リク:悪役みたいな主人公。親しい人物とは基本的にタメ口で話す(それなりに口が悪い)。
身長が低い、160cmちょうど....と本人は言っている。
実は結構神経質で精神的な障害を抱えている。
井根:怪しすぎる探偵。
いつもお面姿でボイスチェンジャーで声を変えているため性別が分からない。
実はトランスジェンダー。
リョージ先生(華村 竜仕):物真似が下手(得意技ライントレース エェ...)。
自分がこうしたいと思ったことは必ず成功させるという信念をもっている。
リョージ(流石にビビったよ、これを最初に見たときは。RX-8を四駆化、そしてスーパーチャージャーを組み込むなんて正に狂気だ。
元の持ち主には勿体無いくらいの代物だよこれは。)
遂に本領を発揮したRX-8は水飛沫を上げコーナーに吸い込まれていく。圧倒的な速さ。勝利は既に約束されたようなものであった。
リョージ(正直扱い難いが.....速いっ...!
何と言ったか?あのチューニングショップの名前...
このRX-8の特性は奇抜、だが速い!ここまでの物によく仕上げたな。)
最終コーナーを抜け、ゴールラインを越える。
リョージ(まず一周、残り三周。
このタイム差のなら、まず抜かれることはない!)
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コウジ(四周目に入ったか...俺の予想ではそろそろだな。)
コウジの予想通り、四周目に突入したRX-8に異変が現れ始めていた。
リョージ「な、なんだ?(違和感がある。挙動がおかしい、性能が低下している!
タイヤに関してはまだ持つが、エンジンがダメだ。水温も上昇、吹け上がりも悪くなっている!おまけにブレーキの効きが悪い、フェード現象か!?
おかしいぞ...この程度でヘタり始めるなんて..!)」
コウジ(幻は確かに速い、俺が改造した中でも群を抜いた高性能車だ。
だが、欠点として耐久性が無く、性能が劣化しやすいという問題を抱えている。どう足掻いてもサーキットを二、三周すると性能が劣化し始める。その脆さはどんなテクニックを駆使しても変えようが無い。
なんでそんなセッティングになったのか自分でも分からない、原因が分からないから直しようもないんだ...)
リョージの視線が泳ぐ。メーターやミラーに視線が移り、運転に集中できない。
急激な性能低下と集中力低下によりペースが落ちてしまう。
ミラーの奥にヘッドライトの光が僅かに映り込む。
リョージ(早すぎないか!?もう追い付かれたのか!?)
車内に表示されたタイム表を見たリョージは驚愕した。
リョージ「なっ、なんだこれはぁ!(区間タイムはヤツの方が速いだと!?
比較的ストレートの多い区間ではオレの方が速い。だが、カーブやコーナーの続く区間ではヤツのセブン方が僅かにオレのRX-8を越えるタイムで走っている!)」
二台の差が徐々に縮まりつつあった。特にコーナーが連続する区間では、SAが劇的な追い上げを見せる。
SAはとても1978年製のFRとは思えない走りでコーナーを回っていく。路面が濡れている筈だが、その速さは路面が乾いている時と殆ど変わらない。
リョージ「な、なんだ!なんなんだ!何が起こっている!?(例え性能が低下したとしてもさっきまでのヤツのペースでは追いつけない!そもそも何馬力の差があると思っているんだ!
無理だ.......不可能だ......いや、あり得たのかもしれない。
誤算だ、誤算が有ったんだ。一つ目は幻の性能の劣化速度。クソッ混ぜた豆腐みてぇにグズグズになりやがって...!
二つ目はヤツの、いや、エイトのテクニックだ。恐らく先程までは豆犬君も全力で走っていたんだ。二周目においてはその区間タイムを見れば一目瞭然だ。だがそれでも幻には追い付けなかった。)」
ガードレールにギリギリまで車体を近づけ、最短距離を走り抜けるRX-8。しかし、性能が低下しているためか、SAを引き離すことが出来ない。
NAロータリーのサウンドが後方から迫ってくる。
リョージ(ここで一回豆犬君のリザルトを思い出してみよう。調べたデータによると、豆犬君は常に最初はリードを奪われる形で勝負を開始している。
これはSAの戦闘力の低さから来る物なのかもしれない、実際そうだ。だが彼はその性能差をことごとく押し退けてきた。)
とうとうRX-8はSAに追い付かれてしまう。
リョージ(そう、勝てるのだ、勝てる筈なのにわざわざ最初からリードを取られている。では何故序盤からリードしないのか。ここで一つ仮説が立つ。)
二台はコーナーを回り、例の上り坂のストレートへ侵入する。
リョージ(しないのではなく、できない...と考えると合点がいく。彼は恐らく、無意識のうちに自身にリミッターを掛けているのではないのだろうか?
