魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost 作:hidon
あらすじ……
鶴乃と別れ、神浜市役所へといろはは向かう。
父・輝一の友人である「夕霧青佐」に会うためだ。
父の置き手紙曰く、
いろはの今後は、その人物に託している、という。
だが、驚くことに、夕霧青佐の正体は、『神浜市長』だった!!
そして、秘書の魔法少女・粟根こころから、両親の行方を知るいろは。
なんと、二人は、サンシャイングループに拉致されたらしい。
激昂するいろはを、青佐は宥め、
今後の為にも、神浜市への移住を勧める。
そして、やちよやみたまらが居る、『みかづき荘』に住むことも決まった。
その後……
落ち着きを取り戻したいろはは、
妹・ういの手がかりを探しに、神浜総合病院へと足を向ける。
ういは、神浜総合病院の小児科病棟で、入院していた筈だった。
柊ねむ、里見灯花と同じ病室で。
道中、偶然にもみたまと合流し、共に車で向かう事に。
しかし……
総合病院の受付で、三人の事を尋ねるも、
『カルテが存在しない』、『入院の記録は無い』
と言われてしまう。
途方に暮れるいろは。
しかし、偶然にも隣にいた老婆・「
『環 うい』の事を知る。
……だが、その人物は、『いろはにそっくりなおばあさん』であり、
自分の妹と同性同名の、別人であった。
一方、みたまも「里見灯花」の手がかりを得るべく、
神浜総合病院の院長・里見浩一郎と、秘書の魔法少女・
話を聞き出していた。
どうやら、彼らは、「里見灯花」と黒い繋がりがあり、
その名を公言できない立場にいる様子だった。
謎は深まる一方……
その後、二人はみかづき荘へ戻る。
みかづき荘では、いろはの歓迎会が開かれていた。
ピーター、みたま、やちよ、そして加賀見まさら……
新しい家族と一緒に、いろはは、前へ進むことを決意する。
後日、一旦、故郷の宝崎市へ戻るいろは。
旧友であり同じ魔法少女チームメイトであった、
皆木葉菜と、宮内 累に別れの挨拶をする為だ。
だが、魔女に襲われてしまう。
絶体絶命のピンチに、助けてくれたのは、チームメイトの二人だった。
“いつもの”チームワークで魔女を難なく撃破!
いろはは二人に感謝を告げる。
葉菜と累も、新しい生活に臨むいろはを、心から応援するのだった。
その後も……
苦手だった同居人・加賀美まさらと打ち解けたり、
神浜市長・青佐の娘、夕霧
七海やちよの恩師・「
色々あったが……
「やちよさんは……参京区の再開発計画に、本当に心から賛同していたんですか?」
身の回りが落ち着いた頃、
いろははようやく、やちよにずっと聞きたかった事を
聞き出したのだった。
FILE #46
七海やちよ、回想。
二年前、治安維持部長になったばかりのやちよは、
みふゆの母、梓つむぎに呼び出されていた。
「参京商店街の再開発事業に、力を貸してほしいの」
つむぎは、やちよにとってもう一人の親も同然。
本当の両親は、消防隊員だったが、任務中の事故で殉職。
その後、やちよの未成年後見人となり、全面的に生活を援助してくれたのが、
つむぎだった。
頼まれたら、断れない。
そんな訳で、やちよは、参京商店街の再開発対象店舗を駆け回り、
店主達を懸命に説得していた。
参京商店街は木造住宅の密集地だ。
一件でも火災が起きたら、大変なことになりかねない。
【女神】【英雄】【最強の魔法少女】【神浜の守護神】……
既にそう呼ばれているやちよの影響力は、確かに強かった。
店主は次々と首を縦に振った。
全店舗の説得は容易だと、やちよ自身、考えていた。
しかし、斎藤寝具店に赴いた時。
跡取り息子の司から……
