東方異形機械《トウホウイギョウキカイ》 作:GUM【グム】
どうも皆さん、長らくお待たせしてしまい大変申し訳ありません。
お久しぶりでございます、【グム】です。
詳しくはあとがきへ…
とりあえず前回からの続きとなっております。どうぞ。
「……………………なァ、小傘」
「ん?なぁに?」
原因不明の意識消失から数十分。相変わらず小傘は俺にひっついている。
記憶にはないが、どうやら俺は小傘に何かしらの危害を加えたらしい。
暴走状態にある俺を止める為に小傘は本体である傘を使って俺の頭部を強打したらしく、
頭がズキズキと痛む。また小傘自身にも大きなタンコブが出来てしまっていた。
…守ると言って、早速このザマか。…ケッ、笑い話にもなりゃしねェ。
項垂れている俺に小傘は大丈夫、何ともないと繰り返すが…そんなに目を真っ赤にして
言われても、全く説得力が無い。
「俺は…お前に、何をしたんだ?」
「ッ…」
悲痛そうに顔を歪ませる。思い出したくないという意思の表れか…。
「頼む、教えてくれ。コレばっかりは洒落にならねェ問題だ。
ただ、俺にはお前を襲うつもりなんざサラサラ無い。そこだけは分かっておいてくれ」
「分かってる!
……そんなこと、分かってるよ…。けど…」
「けど…?」
「…ねぇ、アルくん。あなたは、アルくんなんだよね…?」
「……?」
まっすぐに、何の雑念もない綺麗な目で、小傘は俺を見た。
赤い瞳と青い瞳の両方に、疑念を浮かべたように首を傾げる俺の姿が映っていた。
「さっきも言っただろォが、俺は、俺だ。ここにいるのは他でもない俺、アルケーだ」
「うん…そう、だよね。ごめんね、ヘンな事聞いちゃって」
「構わねェよ。それより…」
「うん、さっきのアルくんだよね」
「あァ…。白い狼みてェな奴と出くわして、ある程度攻撃を受け止めたトコまでは
覚えてるんだが…あの時妙な男の声が聞こえてな、そっから記憶がねェ」
「あの後、アルくん急に凶暴になっちゃって、あの狼の妖怪を殺そうとしてたんだよ。
しかもまるで、いたぶるような嬲り殺すような、酷いやり方で…」
「…いたぶる?俺が、そんなことを?」
「…うん。わちき、見てられなくてアルくんを止めようとしたんだけど…
アルくん、わちきが分からなくなってて襲い掛かってきたの。
でも攻撃がでたらめだから、怪我もせずにアルくんを止められたんだよ」
「小傘が分からなくなった…?どういう意味だ?」
「えっと…何だかよく分からない事を言ってたよ。
戦いが生き甲斐だとか、下らない戦いだとか…」
「『戦い』…戦い?」
「どうしたの?」
「戦い、闘い………駄目だ、訳が分からねェ。嬲り殺すってェのも…いや、今はそっちじゃねェ。
俺が、小傘を攻撃する?この俺が?
…クソ!畜生ォッ!!何やってんだ俺はァ!!」
頭が真っ白になった。俺が知らない間に俺を動かしてやがった奴がいたってのか?
馬鹿げてる、そんなこと。だがそれが事実だ。その事実に強い自己嫌悪が生まれる。
守ると約束したはずだ。ココに来て間もないが、
それが俺の存在意義なのではなかったのか。
誰にも必要とされないなら、俺がそうしてやる、と。
出来たばかりの心にそう誓ったのではないのか。
俺には、やはり無理なのか。
所詮俺はその程度なのか。自分自身の裏の顔に負けるような、貧弱な存在なのか。
考えれば考えるほどに「胸」が締め付けられ、「頭」がガンガンと響く。
目の前にいる小傘の声でさえも、ガラス越しのように曇って聞こえる。
「アルくん、落ち着いて!」
「けどよォッ…!」
自分が嫌で嫌で仕方がなかった。何が嫌なのかも分からない程嫌だった。
心に「自分が小傘を襲った」というナイフが突き刺さっていた。ただそれだけだ。
「大丈夫。大丈夫だよ。「あなた」は、わちきの知ってる優しいアルくんだから」
ゆっくりと語りかけ、優しく俺の身体を抱きしめる。
その一声、その一仕草で、刺さったナイフが少し抜けた気がした。
「…小傘、俺は、お前を」
「言いたいことは分かってる。でも、大丈夫。あれはアルくんじゃない。別の誰かだったんだよ。
でも、アルくんはちゃんとこうして帰ってきてくれた。それがわちきにはうれしいんだよ」
「……………」
俺は、何と恵まれているのだろう。この短期間で、もうこれほどまでに心を開いてくれる。
嬉しかった。その言葉だけで、胸の痛みが和らいだ。
「…しばらく、そのままで、頼めるか」
「うん、喜んで」
嫌悪感、虚無感、安心感、色々な感情が溢れ出てくる。
それに苦しむ俺を小傘は黙って、抱きしめてくれていた。
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「…もう、俺は迷わねェ」
「えっ?」
俺を抱きしめていた小傘が声を漏らす。
さっきから、ずっと考えていた。
この件に対する、何とかしたくても自分ではできないもどかしさ。
