きゃんりか祭りの予感・・・。
「花火?」
「そう!私の部屋からよく見えるのよ!」
練習が終わり、沼津まで用事があったため、よっちゃんと2人でバスに揺られていると、どうやら近々花火大会があるらしい。
「へー。・・・ん?」
私はよっちゃんが言ったことを頭の中で復唱すると何か引っかかる。
「部屋で見るの?」
「当たり前じゃない。なんでわざわざ下等な人間共が群がる中に、このヨハネが入るわけないじゃない」
「外出たくないだけだよね、それ・・・」
もう結構な時間をこの子と一緒に居たせいか、堕天使語でも何となく言いたいことが分かるようになってきた。
「・・・そうとも言うわ。でも、私はリリーと花火が見たい!」
よっちゃんは目をキラキラさせながら私に顔を近づける。
「ね?ね?いいでしょ、リリー!ヨハネの部屋で儀式しながら一緒に見ましょう!ねぇ、リリー!」
ついには私の体を揺らし始め、お願いし始めた。
「分かった、分かったから。揺らさないで」
きっとOKと言うまで揺らされ続けられると思った私はため息をつきながら了承をした。
「ホント!?えへへ、やった!」
「・・・・・・」
「どうしたのよ、リリー。私の顔、じっと見て」
きょとん、とした顔でよっちゃんは首を傾げる。
「・・・なんでもない」
ふいっ、と目を逸らし、私はバスの外の流れていく景色を見つめる。
「ふーん。変なリリー」
・・・ああいうのは反則だよ!
お祭り当日の夕方。
浴衣を着てよっちゃんの家に到着し、中に入れてもらうと、完全に部屋着の彼女が出迎えてくれた。
「・・・気合い入ってるわね」
「〜〜!!」
呆れたように呟くよっちゃん。
彼女は部屋から出る気はないようで、お祭りで少し浮かれて、浴衣を着てきた自分がバカみたいに思え、恥ずかしさで顔が赤くなる。
「痛っ!無言で叩くな!」
「よっちゃんのせいでしょ!!」
「なんでよ!?」
玄関で揉めるのもアレなので、中に入れさせてもらう。
よっちゃんの自室に通されるとそこは準備万端のようで、薄暗い部屋に魔法陣の書かれたテーブルクロスが床に敷いてあった。
「はぁ・・・。本気なの?せっかくのお祭りなのに」
「じゃなきゃこんなことしないし。さぁ!始めるわよ!」
よっちゃんはいつものローブを羽織り、儀式を始める。
私はというと、部屋の隅っこに座り、彼女が飽きるのを待つだけだ。
「聞こえます。アスモデウス、ルシファーの声が。そう。そうです。もっと私を受け入れなさい」
意味の分からない言葉を呟くよっちゃんをため息をつきながら見守る。
でも、まあ。ああやって楽しそうにしているよっちゃんを見ているのは別に嫌なわけじゃない。
「ふぁ・・・」
小さなあくびが出る。
とにかく、寝ないように大人しく待っておこう。
どれくらい経ったのだろう。
気づけば外は真っ暗で私は座ったまま眠ってしまっていたようだ。
「いいタイミングで起きたようね。リリー!」
相変わらずのローブ姿で私を見下ろして指をさすよっちゃん。
「・・・何・・・」
やけに元気な表情のよっちゃん。
寝起きにそれは少しウザったく思う。
「クックックッ・・・。見よっ!リトルデーモンリリー!」
そう叫ぶとよっちゃんはバッ!とカーテンを開く。
「もう、なんなの・・・・・・。え・・・?」
開かれたカーテンの向こう。くらい闇の中に1つ、光の花が咲いた。
「・・・・・・」
「クックックッ!見たか!この光景を!!・・・ってどうしたのよ?」
「・・・うん。すごいな、って。こんなに大きく見えるんだ・・・」
花火は窓枠にピッタリと収まり、まるで窓が巨大なスクリーンのように感じる。
私はただその光景に圧倒されていた。
「全く・・・」
よっちゃんは1つため息をつくと、私の隣に座る。
「これを見たかったの。ずら丸やルビィじゃなくて、梨子さんと」
「え?どういうこと?」
よっちゃんは綺麗な笑顔でクスクス笑う。
対して私は彼女の言葉が理解できずにポカン、としている。
「また、来年も見ましょうね」
「え。教えてくれないの?」
「ええ!」
よっちゃんは楽しそうに私の肩に頭を乗せて寄りかかる。
モヤモヤだったり、うずうずだったり、よく分からない感情を芽生えさせる。やっぱりよっちゃんがいけない。
やっぱりのんびりが1番ですね