魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost   作:hidon

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 ポケットWiFiを解約したので、しばらくネットが使えず。
 加えて、新たに固定光回線を設置するまでに時間が掛かりました。

 今回から、またよろしくお願い致します。

 


FILE #75 蒼海幇vs竜ケ崎 中堅戦 ― 中編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっちまえ……ジェノサイドモンスター」

 

 突如、擂台の上に現れた“怪獣”。

 恐怖に慄き逃げる人々。四方八方で響く阿鼻叫喚の叫び声を耳にしながら、大庭樹里は愉快そうに笑った。

 

 

 

 

 

 ――――が、次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カム着火インフェルノオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 ( 訳:死ねえええええええええええええええええ!!!!!)

 

 ズドーーーーーンッ!! と、ロケットの如く飛び込んできた何者かの二―キックが樹里の顔面に炸裂ッ!!

 

「ぬわーーーーーーーーっ!?!?」

 

「親ぶーーーーーーんっ!?」

 

 その光景を目の当たりにした灼がビックリ仰天! 樹里はゴム毬のようにバインッバインッと跳ねながら、数m先の屋台に頭から突っ込む!!

 灼が慌てて駆け寄ると、大庭樹里がバッと起き上がった。怪我は無さそうだが、膝が顔面に減り込んだせいで……

 

(*)<だ、誰だテメェはァ――――――!!?

 

「ぶふっ!?」

 

(*#)<おいっ! 笑うんじゃねえ!!

 

「あいたー!?」

 

 顔面の形が見事(*)に変わってしまった。

 灼が思わず吹きそうになり、*(樹里)に頭をポカンと叩かれる。

 *(樹里)が前を向くと、

 

「こンのKBG(クソバカゴキブリ)がァぁああああああ!!! アンタのせいで私チャンの祭りが台無しじゃん!! どーすんのコレッ!? 責任取んなさいよ、責任ッ!!」

 

 祭りの主催者であり、主催団体・NPO法人『お組』の代表、藍家ひめなその人だ。

 端正な顔が台無しな程、鬼の如く顔を真っ赤に染めた形相で、頭から湯気をプンプン吹かして喚き散らしていた。

 

(*)<へッ、周りなんざ知った事か。勝ちゃあいいんだよ、勝ちゃあ!

 

 *(樹里)は得意気に胸を張って威張り返すが、その隣で灼が滝の涙を流していた。

 

「……おやぶーん……。今、審判が何て言ったか聞いて無かったんすかー?」

 

(*;)<えっ?

 

 ごめん、ぜんっぜん聞いて無かった――そう答えると、「どうせそんなこったろうと思ったよっ!?」と灼が泣き喚く。

 

「『試合中止』ですよぉ!! 『試合中止』ぃ~!!」

 

Σ(*;)<なんだとっ!?

 

「何今更ビックリ仰天してんすか!? 当たり前でしょ!! たまには周りみなさいよっ!!」

 

 灼に怒鳴られて、*(樹里)は慌てて周囲を見渡した。

 既に会場には人っ子一人いない……。

 審判の美雨が『試合中止』と言った直後――ゆうなやおけらといったお組メンバーが観客や露店商の人々の避難誘導を迅速に行った結果だった。

 

 言われてみれば確かに……これでは試合どころではない。

 

(*;)<……っていうことは……

 

 *(樹里)はおそるおそるひめなを見る。鬼の形相のまま、胸の前にバッテンを作った。

 

「決まってんじゃん!! せっかく集まってくれた人達を危険な目に遭わせたんだし! 失格よ、失格!! 永久追放っ!!」

 

Σ(*;)<ええええええええええええっっ!!??

 

「だから散々言ったじゃ無いですか! 舞桜(まお)を公の場で使うのは早すぎたんだって!! ほんっとに脳みそゴキブリサイズなんだからもぉ――――!!?」

 

 二人にこっぴどく怒鳴られて、ようやく現実を理解したらしい。

 *(樹里)の全身がワナワナと震えた。『試合中止』と聞いて、彼女が一番に恐れていることは――只一つ。

 

(*;)<うわああああああああ!! 先生すまねえええええっ!!

 

 チーム竜ケ崎、先生の雪辱を晴らせぬまま退場である。

 *(樹里)が泣き喚きながら、綾濃の足下で何度も土下座を繰り返す。

 しかし、対する綾濃はというと、至極冷静のままだった。寧ろ、三人の喧噪には一切興味関心が無いといった様子で、最初からじっと擂台の上のみを、真剣な眼差しで見据えていた。

 

(*)<……先生?