「あんた、
その一言に、ショックを受けるのだった。
冷静になったやちよは自分を見つめ直す。
結局、商店街の店主達と、同じ目線に立っておらず。
自分に都合の良い大人に、ゴマを擦っていただけ……
『歪んでいる』
やちよは、今の自分を、そう評価したのだった。
そして、自分と同じく、つむぎの言う通りに動く、みふゆに対しても。
参京商店街の人たちを救いたいのは本当だ。
でも、その気持ちに、慢心と甘えが有った。
もっと個々人の言葉を傾聴して、本質を見抜いて、望みを知らなければいけなかった。
それが理解できなかったやちよとみふゆに、最初から救う事は不可能だった。
後日、神浜市長・夕霧青佐に呼び出しを喰らうやちよ。
「参京区の再開発の件は、区民や商店街の方々ともっと綿密に話し合ってお互いにベターな方向性を模索しようと思っていたのよ。反対する経営者は多いから慎重に、時間を掛けるつもりだった。……なのに貴女ときたら、つむぎさんの口車にまんまと乗せられたわね」
叱責を受けたやちよは、深く後悔し、市長に謝罪する。
しかし、市長は激おこぷんぷん丸。
許してくれる筈がない。
そして……
「七海部長。罰を命じます。貴女はこれから休暇を返上して、二木市の視察に行きなさい」
FILE #47
そんな訳で。
兵庫県・二木市に向かうことになったやちよ。
二木市の商工業組合は「黒鬼組」と呼ばれており、
『大親分』と呼ばれているボスがいる。
青佐からのミッションとは、とどのつまり、
「経験豊富な偉い人と会い、社会勉強してきてね」。
ということであった。
地元の魔導管理局長・紅間めぐみ(以下めぐみん)と共に、
主に貧乳談義で盛り上がりながら、
虎屋町にある大親分の邸へ赴く二人。
そして、謁見の間。
大親分直属の精鋭――御庭番衆の魔法少女達。
側用取次役・若頭――あちき/ありんす子さん
そして。
黒鬼組統領・大親分――
彼女たちとの邂逅は、
果たしてやちよに何を齎すのか?
FILE #48
大親分こと紅晴結奈の邸に泊まることになった、やちよ&めぐみん。
翌日。
大親分は一日忙しいので、暇ができる夕暮れまで、市内散策をすることに。
向かった先は竜ケ崎町のある焼き肉屋。
そこで彼女は店主をしている爆殺天使ウェルダンちゃん
大庭樹里と出会う。
樹里の店は昔、謂れのない食品偽造加工疑惑と、
ウェルダン至上主義のせいで長らく低迷していたが、
ある「外部講師」の指導を受けて持ち直したのだと。
その講師の名は沖田 誠(通称:アニキ)。
名店「神戸五稜郭亭」の人気シェフであり、
樹里の店の調理場で、“モニター越し”で指導しているのだ。
「実はコイツ(モニター)は認証システム付きでな。スイッチを押した時に指紋と顔を一瞬でスキャンするんだ。ウチの系列グループのシェフとアニキら講師しか登録してないから、外部に漏れることは無いんだ」
調理場には他にも、『分身ロボット』がある。
沖田アニキは専用ヘッドギアを付けて、この分身ロボットを遠隔操作していた。
なるほど。
これで樹里に“直接”調理指導が可能、という訳だ。
二人を繋ぐハイテクな機械の数々。
これには、あるIT企業経営者の仲介があった。
やちよはその人物の名を知る。
そして、紅晴邸に戻り、もう一泊したやちよは、
二木市を後にするのだった。
FILE #49
神浜市。
市役所に戻ったやちよは、市長・夕霧青佐に、結奈との会話を報告する。
実は10年前。
二木市にもサンシャイングループは絡んできたのだ。
当時、二木市の経済は衰退しており、治安は悪化していた。
なので、地方再生プロジェクトをサンシャイングループは打診してきた。
しかし、それこそが“罠”……!
