東方異形機械《トウホウイギョウキカイ》 作:GUM【グム】
___<pm 15:10>人里
「…ふゥ。やっぱ美味ェな」
「ご馳走様ー!おいしかったー!」
「ごちそうさま…ケプ」
すばめの怪我を里の医者に診せたあと、
さっきの蕎麦屋に蕎麦を馳走になった。
あと、その医者曰く正式には医者ではなく、
里の医学の本を詳しく読み、技術を身に付けただけの者だという。
つまり応急処置程度しかできないらしく、
薬も消毒薬くらいしかめぼしい物はない。
今回は怪我が軽くてよかったものの、
運が悪けりゃ一大事だったわけか…。
一応凄腕の医者は居るみたいだが、
何やら随分辺ぴな所に住んでいるらしい。「迷いの竹林」とか言ってたな。
聞くだに色々マズそうなところだ。
なんか俺、どんどん罪深いことをしてる気がするなァ…。
「おう!毎度!!」
「しかし親父さんよォ、本当にいいのかァ?金はいらねェって言われてもなァ」
「うんうん。それもわちきたちの分まで」
「いいってことよ、うちの蕎麦を気に入ってくれたんだろ?
蕎麦屋としてそれ以上名誉なこたぁねぇぜ!」
「気前いいねェ。それじゃお言葉に甘えさせてもらうかァ。
ごっそうさん、なるべく来ないようにするぜ」
「ハッハッハ!確かにそれも有難ぇかもなぁ!」
「ありがとねおじさん!本当おいしかったよ!」
「うん、また来たい」
「いつでも来い来い!いくらでも食わせてやるぜ!」
ガラガラガラ
ピシャン
…皮肉で言ったつもりだが…よくよく考えると俺は穀潰しって奴じゃねェのか?
うん、真面目にいつ通うかを検討するか…。
「ちょっと食べすぎちゃったかも…」
「育ち盛りは腹一杯食ったほうがいいんだよォ。
それに食わなきゃ治る怪我も治りが遅くなるぜェ」
「よかったね、すばめちゃんのケガが軽くて」
「…少し痛かったけど」
すばめを傷つけ、俺のバスターソードを盗もうとしたオッサンは
とりあえず放置しておいた。
まだ昼間だし、誰か気付くだろ…。
しかし誰にやられたのかねェ?
なんか服が煤けてたし、頭にタンコブがあったし。
まァ、警戒はしとくに越したことはねェか…。
「…それにしても、いい人間が多い里だな。
なんでこんな奴らが俺らを襲ったんだか…」
「本当だよねー…」
「仕方ない。ここ最近妖怪が多いから皆警戒してるんだ」
…?
聞き慣れねェ声だな。
「…誰だアンタ?」
「人の名前を聞くときは自分から名乗るのが礼儀だろう?」
「…まァな。俺はアルケーガンダムだァ」
「え、えっと…わちきは多々良小傘だよ」
「そうか。まあ、二人とも里の人間から聞いていたのだがな。
よろしくな。アルケー、それと小傘」
「あー…よ、よろしくー…」
「…よろしくゥ」
何だこの女。
すっげェ堅苦しい。
言葉使いも男みてェだし…何モンだァ?
「先生…さっきまでいなかったの?」
「ああ。ちょっと用事でね。
それにしてもこの人たちと仲が良いな、すばめ」
「うん、小傘お姉ちゃんは優しいし、アルは強くて…かっこいいし」
んん?すばめと知り合いなのか?
てか先生って何だァ?
…というか、まだ名前聞いてなかったな。
「おい、こっちは名乗ったんだァ。
今度はアンタの番だぜェ」
「ああ、すまない。
私は
「カミ…シラサワ…?随分難しい名前だなァ。呼ぶの面倒臭そうだな」
「慧音で構わないよ。
それと、ここの里の寺子屋の教師をしている」
「あん?「Terakoya」って何だァ?」
聞いたこともねェ単語だな。
教師ってこたァ何か教えるんだろうが…。
「ん?知らないのか?」
「アルくんは来たばっかりの外来人なんだよ。
まだ分からない事がいっぱいあるからってことでわちきがついてるの」
ナイスフォロー小傘。有難い。
「ああ、成る程。なら知らないのも当然か。
寺子屋っていうのは外の世界で言う「学校」という物だよ」
「あァ、学校かァ。
何ですばめが「先生」って呼ぶのか理解したぜェ」
「そういう事だ。
それと……アルケー、すまなかったな」
「ん?何がだ?」
「里の者達がお前を攻撃したことだ。
どうか皆の心境を理解してやって欲しい…」
「あァ、そのことかァ。
心配すんな、タイミングが悪かっただけだろォからな」
「そう言ってもらえると嬉しい。
皆にも安心するよう言っておくよ」
「助かる。まだ何人かに白い目で見られてんだが中々辛ェんだ」
「うん…わんぱくな男の子はまだアルくんに石を投げつけてるし…」
「別に俺は当たっても痛くも痒くもねェんだが、
小傘とすばめに当たったらえれェ事だ。
やりすぎかもしれねェがちょい威圧させてもらってる」
「威圧?どういう風にだ?」
やっぱりそこは教師として気になるんだろうなァ。
「別に大したこたァしてねェよ。
俺ァ見ての通り機械だから人間にゃァできねェ事も色々出来る。
だがたかが子供に脅しかけたり怒鳴ったりはしねェ。
ほんの少しキツめに睨むだけだァ」
「え、あれほんの少しだったの…?
