魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost   作:hidon

139 / 155
前回のあらすじ……

 二年前……
 七海やちよは、両親の死後、未成年後見人となってくれた恩人・
 梓 つむぎの頼みで、参京区再開発計画に協力していた。
 良かれと思って、参京区で、再開発反対派の店主達を次々と説得に回る。

 しかし、それは、区民の気持ちに寄り添えず、
 計画の最高責任者である、市長の意図も汲み取れて無い……
 自分に都合の良い大人にゴマを擦って、
 気持ち良くなりたいだけの、身勝手な行いでしかなかった。

 市長に叱責を受けたやちよは、罰として、
 二木市へ向かうよう命令を受ける。

 そこで、“大親分”と会い、
 彼女から、サンシャイングループの、卑怯な手口を知る。

 このままでは、
 参京商店街は衰退の一途を辿る……。
 歴史と文化によって培われた、素晴らしい技術等が、
 サンシャイングループに根こそぎ奪われる可能性があるからだ。

 だが、大親分から、“帝皇”と呼ばれる人物を紹介される。
 彼と会い、相談するやちよ。
 “帝皇”は、「条件をクリアすれば」、自分が参京区再開発事業に携わってもいいと、提案する。


 そして、現在。
 再開発事業は、梓 つむぎの死亡により、現在凍結中。

 やちよは、未だに、“帝皇”からの「課題」をクリアできずにいた。
 だが、いろはの提案と協力もあり、課題をクリア。
 約束通り、“帝皇”は再開発事業に取り組むこととなる。

 その後、“帝皇”主導で、大きな祭りが開催。
 世界中から人が集まり、大盛況となった参京商店街。
 鶴乃も忙しそうにしながらも、満足な様子だった。


 鶴乃は、幼少の頃に、
 “青い髪の少女”と、一度だけ、一緒に遊んだ事を思い出す。
 芯が強く、人の為に自分を犠牲にする所が、いろはとよく似てた。
 いろはと話しているうちに、その子の事を、鮮明に思い出すのだった。

 その後、
 由比鶴乃は、“青い髪の少女”が、
 “幼い頃の七海やちよ”であったことに気づく。

 いろはの説得と協力もあり、
 鶴乃は七海やちよと向き合い、自分の気持ちを正直に伝える。

 そして、やちよもようやく、鶴乃と向き合う決心を見せる。
 自分の想いを鶴乃に伝え、
 参京区の老人達が培ってきた文化と技術を失わせないように、
 陰で努力していた事も伝える。

 こうして、ようやく二人は和解。
 それを示すように、
 幼い頃と同じように、久しぶりに思いっきり遊び合ったのであった。
 


3.5章 環いろは FILE #53~55 ざっくり解説!

 

 

 

 

  

 

 

 

FILE #52.5

 

 深月フェリシア編。

 

 夜、帰路に経ついろはをビルの屋上から監視するフェリシア。

 彼女の下には、同業者の傭兵・伊月ジュンと、

 雇い主である、赤い外套の魔法少女・紅羽根(双樹ルカ)がいる。

 

「オレは神が嫌いなんだ。だから神に好かれてる奴もとことん嫌うのさ。あいつの魔法少女のカッコー見たかよ。まるで修道女(シスター)だぜ? ますます気にくわねえ……だからさーー」

 

(けが)してやるのも面白そうだと思わねえか? ジュン」

 

 フェリシアの目が獰猛に瞬く。

 まるで小兎に狙いを定めた狼のように……。

 

 彼女のターゲットは、いろはなのか?

 それとも――――?

 

 

 

 

FILE #53

 

 後日・ランチタイム。

 神浜中央図書館、1Fのカフェにて、

 いろはは、朝香美代と再会していた。

 

 元はと言えば、美代に、由比鶴乃を押し付けられたせいである。

 だが、いろはは、鶴乃を“救った”。

 約束通り、今度はいろはが「頼み事」を、美代に聞いてもらう番であった。

 

 『大賢者とは何者なのか、教えて欲しい』

 

 尋ねられた美代は、

 『大賢者』について、知っている限りの情報をいろはに伝える。

 

 ・魔法の総てを極め、司る者。

 ・総ての魔法少女の頂点に立つ、高位次元の存在。

 ・神浜市の特異点であり、全てを護る現人神。

 

