魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost 作:hidon
二年前……
七海やちよは、両親の死後、未成年後見人となってくれた恩人・
梓 つむぎの頼みで、参京区再開発計画に協力していた。
良かれと思って、参京区で、再開発反対派の店主達を次々と説得に回る。
しかし、それは、区民の気持ちに寄り添えず、
計画の最高責任者である、市長の意図も汲み取れて無い……
自分に都合の良い大人にゴマを擦って、
気持ち良くなりたいだけの、身勝手な行いでしかなかった。
市長に叱責を受けたやちよは、罰として、
二木市へ向かうよう命令を受ける。
そこで、“大親分”と会い、
彼女から、サンシャイングループの、卑怯な手口を知る。
このままでは、
参京商店街は衰退の一途を辿る……。
歴史と文化によって培われた、素晴らしい技術等が、
サンシャイングループに根こそぎ奪われる可能性があるからだ。
だが、大親分から、“帝皇”と呼ばれる人物を紹介される。
彼と会い、相談するやちよ。
“帝皇”は、「条件をクリアすれば」、自分が参京区再開発事業に携わってもいいと、提案する。
そして、現在。
再開発事業は、梓 つむぎの死亡により、現在凍結中。
やちよは、未だに、“帝皇”からの「課題」をクリアできずにいた。
だが、いろはの提案と協力もあり、課題をクリア。
約束通り、“帝皇”は再開発事業に取り組むこととなる。
その後、“帝皇”主導で、大きな祭りが開催。
世界中から人が集まり、大盛況となった参京商店街。
鶴乃も忙しそうにしながらも、満足な様子だった。
鶴乃は、幼少の頃に、
“青い髪の少女”と、一度だけ、一緒に遊んだ事を思い出す。
芯が強く、人の為に自分を犠牲にする所が、いろはとよく似てた。
いろはと話しているうちに、その子の事を、鮮明に思い出すのだった。
その後、
由比鶴乃は、“青い髪の少女”が、
“幼い頃の七海やちよ”であったことに気づく。
いろはの説得と協力もあり、
鶴乃は七海やちよと向き合い、自分の気持ちを正直に伝える。
そして、やちよもようやく、鶴乃と向き合う決心を見せる。
自分の想いを鶴乃に伝え、
参京区の老人達が培ってきた文化と技術を失わせないように、
陰で努力していた事も伝える。
こうして、ようやく二人は和解。
それを示すように、
幼い頃と同じように、久しぶりに思いっきり遊び合ったのであった。
FILE #52.5
深月フェリシア編。
夜、帰路に経ついろはをビルの屋上から監視するフェリシア。
彼女の下には、同業者の傭兵・伊月ジュンと、
雇い主である、赤い外套の魔法少女・紅羽根(双樹ルカ)がいる。
「オレは神が嫌いなんだ。だから神に好かれてる奴もとことん嫌うのさ。あいつの魔法少女のカッコー見たかよ。まるで
「
フェリシアの目が獰猛に瞬く。
まるで小兎に狙いを定めた狼のように……。
彼女のターゲットは、いろはなのか?
それとも――――?
FILE #53
後日・ランチタイム。
神浜中央図書館、1Fのカフェにて、
いろはは、朝香美代と再会していた。
元はと言えば、美代に、由比鶴乃を押し付けられたせいである。
だが、いろはは、鶴乃を“救った”。
約束通り、今度はいろはが「頼み事」を、美代に聞いてもらう番であった。
『大賢者とは何者なのか、教えて欲しい』
尋ねられた美代は、
『大賢者』について、知っている限りの情報をいろはに伝える。
・魔法の総てを極め、司る者。
・総ての魔法少女の頂点に立つ、高位次元の存在。
・神浜市の特異点であり、全てを護る現人神。
神浜の全てと繋がり、
全ての生命を司り、魂の行く末を見届けるのが役目。
そして役目を終えた魂を浄化し、極楽浄土へと導いている、という。
他にも、
“
2つの『秘術』を教えてくれるそうだ。
しかし、大賢者と会うには、
過酷な試練をクリアしなければならないそうで……
・試練に関することは一切口外禁止。
・試練の内容を誰かに教えた場合、
“罰”として、試練に関する記憶が全て消されてしまう。
以上のような、厳しい掟も有り、
美代にも、試練の詳細は分からないという。
だが、神浜市長・夕霧青佐なら、
もっと、詳しいことを知っているらしい。
『大賢者については、“知らない”』