端的にいうと、
参京区とか万々歳とかにやろうとしていたことと、一緒である。
つまり、
「技術力など“良いモノ”は持ってるけど、経営難に陥ってる」
店に近づき、店主に上手いこと言って誘惑。
「買収という形で“良いモノ”だけを根こそぎ奪う」
のが目論見だ。
しかし、それがわかっていても、
サンシャイングループの傘下に入ってしまう店は後を絶たない。
何故か。
それは福利厚生が凄くしっかりしてるからである。
つまり、買収された企業の経営者は、
「もう頑張らなくていい」し、「個人経営よりも、安定した収入が常に手に入る」。
家族がいる者は、家族と過ごせる時間がより増える等メリットが多い訳だ。
しかし、
現実的に考えて、そんなことが“可能”な筈が無い。
何か裏がある――――結奈達は独自に調査したところ、
『魔法少女達を業務従事させている』
事実を確認したのだった。
確かに、魔法少女の身体能力を使えば、あらゆる業務は手軽になる。
しかし、国の厳しい審査と許可なしでの、魔法少女雇用は違法。
訴えなければ。
だが、結奈達が得た証拠は、
サンシャイングループに握り潰されてしまうのだった。
事実を知っていた仲間も、行方不明となった。
「成す術が、無い……」
「別の手を考えなければなりませんでした……。私達は、各町の商店街の有識者達に聞き回り、必要なのが、強力なバックボーンだと分かりました。彼らの想いを代弁し、世界へと発信できる、強い改革者が。サンシャイングループ会長・日秀源道と対等に……いえ、圧倒する程の才覚、カリスマ、財力を兼ね揃えた救世主が……」
それこそが、“帝皇”。
【日本のビル・ゲイツ】と呼ばれるIT界の革命児。
世界有数の企業、皇グループのCEO。
二木市政は、結奈達の説得もあり、
再生プロジェクト先を、サンシャイングループから
皇グループに乗り換えることで、経済を持ち直したという。
ちなみに、
皇 陸翔は現在、【神浜市・明京町・大東区】にいるらしい。
しかも、場所は海沿いのスラム街。
早速、向かってみるやちよ。
そこには、浮浪者風の中国人に変装した陸翔と、
秘書兼ボディガードの魔法少女、
FILE #50
舞台は現在に戻る。
参京区の事情を話すと、皇 陸翔は乗り気になってくれた。
しかし、協力するには、条件があるという。
「皇グループが開発した、魔法少女を安全に育成するためのシミュレーションシステム。
【Malleus Maleficarum Machina】……略して“MMM”(エムスリー)よ」
「まれうす・まれふぃー……?」
「マッレウス・マレフィカールム・マキナ――『魔女に鉄槌を下す機械』を意味するの。開発に参加したアメリカの技術者チームが名付けたそうだけど……皇会長が物騒なのは嫌だからって、日本ではこう呼んでるわ」
―――――【LICHT】
「リヒト……?」
「ドイツ語で、光や輝きを意味するのよ」
※ここでざっくり解説!
皇グループが開発した、とんでもなくドでかい機械だよ!
(フルダイブ型シミュレーションシステム)
普段はみたまの店の奥にしまってあるよ!
50パターンもの魔女との戦闘を、リアルに近い環境で練習できるよ!
世界各国の魔法少女の意見を参考に、結界の模様や質感、使い魔、魔女を完全再現したよ!
支援システム『
利用者の魔法少女経験が3年未満だった場合は、
強力なアバター(AI)を、任意で味方に付けることができるよ!
テストプレイした者たち全員から、
このリヒトには重大な『欠陥』があるという。
だが、それが何なのか、分からない。
それを解明するのが、やちよの課題だったのだが……
「試験に参加されている魔法少女は……会長ご本人が世界中から信頼できる者のみを集めている。皆が7年をくだらない、大ベテランよ……なのにっ」
「だったら、逆に『経験が無い子』だったら、見えてくるものが違ってくるのかも」
そんなことを言ってしまったが為に、
テストプレイに強制的に参加させられてしまういろは。
ヘッドギアを装着してフルダイブ!
が……やちよは、「いろはに合わせて『レベル設定』する」ことを、
うっかり忘れてしまっていた。
レベル設定はやちよに合わせたまま。
つまり『最高』レベル!
テストプレイ開始まもなく、いろははゲームオーバー!
……だが、お陰様でいろはは気づくことができたのだった。
【LICHT】の欠陥を。
FILE #51
「リヒトのシミュレーションは、
完全なシステムに見えたリヒトの欠陥……
それは、リアリティの欠如であった。
いろはは先日、帰郷した時、魔女に襲われ、殺されかけた。
その時の恐怖と不安を思い起こし、生きる為に必死にさせる程の『リアリティ』が
リヒトのシミュレーションには感じられなかったのだ。
『魔女の口づけ、及び結界に囚われた一般人の再現……そして、使い魔・魔女の質感をよりリアルに表現すること……か』
何はともあれ、皇 陸翔からの課題をクリアしたやちよ。
約束通り。
彼は本腰を入れて、『参京区再生プロジェクト』を行うこととなる。
一方、いろはも鶴乃に連絡していた。
話を聞いて、鶴乃はビックリ仰天!