 神浜の全てと繋がり、

 全ての生命を司り、魂の行く末を見届けるのが役目。

 そして役目を終えた魂を浄化し、極楽浄土へと導いている、という。

 

 他にも、

 魔義空(マギア)”・“怒病縷(ドッペル)という

 2つの『秘術』を教えてくれるそうだ。

 

 しかし、大賢者と会うには、

 過酷な試練をクリアしなければならないそうで……

 

 ・試練に関することは一切口外禁止。

 

 ・試練の内容を誰かに教えた場合、

  “罰”として、試練に関する記憶が全て消されてしまう。

 

 以上のような、厳しい掟も有り、

 美代にも、試練の詳細は分からないという。

 

 だが、神浜市長・夕霧青佐なら、

 もっと、詳しいことを知っているらしい。

 

『大賢者については、“知らない”』

 

 以前、青佐にそう言われたことを思い出す。

 騙された事に気付き、激おこぷんぷん丸となるいろはだった。

 

 

 美代と別れた後、

 市長執務室に殴り込む、激おこぷんぷん丸ないろは。

 信頼していた青佐に嘘を付かれた事が、メチャクチャ許せなかった。

 しかし……

 

「じゃあ、結果を見てみましょう。私が『大賢者を知らない』と言って、貴女はどうなったかしら?」

 

「貴女の足は動いた。朝香さんと話す機会が増えて、より親交を深めることができた。違う?」

 

 逆にそう言い返されて、いろはは返す言葉を失う。

 騙したのは、青佐なりの思いやりがあった。

 

「昔、ある人が言っていたわ。『人は最初から人じゃない。自分の足で歩いて人になっていくものだ』、とね」

 

「答えを知る私が教えるのは簡単よ。でもそれじゃあ、貴女には何も響かないでしょう? 実感を得なければ、それは人生の経験値には成り得ない。答えというものは、自分で求め彷徨い足掻き手に入れるものよ」

 

「私は、貴女にこの街の様々な人たちと親交を深めて欲しいと要求した。貴女もそれに応えると誓った。どう? 私が嘘を付いたことでお互いに得をしたじゃない? 結果オーライってやつよ」

 

 うまく言いくるめられた気がする……

 嘘を付かれた事はムカつくが、

 本心では、自分の事を想ってくれていた事が分かり、

 納得するいろはであった。

 

 

 そして、いろはは、青佐に大賢者の居場所を尋ねる。

 青佐も場所は知らなかった。

 しかし、“良く知っている者達”のところへ案内するという。

 いろはは青佐と額を合わせ、導かれる。

 

 そこは一面リンゴの花畑が咲く、天国のような『楽園』であった。

 

 いろはは、

 九尾の大妖怪・ヨヅルと出会い、彼女が<教授>と呼ぶ者の下へと、

 案内される。

 

 辿り着いた先にあるのは、巨大な桜の樹――

 その下で――

 

 親友の1人、柊ねむとの、再会を果たすのであった。

 

 

 

FILE #54

 

『人間は、動物と超人のあいだに張り渡された一本の綱である――――

 深淵の上にかかる綱である』

 

――――フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラ』より

 

 

 青佐のイマジナリーフレンド<教授>の正体は、柊ねむであった。

 

「はじめまして、というべきかな……? 環 いろは」

 

「僕は古くから君を知っている。だけど、僕は今、初めて君と会ったんだ」

 

 再会にも関わらず、不可解な事を、ねむは口にする。

 そして、神浜総合病院・小児科病棟の病室で、

 いろは、うい、灯花と4人で楽しく過ごした日々も、覚えていないという。

 落胆するいろは。

 しかし、

 

「でも、それは決して忘れた訳じゃないんだ」

 

「えっ?」

 

「ふむ……。どうやら君の知る僕と、君の目の前に居る僕は別人のようだ」

 

 そして、ねむはいろはに教える。

 自らの正体を。

 

 

『……君の言う通り、我々は自らの“良心”でそれを改善しなくてはならない。節制と貞潔を……我らに与え給うた神への敬意によって、それ自体を愛さなければならない』

 

 

『……わたしの頭の中は、いつの間に、こうなったんだろうか……?』

 

