魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost   作:hidon

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二週間経つのが早くて困ります。

今回はかなり短めです。


FILE #72 蒼海幇vs竜ケ崎 先方戦(2021/03/11 おまけ追加)

 こうして……

 

 工匠大祭毎年恒例の目玉イベントである、蒼海幇グループの武術演武披露は急遽変更され……

 

 呉 豪杏(ウー=ハオジン)率いる赤竜隊と……

 

 大庭樹里率いるチーム竜ケ崎との……

 

 五対五の試合となった……

 

 

 

 

 なお、順番は以下の通りである。

 

 

          ←〇赤竜隊       →■チーム竜ケ崎

 

 

 曹 美篶(ツァオ=メイイェン)  ―先方―  緋華(ひばな)仙香(せんか)

 

 小 心蝶(シャン=シンディエ)  ―次鋒―  繚蘭(りょうらん)百花(ももか)

 

 崙 明零(ロン=ミンリン)  ―中堅―  高菜(たかな)真緒(まお)

 

 羅 子静(ラオ=ズージン)  ―副将―  宮根(みやね) (しゃく)

 

 洪 梅華(カウ=メイファ)  ―大将―  竜宮(りゅうぐう)綾濃(あやの)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――明京町・工匠区

 

 ――――工匠大祭会場・広場

 

 ――――19:00

 

 そこでは既に市内中から集まってきた大勢の観客達で賑わっていた。

 祭りの目玉である演武披露が無くなったことで、残念がる声も最初は聞こえていたが、すぐに熱狂へと変わった。

 それもその筈。

 魔法少女同士の戦いなんて、一般市民は滅多にお目に掛かれるものではない。何せ市条例どころか法律でも禁止されているのだ。見られるとしたら、暴力団が運営している裏賭博場まで身の危険を省みず行くしか無いのである。

 

「それでは、審判は私が務めさせて頂くヨ」

 

 すし詰め状態となった人込みの中心には、土俵に似た大型の円台――『擂台(れいたい)』が設置されていた。その檀上に立った(チュン) 美雨(メイユイ)がそう言うと拱手をして、観客達に向けてお辞儀をする。

 

「それでは、先方。前へ!」

 

 美雨が声を張り上げて合図すると、両サイドから魔法少女が登場する。

 まず、西側から現れたのは、曹 美篶(ツァオ=メイイェン)

 キョンシーに似た赤色の道士服を纏った、桃色の長髪と丸みの有る温厚な顔立ちが特徴の少女だ。

 年齢は美雨と同じだが、実力は侮るなかれ。

 豪杏(ハオジン)とは同郷出身の幼馴染で、日本に訪れる前から、名コンビとして共に数多の修羅場を勝ち抜いてきた、猛者中の猛者だ。

 

 次いで美雨は東側を見る。

 現れたのは、鎧武者――というよりは足軽のようだった。黒いインナーシャツとハーフパンツの軽装の上から、籠手、脛当て、二枚胴の甲冑で保護している。

 黒髪を後ろに束ねた快活溌剌を顔に映した女性――「緋華仙香」である。

 年齢は19歳。

 実力は未知数(というよりは樹里が教えてくれなかった)だが――――果たして?

 

 審判(メイユイ)の前に立った二人は、真剣な表情でお互いを見つめ合った。

 

「いざ」

 

 美篶(メイイェン)が、拱手と共に軽く会釈。対する仙香は、勢いを付けて深々とお辞儀!

 

よろしくおねがいしまっす!!!

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! みっなっぎっるぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

 

 まるでどこぞの色々おかしい戦国武将ゲームの某武将の様な雄たけびを張り上げると、獲物である二槍の穂先を頭上で叩き合わせた!!

 ガキィンッとけたたましい金属音が鳴り響くと同時に、凄まじい熱風が観客席まで吹き荒れる!!

 

 

 

 

「ウワー! あの緋華ってお姉さん、凄い迫力だねー!」

 

 ビリビリと痺れる様な魔力反応と、肌が焼け付くような熱気を全身で感じながら、鶴乃は感嘆の声を挙げる。

 

「うん……あの子、大丈夫なのかな?」

 

 隣にいるいろはも、仙香の強い魔力を感じ取った。

 今までに無い迫力だ。相当な実力者と見て良いかもしれない。

 対する美篶の魔力反応は微弱。ただじっと黙して呼吸を整えているだけ。体格差も仙香とは一回りも小さい。言っちゃ悪いが、迫力の欠片も無い――

 

「心配無いよ」

 

「っ!?」

 

 ――と思っていた矢先、不意にあきらのそんな一言が聞こえて、エッとなる。

 

「蒼海幇は、桁違いだから」

 

「それってどういう」

 

「すぐに分かるよ」

 

 穏やかな声色とは対照的に、その視線は獲物を突き刺すように据わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! 竜親分!! チーム竜ケ崎のみんな!! 二木市芸術文化振興会の皆さん!! 竜ケ崎の守り神様!! 私に御力をぉぉおぉぉぉおおおお!!!」

 

 仙香が咆哮すると、天に掲げた二槍の穂先に轟っと火が宿り、

 

「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ―――――――!!!」

 

 豪快に振り回しながら突進!!