皇 陸翔が経営する、『皇グループ』は“世界”でも1、2を争うIT企業である。
サンシャイングループなど比較にすらならない程の。
しかし……
『……でも、怪しいよ』
上手い話など無い。
鶴乃は過去の経験から、皇 陸翔を信用する事ができなかった。
信用すれば、また裏切られるかもしれない。
サンシャイングループがそうであったように。
いろはの説得にも、鶴乃は全く応じなかった。
しかし、
「環が大企業の言いなりに落ちぶれるようなタマじゃねえのは、お前が一番よく分かってんだろ?」
「どうせいつ沈むか分からねえ泥舟の上の人生だ。今勝負しなくて、いつおっ始める? ……明日か? だが、そんな都合の良い明日は絶対に来ねえ」
大叔父・木次郎の“説得”と、
「お前が、環のやべえ所まで受け入れるって言った時、俺ぁ、嬉しかった」
「こんなに良い子に育ってくれたんだ。兄貴もあの世で鼻が高いだろうなって。……まあ結局……口からでまかせだったみてぇだが」
「所詮てめえも、サンシャイングループと同じ穴の狢か」
“焚き付け”により、鶴乃は目を覚ますのだった。
「私は、サンシャイングループとは違うから。
いろはちゃんのこと、全力で向き合うから。
だから、いろはちゃんがやろうとしていること、手伝わせて!」
『……その言葉を、待ってたよ。鶴乃ちゃん』
こうして。
いろはと鶴乃は、皇 陸翔に協力。
参京区に人を呼び込む為の、大きなプロジェクトを企画するのだった。
FILE #52
1ヶ月後。
参京商店街にて、大きな祭りが開催される。
皇 陸翔は、参京商店街を
『リヒト試験会場』として一般に公開。
参京商店街には、世界中から人が集まり、
大きな盛り上がりを見せた。
その立役者の一人であるいろはは、
同郷の親友・皆木葉菜と一緒に、商店街を回っていた。
『リヒト試験会場』では、
皇 陸翔の“技術者”としての病的な姿勢に驚嘆・辟易したり……
大広場では、やちよやみたまらモデル組と一緒に、
カミハマン・ショーを観て、楽しんでいた。
その後、万々歳に訪れ、お昼休憩を取る二人。
鶴乃は、葉菜と意気投合しながらも、不意にいろはに零す。
「今までのわたしって無我夢中で100点だけを目指してきたからさ、周りを見てる余裕なんてちっとも無かったんだよ……。でも今、本当にやりたいことを見つけてからは、凄く人と向き合えてる気がするの」
全てはいろはのお陰だ。
そう感謝を伝えると、
「……本当に、いろはちゃんって似てるね」
昔、一度だけ遊んだことのある、青い髪の少女と。
鶴乃は、そう切り出して、まだ話してない過去を教えるのだった。
それは鶴乃が3歳の頃……
万々歳の近所には、焼き肉屋があり、看板娘のウェルダン大庭樹里がいた。
面倒見が良かったため、鶴乃は樹里を慕っていた。
しかし、樹里は突然、二木市へ引っ越すことになる。
悲しみに暮れる鶴乃。
追い打ちをかけるように、近所に住む男の子が、鶴乃に喧嘩を売って来た。
鶴乃はカッとなり、拾った石を投げて、怪我を負わせてしまうのだった。
大叔父・木次郎が叱責するが、「相手が悪いから仕方ない」と鶴乃は謝らない。
だが、木次郎は鶴乃の頬を叩き、叱りつける。
「悲しい顔」をして。
人を傷つける事は、辛い事だ――――そう教えたかったのかもしれない。
「おんじのバカ! だいっきらい!!」
しかし、幼い鶴乃に大叔父の意図は読めなかった。
自分の非を認めず、家出してしまう。
そして、離れの公園で、あてもなく、独り寂しくしていたところに、
――――ひとり? いっしょに、あそぼう。
青い髪の、綺麗な少女がそう、鶴乃に声を掛けるのだった。
2人は思いっきり遊んだ。
しかし、蹴ったボールが道路に飛び出してしまう。
鶴乃も道路に飛び出すが、車に轢かれそうになる……
だが、青い髪の少女が、鶴乃の前に立ち、間一髪のところで車を停めたのだった。
「どうやって謝ってもらおうかなあ」
だが、車から下りた男は「暴漢」だった。
男は青髪の少女の体に狙いを定めていた。
だが、青髪の少女は、恐れることなく、
「ごめんなさい」
「わたしたちがご迷惑をおかけしました。もうしわけありません」
「ごめんなさい。わるいことはにどとしません。ゆるしてください」
汚れることも構わず、
土下座をして、路面に頭を擦りつけながら、何度も謝ったのだった。
死ぬほど怖い筈なのに、自分が悪いことを認めて、謝っている。
鶴乃は、青髪の少女がすごいと思っていた。
しかし、暴漢は、青髪の少女を車に乗せようとする!
