魔法少女いろは☆マギカ 1部 Paradise Lost   作:hidon

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長らくお待たせいたしました。4回戦です。

対戦カードは、
宮根 灼(←) vs (ルオ) 子静(ズージン)(→)のイメージです、

【挿絵表示】

(カスタムキャストで作成)


FILE #78 蒼海幇vs竜ケ崎 副将戦 ― 前編

 ――――2018/07/18(土) PM20:15

 

 ――――神浜市・明京町・工匠区

 

 ――――工匠大祭会場・広場

 

 

 

 

 物議を醸しだした中堅戦は、一先ず、両チーム監督役の(ウー) 豪杏(ハオジン)、大庭樹里が『試合』として認め、祭りの主催者のひめなが受理したことで、一段落ついた。

 避難した一般客も、観客席に戻り、再び副将戦への期待に熱を挙げていた。

 

 (ロン) 明零(ミンリン)と高菜舞桜の戦いは、最早死闘。

 歴史に残る大激戦が繰り広げられた擂台の上は、見るも無残な程ボロボロになったが、今では時間が経過したことで、修理も終わってすっかり元通りに――

 

「――って、ちょっと待って!?」

 

 突然、観客席から鶴乃が立ち上がり、誰にでも無くツッコム。

 

時間経過って!? そりゃ前回投稿から約1カ月以上経ってるけどさ! 作中じゃたった10分だよ!? 修理の暇すら無いのになんでいきなり元通りになってんのっ!?」

 

 ――――全くもってその通りである。

 

「鶴乃ちゃん、あんまりそういうこと言っちゃダメだよ……」

 

「だけどいろはちゃん、これはいくらなんでもツッコミ所満載――」

 

「恐らく、あの方ネ」

 

 なんかメタな事を言い合う二人の間に、審判の美雨(メイユイ)が割って入る。

 首を傾げる鶴乃。

 

「あの方?」

 

「我らが蒼海幇、最高幹部衆・五強聖の一人、(ルオ) 神翔(シェンフェイ)老師……。あの御方の(わざ)なら、造作も無い事ネ。恐らく……近くにいらっしゃル」

 

「え? ルオって……もしかして」

 

 その名前を聞いて、ある事に気付いたのは、いろはだった。

 美雨が何も言わずにコクリと頷くと、今度は、後ろから豪杏(ハオジン)が声を掛けてきた。

 

「美雨。子静(ズージン)の前ダ。あまり癪に障る事を口走るナ」

 

「ン、スマン」

 

 美雨が、会釈して豪杏に謝った。

 二人のやりとりを聞いて、いろははハッとなった。

 (ルオ)……確か、副将の魔法少女の子と同じ苗字だった筈。すると、姉妹だろうか?

 

子静(ズージン)、間もなく試合だが、大丈夫カ?」

 

 豪杏が振り向いた方向――赤竜隊・控えのベンチには、やや青みがかった髪のツインテールの、細身の少女が体を丸めて座っていた。

 

「アッ、はっ、ハイ! だ、大丈夫です!」

 

 豪杏に声を掛けられるや否や、子静(ズージン)と呼ばれた少女が慌てて立ち上がる。

 瞬間、鶴乃といろはが驚いたのは言うまでも無い。

 彼女は、でかかったのだ。

 それは、胸部に生える豊かな丸みもそうだが、身長もかなり有る。相対する豪杏よりも一回りは高い。173~5はあるだろうか。胴はかなり引き締まっているが、魔法少女衣装から露出した四肢は、バキバキの筋肉の塊だった。細身が多い蒼海幇の魔法少女の中でも、彼女だけは激しい鍛錬を積んでいたのは容易に想像できる。

 

「今は、姉君のことは気にするナ。いいカ」

 

「はいっ! 行って参ります! (ハオ)姉様」

 

「うむ」

 

 子静(ズージン)が拱手を送る。

 豪杏が拱手を返すと、子静(ズージン)は擂台の上へ駆けあがっていった。

 

「豪杏」

 

 子静を見送ると、横から声を掛けられる。

 豪杏が振り向くと、大将役の(カウ) 梅華(メイファ)が立っていた。

 

「梅華姉様」

 

「うん。其方から見て、子静(ズージン)は調子はどうか?」

 

 問われて、途端に豪杏は渋い顔を浮かべた。

 

「はい……子静(ズージン)は、五強聖・(ルオ) 神翔(シェンフェイ)老師の実妹。武闘家としての才能も、実力も、申し分無いものだと私は感じております。しかし……」

 

 そこで豪杏は、いきなり胸をぐっと掴んだ。

 

「……()()が、少々……」

 

 苦々しい顔を浮かべて呟く豪杏に、梅華は頷く。

 