何人かの男の子わあわあ泣いてたよ?」
「精一杯の加減はしてるんだがな…」
「…あのときのアル、すごく怖かったよ」
「あー…悪い、怖がらせちまったなァ」ナデナデ
「…大丈夫、アルが優しいのは分かってる」
「そうか…。でもまあ、それくらいした方が妥当かもしれないな。
子供たちにもちょっかいを出さないように注意しておかなくては」
「そうしてくれェ」
「…見た目は物騒だが、すばめの言う通りアルケーは優しいな」
「見た目は物騒は余計だァ」
「ははは、悪い悪い。
まぁ、ここでずっと立ち話というのもなんだ。
茶屋にでも行こうか」
「そうだね。
それにしても慧音さんって凄く丁寧だねー」
「そんなことはない。普段通りにしてるだけさ」
「言葉使いもなんだか威厳があるしね」
「よく男勝りと言われるよ。
私としてはそんなつもりは毛頭ないんだけれど」
「…ふゥ」
これでようやく安心して表を歩ける。
ほとんどは挨拶までしてくるくれェ友好的なんだが。
…それにしても…
慧音からただならねェ気配を感じる気がするが…。
まァ、多分俺の気のせいだろうがな。
「………。」
ピタッ
しかし、皆して言うが…俺が「優しい」、ねェ。
優しいってのがどういうモンなのかは具体的には分かるが、
いつそう感じるかは人によって違うんだよなァ。
そういう生物的な考えはまだ慣れねェなァ…。
ま、ココで「生きていく」内に分かってくだろ。
…もし俺がパイロットの意思を継いでたんなら、
「アリー・アル・サーシェス」って奴も俺みてェだったのかねェ。
逆に意思を継いでなかったら……へッ、ソイツはヤベェな。
少なくとも俺よりマトモじゃねェって事か。
「おーい、アルくーん」
「どうしたー?早く来ないと置いていくぞー?」
「あん?アイツら何時の間にあんな先に…」
「アル…どうしたの?ぼうっとしてたよ?」
「…すばめ?何で俺を待ってた?
アイツらと一緒に先行ってりゃァいいのに」
「私がそうしたかったから…だめ?」
「…いいや、駄目なんかじゃねェぜ。
大丈夫だァ、心配いらねェよ。
そんじゃ行くか」
「うんっ」ギュッ
「オイオイ、俺の手なんか握って痛くねェのか?」
「大丈夫」
「そうかィ」
妙な感覚だ。
MSの、感覚についてまだ何も知らねェ俺が、
こんな事を感じるのもまたおこがましい話かもしれねェが。
すばめの手は、柔らかくて暖かかった。
___<???> 彼岸花の咲き乱れる場所
「…どこだぁ?ここは」
「いわゆる「地獄の門」というものの前ですね」
「…そうかい、それじゃアンタは閻魔様ってことか。
もっと厳つい爺さんだと思ってたがずいぶんと美人さんなこって」
「嫌に聞き分けがいいのですね、そんな人間とは聞いていませんが?」
「天国に行けるとははなから思っちゃいねぇよ」
「ではなぜ生前のようなことをしたのです?」
「さぁな、神様が俺をそう転ばせたんだろうさ」
「そうですか。
…それではそろそろ貴方に判決を言い渡しましょう」
「手短になぁ」
「百も承知です。
名、「アリー・アル・サーシェス」。
――地獄」
ギギギギギィィ………
「…俺も年貢の納め時、か。
今思えば、あの兄弟に負けたのも当然だった気がすんなぁ。
ケッ…。
今更罪悪感なんざ感じても、無駄だってのによぉ」
スタスタ…
ギ…ギギギギギィィィ…
バタン…
10話 おわり
けーね先生の口調が分からないです…。
それでもってサーシェスの末路。
サーシェスもある意味時代の渦に巻き込まれた被害者なのかもしれませんが、
それでも彼がした行いは許されざるものです。
多分、本人もそれは自重していたと思います。
そういう自己解釈により、最後の最後で
サーシェスとの関係はまるで皆無のはずの「罪悪感」を持たせました。
結果的には地獄に堕ちてしまいますが、
彼の心境は映姫様も理解していた筈です。
なんか三途の川で小町と極めて自然に談笑してそうですがね。
これから映姫様忙しくなりそうだなぁ。