以前、青佐にそう言われたことを思い出す。
騙された事に気付き、激おこぷんぷん丸となるいろはだった。
美代と別れた後、
市長執務室に殴り込む、激おこぷんぷん丸ないろは。
信頼していた青佐に嘘を付かれた事が、メチャクチャ許せなかった。
しかし……
「じゃあ、結果を見てみましょう。私が『大賢者を知らない』と言って、貴女はどうなったかしら?」
「貴女の足は動いた。朝香さんと話す機会が増えて、より親交を深めることができた。違う?」
逆にそう言い返されて、いろはは返す言葉を失う。
騙したのは、青佐なりの思いやりがあった。
「昔、ある人が言っていたわ。『人は最初から人じゃない。自分の足で歩いて人になっていくものだ』、とね」
「答えを知る私が教えるのは簡単よ。でもそれじゃあ、貴女には何も響かないでしょう? 実感を得なければ、それは人生の経験値には成り得ない。答えというものは、自分で求め彷徨い足掻き手に入れるものよ」
「私は、貴女にこの街の様々な人たちと親交を深めて欲しいと要求した。貴女もそれに応えると誓った。どう? 私が嘘を付いたことでお互いに得をしたじゃない? 結果オーライってやつよ」
うまく言いくるめられた気がする……
嘘を付かれた事はムカつくが、
本心では、自分の事を想ってくれていた事が分かり、
納得するいろはであった。
そして、いろはは、青佐に大賢者の居場所を尋ねる。
青佐も場所は知らなかった。
しかし、“良く知っている者達”のところへ案内するという。
いろはは青佐と額を合わせ、導かれる。
そこは一面リンゴの花畑が咲く、天国のような『楽園』であった。
いろはは、
九尾の大妖怪・ヨヅルと出会い、彼女が<教授>と呼ぶ者の下へと、
案内される。
辿り着いた先にあるのは、巨大な桜の樹――
その下で――
親友の1人、柊ねむとの、再会を果たすのであった。
FILE #54
『人間は、動物と超人のあいだに張り渡された一本の綱である――――
深淵の上にかかる綱である』
青佐のイマジナリーフレンド<教授>の正体は、柊ねむであった。
「はじめまして、というべきかな……? 環 いろは」
「僕は古くから君を知っている。だけど、僕は今、初めて君と会ったんだ」
再会にも関わらず、不可解な事を、ねむは口にする。
そして、神浜総合病院・小児科病棟の病室で、
いろは、うい、灯花と4人で楽しく過ごした日々も、覚えていないという。
落胆するいろは。
しかし、
「でも、それは決して忘れた訳じゃないんだ」
「えっ?」
「ふむ……。どうやら君の知る僕と、君の目の前に居る僕は別人のようだ」
そして、ねむはいろはに教える。
自らの正体を。
『……君の言う通り、我々は自らの“良心”でそれを改善しなくてはならない。節制と貞潔を……我らに与え給うた神への敬意によって、それ自体を愛さなければならない』
『……わたしの頭の中は、いつの間に、こうなったんだろうか……?』
『たまき』
それは、夢の中で一度だけ会った事のある、
白衣を着て、“眼鏡を掛けている方”の、初老の女性であった。
「
驚愕のあまり、いろはは、一時、言葉を失った。
しかし……
「……でも、分かったこともあるよ」
「へえ、それは興味深い。是非聞かせて欲しい」
「ねむちゃんはねむちゃんだってこと。
芯の部分だけは、違わない。貴女がどんな人間になったとしても、“創造するねむちゃん”なのは変わってない」
この『花畑の楽園』は、ねむが創造した世界だ。
いろはは、周りを見渡し、“今のねむ”のことを受け入れるのだった。
※ここでざっくり解説! 柊ねむ教授って何をしてるの?
神浜市の、『魔法少女生命維持システム』を管理・調整しているよ!
ちなみに、ねむ教授は、システムの開発者!
『九尾の大妖怪・ヨヅル』と、『カーバンクル・月出里』は、
ポケモン助手だよ!
「人間は死んだ時、葬儀を行い成仏されると謂うがそれは誤りだ。
大半はこの世に未練が残り、地の深くに留まってしまう。
所謂、“地縛霊”だね。
楽浄土へ旅立てなかった魂は、“大賢者”の下へ導かれて“浄化”される。
そして、この【楽園】へと誘われる。
僕は彼らを説得し、魔法少女の力になってもらっているんだ。
七海やちよと朝香美代……
神浜の魔法少女は、あまりソウルジェムの穢れを気にしてなかっただろう?