一体どうすればいい。どうすれば小傘を傷つけずに済む。
どうすれば小傘を悲しませずに済む。
その結果、結論にたどり着いた。
意味が分からないだとか、正気かどうかなんてのは問題じゃない。
そもそもそれがおかしい事だというのは俺が一番よく分かっている。
その考えの末が、コレなのだ。
「小傘、俺はお前を守る。それが俺のケジメで今の生き甲斐だ。
だが今回みてェな事がまた起きるかもしれねェ。コレばっかりは俺にはどうすることもできん」
「…うん」
「だからそん時は、お前が俺を守ってくれ」
「え………?」
「俺が道を外れそうになったら、無理やりでもいいから道に直してくれ。
どんな手でもいい。何ならブッ壊してくれても構わねェ。
俺は誰も傷つけたくねェ。本当ならこんな事頼みたくもねェ。
けど、こんな事を頼めるのは小傘、お前しかいねェんだ。
お前は、俺の事を見てくれてる。お前にだったら例え死んだとしても本望だ」
「……」
余程予想外だったのか、小傘は目を丸くして半ば呆然としながら俺の話を聞いていた。
「いきなりで悪ィ。…この話、受けてくれるか?」
「……」
黙ったまま、俯いてしまった…。
それもそうだ。いつ俺がああなるかも分からないというのに。
あんな怖い思いはしたくないと思うのが普通だ。
やっぱり自分の問題は、自分でなんとか…
「……そ、そんな大事な役目、本当にわちきでいいの…かな?」
「…ん?」
真っ赤になった顔をあげて、小傘が蚊の鳴くような声でボソリと呟いた。
「だ、だからさ…それってつまり…さ。
いつでも、どこでも、どんなときでも一緒ってことでしょ…?」
「…?あァ、そうだな」
「うきゅぅ…っ!」
「うきゅう?」
「あぅぅ…………」
「…?…??」
何だ?酷くうろたえているようだが。
今回のような事はいつ起きるか分からないので、できる限り行動を共にしておいたほうがいい。
その点はその通りだが、どうしてそんなに困惑している…?
やはりこの話は呑めない、ということだろうか…。
「…やっぱ、駄目、か」
「ぅ………
ふ、ふつつか者ですが、こんなわちきでよければ…よろしくお願いします!」
「お、おォォ!?」
何だ!?ききき急に小傘が飛びついてきた!
顔はさっきよりも真っ赤。湯気が出てる。
そんな自分の顔を隠す用にぎゅっと密着してくる。
「その代わり!わちきからも条件があります!」
「条件?」
顔を俺の
「すーはーすーはー…よし!
………一緒にいるって言ったからには!絶対にずっと、ずーっと一緒だからね!
わちきだけ見てればいいの!わちきはずっとアルくんだけを見てるから!」
「お…?お、おう…わかった」
妙な気圧に押され、流れのままに快諾してしまった。
まぁ
「ほんと!?」
花のような満面の笑みを浮かべる。何がそんなに嬉しいのだろうか。
「あァ。約束だ」
「約束、約束かぁ…えへへっ♪
ねぇねぇアルくんっ、しゃがんでしゃがんでっ」
「こうか」
「んー♪」
途端に俺に頬ずりをし始めた。といっても俺のは頬と呼べるのか怪しいもんだが。
俺にしがみつく小傘の愛らしさと、感謝の念も込めてくしゃりと頭をなでる。
「有難うな、小傘」
「うやー♪」
「……」
幸せそうな表情をしている。聞いているのかどうか怪しいが、今はそれでいいだろう。
今小傘がしたいことを存分にやらせてやろう。
「えへへ…アールくんっ」
「何だ?」
「なんでもなーいっ♪」
「うっ」
今のはズルい。可愛かった……
というか、さっきからどうも様子が変だ。ベタベタと過剰に甘えている気がする。
「どうしたんだァ小傘」
「なにがぁ?」
「……いや、何か急にひっついてきたな、と」
「……嫌、かな?」
急に元気がなくなり、俺の身体から少し離れて潤んだ目でこちらを見る。
何か言葉には表れていない一種の威圧感があり、何故かたじろぐ。
「あー、いや、そういう訳じゃねェが…」
「じゃあいいじゃん!」
また表情が一転し、再び抱きつく。ええい疲れるな…。言わないけど。
とにかく、これで今回の件の対処法はある程度なんとかなる。
帰ったらリトルに聞いてみるか。何か知ってるかもしれない。
…この身体も、不便なもんだな。自分の思うようにも動いてくれねェなんざ。
ま、いいか。今は小傘に甘えさせてやろう。侘びも考えとかないとな。
「あーもう、好きにしろォ」
「言われなくってもするもん!
…アルくんは、わちきのものなんだからね…。
そう、アルくんはわちきのもの。誰にも渡さない。
でも…わちきは、アルくんのもの……なんだよ?
その気になってくれれば、いつでも…。」
「ん…?何か言ったか?」
「…ううん、なんでもないよっ♪」
相変わらずのコロコロ展開クオリティであります。
リアルの事情で連載が著しく遅れてしまっていました…。ごめんなさい。
謝罪のことばと事情は活動報告でお伝えしておりますので、
よろしければそちらもご覧ください。
こっからの展開…どうしようかなぁ…(猛省)