 

『たまき』

 

 

 それは、夢の中で一度だけ会った事のある、

 白衣を着て、“眼鏡を掛けている方”の、初老の女性であった。

 

()()()。僕は君が覚えている“柊ねむ”じゃない。だけど君の記憶の中に確かに存在する“柊ねむ”なんだ」

 

 驚愕のあまり、いろはは、一時、言葉を失った。

 しかし……

 

「……でも、分かったこともあるよ」

 

「へえ、それは興味深い。是非聞かせて欲しい」

 

「ねむちゃんはねむちゃんだってこと。

 芯の部分だけは、違わない。貴女がどんな人間になったとしても、“創造するねむちゃん”なのは変わってない」

 

 この『花畑の楽園』は、ねむが創造した世界だ。

 いろはは、周りを見渡し、“今のねむ”のことを受け入れるのだった。

 

 

 ※ここでざっくり解説! 柊ねむ教授って何をしてるの?

 

 神浜市の、『魔法少女生命維持システム』を管理・調整しているよ!

 ちなみに、ねむ教授は、システムの開発者!

 『九尾の大妖怪・ヨヅル』と、『カーバンクル・月出里』は、

 ポケモン助手だよ!

 

 

「人間は死んだ時、葬儀を行い成仏されると謂うがそれは誤りだ。

 大半はこの世に未練が残り、地の深くに留まってしまう。

 所謂、“地縛霊”だね。

 楽浄土へ旅立てなかった魂は、“大賢者”の下へ導かれて“浄化”される。

 そして、この【楽園】へと誘われる。

 

 僕は彼らを説得し、魔法少女の力になってもらっているんだ。

 七海やちよと朝香美代……

 神浜の魔法少女は、あまりソウルジェムの穢れを気にしてなかっただろう?

 つまりは、そういうこと。

 

 調整を受けた時、彼らが魔法少女の魂に宿()()んだ」

 

 

 話を聞いて凄いと思ったが、

 それよりいろはには、ねむに聞きたい事があった。

 大賢者の居場所だ。

 だが、ねむは、青佐と仲良し。つまり――

 

「僕は居場所を知ってるが、君に教えるつもりは無い。言えるのはせいぜいヒントぐらいだ」

 

 『答えを直接教えるのは、相手の為にならない』――それは青佐の受け売りだが、

 ねむには、いろはに全うしてもらいたい“役目”があった。

 

 それが『主人公』というもの――

 

「“主人公”……そんなものに、私が……?」

 

「なれるさ。……いや、ならざるを得ない。何故なら“彼ら”が君を選んだからだ。ここに眠る無数の魂が、君と言う新たなる物語の担い手を求め、神浜に誘った」

  

「魂が、私を……!?」

 

「君は成し遂げる為に神浜に来たのだろう、たまき? そして、彼らは君の欲求に応えてくれる。見えないところでね。君は、“運命”を味方に付けたんだよ」

 

「自信を持ち、胸を張れ。立って歩け。前へ進め。その力で状況を生み出せ。人を動かし、世界を変えろ。全てを味方に付けて、奪われたものを捥ぎ取ってやれ」

 

 そして、ねむはいろはにヒントを教える。

 それは「七海やちよに大賢者の事を聞く」というものであった。

 

 

 そして、

 

「ねむちゃんの知っている私って、ねむちゃんと仲が良かったのかな……?」

 

「――うん。君と僕は“親友”だった」

 

 お互いの“友情”が真実である事を確認し合った後、

 いろははヨヅルに案内され、楽園を去った。

 その背中を見えなくなるまで、見届けながら、

 ねむは、独り、つぶやくのだった。

 

「――――のがれよ、わたしの友よ、君の孤独の中へ」

 

「わたしは君が毒ある蠅どもの群れに刺されているのを見る。のがれよ、強壮の風が吹くところへ」

 

「のがれよ、君の孤独の中へ。君はちっぽけな者たち、みじめな者たちの、あまりに近くに生きていた。目に見えぬかれらの復讐からのがれよ。君にたいしてかれらは復讐心以外の何ものでもないのだ」

 

「彼らに向かって、もはや腕はあげるな。かれらの数は限りがない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

FILE #55

 

 <貴女には知らなければならない事が沢山あった筈。“教授”に尋ねなくて、本当によろしかったのですか?>

 

「だって、ねむちゃんって意地が悪いから。聞いたって教えてくれませんよ、きっと」

 

 ヨヅルと月出里に誘われて、

 いろはは楽園から現世へと戻る。

 

 そして、神浜市役所・市長執務室――

 

「今のあれは、普通の人じゃできないですよ。もしかして青佐さんって」

 

 いろはを楽園に導いた青佐の『力』。

 もしかして、彼女も魔法少女なのでは?