つまりは、そういうこと。
調整を受けた時、彼らが魔法少女の魂に
話を聞いて凄いと思ったが、
それよりいろはには、ねむに聞きたい事があった。
大賢者の居場所だ。
だが、ねむは、青佐と仲良し。つまり――
「僕は居場所を知ってるが、君に教えるつもりは無い。言えるのはせいぜいヒントぐらいだ」
『答えを直接教えるのは、相手の為にならない』――それは青佐の受け売りだが、
ねむには、いろはに全うしてもらいたい“役目”があった。
それが『主人公』というもの――
「“主人公”……そんなものに、私が……?」
「なれるさ。……いや、ならざるを得ない。何故なら“彼ら”が君を選んだからだ。ここに眠る無数の魂が、君と言う新たなる物語の担い手を求め、神浜に誘った」
「魂が、私を……!?」
「君は成し遂げる為に神浜に来たのだろう、たまき? そして、彼らは君の欲求に応えてくれる。見えないところでね。君は、“運命”を味方に付けたんだよ」
「自信を持ち、胸を張れ。立って歩け。前へ進め。その力で状況を生み出せ。人を動かし、世界を変えろ。全てを味方に付けて、奪われたものを捥ぎ取ってやれ」
そして、ねむはいろはにヒントを教える。
それは「七海やちよに大賢者の事を聞く」というものであった。
そして、
「ねむちゃんの知っている私って、ねむちゃんと仲が良かったのかな……?」
「――うん。君と僕は“親友”だった」
お互いの“友情”が真実である事を確認し合った後、
いろははヨヅルに案内され、楽園を去った。
その背中を見えなくなるまで、見届けながら、
ねむは、独り、つぶやくのだった。
「――――のがれよ、わたしの友よ、君の孤独の中へ」
「わたしは君が毒ある蠅どもの群れに刺されているのを見る。のがれよ、強壮の風が吹くところへ」
「のがれよ、君の孤独の中へ。君はちっぽけな者たち、みじめな者たちの、あまりに近くに生きていた。目に見えぬかれらの復讐からのがれよ。君にたいしてかれらは復讐心以外の何ものでもないのだ」
「彼らに向かって、もはや腕はあげるな。かれらの数は限りがない。
FILE #55
<貴女には知らなければならない事が沢山あった筈。“教授”に尋ねなくて、本当によろしかったのですか?>
「だって、ねむちゃんって意地が悪いから。聞いたって教えてくれませんよ、きっと」
ヨヅルと月出里に誘われて、
いろはは楽園から現世へと戻る。
そして、神浜市役所・市長執務室――
「今のあれは、普通の人じゃできないですよ。もしかして青佐さんって」
いろはを楽園に導いた青佐の『力』。
もしかして、彼女も魔法少女なのでは?
だが、否定も肯定もせず、青佐は笑ってごまかすうのであった。
視点は由比鶴乃へ。
東京都・目黒区。
参京商店街で、陶器店店主“だった”中山三郎の息子夫婦の家。
そこに中山三郎本人はいた。
彼は突然参京区での店を閉めて、息子夫婦の下へ行ってしまった。
だが、皇グループのハイテクメカを使って、子供達に芸術指導を施しているそうだ。
だが、久しぶりに再会した彼はすっかり弱っていた。
「申し訳無かったっ! お鶴ちゃん!」
鶴乃に、土下座して謝る中山。
彼は、二年前、うっかり鶴乃に零した“失言”を、
ずっと後悔していたのだっだ。
『お鶴ちゃんが、
そして、鶴乃が魔法少女になってから、
参京区の皆に、差別的な言葉を言われ続けたのも、
精神的に落ち込む原因だった。
そして、鶴乃の願いによって犠牲になった者達。
鶴乃の母と祖母の死、それさえ、自分のせいだと――
「あれはっ!! ……………………運が、悪かったんだよ。たまたま乗った船にあんな奴らが、テロが、居たから、殺されちゃった
自分の願いが発端ではあるが、
その結末に至るまでは、偶然と偶然が重なったからだ。
自分に言い聞かせるように、鶴乃は中山を説得し、
「私、今、幸せだよ」
「え?」
「魔法少女になってから、友達が出来たの。その子のお陰で、私は本当にやりたいことを見つけられた」
だから、もう迷わない。間違わない。鶴乃はもう誰の為に頑張らない。これからは、今の自分の幸せを守る為に精一杯働く。そして、自分に幸せを教えてくれた人達の為に、努力して、強くなる。
だから――――
「安心して、爺ちゃん。私は大丈夫だよ」
そう伝えたことで、
中山は憑き物が落ちたかのように、安心するのだった。
そして、夜。
一方の、ねむ達のいる『楽園』。
就寝する一人と二匹。
<ふ、むっ……ふっ……>
だが、最近月出里がうなされていることに、
不審に思うねむ。
そこへヨヅルもやってきて、様子を確認する。
「珍しく寝言を言っている。分かるかい?」
<目が見える、と申しております>
「目……?」
<血のように真っ赤な目が、私を睨んでいる、怖い、助けて……と、申しております>
「……やはり、
場所は変わり、
秘密結社『マギウスの翼』・最深部・『深淵』
月出里に悪夢を見せていた者。
それは、
彼女は、側近であり、自身の“助手”の一人である
『490』と呼ばれる少女と連絡を取る。
「そちらの様子はどう?」
<順調です。我が担当地区の重工業は全て、プロフェッサーの計画に賛同を示しました>
「良い傾向ねー」
<それとプロフェッサー、予てよりご要望されていた【ドロシー】ですが、今しがた試作機の製作が完了いたしました。近日中にご照覧頂きたく願います>
なにやら物騒な会話をする両者。
そして、490との連絡を終えた後、
里見灯花は、独り、つぶやくのだった。
「さて、環 いろは。貴女はどう出てくれるのかにゃー?」