……が、連れ去る前に、大叔父が暴漢を撃退し、事なきを得るのだった。
しかし、あの青い髪の少女は誰だったのか。
結局、名前は聞かなかった。
だが……
七海やちよが、独りで泣いてる少女に、優しく声を掛けてる姿を見て、
鶴乃は気付くのだった。
昔出会った、“青い髪の少女”。
それは、七海やちよだったのだ!
鶴乃はやちよに駆け寄った。
しかし、口から出た言葉はやちよへの“暴言”であった。
『わたしたち、ちっちゃい頃、一緒に遊んだよね?』
本当はそう言いたかった筈なのに……。
あの時の、感謝を言いたかったのに……。
やちよを前にしたら、憎悪の感情が沸いてしまった。
その後、いろはに泣きつく鶴乃。
全てを諦めようと決心した時、いろはは、
「これで終わりなんて、絶対に認めない……!」
「約束したでしょっ!?
鶴乃の腕を引っ張り、
「鶴乃ちゃんが諦めても、私は諦めない! だって私は、鶴乃ちゃんの“親友”だから! おんじさんみたいにはなれないけど、おんじさんの次くらいには鶴乃ちゃんのことを分かってあげたいからっ!」
「だから私は、貴女とやちよさんを意地でも向き合わせる! そうしたいのに、それができない貴女を見てるのが嫌だから……そんなの、私の気分が悪くなるだけだから……っ! もう、鶴乃ちゃんを引っ張り上げるのいい加減疲れたからっ!!」
強い意志を込めて、鶴乃をやちよの下へ連れていくのだった。
「やちよさんっ! 貴女は……誰の味方なんですかっ!?」
「私は、神浜市に住む全ての人達の味方よ。今も、これから先も、ずっと」
「だから、全部一人で抱え込むんですか……!」
「そうする以外に、戦う術を知らないからね」
やちよと再会する二人。
いろはが説得するも、やちよは向き合おうとしない。
しかし、
「わたしたち、ちっちゃい頃……いっしょに遊んだよねっ?」
鶴乃のその一言に、やちよは反応する。
「あんたがわたしたちにしたことは、確かに酷いことだった。わたしは絶対に忘れない! でも……っ」
「もう……終わりにしよう」
「あんなこと言っちゃって、信じてもらえないかもしれないけどさ……もうお互いに攻めるのはやめよう! わたしはもう、自分の弱さに嘆いて誰かに八つ当たりしたくない! 誰も、傷つけたくないし、失いたくない……。あんたのこともっ……!」
「やちよ、お願いっ! もう一度だけでいいから、あんたと向き合わせて!」
鶴乃は本当の気持ちを、やちよにすべて打ち明けるのだった。
やちよは、鶴乃達と向き合い、
二人を中央区のある定食屋「よねだ」へと案内する。
訳が分からないまま、やちよに言われる通り、注文をする鶴乃。
鯖の味噌煮定食を頂くと、驚いた!
それは、再開発計画によって、
参京区を去った筈の川野ケイ子の店の味と、同じだった。
しかし、厨房で働いてるのは川野ケイ子本人ではなく、
彼女の『分身ロボット』(皇グループ製作)であった。
本物の川野は自宅にいて、ロボットを遠隔操作しているのだ。
「二木市の大庭さんの店の厨房で見た時、これだ! って思ったわ。これなら、自宅から動いて頂く必要も無く、安全に若い人達に技術指導して頂くことができる……!」
やちよが皇 稜斗に提案した作戦の全容とは、これだった。
中央区で店を開いたばかりの若い経営者達と、参京商店街の老舗の経営者達を直接繋げるネットワークシステムを構築すること。
皇グループなら、それが可能だと思った。
「川野さんと中山さんは協力を示してくれたの。それが神浜の将来につながるのならって……あの人達が呼びかけてくれたお陰で、腕利きの職人やプロが賛同してくれた。シニア層が築いてきた信念や地価を、若い人たちが受け継いでくれると信じてる」
古きものを壊して、全く新しいものに作り変える――――そんな行政を、私は認めない。
やちよは初めて鶴乃と向き合い、自分の気持ちを全て伝えた。
鶴乃もまた、当時と変わってないやちよに、心から安心するのだった。
そして、夕暮れ。
幼い二人が初めて出会った公園。
鶴乃とやちよ。
かつて、お互いに争い合った二人は、
“あの時”と同じように、思いっきり遊びあったのだった。
FILE 52だけ異様に長い……
4~5話くらいに分けとくんだったなあ……