 

 *(樹里)がおそるおそる尋ねると、綾濃はようやくこちらを振り向いた。

 

「藍家代表」

 

「ん?」

 

「試合中止は、取り下げて頂けませんか?」

 

「ハァ? それってどういう――」

 

 ひめながジト目で綾濃を睨むが、彼女はフフッと微笑んだ。

 

「まだ、続行中ですから」

 

 綾濃の言葉に、ひめなは「えっ?」と目を丸くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お頭! 避難誘導は、済んだよ!」

 

「みんな安全なところへ案内しました!」

 

「おう、こっちもだ!! みんな、ありがとな!!」

 

 避難誘導を終えたおけら達、お組の魔法少女メンバーは再び擂台の前へと集まっていた。

 生まれたばかりの“怪獣”は、GuRrr… GARrru… と腹の底を絞るような唸り声を響かせながら、未だ一歩も動かずに、対峙する明零(ミンリン)を興味深そうに見下ろしている。

 まるで、子猫と成人男性のような体格差だ。この時点で、誰の目から見ても、勝負は見えていた。

 

「……な、なんなんですか、アレ?」

 

 いろはは、擂台に立つ巨塔の如き怪獣を、呆然と見上げていた。

 確か、二木市にも、魔導管理局は存在し、調整員が常在している。住んでいる魔法少女全員が『調整』を受けている筈である。

 故に、不気味だった。

 『調整』を受けた魔法少女は、肉体が致命的な損傷を受けない限り、魔女にはならない筈だ――――

 いや……あれは果たして魔女なのだろうか。似てる様で、全く異なる気がする。

 そして、肝心なのは高菜舞桜。彼女は、どうなってしまったのだろうか。

 

「エイリアン!? あるいはプレデターかな?!」

 

「言ってる場合じゃないよ! お頭!」

 

 真剣な顔で天然ボケな事を宣う鶴乃に、ツッコむあきら。

 おけらの方を振り向くと、彼女は「応よっ!」と力強く頷いた。

 パンッ! と、胸の前で両手を合わせると、目を瞑って――

 

 

「神浜の大地に眠りし人魂よ。我らの護神(まもりがみ)よ。我、八坂起良(おけら)の願いを聞き届け給え――――」

 

 

 そう唱えると、目をカッと見開いた!

 

 

魔女!!……いや、怪獣? ああもうどっちでもいいや! とにかく、人々に危険が迫っておりますので――――この地に、“結界”を!!」

 

 

 瞬間――――初めて見る光景に、いろはは驚愕した。

 地面から、淡い青色を帯びた半透明の光が発生して、擂台を包み込んだ。

 一瞬の内に、ドーム状の結界が目の前で形成された。中には、未だ睨み合う明零と異形の“怪獣”、そして審判の美雨(メイユイ)が閉じ込められる形となった。

 

「凄い……!」

 

「どうよ環の字! これが調整屋の奥義ってもんだ!」

 

 おけらがフンスッと鼻息を鳴らして解説する。

 あの結界は、魔女を完全に閉じ込めるが、魔法少女は出入り可能だという。

 つまり――――

 

「よし、僕たちは、結界に潜り込んであの怪物を倒す! 環さん、由比さん、手伝ってもらえる!?」

 

「は、はい!」

 

「もちろん!」

 

 既にあきらは魔法少女に変身していた。いろはと鶴乃も覚悟を決めて変身する。

 

「よし! 美雨、避難した人達の安全確保は!?」

 

「既にななかとかこには連絡入れたヨ! 二人共、避難所へ向かってる筈ネ! それに……」

 

 美雨が何か言おうとした瞬間、全員の頭にテレパシーが聞こえてきた。

 

<こちら赤竜隊の豪杏(ハオジン)! 今回の手柄はキサマラに譲ってやル!>

 

<こちら美篶(メイイェン)。つまり、お客様の事は気にせず、思う存分戦ってくださいネ~>

 

<こちら子静(ズージン)。負けたら承知しませんヨっ!>

 

 咄嗟に周りを見渡すと既に豪杏(ハオジン)達、赤竜隊メンバーの姿は無かった。

 この緊急事態だ。率先して、人々の避難と安全確保に動いているのだろう。流石の行動力である。

 

(ありがとう、豪杏さん! 助かるよ!)