「うん、()()だけは、鍛錬を積めば強くなるものではない。当人、気概次第」

 

「はい……。彼女は優秀な姉君と常に比べられてきましタ。故に、仕方ないとは思いますガ……メンタルが不安定なのは、武闘家としても、魔法少女としても、致命的です」

 

「うん……」

 

 二人は、子を見守るような眼で子静(ズージン)を見守っていた。

 

 彼女と闘う相手は、宮根(みやね) (しゃく)――――。

 

 一見、緋華仙香、繚蘭百花のような強者には見えない。

 だが、高菜舞桜の例がある。

 副将を任せられたのは、それなりの理由があると見るべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――一方の、チーム竜ケ崎サイド

 

 

 副将の宮根 灼が控えのベンチから立ち上がる。

 

「じゃー親分、そろそろ行ってきますねー!」

 

「おーがんばれよー。期待してねーけど」

 

「……え? あれ? ちょっとそれ酷くない?? もう後が無いんですけど。私負けたら敗北確定なんですけど??」

 

 ベンチにぐでっと寄り掛かりながらあんまりな事を言う樹里に、灼がジト眼で睨む。

 

「舞桜も負けたしなー……」

 

 樹里がはあぁ~、と溜息。

 

「自分から喧嘩吹っ掛けた癖になに早くも負け認めてるんですか……。先生っ! 先生は私の事、応援してくれますよ、ねっ☆」

 

「…………」

 

 ぴょこん、と大将役の綾濃の下に飛び込んで、輝く目を向ける灼。

 綾濃はしばらく沈黙した後――――グッと、サムズアップ。

 

「灼さん、散り様は美しくあれ、よ」

 

「そうそう、盛大に当たって砕けて……って、あっるぇー???」

 

 一切期待されてませんでした。

 二人からぞんざいな扱いを受けて、段々腹が立ってくる灼。

 

「あーもう! この宮根 灼! 相手が誰であろうと、いつも通りゆるーく戦って、サク―っと勝ってきちゃいますからね!」

 

 プンプン怒りながらも、灼は擂台の上へと駆けあがっていく。

 その様子を見送りながら、樹里と綾濃は、笑い合った。

 

「くくく、灼……お前は、ナニクソって苛ついてる方が丁度良いんだよ……!」

 

「ふふふ、下手に持ち上げたら図に乗ってしまいますからねぇ……」

 

 それに――――樹里は不敵な笑みを浮かべた。

 

(今度こそ目にモノ見せてやるぞソウカイヘイ。灼に大した実績は無い。だが、“無敗”だ……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――こうして、副将戦が開始された。

 

「…………」

 

 子静(ズージン)が距離を置いて、灼を睨み付けている。

 右手にラケットを握り締めており、一般的なテニスプレイヤーといった格好だ。

 大方、飛び道具がメインだろう。一気に距離を詰めれば勝負が付けられそうだが、相手の固有魔法が分からない以上、迂闊に前に出るのは得策ではない。

 さて、どうするか――――子静(ズージン)は、思考を巡らしながら、灼と見つめ合う。

 

「ふふん……」

 

 対する灼は、軽くスイングの練習をしながら、不敵に笑っていた。

 強そうには見えないが、一筋縄ではいかなそうだ。

 

(ルオ) 子静(ズージン)さんですね」

 

 いきなり灼が沈黙を破ってきたので、子静(ズージン)はハッと思案を止めた。

 

「そうだガ……なにカ」

 

「知ってますよ。だって、お姉さんが、蒼海幇の最高幹部ですからね☆」

 

 “姉”を話題に出されて、子静の眉が、ピクリと反応。

 

「……今、姉さんは関係ない筈ダ」

 

「いやいや、せっかく会えたんだし、聞かせてくださいよー? 確か、5歳の頃から武術教室に通い始めて14歳の頃に国内最高クラスの武術表演者に送られる『武英級』を取得。15歳の頃に武術選手権大会で、全国優勝を果たす! いやーすんごい経歴ですよねー!! 憧れちゃいます!!」

 

「……うるさイ」

 

 捲し立てるように、子静(ズージン)の“()()()()しながら灼は左手にボールを召喚。

 子静(ズージン)はキッと目を細める。苛立たしさに眉が吊り上がっていた。

 灼は、微笑みながらボールを真上に投げる。

 

「あれー、もしかして怒っちゃいました? そういえば子静(ズージン)さんのことって私あんまり知らないんですよねー。実の妹さんなのに、記事も見たことないし……ね!」

 

 パンッと、灼は目線まで落ちたテニスボールを軽く弾き飛ばす。

 球は一直線に、子静に向かっていく。子静(ズージン)が詠春拳の構えを取り、拳を向けた。

 

