2018.03.27(修正)
ダンジョン18階層、ここではダンジョンでモンスターが生まれ落ちない安全階層域だ。他の階層からモンスターがやってくることなどはあるが、モンスターが生まれ落ちないということもあって基本的には安全だ。
この階層にはリヴィラの町と言う冒険者たちが営んでいる町がある。ここでは地上で売っているものを地上よりも高額な値段で売りつける場所だ。
ここを利用する冒険者は補給物資がどうしても必要な場合を除き、この階層で物を買うことは基本的にしない。
そしてリヴィラの町の入口にはでかでかとした看板に『330』と書かれている。これはこのリヴィラの町が今までに破壊され、建て直された回数を示している。
そしてこの18階層では、二人の冒険者が全力でぶつかり合っていた。
「うおおおおおい!お前らいい加減にしろ!何でお前らはこの階層でいっつもいっつも戦ってやがるんだ!地上か違う階層でやりやがれ!」
リヴィラの町を統括しているボールスは18階層で戦っている二人の冒険者に怒号を飛ばす。しかし目の前の相手に集中している二人はボールスの声に見向きもしない。
片方は碧の髪に槍を担いでいる青年、もう片方は青い髪に剣を担いでいる青年だ。
槍を突き出し、剣を持った青年は紙一重で身を翻し回避。そのままその場で回転し勢いのまま剣を振り回す。素早く槍を引いた青年はその剣を正面から受け止める。
互いの武器がぶつあり合うたびに18階層が揺れる。その衝撃は当然リヴィラの町の方まで届いている。
「相変わらず、素晴らしい槍術だな。エフラム」
「そちらこそ、こちらが有利な槍を使っているにも拘らず攻撃を回避し続ける立ち回りには戦慄を抱かざるを得ないぞ。アイク」
話しながらも戦闘を続けている。互いの槍術と剣術がぶつかり合い、互いが一歩も引かずに互角の戦闘を繰り広げている。
一応止めに来たボールスだが、この二人の戦闘に巻き込まれたらひとたまりもないと言わんばかりにリヴィラの町へと引き換えしていた。
その場に止まりながら戦わず、クリスタルの広場、リヴィラの町近郊、湖の近くなど常に動き回りながら戦い続けている彼らは、18階層の多大な被害をもたらしていた。
クリスタルの広場のクリスタルは彼らが武器をぶつけ合うたびに粉々に砕け、湖の近くで戦えば貯まっていた湖の水が吹き上がり、リヴィラの町近郊で戦えば近くの建物が崩れ始める。
互いが肩で息をしながら対峙する。そして幾度となく繰り返されてきた戦闘が再開されようとしたところで、18階層全域に何者かの咆哮が轟き戦闘を止め声がしたほうを見やる二人。
17階層につながる階段の所には白き竜が佇んでいる。そしてその竜が二人の姿を見つけると、竜の姿を保ったまま二人の元へ近づき二人の名前を呼ぶ。
「エフラムー!アイクー!」
竜のままこちらに近付いてくるが、二人はその姿を見ても特に驚いた様子が無く近づいてくるのを待っていた。
二人の傍へ来た白き竜は光に包まれたかと思うと、その姿は少女へと変貌していた。
「エフラム、アイク!」
「チキか、どうかしたか?」
「俺たちに何か用か?」
「お兄ちゃんが二人を連れ戻してこいって言ってた。それに遠征から帰ってきてすぐにまた戦うなってナーガ様も怒ってるってお兄ちゃんが言ってたよ?」
「そうはいってもな、じっとしてるのは性に合わん。槍を振っている方が落ち着くんだ」
「それに今回の遠征の換金なんかは人手が足りているのだろう?俺たちは交渉事が苦手だからな、こういう時はお役御免だろう」
「とりあえず帰ろう?あんまり駄々こねてると、ナーガにこのこと言っちゃうよ?」
チキの一言にアイクとエフラムはぐっ!と息を詰まらせる。ナーガは神龍ナーガとも呼ばれており、その身を竜に変えることも、人の姿でいることもできる。竜人の祖先とも伝えられているほどなのだ。