 典型的な猪突猛進タイプのようだ。お世辞にも、武芸を嗜んでいる者の戦い方とは言い難い。

 だが、その迫力は凄まじく、槍先の火炎が全身に渦巻いて、さながら紅蓮の竜巻だ。直撃だけで一溜りも無いだろう。

 

「……」

 

 美篶(メイイェン)は表情を変えず、まず揃えた足を左右45℃の内股に開き、肘をグッと寄せるように引いて脇を締める『三戦(さんちん)立ち』の構えを取った。

 そして、前方に両腕を伸ばして三角形を作り、肘を落とすと、右手を胸の前まで寄せる、問手(マンサオ)護手(ウーサオ)の型を作る。

 

 『蒼碧拳』の源流の一つ――――詠春拳の構えである。必要最小限の動きで相手を返り討ちにする、近接戦重視の拳法である。

 

「っ!?」

 

 が、目前まで仙香が迫った瞬間――――消えた。

 美篶(メイイェン)は目を見開く。古武術の一つ“抜き足”か。

 直後、背中に強烈な熱気を感じて、タップスピンの要領で左足を軸にして回ると、

 

「必殺必勝!!」

 

 既に仙香の二槍が、眼前まで迫っていた。

 だが、美篶(メイイェン)に焦りは無い。

 尖端の狙いをよく見極めて――――(くさび)を打つ様に問手(左手)を伸ばした。槍の刃先が斜めに伸ばされた腕に沿って、身体の外側に逸れる。そして、もう一本の槍を護手(右手)で受け止めた。

 

「っ……うぇえっ?!」

 

 ――――しかも、指一本で。

 

 仙香が素っ頓狂な驚き声を挙げるのも無理は無い。

 そのまま、美篶(メイイェン)は「噴ッ!」と力を籠めると――槍が刃先からバリバリと音を立てて罅割れていき、バァン、と弾け飛んだ!!

 

「んなぁ」

 

 まさかの光景に、仙香はビックリ仰天の悲鳴を挙げる――

 

「隙ありですヨ」

 

「えっ?? あぐっ!!」

 

 ――間も無かった。

 高速で放たれた掌底が仙香の顎に炸裂し、首が大きく後ろへ仰け反った。

 更に美篶(メイイェン)は少し腰を落として、仙香の膝裏を手刀で払うと忽ち体が宙返り! 床に思いっきり背中を叩きつけて、仙香は呻く。

 

「うぐっ……!」

 

「もう御仕舞ですカ?」

 

 美篶の薄ら笑いが、火花の逆鱗に触れた。

 

「ぐぬう……んまだむぁだぁぁあああああッッ!!」

 

 カッと見開かれた両目がぎらんと燃え上がる。

 背筋の力で勢いよく立ち上がると、仙香の足元に魔法陣が形成される。

 

 

 

 

「固有魔法だ!」

 

 それを見て、咄嗟に観客席のあきらが叫んだ。

 魔法陣から火柱が発生し仙香の全身を飲み込む!! 天まで昇らんとする程の業火が、紅蓮の龍に変化した。とぐろを巻いて、擂台を包み込む!!

 

「業火絢爛!!」

 

 仙香の咆哮――瞬間、擂台の檀上で大爆発が発生!!

 轟音が鳴り響いた後に見えた光景に、全ての観客が絶句した。

 擂台の檀上全てが灼熱の業火で覆われていた。美篶も、美雨も、魔法を使った仙香自身も――舞台中で舞い踊る炎の群れに完全に呑まれてしまって、どこにも姿が見当たらない。

 

 

「なんて威力だ……」

 

 あきらの顔に不安が浮かんでいた。

 まさかここまでとは。蒼海幇のエリートといえども厳しいのではないか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――一方、炎の中では。

 

 

「ふっふっふっふ」

 

 目に見えるのは四方八方、炎、炎、炎…………正に灼熱地獄に相応しい擂台の上で、仙香は低い嗤い声を漏らしていた。

 

「使い魔なら20匹ぐらい一瞬で全滅。魔法少女でも数分で全身の水分を放出して干上がってしまう程の熱量です」

 

 これが緋華仙香の固有魔法である。

 目に見える炎はあくまで『幻覚】だ。触れても火傷することは無い。

 しかし、彼女自身から半径20m範囲の気温を爆発的に上昇させるのだ!!

