

 三人が獰猛な牙を向ける相手、それは――――

 

 

 

 

 

 




 ざっくりまとめるにあたり、一部の話は、文章をざっくり削るなどして書き直してます。
 他にも分かりにくい部分を、分かりやすく構成しています。

 それにしても、ざっくりまとめるのは意外に大変な作業です。

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