そして竜の身であるナーガは、ファミリアの中でも竜人であるチキ、ミルラ、クルトナーガを特に溺愛している。そのチキを困らせたとあっては、ナーガが多少機嫌が悪くなっても仕方がないのだ。
アイクとエフラムは武器を収め、ダンジョンを後にする準備を始めた。帰る際にチキが二人と手をつないで帰ると言ってきかないため、チキを真ん中に、仲のいい兄妹のように三人は帰って行った。
そして18階層にあるリヴィラの町は、彼らの戦闘の余波で半壊していた。
* * * * * * * * * *
「全く……あなたたちは、遠征が終わったばかりなのですから少しは休息を取ってください」
『ナーガ・ファミリア』の本拠、『竜の寝床』に戻って来た二人に待っていたのはナーガの小言だった。小言を言いたくなるほど心配してくれているということなのだ。
「ねぇねぇナーガ、チキ二人を連れて帰って来たよ。偉い?」
「ええ、チキ、二人を連れてきてくれてありがとうございます」
微笑みながらチキの頭を優しくなでるナーガ。チキは気持ちよさそうに眼を細めている。
「それで、俺たちに何か用があるんだろう?」
「はい、そろそろ私たちのファミリアも、ダンジョンの到達階層を増やしたいのです。ここしばらく58階層までしか進めていないのは、もちろん知っていますよね?」
「ああ、一人一人の練度は他のファミリアの追随を許すつもりはないが、如何せん人数が少ない」
「サポーターなどがいないと持って行ける物資が少ない。一人一人が持てる物資には限りがある。あの人数だとこれより先に進むのは困難だろう」
「ええ、ですからマルスとも相談をしたのですが、新入団員を募集しようと思うのです」
「え?新しく家族が増えるの?」
わーい!とチキは諸手を挙げて喜んでいるが、ナーガは小声で「前にそう言ったでしょう……」と呟いている。
「何故それを俺たちに言うんだ?」
「貴方たちがずっとダンジョンに潜っていてなかなか確認が取れませんでしたから。他の方々は、この意見には賛成して下さっていますよ」
「反対する理由はないが、余りレベルが低いと深層まで連れていけないだろう?しばらく遠征は行かないということか?」
エフラムが言いたいことは、ギルドが文句を言って来ないのか?と言うことだ。オラリオでも大きな派閥である三つのファミリアはそれ相応の成果を定期的にギルドに報告しなくてはならない。
つまりある一定のスパンでダンジョンの遠征に赴くのは、ギルドや他ファミリアに対する体裁の面が強い。『フレイヤ・ファミリア』はそういうことは気にも留めず、遠征などは行わないが『ロキ・ファミリア』と『ナーガ・ファミリア』は大派閥ファミリアとして、恥ずかしくない結果を残している。
「はい、ギルドにはうちのお姫様たちが報告に向かっています。良い返事がいただけると思いますよ」
「何人くらい募集するつもりだ?」
「竜の子たちとマルスを除いた皆様にマンツーマンで見てもらいたいので、10人ほどです。竜の子たちは少々特殊なので、こういう指導にはあまり向きません。マルスには団長の仕事があって指導などしてる暇など無いでしょう。細かいことは団長であるマルスと追々相談していきます」
「そうか、了解した」
「分かった、準備はしておく」
「ありがとうございます。それと新入団員の入団テストを近いうちに行うので、二人にはそれに協力していただきます」
「何をすればいいんだ?」
「相手を殺さない程度に手加減して、手合わせをしてください。その後に私とマルスがどなたを入団させるか決めますから」
「余り手加減は得意ではないのだがな……」
「入団テストで人殺しなんて前例のないことはしないでくださいね?ではお話は以上です。ダンジョンや鍛錬をしなければ自由にしてくださって結構ですよ」
ナーガの執務室を出たところで二人は別れた。入団テストでどの程度までの実力を出していいか真剣に悩みながら。
ごめんなさい、FE無双の動画見てました
まあ戦闘シーンの描写の参考の資料ってことで許して下さい