 

「逃げられることは、不可能!! つまり、私の大!! しょおおおおおおおおうりいいいいいいいいいいいいぃいいぃぃ!!!!

 

 仙香は二槍を天高く掲げて、勝ち誇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが、どうしたヨ」

 

 ――――しかし、審判の美雨が“何事も無かったように”炎から現れた。

 

 

 

「大したものではありませんネ」 

 

 ――――そして、相手の美篶(メイイェン)も“何事も無かったように”炎から現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええっ!!? なんで!? どうして!?」

 

 二人は、無事だった。

 しかも、汗一つかくことなく。

 至って涼しい顔で佇んでいる様子が、仙香をビックリ仰天させた。

 

「蒼海幇の魔法少女は、鍛錬の一環として(ヤン) 秘輝(ミーフゥイ)老師の“火行”を日常的に行っておりますので」

 

「老師の炎に比べたら、あなたのなんて、そよ風同然ヨ」

 

「ええー……」

 

 なんなのこの子達――――??

 二人のあっさりした物言いに、仙香は意気消沈。同時に展開していた固有魔法による灼熱地獄も擂台の上から消え失せた。

 

 

 

 

「良かったぁ……無事だったぁ~」

 

 炎が消えて、ようやく三人の姿が確認できた。

 美雨と美篶(メイイェン)が平気そうだったので、あきらはホッと一息。

 

「ま、あんぐれぇでやられるタマじゃねえよな。アイツラはよぉ」

 

 その肩をポンと叩きながら、おけらはニッと笑う。

 

 

「「す、すごい……」」

 

 一方、いろはと鶴乃は、目に映る光景の凄まじさに、ただ呆然となっていた。

 

 

 

 

「っ…………うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 一方、擂台の上では、仙香が迷いを振り切るように首を振った後、再び二槍を振り回して猛突進!!

 

(やぶれかぶれになった……訳では無いようね……)

 

 恐らく、まだ『打つ手』は有る筈。

 美篶(メイイェン)は表情を緩めず、再び詠春拳の構えを取った。

 

「覇ッ!!」

 

 阿修羅の如き形相で仙香が槍の一突きを放つ。だが、美篶はあらかじめ胸の前で構えていた護手(右手 )で外側に弾くと、拳の形にした問手(左手)で仙香の顎を狙う。

 

「っ!?」

 

「掛かったッ!!」

 

 だが、直撃の寸前で仙香が両足を屈めて回避!!

 翼を広げた鳥のように、両腕を大きく広げると――

 

「喰らえッ!! 大車輪!!」

 

 ――轟ッという爆音と共に、身を焦がす程の熱風が擂台の上で吹き荒れた!!

 仙香が飛翔(・・)と同時に、槍を構えたままの両腕を勢いよく旋回!

 大回転と同時に放たれた魔力の波動が、空気を通じて観客席まで響き渡り、彼らを一斉に驚かせた。 

 これぞ仙香の奥の手。

 刹那的に炎の渦を描き、広範囲の相手を一撃で灰燼にする必殺の大技である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――が、この大技、弱点が有った。

 攻撃の瞬間、仙香が勢い余って大きく『飛翔』してしまうことだ。

 そう、『飛翔』とは……『高くジャンプする』ことである。

 

 つまり。

 

「足元が御留守ですヨ」

 

「あっ」

 

 屈めば簡単に(・・・)避けられるのである。

 

 仙香がしまった、という顔で足元を見ると、既にしゃがんで、じっと見上げている美篶(メイイェン)がいた。

 

「ハイッ! アッパーカット!!」

 

 両足を屈めた反動でロケットのように真っ直ぐ飛び上がった美篶(メイイェン)の掌底が、仙香の顎を叩く。

 

「あぐっ!」

 

「ハイッ」

 

 そのまま美篶(メイイェン)は仙香の顎を鷲掴みにして、背中から床に叩き落す!!

 瞬間――

 

「ぐぅ……っ!? あだだだだだだだだだだだだッ!!?」

 

 ――拳の豪雨が、仙香に降り注いだ!