 

(礼を云う間は無い筈ダ! さっさと行ケ!)

 

(わかってる!)

「環さん、由比さん、行くよ!!」

 

「はい!」

 

「オッケーッ!!」

 

 テレパシーで豪杏に礼を伝えると、あきらは、いろはと鶴乃を率いて結界に突入しようよする。

 しかし、その瞬間――

 

 

<待ってくだサイ!!>

 

 

「「「ッ!?!?」」」

 

 悲鳴のようなテレパシーが聞こえてきて、三人は思わず足を止めた。

 

<来ないでくだサイ!>

 

「えっ」

 

 必死の呼びかけは、あろうことか、結界の中にいる明零からだった。

 彼女が続けて飛ばしてきた次の言葉に、

 

 

<まだ試合は、続行中です……>

 

  

「へっ?」

 

 あきらは、目を丸くして呆気に取られるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結界内――――擂台の上。

 

 

「…………」

 

 

「GURUUa

  GURUua

  GUuUuuaAaaA………!!」

 

 

 崙 明零(ロン=ミンリン)は、先ほどまで高菜舞桜“だった”ものと睨み合っている。

 周囲が騒然とする中、不思議な事に、彼女と“怪獣”の間に流れる空気は静寂に満ちていた。

 

 二人以外の全ての人間が、世界から消え失せてしまったかのように。

 二人の間だけ、時が止まったかのように。

 お互いをじっと品定めしているかのように。

 

 そう――――明零は“怪獣”と自分に、ある共通点を見出していた。

 純粋なる闘いへの欲求。そして、勝利への果てしなき渇望。

 故に二人共、相手の姿しか見えていなかった。

 当然、周りの音も一切聞こえない。聞こえるのは、お互いの呼吸音だけ。

 

 どちらかの足が一歩でも前に出た時が――――“戦闘開始”だ。

 だが、二人は相手への強い警戒心から、“それ”を躊躇しているようだった。

 

「強がるな、明零」

 

(ユイ)ねえさま」

 

 我慢比べは永久に続くかと思われたところで、審判が二人の世界に入り込んだ。

 明零が振り向くと、隣で美雨(メイユイ)が、詠春拳の構えを取っていた。

 

「一人じゃ危ない。加勢するよ」

 

 そう言うと、明零は「いえ」と首を振った。

 

「ねえさまは、審判を続けてください」

 

 瞬間、美雨の眼が刃物の様に光るが、明零は構わず言葉を続ける。

 

「今、皆さまにもお伝えしましたが、試合は……続行です」

 

「正気か」

 

「大丈夫です。……彼女は最初から、わたししか興味ありませんから」

 

「……」

 

 ――――そうは云うが、と美雨は顔を“怪獣”へと向ける。

 容姿を端的に表すなら、“百眼の大蜥蜴”と言った所か。

 全身を覆う魚鱗は、さながら鋼鉄の装甲のようであり、灯りを受けた表面が桃色を基調とした不気味なサイケデリック状に光っている。明零を見下ろす顔には、複数の“眼”が張り付いている。百眼は全て鮮血のような真紅に染まり切り、地響きに似た唸り声は、今にも決壊しそうな理性を紙一重で保っているかのよう。

 

 何故、高菜舞桜がこんな姿に――――

 

 美雨の眼には、『孵化したばかりの魔女を全身に纏った』ように見えた。その姿こそ“百眼の大蜥蜴”なのかもしれないが……

 どういう原理か、その異形たる全身からは尋常で無い魔力の波動が溢れていた。今まで神浜市で出会ったどの魔女より、遥かに凌ぐ程の。

 

 故に、明零が『大丈夫』と判断した理由も――――分からなかった。

 恐らく、天才的な勘、というもので何かを察したのだろうが……

 

「っ!!」

 

 刹那、美雨が目を見開いた。

 百眼に覆われた“怪獣”の顔面が突如、一つの大きな口に変化した。

 

 

「KAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA~~~~」

 

 

 “怪獣”は口を大きく開いて、息を深く吸い込んだ。鋼鉄の胸板が山のように隆起する!

 

「明零っ」

 

 『耳を塞げ』――――と叫ぶよりも早く、“怪獣”が息を吐きだした!!

 

 

「KISYAAAAAAAAAAAAAAAAA

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

 

「「!!!!」」

 

 同時に爆発音のような大咆哮が放たれて、二人の耳を劈き、脳を揺さぶった!