「……ハッ!」

 

 弾き飛ばすつもりで、勢いよく突きを繰り出した――――筈だった。

 

「っ!?」

 

 直撃の瞬間――――

 まさかの衝撃に、子静(ズージン)が目を見開いた。

 球は予想以上に重く、右拳には電流が走り、足は思わずよろめいてしまう程だった。

 

「そんな……」

 

 有り得ない――――と子静(ズージン)は下を向いて自分の拳を見た。

 姉弟子達から毎日、100回もの投石を受け、それを拳で砕いているのだ。

 魔力で生み出したものとはいえ、あんな軽々しく打った球に拳が負けるなど……。

 

「前方不注意☆」

 

「っ!!」

 

 灼の掛け声に、慌てて首を上げて前を見た。

 二球目が既に迫ってきていた。

 迂闊だった、打った音すら聞いていなかった――――だが、まぐれは二度も無い、今度こそ……。

 子静(ズージン)は、気合を入れて、左拳を突き出した。

 

「くぅ……!」

 

 やはり、重い――!

 球は弾いたが、拳から肩に掛けて鈍い衝撃が痛みと共に走り、子静(ズージン)は顔を顰めた。

 その様子を見ながら灼は笑う。

 

「あっれー? どうしましたー? 中国武術なら、あれぐらい軽ーく凌げる筈ですよねー?」

 

「くっ……」

 

 痺れる拳を摩りながら、灼を睨む子静(ズージン)

 

「もしかして、お姉さんの事で気が散っちゃいました? ごめんなさいねー。でも、ダメですよー、戦闘中に余計なこと考えちゃー!」

 

「分かってル……!」

 

「これが、魔女戦だったら、死んじゃってますから……ね!」

 

 再び灼が緩やかにサーブを打つ。

 

 

 

 

 ――――子静(ズージン)。余計な事を考えている暇が有ったら、打ち込みなさい。

 

 

 ――――自分の事しか見えていない。故に、貴女は、“未熟者”なのです。

 

 

 ――――足手纏いは、必要有りません。

 

 

 ――――魔女と闘えば、“死ぬ”だけです。

 

 

 

 

(分かっているって……姉さん……っ!)

 

 灼の言葉のせいだ。

 忌々しい記憶が蘇ってきて、子静(ズージン)は奥歯をギッと噛み締める!

 そうだ、余計な事は考えなくていい。

 集中しろ。相手の打った球は自分の身体の“何処”を狙っている――――見極めろ!

 

「っ!」

 

 そこだ――――と子静(ズージン)は拳を打ち込む。しかし……

 

「っ!?」

 

 驚愕した。

 接触する寸前で、テニスボールが()()したのだ。

 そして、

 

「ぐふっ!!?」

 

 下腹部に鋭い痛みが走り、子静の身体が大きくよろめいた。

 目線を下に向けると、消えた筈の球が自分の腹に突き刺さるように喰い込んでいた。

 

「なっ……!」

 

 子静(ズージン)の目が震えた。

 馬鹿な。よく狙って打った筈――有り得ない。いや、しかし……まさか、

 

「もしかして、見落としちゃいましたー?」

 

「っ……!」

 

 灼の何気ない一言に、子静(ズージン)の両肩がビクリと揺れる。

 胸中の不安を、見事に言い当てられた。動揺が、隠せない。

 

「お姉さんの事、すんごいコンプレックスなんですねー?」

 

 ――――うるさい、黙れ。

 

「わたし、一人っ子なんで、気になるんですよねー。優秀なお姉ちゃんがいるって、どんな気分?」

 

 

 

 ――――神翔(シェンフェイ)は本当に偉いな。それに比べて子静(ズージン)は――――

 

 

 ――――同じ姉妹でも、どうしてここまで違うのかねえ――――

 

 

 ――――子静(ズージン)神翔(シェンフェイ)のような才能があれば――――

 

 

 ――――お前と姉の違いは唯一つ、“努力が足りない”―――― 

 

 

 

「!! 黙レっ!」

 

 頭の中が騒がしい。

 忌々しい。比較するな。自分と姉は違う人間だ。黙れ。黙れ。黙れ。

 黙って、私をちゃんと見ろ――――!!

 

 子静は、かぶりを上げて、怒声を張り上げた。

 動揺と感情が高ぶり、完全に視野狭窄になっていた。

 視界は灼しか映していない。

 

 

 

 

 その状態が、とっくに灼の罠に嵌っていることにすら、気づけなかった。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




6月は仕事とプライベート双方が忙しかったため、執筆はおろか、勉強の為の読書をする暇すらありませんでした。

今月からはいくらか余裕ができるので、10日おきぐらいに投稿できれば。
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