 目にも止まらぬ美篶(メイイェン)の連続突きが、仙香の上半身に次々と叩き込まれる!!

 詠春拳の必殺技――――『チェーンパンチ』である。

 その名の通りチェーンソーのように拳を回転させることで、高速の連続突きを可能にした伝統的な技だ。

 やがて、豪雨が止んだ頃には、仙香の幼さを残した顔立ちはいつの間にか、青あざと腫れがあちこちに目立つ悲壮溢れる形相へと変貌していた。

 

「ううううぅぅぅ~~……」

 

 ボコボコになった顔の仙香は両目をグルグルの渦巻きにして、ガクリと倒れた。  

 

 

 後に仙香は、『あれはガトリングガンを至近距離で浴びたのと同じだった』と語ったという――――

 

 

「緋華仙香。戦闘不能。よって、(ツァオ) 美篶(メイイェン)の勝利」

 

 意識を失った仙香を見て、美雨がそう判定を下した。

 観客がわっと盛り上がる。

 美篶(メイイェン)は表情を緩めず、気を失った仙香に拱手を送ると、舞台から退場した。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカヤロウ仙香!! 何やってんだ!!」

 

「りょうおゆぶ~ん……むうしあけありあえん~~……」

 

 おけら達とは反対方向の観客席で、大庭樹里が檀上で這いつくばる仙香に向けて怒鳴る。

 仙香は相変わらず両目がグルグルのまま。意識も朦朧としているのだろう。言葉も覚束ない。

 

「チッ! しかし仙香がああもアッサリやられちまうとは……!」

 

 竜ケ崎の町中から選りすぐりの魔法少女を、更に鍛え上げて連れてきた……筈だった。

 だが、蒼海幣の戦闘力は、樹里の予想を大きく上回っていたのだ。

 焦燥が走るのも仕方が無い。

 今回は、先生の雪辱戦も兼ねているのだ。どうにかして、大将戦まで繋げなくては……

 

「竜親分、落ち着いてください」

 

「百花」

 

 そんな樹里の隣にスッと姿を顕したのは、同じく黒髪黒衣の魔法少女――――次鋒・繚蘭(りょうらん)百花(ももか)である。

 

「やってくれるな?」

 

「ええ、やられた分はやり返す。それだけです」

 

 百花は顔の前で拳同士を叩き合わせた。

 ガツンッと鈍く重い音が響き、その気合の入れように、樹里はニッと嗤う。

 

「よし、行ってこい百花! 『拳姫(けんき)』の実力を連中に思い知らせてやれ!!」

 

「承知」

 

 竜ケ崎が誇る最強のインファイターが擂台を昇り上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………そう、竜ケ崎の本当の恐ろしさは、これからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇おまけ――――没ネタ

 

 

<それではこれより、蒼海幇グループ・赤竜隊の皆様による武術演武披露を開始します。呉 豪杏さん! どうぞ!!>

 

 既に広場は無数の観客達で賑わっていた。

 人の海の中心に設置された舞台――――擂台の上では、栗色の髪の少女・矢宵かのこが元気溌剌と司会を進行していた。

 彼女に促されると、豪杏は舞台へ上がり、中心まで歩くと、周囲の観客達に向けて拱手を送る。

 瞬間、豪雨のような拍手が一斉に豪杏へと向けられた。流石は大祭の目玉イベント。地元の人達――否、神浜中の人達もこの時を待ち望んでいたのだろう。

 

<………………>

 

 呉 豪杏は瞳を閉じて、魔法少女へと変身。

 

<ハッ>

 

 両足をグッと屈めて、両腕をバッと広げた。同時に両手に召喚されたのは、固有武器の双剣。

 今にも飛び立とうと翼を広げた白鳥の如き絢爛さに、観客達が言葉を忘れて見惚れる。

 

「――――!!」

 

 豪杏の瞳がカッと見開かれ、形相に気迫が宿る。

 ――――演武が開始される。

 

 

 

 

 

 

 

「待て待て待て待てぇぇええええええい!!!!」

 

 

 

 

「何奴ッ!!?」

 

「「「「「「「!?!?」」」」」」

 

 突然、女性の大音声が聞こえてきて、豪杏と観客一同は何事かと声の方を振り向いた。

 見ると、長い黒髪の魔法少女らしき衣装の女性が檀上へと上がっているではないか!!