 大地震でも起きたかの如く、視界が上下に弾む!!  

 

「ぐっ……!」

 

「明零避けろっ!!」

 

「えっ」

 

 耳を塞ぐタイミングが遅れた。衝撃に怯んだ事が最大の仇となる。

 ぐおんっという風切音と、明零の視界が鉛色に染まったのは、同時だった。

 

 

「GUuuUAAa!!!」

 

 

「グハッ!!?」

 

 “怪獣”の巨大な尻尾が目前に迫ったのだと理解した時には、腹部に鈍痛が走り、胃酸を撒き散らしていた。

 鋼鉄の一撃による激痛は背骨に届き、首から下の感覚が麻痺する。

 明零の小さな体は、空に向かって弾き飛ばされた。

 

「くっ……」

 

 

「OooOoooOOOOO!!!!」

 

 

 それでもどうにか空中で体勢を立て直そうとする明零を、“怪獣”は更に追撃!!

 岩肌に覆われた巨大な掌で、宙に浮かぶ明零を叩き落す!!

 

「アアアアアアアアアアア!!」

 

 高速で擂台に落下し、全身を強かに打ち付ける明零。激痛の余り悲鳴を挙げた。

 “怪獣”は攻撃を休めない。

 

 

「GUuAaA!!!」

 

 

 今度は、巨大なハンマーの如き右足を真上から降ろして踏み潰そうとしてきた!

 明零は咄嗟に転がって回避。

 

「っ! させるか!」

 

 全身に痛みと痺れが走っているが、彼女の闘志はまだ潰えていない。

 バッと起き上がると、踏み下ろされた足に乗って、“怪獣”の身体を駆けあがった。

 さながら本物の猫になった気分だ。怪獣の身体は岩山のように頑強で、至る所に鋭利な棘が生えており、非常に険しい。

 だが、明零は怖気づくことなく、俊敏な跳躍力でそれらを躱し、後頭部まで登り詰めた。

 

「…………」

 

 足場の悪い岩肌で、両足をしっかり付く。息を整えて、拳を軽く当てる――――

 

 

「OGo」

 

 “怪獣”が手で後頭部を払おうとした――――瞬間、

 

 

「征ッ!!」

 

 

   明零、必殺の一撃!!

 

 

「GOoA!?」

 

 ドンッという衝撃音と同時に、怪獣の頭が大きく前のめりになった。

 寸勁――――超至近距離から拳を射ち込む、別名『ワンインチパンチ』とも呼ばれる技である。

 かのブルース・リーが、アメリカで披露して、世間を騒然とさせた技だ。

 腹式呼吸を用いて、全身に気と魔力が行き渡らせた明零のワンインチパンチの破壊力は、松の大木を一撃でなぎ倒す。“怪獣”にも大きなダメージに――

 

 

 

「GOGAAAAAAAAAA

  AAAAAAAAAAAA!!!」

 

 

 

「っ!」

 

 ――なる、と思ったのは早計だった。

 目にも止まらぬ速度で“怪獣”は旋回し、その巨大な鉤爪で明零の身体を捕らえる!

 

「Aa~」

 

「……っ」

 

 眼下に映った光景に、明零の顔がぞっと蒼褪めた。

 “怪獣”の顔面に走る亀裂が割れた。無数の牙を生やした口が大きく開かれた。

 そこに、明零を放り込み、咀嚼を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――結界の外。

 

 

 その衝撃的な光景に、その場にいた全員が、絶句した。

 

「な……なんじゃありゃあっ!?」

 

「ね……ねえっ!! どう見ても食べてるっ!! 食べてるよねあれ!?」

 

「ひ、ひどすぎる……」

 

 おけら、鶴乃、あきらが愕然となる。

 お組の魔法少女達も、明零の言葉を信じて、試合の様子を固唾を飲んで見守っていたのだ。

 しかし、その結果は――――無残たるものに終わった。

 

「っ!」

 

「!? 環の字!!」

 

 全員が顔面蒼白となる中で、唯一いろはだけが結界に向かって駆け出していた!

 

「もう見てられない! 助けに行きます!!」

 

 明零の言いつけを破ることになっても、構わない。

 彼女は今、感じている筈だ。かつて、自分が感じたものと同じ――“死の恐怖”を!

 あんな想いは、二度と味わいたくないし、誰にもさせたくない!

