よっちゃんがいけない!   作:梨善

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平成最後のよしりこです。


その9

桜が散る。

私は風に乗って遥か遠くへ・・・、空まで舞い上がっていく桜を見つめ、見送ることしかできない。

この制服で見る2度目の桜もあの桜色の彼女の時のように。ただ見送るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高校を卒業してから私は都内の音大に入学した。

元々こっちの出身だから生活の不便や慣れないことはないけど、去年まで暮らしていた静岡と比べると何か物足りない。やりたいことをやっているのは変わらないけど、そこには共に何かを目指す仲間がいない。たったそれだけ。たったそれだけで世界がこんなに霞むなんて思ってもいなかった。

何度あの頃に戻れればいい、と思ったことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・こ!・・・梨子!」

「・・・ふぇ?」

 

後ろから大きな声で呼ばれていたことにまるで気づかなかった。

 

「またぼーっ、として。最近悩んでる?」

 

大学の同じコースをとっている友達が校門の前で立ち尽くしていた私の後ろから声をかけてくる。

 

「ううん!なんでもないよ!」

「全く・・・。そんな寂しそうに笑うんじゃない。あんたがちゃんと笑っところ見たことないわ」

「・・・私、笑えてなかったんだ・・・」

「それなりにあんた見てたけど私じゃどうもできないしねぇ。何かあるなら相談くらいのるわ」

 

彼女は手を振って大学の敷地内に入っていく。

 

そんな事言われてもこの色あせ、音が淀んだ世界は変わらない。どうすれば変わるのかさえ、私には分からない。

 

「はぁ・・・」

 

ため息しか出てこない。

 

あの子の・・・、君の声が聞きたいよ・・・。

 

高校卒業すると同時に彼女に言われた通り、一切連絡はしていない。

きっとこのせいで世界は変わってしまったんだと思う。

 

「どうしたの?そんなところで立ち止まって」

 

また後ろから声をかけられる。

その声は聞いたことがあるような声だった。

 

「・・・どうしたんでしょう・・・。私もよく分からないんです。こっちに来てすぐは頑張ろう、って意気込んでいたのに。次第に景色が色あせて、音も淀んで。私、どうしたら・・・」

 

振り向きもせず、ポツポツと呟く。

自分でもだんだん涙声になって言っているのが分かる。瞳には涙が溜まっていき、視界が霞む。

 

「そう・・・。寂しいのかしら?」

「・・・そうかもしれません」

「だったら・・・」

 

後ろから深呼吸をする音が聞こえる。

私が思っているより、声をかけてきた人は近くにいるようだ。

 

「堕天使ヨハネと契約して、リトルデーモンになってみない?」

 

堕天使、ヨハネ・・・?

 

高校時代嫌という程聞いたその名前。

その子は少しひねくれてて、マイペースで。でもとっても素直な優しい子。

 

振り返るとそこには堕天使ポーズをして私を見つめる津島善子ちゃんがいた。

艶のある黒髪。

右側に作ったシニヨン。

間違いなく彼女だ。

 

「よっ・・・、ちゃ・・・ん・・・?」

「フフフフ・・・。この魔都Tokyoに堕天使ヨハネ、再び降臨・・・!リリーよ、待たせたわね!」

「嘘・・・。本物・・・?」

「クックックッ・・・。驚いているわね。無理もないわ。しかし!このヨハネの言いつけを完遂したリリーの前にヨハネが現れるのはとうぜうわぁ!!??」

「よっちゃん!!」

 

彼女の姿を見て私は抑えが効かなくなり、彼女に飛び込むように抱きつく。

 

「よっちゃん・・・!本当によっちゃんだ・・・」

「何よ・・・。リリーらしくないじゃない」

 

困ったようにそう言うよっちゃん。だが、その言葉には嬉しさが混じっているように感じた。

 

「やっと逢えたから・・・。嬉しくて・・・」

「もう・・・」

「・・・どうしてここって?私、何も教えてないのに」

「千歌さんや曜さんに聞いたりしたわ。あと生徒会長にも。あの人、見た目は曜さんに似てるけど苦手だわ・・・。でもお陰様でここに入学してリリーの後を追ってこれた。あと、そろそろ離れてくれない?周りの視線が・・・」

 

そう言われてはっ、とする。

校内に入っていく人、近くを通る人たちの視線を集めていた。

 

「ご、ごめん・・・」

「いいのよ。それで私と契約するの?」

「しないよ?」

「えー!!?普通する流れでしょ!?」

「いつも言ってたよ。リトルデーモンにはならないって」

「ぐぬぬ・・・」

 

悔しそうなよっちゃんを見て変わってないなー、と思うと同時に私は少しイタズラな笑みを浮かべる。

 

「1年間、私に寂しい思いをさせたよっちゃんには責任取って貰わないとなー」

「な、何よそれ・・・」

「あー。そう言えばー。今日食堂でスイーツパラダイスを期間限定でやるって言ってたっけー」

「白々しいわね・・・」

「あー、あー。可愛い後輩と一緒に食べたいなー」

「分かった!分かったわよ!行くわ!」

 

諦めたように額を抑え、叫ぶよっちゃん。

 

「・・・もう、なんなのよ・・・。千歌さんみたいな言い方・・・」

 

なんなの、って・・・。そんなの決まってるよ。

 

「だって」

「だって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっちゃんがいけない!」

 

終わり




このお話はここで終わりです。
ゆるーく、山も谷もない。ただの妄想にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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