 だが、否定も肯定もせず、青佐は笑ってごまかすうのであった。

 

 

 

 視点は由比鶴乃へ。

 

 東京都・目黒区。

 参京商店街で、陶器店店主“だった”中山三郎の息子夫婦の家。

 

 そこに中山三郎本人はいた。

 彼は突然参京区での店を閉めて、息子夫婦の下へ行ってしまった。

 だが、皇グループのハイテクメカを使って、子供達に芸術指導を施しているそうだ。

 だが、久しぶりに再会した彼はすっかり弱っていた。

 

「申し訳無かったっ! お鶴ちゃん!」

 

 鶴乃に、土下座して謝る中山。

 彼は、二年前、うっかり鶴乃に零した“失言”を、

 ずっと後悔していたのだっだ。

 

『お鶴ちゃんが、()()()()だったらなあ……』

 

 そして、鶴乃が魔法少女になってから、

 参京区の皆に、差別的な言葉を言われ続けたのも、

 精神的に落ち込む原因だった。

 

 そして、鶴乃の願いによって犠牲になった者達。

 鶴乃の母と祖母の死、それさえ、自分のせいだと――

 

「あれはっ!! ……………………運が、悪かったんだよ。たまたま乗った船にあんな奴らが、テロが、居たから、殺されちゃっただけ(・・)なんだよ。誰も悪くないんだよ。わたしも、おんじも、爺ちゃんも……っ!!」

 

 自分の願いが発端ではあるが、

 その結末に至るまでは、偶然と偶然が重なったからだ。

 自分に言い聞かせるように、鶴乃は中山を説得し、

 

「私、今、幸せだよ」

 

「え?」

 

「魔法少女になってから、友達が出来たの。その子のお陰で、私は本当にやりたいことを見つけられた」

 

 だから、もう迷わない。間違わない。鶴乃はもう誰の為に頑張らない。これからは、今の自分の幸せを守る為に精一杯働く。そして、自分に幸せを教えてくれた人達の為に、努力して、強くなる。

 だから――――

 

「安心して、爺ちゃん。私は大丈夫だよ」

 

 そう伝えたことで、

 中山は憑き物が落ちたかのように、安心するのだった。

 

 

 

 そして、夜。

 一方の、ねむ達のいる『楽園』。

 就寝する一人と二匹。

 

<ふ、むっ……ふっ……>

 

 だが、最近月出里がうなされていることに、

 不審に思うねむ。

 そこへヨヅルもやってきて、様子を確認する。

 

「珍しく寝言を言っている。分かるかい?」

 

<目が見える、と申しております>

 

「目……?」

 

<血のように真っ赤な目が、私を睨んでいる、怖い、助けて……と、申しております>

 

「……やはり、貴女(・・)の仕業なのか……!?」

 

 

 

 場所は変わり、

 秘密結社『マギウスの翼』・最深部・『深淵』

 

 月出里に悪夢を見せていた者。

 それは、プロフェッサー・マギウス(里見灯花)であった。

 彼女は、側近であり、自身の“助手”の一人である

 『490』と呼ばれる少女と連絡を取る。

 

「そちらの様子はどう?」

 

<順調です。我が担当地区の重工業は全て、プロフェッサーの計画に賛同を示しました>

 

「良い傾向ねー」

 

<それとプロフェッサー、予てよりご要望されていた【ドロシー】ですが、今しがた試作機の製作が完了いたしました。近日中にご照覧頂きたく願います>

 

 なにやら物騒な会話をする両者。

 そして、490との連絡を終えた後、

 里見灯花は、独り、つぶやくのだった。

 

「さて、環 いろは。貴女はどう出てくれるのかにゃー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。