 

「なんだアイツ?」

 

「昼間見た豪杏ちゃんにイチャモン付けてたヤツじゃね?」

 

「ひっこめー」

 

「乱入すんなー」

 

 折角の楽しみを台無しにされた一部の観客達が非難を浴びせるが……長髪の魔法少女は意に介さずズンズンと歩み寄る。

 

「キサマは……!」

 

「フフフ……」

 

 豪杏がじっと睨みつける。魔法少女が不敵に笑う。

 

 

「なんだゴキブリか……」

 

 

「だああああああ~~~!!?」

 

「「「「「「わはははははは!!!」」」」」

 

 ――――が、豪杏のその一言に魔法少女が盛大にズッコケて、観客から笑い声が巻き起こる!!

 

「誰がゴキだっ!?」

 

 顔を真っ赤にした女性――――大庭樹里は、何故か懐からマイクを取り出すと、全ての観客に届かんばかりの声を張り上げた。

 

「蒼海幇!! 中国人の癖に日本の祭りで主役面で参加してるのが気に食わねえ!! この大庭樹里様がウェルダンにしてやるぜ!!」

 

 まるでヒール役を宛がわれたプロレスラーのデモンストレーションである。

 豪杏もまた、袖口からマイクを取り出すと、樹里をがキッと睨みつけて、一言。

 

「キサマ……バ〇サン焚くゾッ」

 

「だからGじゃないっつの!!ってマジで持って来てるし!? おいコラマジで火ぃ着けようとすんなッ!?」

 

 再びドッと湧く会場。

 

「……とにかくだ、そういう上から目線の物言いも気に入らねえ! そもそも、中国武術ってのは本当に強いもんなのかー!? パフォーマンスを売り出したいならここじゃなくサーカスにでも行けってんだ!! あぁん!?」

 

 ムッと眉間に皺を寄せる豪杏。

 

「……中国武術を馬鹿にする者は許せン」

 

ゴキジェット向けんなっ!!」

 

「例えそれが人間で無かろうと……」

 

「シリアスな顔でGネタ続けんなッ!! フン、やるってかァ!!」

 

 お互いにズンズンと近づいて額をくっつけ合わせる二人。

 

 しかし、そこで――――

 

「待テッ!!」

 

 観客席から魔法少女姿の美雨が飛翔し、二人の間に降り立つ!

 

「……二人とも、ここは一先つ、私に預けて欲しい……」

 

「美雨……」

 

「同じ蒼海幇のヤツか!」

 

「如何にも。けど、あちらに味方するつもりは無いヨ。大勢の人が観てる場所で、喧嘩はヨクナイ。ここは【試合】という形で勝負を付けるのはどうカ……?」

 

「分かっタ」

 

「ふん、まあ良いだろう!!」

 

 豪杏と樹里は了承して、距離を取る。

 

<な、なんと!! 演武披露が突然、試合会場に移り変わってしまいました!>

 

 

 

 

「な、なにこの茶番……」

 

 一幕を見通した後、鶴乃が誰にでも無くそうツッコんだ。

 

 

 

 

「みんなゴキジェットは持ったかー!!?」

 

「はい」「いざ」「このとーり!」「勿論」「害虫・即殺!!」

 

 豪杏が号令を飛ばすと、他の赤竜隊のメンバーの曹 美篶、小 心蝶、崙 明零、羅 子静、洪 梅華が一斉に舞台に飛び上がり袖口からゴキジェットを取り出して構える!!

 

「だからゴキブリじゃないってば!!」

 

「イぃぃいぃッ!!!」「イー」「イー♪」「イーイー!」「イー☆」

 

 必死で抗議する樹里の後ろから、緋華仙香、繚蘭百花、高菜真緒、宮根 灼、竜宮綾濃の五名が舞台に飛び上がった!

 

「お前らもノリノリでゴキブリのコスプレすんなァー!!!」

 

 樹里の必死の叫びが虚しく会場に響いた……

 

 

 

 

 

 

 

 試合前座……長いのと、樹里サマのゴキブリいじりが酷くなったので、没にしました。

 

 

 

 

 

 

 




「この展開(オリキャラ同士のガチンコ対決)、誰が望ん~だ~♪」

「♪そん~なの……誰も望んでねーよ!! 作者の思いつきに決まってんだろ!」

 という訳で、普段より少ない文章量ながら、書き直し等もあり、風邪をこじらせてしばらくダルさMAXだったこともありまして……いつのまにか二週間。
 急ピッチでラストを仕上げましたです、はい。

 次回も誰得オリキャラ同士のガチンコバトルはまだまだ続くのですが、お付き合い頂ければ幸いです。

 あと、時間が無いのでおまけは後日……すみませんm(_ _"m)

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