ある一定の速さまでは、自分の決めた限界までで勝負をする。だが、相手がその一定の速さを越えると、リミッターが解除され、エイトのテクニックを本格的に使ってくる。)
二台はストレートを駆け上がって行くが、RX-8は徐々に失速していく。
そしてついにSAがRX-8の前に出た。
しかし....
リョージ(これの対処法は既に確立された。
[相手が自分より強ければ、それを越えていく]のならば、[最初から相手が弱ければ]どうだ?それ以上速くは走れまい。
所詮超旧式のFR、いくら性能が低下しているとはいえ、加速性能ならこの幻の敵ではない。)
そう、このストレートでリョージはRX-8を加速させていない。寧ろエンジンブレーキを掛けて減速させていたのだ。
リョージ(このままゴール前まで粘って、最後に勝負を決める!)
リョージのこの選択により、勝負は殆ど一周目と同じ展開になった。RX-8が追い、SAが先行する。
ジャンプ台が近づく。二台連なって減速無しで坂から飛び出す。
SAはバランスを崩したかに見えたが、そのままそのふらつきをドリフトへ繋げ、コーナーへ進入する。RX-8は安定感のある走りでそれを追いかける。
リョージ(その挙動、ふらつきがある....まるでカーブの湾曲に沿って踊らされているようだ。
そちらもタイヤが限界か。トーゼンの事だな。無理やりあそこまでのペースを作ったんだ、無理をした分のしわ寄せがタイヤに来くるのも無理はない...)
路面の水と消耗したタイヤがSAを追い詰めていく。タイヤが上手く食いつかず、脱出でアクセルを開けるとタイヤが空転し、吐血するかのように水と砂利を吐き出す。
加速が出来ない....
ストレートの遅さをカバーするべく、コーナーを素早くクリアしても、脱出でもたつき、結局ロスが生じてしまう。
豆犬(雨のせいでタイヤの消耗が早い、これ以上踏み込めない...!
単純にタイヤが消耗してるのが原因じゃない、車体が軽すぎるからだ。軽いくせして空力によるダウンフォースが無いから滑りまくる!)
RX-8が距離を詰めてくる。ヘッドライトの光はまるで獣の瞳のようで、常に狙われているような感覚を与えた。
食い付かないタイヤとRX-8の猛攻が豆犬のメンタルを蝕んでいく。
二台ともヘロヘロになりながらも、次々にカーブやストレートを駆け抜けていく。
そしてついにゴール直前のカーブに差し掛かった。
リョージ(よしっ!ココだ!ココしか無い!)
RX-8がSAを追い越し、先にカーブに進入する。SAもそれに続くが、タイヤが滑り、速い旋回ができない。
リョージ(勝てる!こちらには余裕がある!)
しかし、RX-8がカーブを抜け、加速しようとした瞬間それは起こった。
リョージ(こっ、これは!?)
突如ボンネットから白い煙が上がり始めたのだ。オーバーヒートだ。
RX-8は脱力し、失速してしまう。ここぞとばかりにSAが追い上げてくる。
ゴールまであと僅か。RX-8は動力の抜けた状態で滑走し、そのままゴールへ向かう。
SAはアクセル全開、車体が横を向きはじめてもそのまま無理矢理前へ押し進める。
豆犬(勝て、勝て、勝てっ、勝て!勝てぇぇえ"!)
二台がゴール直前で並ぶ、そして....
SAの鼻先がゴールラインを越える。
コウジ(勝てたか...まあ、豆犬にとってはそこそこの勝負だったな。だが、SAにとっては限界の勝負だった。
これは...今後これ以上の相手と当たったら100%勝てないぞ.....)
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リョージはRX-8を眺めていた。
リョージ「(今回の敗因は、相手を見くびっていたこと。自分の実力の過信。そして何よりも....自分の車じゃなかったことだな。
走りなれてない車でいきなり勝負だなんて...愚かだった。)
やあ、負けたよ。」
リョージの後ろには豆犬居た。
豆犬「約束通りその車はもらうぞ」
リョージ「先生は別にいいですけど、あのメカニックに黙ったままでいいんですか?この約束のこと。」
豆犬「あぁ、別にいい。」
リョージは豆犬にRX-8の所有権を明け渡した。
続く