 

 早く助けないと――――

 私一人だけでも、早く――――

 

 

<待テ>

 

 

 だが、突如頭に響いたテレパシーに、いろはの目が見開かれる。

 

「美雨さんっ!?」

 

<明零の言葉を忘れたカ。 今は試合中ヨ>

 

 何を言ってるんだろうか、この人は――――いろはの眉間にグッと皺が寄った。

 

「そんなこと言ってる場合じゃ……このままだと明零さんが!!」

 

<無問題ヨ>

 

 「えっ?」といろはは、足を止める。

 

<あいつは、この程度でやられるタマじゃ、無いヨ>

 

 刹那――結界の咆哮から、ごんっと鋼鉄同士を叩き合った音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「GIi……??」

 

 前歯に痛みを感じて、“怪獣”の顔が不快そうに歪んだ。

 次の瞬間――――

 

「征ッ!!」

 

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?!?」

 

 

 けたたましい破壊音と同時に、“怪獣”の前歯が数本空中へ弾き飛んだ!!

 明零が内側から、ワンインチパンチを放ち、破壊したのだ。

 上下に動く歯の隙間を搔い潜り、不安定なベロの上を両足で立って構えていた。

 口の中に差し込んだ、“光”に飛び込んで脱出する明零。だが、今の攻撃で“怪獣”が激昂した!

 

 

「OGOAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 

 

「ッッ!!?」

 

 音速でハンマーパンチを繰り出し、宙に浮かぶ明零の身体を再び擂台の上に叩き落す!!

 先程よりも遥かに凄まじい痛みと全身の痺れに、明零は声すら挙げられず――――

 

 

 

「っ…………」

 

 そのまま眠るように、意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――結界の外。チーム竜ケ崎の観客席。

 

 

「あわわわ……」

 

「へっ、楽勝だったな……!!」

 

 蒼褪めた顔で固まる灼の隣で、樹里は満足そうに笑う。

 

 

 

 

 次の瞬間――――

 

 

 

 

「鉄拳制裁じゃコラあああああああああああああ!!!!!」

 

 ズドーーーーーンッ!!と、今度はミサイルの如く飛び込んできたおけらのグーパンチが樹里の顔面に炸裂ッ!!

 

「ウボォぁああああああああああああああああああああ!!!???」

 

「親ぶーーーーーーん!?!?」

 

 数メートル先まで吹っ飛び、露店のゴミ箱に頭から突っ込んだ樹里に、灼が慌てて駆け寄る。

 

「八坂の!! てめえまで!?」

 

 樹里がゴミ箱を被った状態で起き上がると、頭から角を生やして顔を真っ赤に染めたおけらがいた。

 

「うるせえバカゴキィ! “勝負”ってのはな! お互いの力が拮抗するから盛り上がるもんなんだよっ!! あんなひでえもん見せりゃ客はドン引きするに決まってらぁ!!」

 

「まぁ確かにね~~……」

 

 灼が滝の涙を流しながら、おけらの言葉にうんうんと頷いた。

 何せ10メートル近い化け物が、10歳になったばかりの、小さな女の子を一方的に甚振(いたぶ)り、挙句の果てに食べようとしたのである。

 周りに観客がいたら…………いや、いなくても、退場案件だろう。

 間違っても、公共の場で披露して良いものではなかった。

 

「へっ、試合は続行って決めたろ! 勝ちゃあ良いんだよ勝ちゃあ!」

 

「親分、悪足掻きはそこまでにして……さっさと逃げる準備しましょ、ね」

 

 吠えるゴミ箱(樹里)の肩に、泣きながらポンと手を置く灼。

 

「なんだよっ! 舞桜は勝っただろーが!!」

 

「そういう次元の問題じゃないんすよもぉー……」

 

 視野が狭すぎるゴミ箱(樹里)に、ガックリと肩を落とす灼。

 自分達は、祭りで余計な騒ぎを起こし、あんな凄惨且つ残酷な光景を繰り広げたのである。

 工匠の住民達や客から非難の嵐を浴びる前に、とっとと逃げ去りたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 果たして……

 

 崙 明零はこのまま負けてしまうのか……?

 

 そして、チーム竜ケ崎の運命は……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本当は『後編』として一つにまとめるつもりだったのですが、
ノリノリで書いていたら16000字になってしまったし、チャプター付けるのも
メンドイので二つに分けました。

後編は近いうちに必ず投稿します。
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